はじめに
本調査の目的
本調査は、正社員からパートタイム(以下、パート)へ雇用形態を変えた後に退職した場合の「離職票」の発行や、失業手当(雇用保険給付)の受給に関する情報を分かりやすく整理することを目的としています。実務でよく起きる疑問点を中心に、具体的なケースも交えて説明します。
対象読者
- 正社員からパートに切り替えた方
- パートから退職を検討している方
- 人事・総務担当者
誰でも読みやすいよう、専門用語はできるだけ避けます。
本稿で扱う内容
本稿では以下を順に解説します。
– 離職票の役割と見方
– 雇用形態ごとの発行の違い
– パート加入時の雇用保険の条件
– 正社員期間とパート期間の通算ルール
– 離職票と似た書類の違い
– 発行されない場合の対応策
– 実務上の注意点
読み方のポイント
具体例を示しながら、手続きの順序や必要書類を丁寧に説明します。まずはご自身の雇用形態と離職時の状況を思い出しながら読み進めてください。分からない点があれば、次章以降で詳しく確認できます。
離職票とは何か
概要
離職票は正式には「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれ、失業状態を公的に証明する書類です。ハローワークで失業給付(基本手当)を受ける際に必ず提出します。給付の開始時期や金額を決めるための重要な情報が記載されています。
離職票の種類と記載内容
- 離職票-1:主に振込先口座や受給者の基本情報が書かれています。手続きで使用する連絡先なども含みます。
- 離職票-2:離職理由や賃金の状況など、給付期間や金額を決める基礎となる情報が詳しく記載されます。
発行者と受け取り時期
通常は退職した事業主がハローワークに必要書類を提出して発行されます。退職後、事業主が手続きを行い、数週間で郵送されるのが一般的です。事情により発行が遅れることもあるため、早めに確認してください。
使い方の例
離職票を受け取ったら、ハローワークに持参して失業認定や給付申請を行います。自分で振込先を指定する欄があるため、口座情報を正しく記入してください。
注意点
離職理由の記載は給付の可否や待期期間に影響します。事業主と記載内容に相違がある場合はハローワークで相談してください。
雇用形態による離職票発行の違い
発行の原則
雇用保険に加入している被保険者が退職すると、雇用主は離職票を発行する義務があります。雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイト)にかかわらず、被保険者であれば発行されます。
正社員からパートに転換した場合の扱い
たとえば正社員として一定期間働いた後、勤務時間を減らしてパートに切り替え、その後退職した場合でも、退職時点で雇用保険の被保険者であれば離職票は発行されます。過去の被保険期間は通算して失業手当の受給資格判定に使われます。
被保険者でない場合
勤務日数や労働時間が短く雇用保険の対象とならない場合は、離職票は発行されません。具体例として、短期の単発勤務や所定労働時間が基準に満たないケースがあります。
年齢に関する特例
59歳以上で退職する人については、本人の意思にかかわらず離職票を発行する義務があります。企業は対象者に必ず離職票を渡す必要があります。
どう確認すればよいか
発行の可否に不安があるときは、まず会社の総務・人事に確認してください。会社側で対応が不十分な場合は、最寄りのハローワークに相談すると具体的な案内を受けられます。
パート加入時の雇用保険加入条件
加入の3つの条件
パートで雇用保険に加入するには、次の条件をすべて満たす必要があります。
1. 雇用期間が原則として31日以上見込まれること
2. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
3. 学生でないこと
これらを満たせば、パートでも被保険者となり、退職時には離職票の発行対象になります。
具体例でわかりやすく
- 1日4時間、週5日働く(4×5=20時間):加入対象です。
- 1日3時間、週5日(15時間):加入対象になりません。
- 契約が3か月や半年など1か月以上続く見込みがある場合は“31日以上”に該当します。
勤務時間が変動する場合
所定労働時間が週ごとに変わる場合は、平均して20時間以上見込めるかで判断します。勤務の実態が重要なので、給与明細や勤務表で確認してください。
学生の扱い
原則として学生は加入できません。ただし夜間や通信制など勤務形態により例外があるため、不明な点はハローワークや事業主にご確認ください。
手続きと離職票について
加入条件を満たすと事業主が手続きを行い、保険料を給与から天引きします。退職した場合、事業主は離職票を発行します。加入の可否に不安があるときは、早めに事業主かハローワークに相談してください。
正社員期間とパート期間の被保険者期間について
概要
離職前2年間に被保険者期間が12ヵ月以上あることが失業保険の一つの要件です。正社員期間とパート期間は、通常は通算されず、パートに転換した後の被保険者期間だけで受給可否を判断されます。
被保険者期間の扱い
同じ会社で正社員からパートに切り替わった場合でも、パート転換後に新たな被保険者期間が始まる扱いになることが多いです。転換後の期間が12ヵ月未満だと、受給要件を満たさない可能性があります。
具体例
- 例1:正社員で3年勤務→同一社でパートに転換→パート勤務6ヵ月で離職→パート期間のみで判断されると受給要件に満たない可能性が高いです。
- 例2:パート転換後13ヵ月勤務で離職→パート期間だけで12ヵ月以上あるため受給要件を満たす見込みです。
チェックしておくポイント
雇用保険の適用開始日や被保険者番号、転換時の雇用契約書を確認してください。手続きや判断はハローワークが行いますので、不明な点は早めに相談すると安心です。
離職票と混同しやすい書類
離職票とよく混同される書類を、違いと使いどころをわかりやすく説明します。必要なときに適切な書類を用意できるようにしてください。
離職証明書
企業が作成しハローワークに提出する、離職票発行のための書類です。退職理由や被保険者期間などが記載され、通常は本人に直接渡されず事務手続きに使われます。離職票を受け取る前の内部手続き書類と考えてください。
退職証明書
会社が退職の事実を証明する書面です。公的な様式はなく、内容は会社ごとに異なります。離職票が間に合わない場合や、急ぎで退職の事実を示す必要があるときの代替として使えることが多いです。ハローワークでの扱いは事前に確認してください。
雇用保険被保険者証・受給資格者証
被保険者証は加入中に交付される保険の証明書で、離職理由は記載されません。受給資格者証は失業給付の手続き後に発行される書類で、離職票とは目的が異なります。
給与明細・源泉徴収票
所得や勤務期間を示す証拠書類です。離職票がない場合にハローワークで補助資料として使えることがあります。
混同したときの対応
まず会社にどの書類を用意しているか確認し、離職票がまだなら離職証明書や退職証明書の交付を依頼してください。書類がそろわないときは、ハローワークに相談し、どの代替書類で手続きできるか確認しましょう。
離職票がもらえない場合の対応
1. まず会社に連絡しましょう
退職後、通常は数日〜2週間前後で離職票が郵送されます。届かない時はまず退職した会社の総務や人事に電話やメールで発行状況を確認してください。例:「離職票の送付状況を教えてください」と具体的に伝えると対応が早くなります。
2. 確認するポイント
・離職日と郵送先住所が正しいか
・会社がハローワークに離職証明書を提出したか
・発送の予定日や発送方法(普通郵便・書留)
これらを確認して記録に残してください(メールやメモ)。
3. 会社に連絡しても届かない場合
電話での回答が得られない、あるいは対応が遅れる場合は、書面(内容証明郵便)で発行を求めると証拠になります。軽い例として「〇月〇日に退職したが離職票が未着のため送付をお願いします」と書いて送ります。
4. ハローワークに相談する
それでも届かない場合は、パートでもハローワークに相談できます。相談時は身分証明書、退職日が分かる書類(雇用契約書や給与明細、退職届の控え)を持参してください。ハローワークは会社に確認を取り、必要なら支援してくれます。
5. 会社が発行を拒む・連絡が取れない場合
会社が故意に離職票を出さない場合は、ハローワークや労働相談窓口に相談するとよいです。証拠を整えておけば、状況に応じて公的手続きを進めてもらえます。
実務上の注意点
正社員からパートへ転換する際は、次の点に注意して手続きを進めてください。
- 雇用保険の継続確認
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退職前に給与明細で雇用保険料の徴収有無を確認します。会社に残る場合も、パートで引き続き加入できるか雇用主に直接確認してください。例:月給から保険料が引かれているかを見る。
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被保険者期間の把握
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正社員時代とパート時代の被保険者期間を通算して管理します。失業給付の受給条件に影響するため、雇用期間の証明書や給与明細を保管してください。
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離職票の発行請求
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退職する場合は離職票の発行を会社に依頼します。受給を予定するなら早めに請求し、未着の場合は会社へ再確認してください。
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退職関連書類の保管
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離職票、雇用契約書、給与明細、退職届などはコピーを取って保存します。ハローワークでの手続きや将来の証明に役立ちます。
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ハローワークでの対応
- 失業手当を申請する際は離職票と在職中の書類を持参します。継続就労や資格の有無で手続きが変わるため、事前に窓口で確認してください。
具体的な不安がある場合は、会社の総務担当またはハローワーク窓口に相談すると安心です。


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