はじめに
本ドキュメントは、離職票に「会社都合」と記載される場合について、実務的で分かりやすく解説するために作成しました。
この記事でわかること
- 離職票とは何か、なぜ重要か
- 「会社都合」と記載される条件や、その記載が失業手当にもたらす影響
- 会社都合退職と自己都合退職の違い、会社側・労働者側の立場
- 会社都合退職として扱ってもらうためのポイントと注意点
離職票が重要な理由
離職票は失業手当の手続きに必須の書類です。退職理由の記載内容が給付の開始時期や給付日数に直結するため、退職後の生活設計に大きく影響します。
読み方のポイント
専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。まずは全体像をつかんでから、必要な章を順に読んでください。本章では全体の流れと本書の構成を丁寧に示します。ご不明点があれば、各章の該当箇所を参照してください。
離職票に「会社都合」と記載される条件とその影響
概要
離職票に「会社都合」と記載されるのは、会社側の事情で労働者が退職を余儀なくされた場合です。代表的な例を具体的に挙げながら、どのようなケースが該当するか、また記載されたときにどんな影響があるかを分かりやすく説明します。
会社都合と認められる主なケース
- 倒産・解散、事業の廃止や縮小
- 会社が経営できなくなり雇用を継続できない場合は明らかに会社都合です。
- リストラや整理解雇
- 人員削減のための解雇や雇用契約の打ち切りが該当します。
- 契約社員の雇い止め
- 契約満了を理由に更新されないとき、会社に更新の意思がない場合は会社都合になります。
- 早期退職優遇制度への参加
- 会社が募集した早期退職制度に応じた場合は、会社側の措置による退職と扱われることが多いです。
- 勤務地変更で通勤が著しく困難になった場合
- 会社の都合で勤務地を大幅に変えられ、通勤が続けられないと認められれば会社都合になります。
- パワハラ・いじめなど職場環境が原因での退職
- 会社の安全配慮義務を怠った結果として退職に至った場合は、会社側の責任として扱われることがあります。
離職票の作成と確認のポイント
会社は離職票に退職理由を記載して交付します。労働者は必ず内容を確認してください。記載が事実と異なる場合は、まず会社に訂正を依頼します。応じないときはハローワークに相談し、事情を説明して判断を求めることができます。
「会社都合」と記載されたときの主な影響
- 失業保険の受給で有利になります。自己都合退職に比べて給付の開始が早く、給付制限がないケースが多いです。
- 給付日数が長くなる可能性があります。退職前の勤続年数や年齢に応じた日数が、会社都合のほうが多く設定されます。
- 金額そのものは基本的に同じ算定方法ですが、受給開始時期や日数の違いで受給総額が増える場合があります。
注意点
会社は意図的に「自己都合」と記載することがあります。納得できない場合は証拠(解雇通知、社内文書、やり取りの記録、医師の診断書など)を用意してハローワークで相談すると良いです。
会社都合退職と自己都合退職の違い
概要
会社都合退職と自己都合退職の主な違いは失業保険(雇用保険)の給付条件です。会社都合は給付開始が早く、受給日数や金額が多めになります。自己都合は給付が遅れ、受給が短くなる点で不利です。
給付開始(待期・給付制限)の違い
会社都合:雇用保険の加入期間が6か月以上あれば、給付制限がなく比較的早く受給できます。
自己都合:加入期間が12か月以上でも、原則として2か月の給付制限があります。結果として受給開始が遅れます。
給付日数・金額の違い
同じ加入期間や賃金だった場合、会社都合の方が支給日数と金額の両方で有利になります。とくに勤続年数が長い場合、差が大きくなりやすいです。
具体例
例1:会社の経営悪化で解雇されたAさん(勤続3年)。条件を満たせば早く受給でき、当面の生活費に余裕ができます。
例2:家庭の事情で自ら退職したBさん(勤続3年)。自己都合扱いなら2か月の制限があり、その間は支給されません。
手続きと確認ポイント
- 離職票の「離職理由」欄を必ず確認してください。
- 雇用保険の加入期間の証明(給与明細や被保険者番号)を準備します。
- 受給の手続きはハローワークで行います。必要書類は早めに揃えましょう。
会社が「自己都合退職」にしたがる理由
会社が本来「会社都合退職」であるケースを「自己都合退職」にしたがる理由を、わかりやすく解説します。
1) 行政の指導・監査を避けたい
雇用保険の記録上、会社都合が多いとハローワークなどの調査や指導の対象になりやすくなります。例えば短期間で大量に退職者が出ると、事業運営の方法を問いただされることがあります。
2) 労働トラブルを避けたい
解雇だと社員側が不当解雇を主張して争いになりやすく、労働審判や訴訟に発展するリスクがあります。裁判で不利になると慰謝料や未払い賃金の支払い命令が出ることもあります。
3) 経済的負担を減らしたい
解雇と認定されると解雇予告手当(原則30日分)や未払い賃金の支払い義務が生じます。会社はこうした負担を避けるため、自己都合の扱いにしたがります。
4) 履歴や採用への影響を抑えたい
「会社都合」が多いと採用面で不利な印象を与え、求人活動に影響します。そのため表向きの離職理由を自己都合にすることがあります。
会社が取りがちな方法と注意点
代表例は「退職届へのサインの強要」や「合意退職に見せかけた説明」です。これらは場合によっては違法です。記録(メールやメッセージ)を残し、疑わしい場合はハローワークや労働相談窓口に相談してください。
会社都合退職として認められるためのポイント
まず証拠を残す
会社都合と主張するために、事実関係をできるだけ記録してください。具体例:上司から「辞めろ」と言われたメール、会議での発言を録音したデータ、配置転換や降格を示す文書、未払い残業のタイムカードや給与明細。日付や相手の氏名を明記したメモも有効です。
書面でのやり取りを心がける
口頭だけのやり取りは争いになりやすいので、退職意思や会社の要求はメールや書面で受け取るようにしてください。どうしても口頭の場合は、やり取りの日時・内容を自分で記録し、可能なら同僚を証人として頼んでおきます。
ハローワークへの申し出
離職票の内容に納得できないときは、ハローワークに申し出て調査を求めます。ハローワークは会社に事実確認を行い、必要なら訂正を促します。手続きや提出書類は窓口で確認してください。
相談先と対応の流れ
労働問題に詳しい弁護士、労働基準監督署、労働組合などに相談すると対応がスムーズになります。弁護士は証拠の集め方や異議申立ての書き方を助言してくれます。労基署は法令違反の有無を調査します。
実行しやすいチェックリスト
- メール・書面は保存する
- 出勤記録や給与明細をコピーする
- 重要な会話は日時と内容を記録する
- ハローワークへ早めに相談する
- 必要なら弁護士に依頼する
納得できない扱いを受けたら、ためらわずに異議を申し立て、証拠を揃えて適切に対応してください。
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