はじめに
病気を理由に退職する際、離職票の記入や手続きに不安を感じる方は多いです。本資料は、そうした不安を少しでも減らすために作成しました。離職票は失業保険や各種手続きの基礎資料になります。間違いがあると給付の開始が遅れたり、本来受けられる扱いを受けられないことがあります。
対象読者
- 病気やけがで退職を検討している方
- 会社側で離職票の作成を担当する方
- 失業保険や公的手続きを調べているご家族や支援者
この章での目的
本章では、本資料の目的と全体の構成をわかりやすく示します。読み進めることで、次の章で解説する具体的な書き方や必要書類の理解が深まります。
読み方のポイント
まずは自分の状況（病名、休職の有無、退職の経緯）を整理してください。診断書や休職記録、雇用契約のコピーを手元に用意すると、次の章から具体的な手続きが理解しやすくなります。
本資料を読み終えるころには、離職票に関する基本的な流れと、病気退職で注意すべき点が見えてくるはずです。
病気退職時の離職票の基本と離職理由の区分
離職票とは
離職票は、会社を辞めたときに発行される公的書類です。主に「雇用保険被保険者離職票-1」（事実関係や離職日など）と「離職票-2」（離職理由の区分）があり、失業給付の申請や各種公的手続きで必要になります。会社が作成してハローワークに提出するため、退職後に速やかに受け取って内容を確認してください。
病気・ケガで退職する場合のポイント
病気やケガで退職する際は、離職理由の区分が重要です。区分によって失業給付の取り扱いが変わるため、自分がどの区分に当てはまるかを把握しておきましょう。
離職理由の主な区分
- 特定理由離職者：病気・けが・介護など、やむを得ない事情で退職した人を指します。特に医師の診断書や治療の記録があると認められやすいです。給付制限（給付を受けるまでの待期）や給付日数の扱いで優遇される場合があります。
- 一般の自己都合退職：本人の都合による退職です。病気であっても、治療に協力せず職場復帰の見込みがあると判断されるとこの区分になることがあります。
判断される際の観点
ハローワークは、医師の診断内容、休職期間や治療の経過、会社側の対応（配慮や配置換えの有無）などを総合的に見て区分を決めます。離職票の記載は会社が行いますが、必要な医療情報や事情は本人が整えて伝えることが大切です。
準備しておくとよいもの
- 診断書や治療の経過を書いた医療機関の証明
- 休職の履歴や会社とのやり取りを示す書面（メールや書面のやり取り）
- 退職に至った事情を整理したメモ
これらを用意しておくと、離職票の区分判断やハローワークでの説明がスムーズになります。必要に応じて早めに相談窓口を利用してください。
離職票の記載方法と具体的事情記載欄の使い方
はじめに
離職票では「離職理由」欄に当てはまる項目にチェックを入れ、病気が原因の場合は「具体的事情記載欄」に詳しく書きます。ここは失業給付の認定に影響するため、正確かつ読みやすく記載することが大切です。
基本的な記載のポイント
- いつから病気か（発症日や休職開始日）を明記します。
- 病名や症状、業務に支障を来した具体的な内容を簡潔に書きます。例：慢性腰痛のため立ち仕事が困難になり業務遂行不能となった、など。
- 休職や治療の経過、会社への報告や対応（就業上の配慮や欠勤状況）も記載します。
記載例（文面の例）
「20XX年X月から慢性腰痛のため通院・服薬を続け、立ち仕事が困難となった。医師の指導で休職し、職務に復帰できないため退職。」
事業主と退職者のすり合わせ
事業主が離職票を作成しますが、内容に齟齬がないよう退職者本人の事情も反映してください。不一致があると判断に時間がかかることがあります。
ハローワークでの訂正や相談
記載内容に不安があればハローワークで相談・訂正できます。窓口で追加説明書を付けたり、医師の診断書を添付して説明することが有効です。
書類の保管と添付資料
離職票の控え、診断書、休職記録を手元に残してください。具体的事情を裏付ける資料があれば、失業給付の認定手続きがスムーズになります。
特定理由離職者として認定されるための必要書類と手続き
必要書類一覧
- 医師の診断書：病名、治療の必要性、労働継続が困難である旨、期間の目安を明記してください。病院の正式な様式で署名・押印があることが重要です。
- 通院（入院）証明書：病院が発行する通院日や入院期間の証明。通院記録のコピーでも補強になります。
- 会社からの証明書類：休職の経過や就業制限、退職の経緯を示す書面（雇用主の意見書や就業規則の写しなど）。
- 離職票と雇用保険関係書類：離職票はハローワーク申請時に必要です。その他、受給資格確認のための書類を用意してください。
提出方法と手順
- 診断書等の原本とコピーを用意します。原本は提示を求められることがあるため保管してください。
- 退職後、速やかに最寄りのハローワークへ行き、窓口で「特定理由離職者としての認定申請」を伝えます。
- ハローワークで説明を受け、必要書類を提出します。追加の説明や書類提出を求められる場合があります。
書類作成時の注意点
- 診断書は具体的な症状と労働困難の理由が明確に記載されていることが大切です。抽象的な表現だけだと認定が難しくなります。
- 日付や医師の署名・押印が欠けていないか必ず確認してください。
- 会社側の事情説明は、就業状況や休職対応の経緯を具体的に示すと有利です。
ケース別の補強資料例
- 長期入院：入院期間の証明、手術記録
- 通院治療：通院歴、投薬・療養計画の写し
- 精神疾患：医師の診断書に加え、通院状況や就労が難しい具体例（在宅勤務での問題など）を添付
書類が整っていると認定の可能性が高まります。不明点はハローワーク窓口で相談してください。
休職期間満了による退職の場合の追加手続き
概要
傷病による休職が定めた期間で満了し、退職になる場合は、離職票の扱いで通常より添付書類が求められることがあります。会社側と本人が手続きを整えることで、失業給付や公的手続きがスムーズになります。
主に求められる書類
- 就業規則の休職規定の該当部分の写し
- 休職期間満了を伝える通知（会社作成）
- 傷病手当金の申請書の写しや医師の診断書
記載上の注意点
休職中に賃金が0円となる期間がある場合、離職票にその期間を記載する必要が出ます。賃金0円の期間を省略したいときは、傷病手当金の申請書や医師の証明でその期間を裏付けると有効です。添付がないと、会社は賃金欄に0円の期間をそのまま記載しなければならないことがあるため注意してください。
実務のポイント
- 書類は退職手続きの早い段階で準備します。
- 本人が傷病手当金の申請控えを保管しておくと手続きが円滑です。
- 不明点はハローワークや社会保険事務所に確認してください。
失業保険受給や公的手続きへの影響
離職票の記載が失業給付に与える影響
離職票の「離職理由」は失業給付の開始時期や給付日数に直結します。病気退職で「会社都合」や特定理由離職者と認められれば、自己都合退職で生じる1か月の給付制限が免除され、早く給付が始まる可能性があります。反対に自己都合扱いだと給付開始が遅れる場合があります。
特定理由離職者と手続きの違い
特定理由離職者に該当するかはハローワークが判断します。認定には離職票だけでなく、診断書や休職記録などが必要です。例えば「長期療養で復職が困難だった」ことを診断書で示すと認定されやすくなります。
実際の手続きと必要書類
ハローワークには原則として離職票を持参します。加えて用意すると良い書類例：診断書、休職中の給与明細、会社とのやり取り（メール等）、雇用契約書。受付で状況を詳しく説明し、必要書類を確認してください。
他の公的手続きへの影響
離職票は国民年金の免除申請や、職業訓練・教育訓練給付の申請でも使います。退職日や退職理由の証明になるため、記載が正確であるほど手続きがスムーズです。
実務上の注意点
離職票の記載に疑問がある場合はハローワークで早めに相談してください。記載を訂正する必要があれば、まずは会社に確認し、必要書類を揃えて申し出ると手続きが進みます。早めの行動で給付や他の申請がスムーズになります。
地域差・運用差と専門家への相談の重要性
はじめに
地域やハローワークごとに、必要書類や運用の解釈が異なることがあります。書類の不備や取り扱いの違いで受給や認定に影響が出るため、事前確認が大切です。
地域差や運用差が起きる理由
– 担当者の判断や運用指針の差で、同じ事情でも扱いが変わることがあります。
– 書類の提出様式や追加で求められる証明が地域で異なる例が報告されています。
具体例
– 病気による退職で、診断書の内容や休職記録の提出を求められる場合があります。
– 休職期間の扱いや「特定理由」認定の要件解釈が窓口で変わることがあります。
相談前に準備するもの（簡単チェックリスト）
– 診断書、病院の診療記録の写し
– 休職のやり取り（メールや申請書）
– 雇用契約書、給与明細、離職票の写し
これらを持参すると相談がスムーズです。
専門家の選び方と相談のポイント
– ハローワーク窓口で事前照会する
– 社会保険労務士（社労士）は手続きや書類作成の助言が得意です
– 事実と時系列を整理して伝えると、的確な助言が受けられます
最後に
不安がある場合は早めに相談してください。書類不備や認定漏れを防げる可能性が高まります。身近な窓口と専門家を上手に活用しましょう。
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