はじめに
目的
本資料は、労働基準法違反に関する調査結果を分かりやすくまとめたものです。法律の概要だけでなく、具体的な違反事例やそれに対する罰則の仕組みを整理しています。労働者と事業主の両方が実務で参照できるように作成しました。
本資料の構成
全4章で構成します。第1章(本章)は目的と読み方を示します。第2章で労働基準法違反の基本を解説し、第3章で代表的な違反例(強制労働、賃金未払い、長時間労働、解雇予告義務違反など)を挙げます。第4章で罰則の体系を説明します。
対象と範囲
対象は日本の労働関係事案です。個別の紛争の法律相談ではなく、一般的な理解を目的としています。具体例は現場でのイメージを持ちやすくするために挙げています。
読み方のポイント
専門用語は最小限に抑え、例を交えて説明します。まず第2章で基礎を押さしてから第3章・第4章を読むと理解が深まります。疑問点があれば、専門家に相談してください。
労働基準法違反とは
労働基準法の目的
労働基準法は、労働者の働く条件の最低基準を定めた法律です。雇用契約、賃金、労働時間、休憩・休日、有給休暇、安全衛生などを対象とし、働く人の生活と健康を守ることを目的とします。
違反とはどんな状態か
労働基準法違反とは、使用者(会社など)がこの最低基準を守らない行為を指します。具体的には次のような例があります。
– 残業代を支払わない(または適正に計算しない)
– 最低賃金を下回る賃金を支払う
– 法定の休憩・休日を与えない
– 年次有給休暇を付与・取得させない
– 安全基準を無視して労働者に危険を及ぼす
これらは一つでも当てはまれば違反となりますし、複数重なると深刻な問題になります。
違反があった場合の対応
労働基準監督署は是正勧告を行い、改善を求めます。重大な場合は検察へ送致され、刑事責任が問われることがあります。罰則は重く、最長で懲役10年または300万円以下の罰金が科される場合があります。個別の紛争では、未払い賃金の請求や労働審判、民事訴訟で解決を図ることもできます。
労働者は自分の権利を知り、疑問があれば労働基準監督署や専門家に相談してください。使用者は法の基準を守ることでトラブルを防げます。
労働基準法違反の主な事例
強制労働
従業員の意思に反して働かせる行為です。たとえば辞めたいと言っても出社を強制する場合が該当します。刑罰は1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金です。
中間搾取(給与の一部を搾取)
給料の一部を不当に差し引く行為です。派遣や業務委託名目で仲介者が賃金を取る場合も含まれます。処罰は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
法定労働時間超過
1日8時間、週40時間を超えて働かせることです。36協定を結んでいない、または上限を超えた場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。例:残業ばかりで月の労働時間が大幅に長いケース。
違約金の強制・解雇予告義務違反
就業規則で不当に違約金を払わせたり、解雇の30日前の予告をしなかったりする行為です。いずれも6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に該当します。
賃金・残業代の未払い
正当な賃金や残業代を支払わないことです。30万円以下の罰金が科されます。具体例:サービス残業を常態化させること。
有給休暇取得拒否・就業規則未作成
有給を認めない、就業規則を作らない・届出しないことも違反です。職場での取り扱いを明確にせず、権利を阻害する行為は問題になります。
差別的扱い・その他(産前産後休業・休憩・休日・申告者への不利益扱い)
性別や国籍で不利に扱うこと、産前産後休業の取得を拒むこと、休憩や休日を与えないこと、労働基準監督署へ申告した人に不利益を与えることも違反です。どれも労働者の基本的な権利を侵害します。
罰則の体系
労働基準法違反の罰則は、違反の重さに応じて刑罰や罰金の幅が決まっています。ここではわかりやすく分類し、具体例を挙げて説明します。
刑罰と罰金の基本
- 刑罰は拘禁刑(刑務所に入ること)や罰金があり、違反の程度で幅があります。日常的には罰金で済む場合もありますが、重大な場合は拘禁刑が科されます。
重い違反(例:強制労働)
- 罰則例:1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金。
- 具体例:暴力や脅しで働かせる強制、身分を拘束して働かせる場合などです。
中程度の違反(例:中間搾取など)
- 罰則例:1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金。
- 具体例:仲介者が不当な手数料を取るなど、働く人の賃金を不当に減らす行為です。
比較的軽い違反(例:解雇予告義務違反・賃金不払い等)
- 罰則例:6か月以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金。
- 具体例:解雇予告をせずに解雇する、残業代を支払わない、休日を与えないなどが該当します。
手続きや表示に関する違反
- 罰則例:30万円以下の罰金。
- 具体例:労働条件を明示しない、就業規則の届出をしない、休業手当を支払わないなどです。
注意点
- 同一の事案で複数の違反があると、それぞれで処罰されることがあります。したがって、事業者は日頃から法令の確認と適正な運用を心がける必要があります。


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