はじめに
本章の目的
この章では、本調査が扱う範囲と目的を簡潔に示します。正社員型派遣(無期雇用派遣)として働く方が退職を考えたとき、どのような手続きや注意点があるかをわかりやすく整理します。退職の基本から具体的な手順、退職後の手続きまで、順を追って学べる設計です。
誰に向けた内容か
・無期雇用の派遣社員として働く人
・契約期間や手続きで不安を抱える人
・円満に退職したい人や転職を考えている人
必要な情報を実例を交えて丁寧に説明します。
派遣の退職で特に注意する点
無期雇用派遣は、雇用主(派遣元)と就業先(派遣先)の関係が関わります。契約期間や連絡先、書類の扱いが正社員とは異なります。たとえば、口頭で伝えるだけでなく、派遣元への正式な連絡や書面の提出が必要になることが多いです。退職のタイミングや引き継ぎも事前に計画すると安心です。
本書の読み方
次章以降で手続きの基本、途中退職の条件、具体的な連絡方法や書類の書き方などを順に説明します。項目ごとに実例と手順を示しますので、自分の状況に合わせて読み進めてください。
派遣社員の退職方法と手続きの基本原則
契約期間が原則
派遣社員は派遣元(派遣会社)と結ぶ雇用契約で働きます。多くの場合、契約期間が定められており、その期間を全うすることが基本です。契約満了前に一方的に「2週間前に申告して辞める」といった扱いは原則として認められません。
契約途中の退職の考え方
契約を途中で終えるには、派遣元と派遣先の双方の合意が必要です。病気や家庭の急変などやむを得ない事情がある場合は、早めに派遣元に相談して解決策を探します。
まず確認すること
- 契約書の退職に関する条項を読む。2. 就業規則や派遣元の退職ルールを確認。3. 退職希望日と業務の引継ぎ期間を考える。
退職手続きの基本的な流れ
- まず派遣元に相談・口頭で意思表示。2. 書面で退職の申し出(就業規則に従う)。3. 派遣先へ必要な連絡(派遣元が行う場合が多い)。4. 引継ぎと備品返却、必要書類の受け取り。
注意点
- 一方的な早期退職は契約違反になり得ます。- 円満に進めるために、早めに派遣元と相談して合意を得ることが大切です。
契約期間中の途中退職が可能な条件
原則
派遣契約では、契約期間中に途中退職することは原則として認められません。契約期間と就業条件を守ることが基本です。急に辞めると、次の就業に影響したり、派遣元との信頼関係が損なわれることがあります。
例外となる事情(具体例)
- 怪我や重い病気で労働継続が困難になった場合(診断書があると説得力が増します)
- 親の介護など家庭の急な事情でどうしても継続できない場合
- 急な転居や配偶者の転勤で勤務地維持が物理的に不可能になった場合
- 勤務内容や就業環境が契約時と著しく異なり、当初の合意と違う場合(職務内容の大幅変更、ハラスメントなど)
認められるために準備すること
- 契約書や派遣条件の確認。開始時の業務内容と相違がないか整理します。
- 医師の診断書や転居を証明する書類など、事情を裏付ける証拠を用意します。
- できるだけ早く派遣元に事情を伝え、話し合いの場を持ちます。
手続きの流れと注意点
- まず契約書を確認し、何が定められているか把握します。2. 派遣元に事情を説明し、退職時期や引継ぎについて相談します。3. 証拠がある場合は提出して合意を得られるよう努めます。4. 合意できない場合は、専門家に相談することも検討してください。
柔軟な対応が期待できる場合もありますが、自己判断で突然出勤しないことは避け、必ず派遣元と話し合って進めてください。
正社員への転職を理由とした退職
概要
派遣社員が「正社員になりたい」という理由で退職するのは、ネガティブな理由ではありません。意向を正直に伝えることで、派遣先から直接雇用の打診を受けることもあります。早めに相談すると選択肢が広がります。
伝え方のポイント
- まずは派遣元に相談します。理由は「キャリアの安定化」や「長期的に働きたい」など前向きに伝えましょう。
- 派遣先にも意向を示す場合は、直接的な表現より「興味があります」「ぜひ検討したいです」と柔らかく伝えます。
例文(派遣元): 「正社員を目指したく、今後の転職活動を考えています。手続きの相談をお願いします。」
例文(派遣先): 「こちらで働くことに興味があり、正社員としての可能性があれば教えてください。」
タイミングと注意点
- 契約期間内でも相談は可能ですが、契約内容や引継ぎ日程を確認してください。
- 派遣先が直接採用を検討する場合、残業や引継ぎを含めた調整が必要になることがあります。
退職後の準備
- 書類や勤務証明の準備を依頼しましょう。推薦や評価が役立つことが多いです。
- 面接準備や職務経歴書の整理も早めに始めると安心です。
退職手続きの流れ①派遣元への連絡
まず誰に連絡するか
退職を決めたら、最初に連絡する相手は派遣元(派遣会社)の担当者です。派遣元が正式な雇用主なので、手続きや契約上の調整は派遣元が行います。派遣先の上司や同僚に先に伝えると混乱やトラブルの原因になるため避けます。
連絡のタイミング
多くの派遣会社は契約更新の1か月前に面談を設定します。その場で退職の意思を伝えるとスムーズです。更新時期が近くない場合でも、契約で定められた期間(例:1か月前通知)に従って早めに伝えましょう。
伝え方のポイント
- 電話:まず電話で意思を伝え、面談や書面の案内を受ける流れが一般的です。短く明確に「退職を希望します」と伝えます。例:「○月末で退職を考えております。手続きのご指示をお願いいたします。」
- メール:電話後の確認や、面談日時の調整に便利です。日時・退職希望日・簡単な理由を記載します。
- 面談:担当者と細かい手続きや引き継ぎについて話します。不明点はこの場で確認しましょう。
よくある不安と対応例
- 退職理由を聞かれたとき:正直に簡潔に伝えます。「正社員として働く予定のため」や「家庭の都合のため」などで十分です。
- 退職日が調整になる場合:派遣元と相談して、派遣先への影響を最小限にする日程を決めます。
まとめない(不要)
(ここではまとめは設けません)
退職手続きの流れ②具体的な手続きプロセス
以下は、実際に退職を進める際の具体的な手順です。順序に沿って進めると混乱しにくくなります。
1.失業手当の受給可否確認
まず、失業手当が受け取れるか確認します。自己都合退職か会社都合かで給付開始時期や条件が変わります。ハローワークや派遣会社の担当者に問い合わせ、離職票の受け取り方法や必要書類を確認してください。
2.契約期間と有給休暇の残日数確認
契約書や就業条件明示書で契約満了日や解約の取り決めを確認します。有給休暇は残日数を把握し、消化するか買い上げの扱いになるかを派遣元に確認しましょう。付与条件を満たしていれば申請できます。
3.派遣会社への退職意思伝達
まず派遣元に退職の意思を伝えます。電話で口頭連絡した後、メールや書面で希望退職日と理由を送付して記録を残すと安心です。必要な手続き(雇用保険や書類の準備、最終給与の支払い時期など)を確認してください。
4.派遣先企業への退職意思伝達
通常は派遣会社を通じて調整しますが、派遣先へ直接伝える場合は派遣元の了承を得てから行いましょう。引き継ぎの内容、最終出勤日、業務の引き継ぎ資料の作成方法を関係者とすり合わせます。
実務上の注意点
- 退職希望日は契約や職場のルールに従って設定する。できるだけ余裕を持って連絡しましょう。
- 連絡は口頭だけでなく、メールや書面で記録を残す。トラブル予防になります。
- 引き継ぎ資料は分かりやすくまとめ、後任や派遣先担当者が使える形で残します。
退職届と書類手続き
概要
派遣社員は契約期間満了での退職が一般的で、退職届が必ずしも必要ではありません。途中退職の場合や、派遣元が求めるときは退職届を出すことがあります。
退職届は必要か
- 契約満了:多くのケースで不要です。口頭連絡や書面での確認で済むことが多いです。
- 途中退職:派遣元や就業先から書面提出を求められる場合があります。契約書をまず確認してください。
提出先とタイミング
- 提出先:原則は派遣元(人事担当)へ提出します。派遣先へ直接出す必要は基本的にありませんが、派遣元の指示に従ってください。
- タイミング:就業規則や契約で定められた退職の申告期間(例:14日、1ヵ月)を守ります。急な事情でも早めに連絡すると調整しやすくなります。
退職届の書き方(簡単な例)
- 書き方のポイント:氏名・所属・退職希望日・理由(簡潔で可)・提出日・署名(自署)を記載します。
例文:
「退職届
私、○○は、○年○月○日をもって退職いたしたく、ここに届出いたします。令和○年○月○日 氏名(署名)」
理由は「一身上の都合により」で問題ありません。詳細を記す必要はありません。
その他の書類
- 派遣元からの離職票や退職証明書の発行を依頼してください。
- 健康保険証や貸与物(名札、備品)は返却リストに従い返します。
提出後の保管と注意点
- 提出控えを必ずもらい、保管してください。口頭のみで済んだ場合でも、メールで記録を残すと安心です。
- 契約内容と退職届の内容が一致しているか確認してください。トラブル防止のため、退職日や業務引継ぎについて派遣元とすり合わせを行ってください。
以上を踏まえ、落ち着いて書類対応を進めましょう。
退職時の事情説明と理由の伝え方
はじめに
退職理由を伝えるときは、相手が状況を正しく理解できるようにすることが大切です。特に介護や健康上の理由などやむを得ない事由は、具体的に伝えることで手続きが円滑になります。
伝える前の準備
- 要点を整理する(いつから、どのような事情か、いつまで続く見込みか)
- 必要なら医師の診断書や家族の状況を簡単にまとめる
- 退職希望日や引継ぎの意向を用意する
伝え方の構成(面談や電話、メール共通)
- 挨拶と感謝を述べる
- 退職の意思を簡潔に伝える
- 具体的な事情(例:親の介護のため、通院のため)を述べる
- 希望する最終出勤日や引継ぎ案を提示する
- 質問や調整に応じる姿勢を示す
具体例と文例
- 介護: “親の介護が必要になり、今後の時間確保が難しいため退職を希望します。”
- 体調: “持病の治療を優先する必要があり、勤務継続が困難です。診断書は用意できます。”
- ハラスメント: “職場の人間関係が原因で精神的に続けるのが難しくなりました。詳細は個別にお話しします。”
注意点
- 過度に詳しい私生活の話は避け、要点を明確にする
- 必要な証明書は提示できるよう準備する
- 口頭で伝えた内容はメールで確認を残すと安心です
面談では誠実に、相手の質問には落ち着いて答えることを心がけてください。
最終出勤日までの準備と返却物
退職日が決まったら、最終出勤日まで誠実に勤務し無断欠勤を避けます。ここでは準備の具体的な手順と、返却物のチェック方法を丁寧に説明します。
出勤姿勢と連絡
最終日まで通常通り出勤し、急な事情があるときは派遣元と派遣先に速やかに連絡します。予定変更や休暇は事前に相談しましょう。
業務の引き継ぎ
引き継ぎ書を作成し、業務のポイント・未了タスク・担当先連絡先を記載します。口頭での説明は短く要点を伝え、引き継ぎ相手と日時を決めます。引継ぎは可能なら複数回確認すると安全です。
返却物とチェックリスト例
貸与PC・スマホ・IDカード・鍵・作業着・会社資料・USBメモリなどをリスト化し、状態とシリアル番号を記入します。受領印や受領メールをもらいましょう。
データ整理とアカウント
個人データを整理し、顧客情報など機密は派遣先のルールに従って削除または移管します。クラウドや社内フォルダの権限も整理します。
返却の手順と最終日の流れ
返却物は事前に梱包し、指定場所へ持参します。当日は最終確認を行い、上司や担当者に報告して受領を確認します。感謝の気持ちを伝えると印象が良くなります。
注意点
私物の持ち帰り忘れ、個人情報の残置、返却物の不備に注意してください。受領証は必ず保管しましょう。
最終チェックリスト(短縮)
- 引き継ぎ書の作成・提出
- 貸与物の一覧と状態確認
- データ整理・権限撤回
- 受領印・メールの取得
- 私物確認と挨拶
これらを順に進めれば、トラブルなく最終出勤日を迎えられます。
退職時の挨拶と円満退職
初めに
最終日には感謝の気持ちを伝えることで、円満に退職できます。良好な関係を保つと、今後の紹介や再雇用の可能性にもつながります。
挨拶のタイミングと方法
- 上司には退職日の前に一度、個別に伝えます。対面が望ましいです。
- 同僚には最終出勤日の午前中か昼休みに短く伝えます。忙しい場合はメールでも構いません。
- 挨拶は簡潔に、感謝と今後の連絡先を伝えるのが基本です。
挨拶の例文(短め)
- 同僚:「本日で退職します。これまでお世話になりありがとうございました。今後の連絡先はこちらです。」
- 上司:「○○課長、本日をもって退職いたします。ご指導ありがとうございました。引継ぎは□□に済ませておりますのでご安心ください。」
- 派遣元担当者:「この度退職手続きを完了しました。これまでのご対応に感謝します。必要書類はご確認ください。」
注意点
- 職場の批判や過去の不満を長く話さない。
- 感情に任せた発言は避ける。
- 引継ぎや未完了の業務は明確に伝え、責任を持って整理する。
退職後の関係維持
連絡先を交換しておくと後々役立ちます。短いお礼のメッセージを送れば印象が良く、関係が続きやすいです。
最終準備チェックリスト
- 上司・同僚への挨拶
- 引継ぎ資料の作成・確認
- 物品・名札の返却
- 退職書類の確認
- 連絡先の交換
これらを意識すれば、気持ちよく退職できます。
退職後の雇用保険手続き
離職票の受け取りと確認
退職後、派遣会社から「離職票」が交付されます。まず記載内容(退職日や事業所名、離職理由)を確認してください。誤りがあれば派遣会社に速やかに連絡しましょう。
ハローワークでの申請手続き
離職票を持ってハローワークで求職の申し込みと失業給付の申請をします。窓口で必要書類を確認され、受給資格の判定が行われます。
受給条件と給付までの流れ
主な条件は一定期間の被保険者期間があることや就職する意思・能力があることです。申請後は7日間の待機期間があり、その後に給付が始まります。自己都合退職の場合は給付制限(数週間〜数か月)が付くことがあります。
必要書類と準備物
主な持ち物は離職票、身分証明書、印鑑、マイナンバー(通知カードや個人番号カード)、預金通帳などです。事前にコピーを取ると手続きがスムーズです。
注意点
離職票が届くまでに時間がかかることがあります。求職活動実績の提出や認定日に出席する必要があるため、ハローワークの案内をよく確認してください。質問がある場合は早めにハローワークに相談すると安心です。
退職代行サービスの利用
概要
常用型派遣(無期雇用)は退職代行サービスを利用できる場合が多く、登録型派遣(有期雇用)は利用できるサービスが限られます。派遣社員でも有給休暇や残業代の権利は変わりません。代行はあくまで連絡と手続きを代行する手段です。
代行が対応する主な業務
- 退職意思の伝達(派遣元への連絡)
- 退職日や最終出勤日の調整の代行
- 必要書類の受け取りや送付の仲介
代行で対応できない、または注意が必要な事項
- 未払い賃金や残業代の強制回収(多くは弁護士でないと法的手続きが取れません)
- 有休の買い取りや細かい清算交渉(弁護士対応が必要なことが多いです)
サービス選びのポイント
- 実績と口コミを確認する
- 弁護士や社労士と連携しているかを確認する
- 料金体系、返金規定を確認する
- 登録型派遣の場合、契約期間や派遣先との関係性で受けられないことがあるので事前に説明を受ける
利用の流れ(簡単な例)
- 相談・見積り
- 代行業者が派遣元へ連絡
- 退職日の確定、書類の受け渡し
- 必要に応じて弁護士へ引き継ぎ
注意点
代行を使っても有給や未払いの権利は残ります。未払い金の回収や法的紛争が予想される場合は、早めに弁護士へ相談してください。個人情報の取り扱いや契約内容は必ず確認しましょう。


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