はじめに
本書は、在職証明書について分かりやすくまとめた入門書です。正社員はもちろん、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど様々な雇用形態に対応する実務的なポイントを解説します。
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目的:在職証明書の役割と、どの場面で必要になるかを明確にします。たとえば、住宅の賃貸契約、ローン申請、ビザ手続き、学校の入学手続きなどで求められることが多いです。
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構成:以降の章で、証明書に書くべき項目、発行の流れ、依頼文の例、正社員と他の雇用形態の違い、使えるフォーマット、そして最近のデジタル化の傾向まで順に説明します。具体例とテンプレートを載せますので、実際の手続きにすぐ使えます。
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読み方の目安:まず第2章で基礎を押さえ、第4章〜第6章で実務手順を確認してください。時間がない方は、第8章のテンプレートを参照すると効率的です。
この章では全体像を示しました。以降の章で具体的な作成方法や注意点を丁寧に説明します。
在職証明書(勤労証明書・在籍証明書)とは
概要
在職証明書は、企業が従業員の在籍や就労状況を証明する文書です。現在の在籍を確認する「在職証明」と、過去の在籍を示す「在籍(離職)証明」に分かれます。呼び方は勤労証明書、就業証明書、雇用証明書、勤務証明書などさまざまです。
発行対象
正社員だけでなく、パート・アルバイト、契約社員にも発行されます。会社の人事部や総務部が窓口になり、本人または代理人が申請して受け取ります。
記載される主な項目(例)
- 氏名・生年月日・住所
- 雇用形態(正社員、パート等)
- 入社日・在籍期間
- 役職・業務内容・勤務地
- 給与(支給額・期間)
- 会社名・発行日・発行担当者の署名または押印
利用例(簡単に)
住宅の賃貸契約、金融機関のローン申請、在留資格の申請、各種手当の受給などで求められます。
注意点
記載内容は正確である必要があります。給与など敏感な事項は記載の可否を申請前に確認してください。発行には本人確認書類や申請書が必要な場合が多いです。
在職証明書が必要となる主なケース
在職証明書が求められる場面を、具体例を交えてわかりやすく説明します。
1. 転職・入社時
採用手続きや入社後の雇用確認で提出を求められます。前職での在籍期間や雇用形態、職務内容を確認するためです。企業によっては在職証明書の原本や会社の押印を指定します。
2. 社会保険・年金の手続き
手続きの際に在職状況や加入実績を証明するために使います。手続き先が求める記載事項(加入期間や被保険者番号など)を事前に確認しましょう。
3. 住宅関連(賃貸・ローン)
賃貸契約や住宅ローン審査で収入や雇用の継続性を示す資料として必要です。特にローンでは給与や雇用形態の明記を求められることがあります。
4. 官公庁・金融機関への提出
行政手続きやカード・ローン申請などで在職確認を行います。提出先ごとに求める項目が異なるため、指定の様式があるか確認してください。
5. 保育士・医療・教育など特定業種の転職
認可保育園や医療機関などでは、専門職の勤務実績や在職状況を細かく求められることがあります。職種に応じた詳細な記載が必要になる場合があります。
提出先によって必要項目や形式が変わります。余裕をもって会社に依頼し、指定事項を確認してから発行を受けてください。
在職証明書への記載項目
在職証明書に記載する項目は、目的に応じて変わりますが、基本的な項目は以下の通りです。
1. 氏名・生年月日・住所
- 証明を受ける本人の氏名(フルネーム)、生年月日、現住所を正確に記載します。本人確認に使います。
2. 入社年月日・雇用開始日
- 実際に勤務を開始した日を記載します。勤続年数を示すために重要です。
3. 雇用形態
- 正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど、現在の雇用形態を明記します。
4. 職種・役職
- 担当業務や職務名、役職(課長、主任など)を記載します。部署名も添えると分かりやすいです。
5. 勤務時間・勤務地
- 勤務時間(所定労働時間やシフトの有無)、主な勤務場所(本社、支店名、住所)を記載します。
6. 給与・年収(必要な場合)
- ローン審査や補助金申請など必要な場合に限り、月給や年収を明示します。金額を載せる際は本人の同意を得てください。
7. 会社名・組織名・所属部署
- 発行元となる会社名、企業の所在地、所属部署名を正確に記載します。
8. 発行日・有効期間
- 証明書の発行日を入れます。用途によっては発行からの日数制限(有効期間)を明記します。
9. 発行者の署名・捺印
- 会社の代表者または担当者の署名・捺印(社判)を付けます。多くの機関で捺印が必要とされます。
10. その他の補足項目(必要に応じて)
- 社員番号、雇用契約期間(有期契約の場合)、就業形態の詳細(フルタイム/パートタイム)、上司名、在職の事実のみを証明する旨の文言、証明の理由(任意)など。
記載時の注意点
– 正確な日付・名称を使い、誤字脱字を避けます。
– 個人情報の取り扱いに注意し、必要以上の情報は掲載しないようにします。
– 提出先の求める項目があるか事前に確認し、必要に応じて追加・省略してください。
在職証明書の発行手続き・流れ
1. 申請前の確認
まず、提出先が求める項目(氏名、雇用形態、在職期間、役職など)と提出期限を確認します。会社で指定の書式があるかも確認してください。
2. 申請方法を選ぶ
窓口、メール、社内申請システム、郵送など会社によって方法が異なります。受付可能な手段と必要書類(本人確認書類や申請書)を人事・総務に問い合わせます。
3. 人事・総務への依頼
必要事項を明記して依頼します。依頼時は提出先名、必要な記載内容、発行日、提出期限を伝えるとスムーズです。代理申請の可否も確認しましょう。
4. 会社による作成・発行
人事が内容を確認し作成します。署名・押印や原本の扱い(原本発行かコピーで良いか)を確認してください。処理期間は数日〜1週間程度が一般的です。
5. 受け取りと提出
窓口受取、郵送、社内回覧など受取方法を選びます。受け取った書類は提出前に記載ミスがないか再確認し、提出先へ期限内に提出してください。
6. 注意点
・有料の場合や発行日指定がある場合があります。・個人情報の取り扱いに注意し、不要な情報は記載しないよう依頼しましょう。
在職証明書の依頼文・申請方法
はじめに
在職証明書の依頼文はメール・郵送ともに基本構成は同じです。作成年月日、宛名、要件、前文、主文、末文、依頼者情報を明確にします。
基本構成(順序)
- 作成年月日
- 宛名(部署名・担当者名)
- 件名/要件(例:「在職証明書発行のお願い」)
- 前文(挨拶と依頼の理由)
- 主文(必要な記載事項・用途・提出期限・受取方法)
- 末文(感謝と連絡先)
- 署名(氏名、所属、電話・メール)
書き方のポイント
- 用途(金融機関、ビザなど)と提出期限を必ず書きます。
- 記載してほしい項目(入社日・職名・雇用形態など)を列挙します。
- 受け取り方法(窓口・郵送・PDF送付)と返信用封筒が必要かも明示します。
例文(メール)
件名:在職証明書発行のお願い
本文:いつもお世話になっております。○○部の山田太郎です。下記理由により在職証明書の発行をお願い申し上げます。用途:住宅ローン申請、記載希望事項:入社日・現職名・雇用形態、提出期限:○月○日、受取方法:郵送(〒…)またはPDF送付。お手数おかけしますが、よろしくお願い致します。
留意点
- 個人情報や期限は正確に。発行手数料や依頼先の担当部署を事前に確認するとスムーズです。
正社員の在職証明書と他雇用形態との違い
概要
正社員と非正規(パート・アルバイト・契約・派遣など)の在職証明書は基本の様式や発行手順は同じです。違いは主に「記載する内容の重点」にあります。企業は雇用形態に関わらず対応するのが一般的です。
記載項目の違い(例)
- 正社員:雇用形態欄に「正社員」と明記。入社日・在籍中の役職・業務内容・雇用期間の有無(無期か有期)を明記します。給与形態(年俸・月給など)を記載する場合もあります。
- パート・アルバイト:雇用形態を明記し、勤務時間・勤務日数・業務内容・時給の有無を詳しく記載します。
- 契約社員:契約期間(開始日・終了日)や更新の有無を明示します。
- 派遣社員:派遣元・派遣先の社名、就業期間、業務内容を併記します。
発行手続きと実務上の注意点
依頼方法や発行部署(人事・総務)は同じです。企業は在職確認を求められれば多くの場合発行しますが、業務委託やフリーランスの場合は在職証明書の発行が難しいことがあります。記載内容に迷ったら依頼時に利用目的を伝えると適切に作成してもらえます。
短い例文
「雇用形態:正社員/入社日:2020年4月1日/役職:課長/主な業務:営業マネジメント」
各雇用形態ごとに必要な情報を明確に伝えると、手続きがスムーズになります。
在職証明書のフォーマット・テンプレート
概要
法的に決まった様式はありません。会社ごとにテンプレートが異なるため、提出先で指定があれば必ず確認してください。多くのサイトで無料テンプレートや記載例が公開されています。
標準的な記載項目(例)
- 会社名・住所・電話番号
- 発行日
- 氏名(フリガナ)・社員番号
- 所属部署・役職
- 在職期間(入社日〜在籍中/退職日)
- 雇用形態・勤務時間(必要に応じ)
- 発行者名・役職・連絡先
- 会社印または署名
記載時の注意点
正確な日付と氏名を使い、提出先の指定(様式、押印、英文)を事前に確認してください。印鑑の代わりに署名や電子署名が認められるかも確認します。個人情報は最小限に留めます。
簡易テンプレート(例)
在職証明書
発行日:YYYY年MM月DD日
氏名:○○ ○○(フリガナ)
所属:△△部 役職:□□
在職期間:YYYY年MM月DD日より在職中
備考:雇用形態(正社員/契約社員等)
発行者:会社名 □□(役職) 署名/印
テンプレートは提出先の要件に合わせて調整してください。
デジタル化・効率化の動向
概要
近年、在職証明書の発行は紙中心からデジタル中心へと移りつつあります。勤怠・人事システムと連携して自動で作成する仕組みや、電子署名を付与してオンラインで受け渡す流れが増えています。
主な取り組みと利点
- 自動発行:人事データと連携し、申請をトリガーにPDFを自動生成します。手作業を減らし発行ミスを防げます。
- 電子署名:真正性を担保でき、郵送不要で処理が速くなります。
- 承認フローの可視化:申請〜承認〜発行の履歴を残し、監査対応が楽になります。
導入時の注意点
- 個人情報の管理を徹底してください。アクセス権や暗号化を必ず設定します。
- 電子署名の形式と相手先の受け取り可否を確認します。すべての受領側が電子証明を受け入れるわけではありません。
実務での導入手順(簡単な流れ)
- 現状の発行プロセスを洗い出す
- 必要項目とテンプレートを定義する
- 人事システム/ワークフローツールと連携する
- テスト発行と承認ルールの確認
- 本番運用と定期的な見直し
今後の見通し
API連携や帳票テンプレートの統一でさらに効率化が進み、事務負担は一層減る見込みです。導入は段階的に進め、セキュリティと受領側の運用を確認して進めてください。


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