はじめに
源泉徴収票の作成は、毎年の給与支払や年末調整、税務申告でとても重要です。本記事は「2025年対応」の源泉徴収票の作り方を、準備から記入手順、注意点までわかりやすく解説します。
この記事の目的
- 源泉徴収票の基本を簡潔に理解していただくこと
- 作成に必要な書類や情報を事前に整える手助けをすること
- 実際の記入手順や記入例で、不安なく作成できるようにすること
対象読者
- 会社の経理・総務担当者
- 個人事業主やフリーランスで支払調書を扱う方
- 初めて源泉徴収票を作成する方
読み進め方の目安
各章で準備するもの・具体的な項目・よくあるミスとその対処法を順に説明します。まずは第2章で源泉徴収票の意味を確認し、順番に進めるとスムーズに作成できます。分からない点があれば、最後のQ&Aもご参照ください。
源泉徴収票とは何か
定義
源泉徴収票は、1年間に支払った給与額や、給与から差し引かれた源泉所得税の額を記載した法定書類です。会社が従業員に交付し、税務署へ提出する義務があります。税金の精算や所得の証明に使う重要な書類です。
主な用途(具体例で説明)
- 年末調整:控除の適用や過不足の確認に使います。
- 確定申告:申告書に源泉徴収税額や支払金額を記載する根拠になります。
- 転職・各種手続き:転職先への提出や、住宅ローン審査での収入証明に使います。
発行者と発行時期
雇用主(会社)が作成・交付します。一般に、年末の精算後や翌年の初めに交付されることが多く、退職時には退職後に交付されます。受け取れない場合はまず会社の総務に問い合わせてください。
記載される主な項目(簡単に)
- 支払金額(年間の給与など)
- 源泉徴収税額(差し引かれた所得税)
- 支払者と受給者の氏名・住所など
保管と注意点
重要書類なので大切に保管してください。紛失した場合は再発行を依頼できます。内容に不明点があるときは、総務担当や税務署に相談してください。
作成前に準備すべき書類と情報
源泉徴収票を作成する前に、必要な書類と情報を揃えておくと作業がスムーズになります。ここでは、必ず確認したい書類とチェックポイントを分かりやすく説明します。
必要な書類・情報
- 賃金台帳または給与支払簿:支払金額、控除項目、支払日を確認します。正確さが最重要です。
- 扶養控除等(異動)申告書:扶養家族の情報が記載されています。変更があれば反映してください。
- 保険料控除申告書:社会保険料や生命保険料の控除額を確認します。控除漏れがないようにします。
- 配偶者特別控除申告書:対象者は配偶者の所得に応じた控除額を確認します。
- 前職の源泉徴収票:年の途中で転職した従業員がいる場合は、前職分の合算が必要です。
- 住宅ローン控除関係書類(該当者のみ):適用を受ける場合に必要です。
確認ポイント
- 金額は賃金台帳と一致しているか
- 各控除が適切に反映されているか
- 住所・氏名・マイナンバーなどの個人情報が正確か
準備のコツ
- 書類はデジタルでまとめると検索が楽になります。
- 不明点は従業員に早めに確認しておくと修正が少なくて済みます。
源泉徴収票の主な記載項目
源泉徴収票には、受給者(従業員や報酬を受ける人)と支払者(会社など)に関する重要な情報が記載されます。ここでは主な項目と、記載の意味や注意点をやさしく説明します。
- 受給者の住所
-
現住所を記載します。郵送や通知で使うため正確に書きます。
-
受給者番号・個人番号(マイナンバー)
-
受給者番号は事業者側で管理します。従業員に交付する分ではマイナンバーを記載しないのが一般的です。
-
役職名・氏名
-
氏名はフルネームで記載します。役職は社員の場合「代表取締役」「部長」などを記載します。
-
支払金額
-
年間の支払額(給与や報酬の合計)。例:年間給与4,500,000円。
-
給与所得控除後の金額
-
給与から所定の控除を差し引いた金額です。税額計算の基礎になります。
-
所得控除の額の合計額
-
社会保険料控除、扶養控除など、合計の控除額を示します。
-
源泉徴収税額
-
その年に会社が差し引いた所得税(源泉徴収)の合計です。
-
控除対象配偶者の有無・控除額
-
配偶者が控除対象かどうか、該当する場合は控除額を記載します。
-
控除対象扶養親族の数・氏名
-
扶養親族の人数と名前を記載します。未成年や同居の高齢者などが該当します。
-
社会保険料等の金額
-
健康保険・厚生年金などの年間支払額を記入します。
-
保険料・住宅借入金等特別控除額
-
生命保険料控除や住宅ローン控除の額を記載します。
-
支払者の会社情報
- 会社名、所在地、連絡先、法人番号などが記載されます。
記載は金額を円単位で丸めることが多く、該当しない項目は空欄にします。分からない項目は給与担当者に確認してください。
源泉徴収票の記入・作成手順
準備
まず賃金台帳、出勤簿、各種保険料の控除記録、扶養控除申告書などを用意します。金額や氏名は原本で確認すると間違いが少なくなります。
手順1:従業員の基本情報を記入
従業員の住所・氏名・生年月日・役職、受給者番号を記入します。例:氏名は戸籍や住民票と同じ表記にすると安全です。
手順2:年間給与と源泉徴収額を算出
賃金台帳や給与明細を合算して年間の支払金額を出します。そこから課税対象となる額を計算し、源泉徴収税額を記入します。給与の内訳(賞与、残業代など)も押さえておくと分かりやすいです。
手順3:扶養親族や配偶者控除の記入
扶養親族の氏名・続柄・年齢、控除対象配偶者の有無を記入します。扶養人数に応じて控除額が変わるため、申告書と照合してください。
手順4:社会保険料・保険料控除の記入
健康保険、厚生年金、雇用保険などの年間支払額を記入します。生命保険料控除や地震保険料控除がある場合は、その合計も忘れずに。
手順5:支払者(会社)の情報を記入
会社の法人番号・住所・名称・電話番号を記入します。裏表や控えの保存場所も決めておくと後で便利です。
手順6:マイナンバーの記載(税務署提出用)
税務署に提出する分にはマイナンバーの記載が必要です。取り扱いは慎重にし、届出や保管は法令に従ってください。
最後に注意点
各欄は読みやすく正確に記入し、誤りがあれば速やかに訂正印を押してください。数字の集計ミス防止のため、二人以上で確認すると安心です。
記入例
概要
東京都在住、年収470万円、配偶者あり(控除対象)、扶養親族1人を想定した記入例です。支払金額や各控除額を具体的に示します。
記入例(主要項目)
- 支払金額:4,700,000円
- 給与所得控除後の金額:2,760,000円
- 所得控除の額合計:1,960,000円
- 控除対象配偶者の有無:有
- 扶養親族の数:1人
- 課税される所得金額:800,000円(2,760,000 − 1,960,000)
- 源泉徴収税額:40,840円(下記計算参照)
源泉徴収税額の計算(簡易)
- 課税される所得金額を確認:800,000円
- 所得税の税率を適用:課税所得が1,950,000円以下のため税率5% → 800,000 × 0.05 = 40,000円
- 復興特別所得税を加算:所得税の2.1% → 40,000 × 0.021 = 840円
- 合計(源泉徴収税額)= 40,000 + 840 = 40,840円
※実際の源泉徴収額は、給与支払時の月別計算や年末調整によって差額が生じます。上記は年次で見た簡易計算例です。
メモ(記載時のポイント)
- 各欄には上記の金額を正確に記入してください。
- 控除対象配偶者や扶養親族の欄は「有・無」や人数を明確にします。
- 計算根拠は控えとして保存しておくと、後の問い合わせに対応しやすくなります。
作成時の注意点・よくあるミス
源泉徴収票を作成するときは、記入漏れや誤記入を防ぐことが大切です。以下の点に注意して作業してください。
-
必須項目の確認:氏名・住所・給与支払金額・源泉徴収税額・支払年月日など必須項目が空欄になっていないか確認します。例:支払金額の桁数が抜けていると合計が合いません。
-
金額と内訳の整合性:給与台帳や振込明細と照合して、社会保険料や各種控除額が正しく反映されているか確認します。丸め誤差や小数点処理で数円ずれることがあるので注意します。
-
種類の誤判定:給与・賞与・退職金などの区分を誤ると税計算が変わります。支払区分を明確にしてください。
-
マイナンバーの扱い:従業員に交付する源泉徴収票(交付用)にはマイナンバーの記載は不要です。事業主が保管する控えには必要になる場合があるので社内ルールに従ってください。
-
法令・様式の確認:控除額や様式は年度によって変更されます。国税庁の最新様式・最新情報を必ず確認し、古い様式で作成しないようにします。
-
チェック体制の整備:作成後は別の担当者が突合せするか、チェックリストで確認します。電子申告やソフト利用時も出力結果を目で確認してください。
よくあるミスは「控除額の入力ミス」「支払区分の誤り」「合計と内訳の不一致」「交付先にマイナンバーを書いてしまう」などです。念入りに照合すればミスを減らせます。不安な場合は税理士や社労士に相談してください。
簡単に源泉徴収票を作成する方法
■概要
源泉徴収票は公式フォーマットや表計算ソフト、給与計算ソフトを使うと効率的に作れます。最近はクラウド型サービスで「ボタン一つ」自動作成も可能です。ここでは用途別の方法と簡単な手順を分かりやすく説明します。
1)国税庁の公式フォーマットを使う
国税庁の様式は法定項目が揃っているため安心です。ダウンロードして印刷・手書きまたはPDF編集で記入します。少人数で年に1回だけ作る場合に向きます。
2)Excelテンプレートを使う
テンプレートは自由に編集でき、合計や控除額の計算を自動化できます。関数で合計欄を設定しておけば入力ミスを減らせます。
3)給与計算ソフトを使う
既に給与計算ソフトを導入している場合、従業員情報と支払額を連携して簡単に作成できます。給与明細と照合できるためミス防止に役立ちます。
4)クラウド型サービスを使う
クラウド型なら最新版に自動更新され、複数人分をまとめて処理できます。ボタン操作で源泉徴収票をPDF出力できるサービスが増えています。
■簡単な作成手順(共通)
1. 支払金額・控除情報を確認
2. フォーマットに入力(または取り込み)
3. 合計・控除を再確認
4. 保存・出力・従業員へ交付
■短い注意点
– データのバックアップを必ず取ってください。
– 住所や氏名の誤字、合計額の桁落ちに注意してください。
以上の方法から、自社の規模と運用に合うものを選ぶと簡単に作成できます。
よくある質問(Q&A)
Q1: 源泉徴収票にマイナンバーは必要ですか?
A1: 税務署へ提出する書類にはマイナンバーの記載が必要です。一方、従業員へ交付する分には記載不要です。従業員交付分は氏名や金額のみで問題ありません。
Q2: マイナンバーをどう扱えばいいですか?
A2: 提出用に記載する際は取り扱いに注意してください。紙で保管する場合は施錠、電子データはパスワードや暗号化で保護しましょう。アクセスできる人を限定してください。
Q3: 手書きでも良いですか?
A3: 手書きでも受け付けられますが、修正や保存管理が面倒になりやすいです。パソコンで作成すると、誤記の修正やファイル管理、バックアップが容易になります。
Q4: マイナンバーが分からない従業員がいる場合は?
A4: 税務署提出用に間に合わないときは、本人に確認してもらうか、事前に連絡を取り取得してください。取得が難しい場合は税務署に相談するほうが安心です。
Q5: 従業員交付分にマイナンバーを記載してもいいですか?
A5: 原則不要です。記載する場合は情報漏えいのリスクが増しますので、特段の理由がない限り空欄で交付することをおすすめします。
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