就業規則におけるハラスメント対策と企業の義務とは

目次

はじめに

目的

本記事は、企業が就業規則にハラスメント防止の規定を設ける際の基礎知識をわかりやすく解説します。義務や具体例、実務上のポイントまで順を追って説明しますので、初めて対応する方にも読みやすい構成です。

対象となるハラスメントの例

  • パワーハラスメント:業務上の地位を利用した暴言や過度な業務押し付けなど
  • セクシュアルハラスメント:性的な言動や不快感を与える行為
  • その他:妊娠・育児、障がい、国籍に基づく差別的扱いなど
    具体例を交えて説明しますので、自社に当てはめて検討できます。

本記事の構成と読み方

第2章以降で、法的背景、就業規則に盛り込むべきポイント、具体的な条文例、整備時の注意点や使えるテンプレートを順に紹介します。まずは全体像を把握したうえで、該当箇所を参照してください。

本稿の使い方

実務での導入や見直しの指針としてご活用ください。必要に応じて、専門家や労務担当者と相談しながら進めると安心です。

就業規則にハラスメント防止規定が必要な理由

法律的な背景

近年、事業主には職場でのハラスメント防止措置が求められます。特にパワーハラスメント防止は大企業で2020年6月1日から、中小企業でも2022年4月1日から義務化されました。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法でも対応が必要です。

企業にとっての意義

就業規則で「ハラスメントを許さない」と明示すると、社内の方針が共有されます。被害者は相談の第一歩を踏み出しやすくなり、上司も行動を見直します。結果として早期に問題を発見し、長期化や訴訟のリスクを下げられます。

規定で明文化すべき内容(実務例)

  • ハラスメントの定義と具体例(例:度を超した叱責、性的な発言、差別的扱い)
  • 相談窓口と連絡方法
  • 調査の流れと対応期間のめやす
  • 処分の基準や再発防止策
  • 相談者保護(報復禁止、秘密保持)

日常運営での効果

規定があると対応が迅速かつ公平になります。研修や評価制度と連携すれば抑止力が高まり、従業員の安心感も向上します。企業の信頼性維持と人材流出防止にもつながります。

法律で定められた企業の義務

方針の明確化と周知・啓発

企業はハラスメントを許さない方針を明確に示し、全社員に周知する必要があります。具体例として就業規則や社内メール、研修での説明を行い、誰がどのような行為を禁止するかを示します。

相談窓口の設置と対応体制

社内外の相談窓口を設け、相談者の秘密を守る体制を整えます。相談受付は複数ルート(電話、メール、対面)を用意し、報復を防ぐ仕組みも必要です。

事実確認と迅速・適切な対応

相談を受けたら速やかに事実関係を確認します。聞き取りや記録を行い、公平な調査で事実を確定し、必要に応じて配置転換や出勤調整などの暫定措置を講じます。

行為者への処分と被害者のケア

事実確認の後は適切な懲戒処分を行います。同時に被害者への医療・心理的支援、休職・時短などの配慮を行い、職場復帰を支援します。

再発防止策の実施

再発を防ぐため、研修の継続、管理職の教育、職場環境の見直しやモニタリングを行います。効果を確認し、必要に応じて対策を改善します。

就業規則で規定すべきハラスメントの種類

主にパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、SOGIハラスメントを明記します。近年の実務ではモラルハラスメントや顧客からのハラスメント(カスタマーハラスメント)への対応も盛り込むことが望ましいです。

(具体例)パワハラ:上司が業務と無関係に繰り返し罵倒する。セクハラ:性的な冗談や身体接触。マタハラ:妊娠を理由に不利益扱い。SOGIハラ:性的指向や性自認への差別的発言。

就業規則におけるハラスメント防止規定のポイント

定義を明確にする

各種ハラスメントの定義を就業規則で明示します。たとえばパワハラは「職務上の地位や人間関係の優位性を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害する行為」と定義します。類型(身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)も示すと分かりやすくなります。

禁止される具体的行為例

具体例を列挙して、判断をしやすくします。例:
– 殴る・突き飛ばすなどの身体的攻撃
– 大声での侮辱や人格否定の発言
– 性的な言動や不適切な接触
– 業務上の不当な差別・配置転換・減給等の不利益扱い
– 在宅勤務やオンライン会議での誹謗中傷や不適切な画面共有
– 取引先や顧客に対するハラスメント行為

適用範囲を広く定める

職場内だけでなく、出張先、顧客先、オンライン上、業務上の飲食の場など、実質的に職場とみなされる場所・時間を適用範囲に含めます。また、社外の関係者に対するハラスメントも禁止する旨を明記します。

相談・通報窓口と保護措置

複数の相談窓口(人事、直属の上司、外部相談窓口)を用意し、匿名相談や秘密保持の仕組み、通報者や被害者への不利益取扱い禁止を明記します。相談時の一時的配置転換や休職対応などの保護措置も記載します。

調査・対応の手順

通報後の初期対応、事実確認の流れ、関係者の聴取、調査期間の目安と報告方法、客観的な判断基準、必要に応じた懲戒・再発防止措置を明記します。公平性と迅速な対応を重視します。

周知と教育

就業規則配布、入社時研修、定期的な啓発研修やeラーニングで周知し、管理職には特別な研修を義務付けると効果的です。

ハラスメント防止規定の記載例(モデル条文)

目的

本規定は、職場におけるハラスメントの防止および健全な就業環境の確保を目的とします。すべての従業員が安心して働ける職場を実現します。

定義(例)

  • パワーハラスメント:地位や人間関係を背景に、業務の範囲を超えた意図的な嫌がらせや威圧的な言動。例えば、暴言、執拗な叱責、業務上不必要な過度な負担の押し付け。
  • セクシュアルハラスメント:性的な言動や行為により、職場環境を害する行為。性的な冗談や不適切な身体接触など。
  • 妊娠・出産等に関するハラスメント:妊娠・出産・育児を理由に不利益な扱いをする行為。採用・配置・昇進での不当な差別等。

禁止事項(例)

「すべての従業員は、他の従業員を業務遂行上の対等なパートナーとして認め、ハラスメントとなる行為を行ってはなりません。」
具体例:暴言、陰口や無視、嫌がらせのメール、性的な言動、根拠のない業務妨害指示。

相談・報告の義務(例)

従業員はハラスメントを受けた、または目撃した場合、速やかに会社の相談窓口へ報告または相談するものとします。相談者の秘密は最大限保護します。

調査と措置(例)

会社は報告を受けたら速やかに事実関係を調査し、必要な是正措置(指導、異動、懲戒等)を行います。再発防止のために職場の改善策を講じます。

黙認の禁止・不利益取扱いの禁止(例)

ハラスメントを黙認することを禁じます。報告・相談を行った者に対する解雇・降格・不利益な扱いを禁止します。

周知・教育(例)

本規定は就業規則に明記し、全従業員に周知します。定期的に研修を実施し、相談窓口の周知を図ります。

企業が就業規則を整備・見直す際の注意点

法令・指針の確認

法改正や厚生労働省の指針を定期的に確認します。年に一度は社内でチェック会議を開き、必要があれば素早く改定する体制を作りましょう。

周知と閲覧の徹底

就業規則を従業員が常時見られる場所(イントラ、掲示板、備え付けの冊子)に置きます。改定したら全員に周知し、周知方法(説明会、メール、紙配布)を記録します。周知が不十分だと規則の効力が制限される場合があります。

相談窓口の明確化

誰が担当するか、相談方法(対面、メール、専用フォーム、外部窓口)と対応時間を明記します。担当者名だけでなく代理担当や外部専門家の連絡先も示すと安心感が増します。

運用・記録の管理

相談受付から調査、対応までの手順と想定期間を示し、記録を残します。調査時は公平性を保ち、報復禁止の措置も明確にします。個人情報は慎重に扱い、必要な範囲で共有します。

従業員が安心する工夫

匿名相談や外部窓口の併用、相談結果のフィードバック方法を用意します。担当者には研修を行い、対応の質を高めます。

見直しの実務チェックリスト(例)

  • 法令確認:最新の法改正チェック
  • 周知方法:実施と記録
  • 窓口:担当・代理・外部の明記
  • 記録:受付〜対応の保存
  • 研修:対応者の教育

これらを定期的に点検し、実務で運用できる形にしておくことが重要です。

実務で役立つサンプル・テンプレートの活用

入手先と種類

厚生労働省や都道府県の労働局、業界団体、社会保険労務士などがモデル規程やテンプレートを公開しています。まずは公式のモデルを基礎にすると安心です。

テンプレートの選び方

企業の規模や業種、雇用形態に合うものを選びます。汎用版は使いやすい反面、具体性に欠けるため、自社の実情に合うかを必ず確認してください。

カスタマイズの手順(実務向け)

1) 現状と過去事例を整理する(相談件数、発生場所、関係者)
2) 相談窓口や対応フローを具体化する(窓口名・連絡先・担当者)
3) 事実確認の方法、処分の基準、再発防止策を明記する
4) 記録様式(報告書・ヒアリングシート)を作る
5) 法務や社労士にチェックしてもらう

具体例(すぐ使える工夫)

  • 相談受付フォームの項目例(日時・場所・状況・証人)
  • 対応フロー図(連絡→初期対応→事実確認→報告)
  • 記録テンプレート(時系列、証拠添付欄)

運用のコツ

試験運用で運用上の不具合を洗い出し、定期的に見直します。職場への周知と研修をセットで行い、匿名相談や第三者委員の活用も検討してください。

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