はじめに
目的
この章では、本書の目的と全体の扱い方を分かりやすく示します。電話で即日退職を伝える場面に備え、マナーや具体的な伝え方、法的・実務的な注意点を整理します。
この文書で扱う内容
- 電話での退職連絡が法的に有効となる場合の前提
- 伝えるタイミングと上司への連絡方法
- 退職理由の伝え方と退職届の提出方法
- トラブルを避けるための実務的注意点
- 派遣・アルバイトなど雇用形態ごとの違い
電話連絡に関する前提
電話での連絡は状況によって有効です。口頭だけで終わらせず、できる限り文書(メールや退職届)での確認を併用してください。急な退職では感情が先立ちやすいので、落ち着いて簡潔に伝える準備をしましょう。
読者の想定
会社員、派遣、アルバイトなど雇用形態を問わず、即日退職を検討している方を想定しています。以降の章で具体的な例文や注意点を丁寧に解説します。
電話で即日退職を伝えることは可能か
電話で退職の意思を伝えることは、法的には有効とされています。相手に「退職の意思」が明確に伝われば、口頭でも成立する場合が多いです。ただし、会社が就業規則で書面提出を定めている場合は、書面の提出を求められることがあります。
会社の規則と手続き
会社ごとに退職手続きは異なります。まず就業規則や雇用契約書を確認してください。退職日や引継ぎ、必要書類について指定があれば従う必要があります。電話で伝える場合でも、後から書面で提出するかどうかを事前に確認しておくと安心です。
派遣社員・アルバイトの場合
派遣社員やアルバイトは、電話のみで退職を受け付けるケースが多く見られます。派遣社員は派遣元(派遣会社)へ先に連絡する点に注意してください。派遣先へ直接伝えると連絡の行き違いが起きることがあります。
実務的な注意点
電話で伝える際は、日時と相手の名前を記録しておきます。可能であれば退職の理由と希望する最終出勤日をはっきり伝え、書面やメールでフォローする旨を伝えるとスムーズです。したがって、電話だけで終わらせず記録を残すことをおすすめします。
即日退職を電話で伝える際のマナー・注意点
1) まずは誰に連絡するか
直属の上司に電話するのが基本です。直属の上司につながらない場合は、上司の代理に連絡するか、総務や人事に案内を受けてから伝えます。伝える順番を守ることで誤解を避けられます。
2) 電話をかけるタイミング
始業前30分から始業直後の落ち着いた時間帯が望ましいです。業務が立て込んでいる時間帯や会議中は避けます。電話に出られない場合は、留守番電話に要点を残し、折り返しの時間を指定すると親切です。
3) 話し方・トーン
短く明確に伝えます。落ち着いた声で、乱暴な言い方や感情的な表現は控えます。退職理由は簡潔に述べ、詳細は必要最低限にとどめます。
4) 伝える内容の注意点
文句や長い愚痴、言い訳を避けます。会社への感謝と直接会えないことへのお詫びを一言添えると印象がよくなります。具体的な退職日や残務対応については、電話で可能な範囲だけ伝え、詳細はメールや書面で続ける旨を伝えます。
5) 記録を残す
会話の要点をメモし、できれば日時を記録します。録音は相手の同意が望ましいですが、トラブル防止の観点から録音を検討する人もいます。
6) フォローの方法
電話後に退職の意志を確認するメールを送り、やり取りの履歴を残します。引き継ぎの方法や最終出社の手続きなど、次の連絡手順を明確にしておきます。
即日退職を電話で伝える具体的な言い方・例文
基本の構成
電話では「①お時間をいただく挨拶→②退職の意思と日付→③簡潔な理由→④今後の対応(書面など)→⑤締めの挨拶」の順に伝えます。落ち着いて、要点を短く伝えてください。
正社員向け例文
例1: お忙しいところ恐縮ですが、少しお時間いただけますか。突然で申し訳ありませんが、一身上の都合により本日付で退職させていただきたくご連絡しました。必要な手続きは指示に従います。
例2: 本日付で退職を希望いたします。家庭の事情のため急な申し出となり申し訳ありません。手続きや引き継ぎは別途指示を仰ぎます。
アルバイト向け例文
例1: 急な連絡で失礼します。本日をもって退職させていただきたいです。体調の都合で続けられなくなりました。ご迷惑をおかけしてすみません。
例2: お時間よろしいでしょうか。本日付で退職をお願いしたく電話しました。学業との両立が難しくなったためです。必要な連絡は対応します。
退職理由の伝え方
理由は簡潔に「家庭の事情」「体調不良」「学業」などで十分です。詳しい説明を求められた場合のみ、差し支えない範囲で答えてください。
受け答えのポイント
相手の指示には従う姿勢を示し、書面や手続きの案内はメモします。担当者が不在なら折返しの時間を伝えるか、折返しをお願いしてください。録音は相手に断るかメモで代えます。
即日退職時の法的・実務的注意点
法的なポイント
正社員は原則として退職の2週間前に予告する必要があります。ただし、会社が同意すれば即日退職が可能です。賃金不払い、長時間のパワハラなどやむをえない事情がある場合は、直ちに退職できる場合があります。まず就業規則や雇用契約を確認してください。
給与・退職金などの手続き
- 未払いの給与は請求できます。最終出勤日で締めるか、給与計算の締め日により支払日が変わります。例:「15日締め・当月末払い」など。
- 退職金の規定があるか就業規則で確認しましょう。規定がなければ支給されないことがあります。
- 有給休暇は原則として買い取りされませんが、消化の交渉は可能です。
- 健康保険・厚生年金は資格喪失手続きが発生します。国民健康保険や任意継続の手続きが必要になる場合があります。
- 離職票や源泉徴収票は退職後に受け取る書類です。発行時期を会社に確認してください。
証拠の保存と連絡方法
電話で退職を伝える際は、通話記録や日時・相手名をメモします。可能なら退職届をメールで送付し、受領確認を得ておくと安心です。
相談先と対応の流れ
問題があると感じたら、まず社内で話し合いを試みつつ、効果がない場合は労働基準監督署や各地の労働相談窓口に相談してください。必要なら弁護士や労働組合に相談すると解決が早まります。
即日退職後の注意点(実務)
退職後の手続きは早めに行ってください。賃金や書類の未着に備え、連絡先を残し、やり取りは記録しておきましょう。派遣やアルバイトの場合は派遣元・雇用主への連絡が必須です。
トラブル防止のポイント
電話の後は書面で意思を残す
電話で退職を伝えたら、すぐに退職届または退職願をメールや書面で提出しましょう。件名や書面冒頭に「退職の意志」「退職希望日」を明記すると誤解が減ります。送信日時や控えを保存してください。受領確認を依頼すると確実です。
言葉遣いと表現をはっきりと
感謝やお詫びの言葉を忘れずに伝えてください。同時に、退職の意思は曖昧にしないことが重要です。「退職します」「本日付で退職させていただきます」など明確な表現を使ってください。あいまいな言い方は余計な引き止めや齟齬を生みます。
引き継ぎと退職日についてのすり合わせ
引き継ぎ内容を箇条書きで示し、担当者や期限を明記しましょう。可能なら引き継ぎ資料を作成して添付します。会社側と退職日や最終出社日の認識を合わせ、合意が取れたら書面で確認を取りましょう。
記録をこまめに残す
電話の日時、相手の氏名、話した内容はメモに残します。メールの送受信や書面はスクリーンショットやコピーで保存してください。トラブルが起きたときの重要な証拠になります。
引き止めやトラブルが起きたときの対処
感情的にならず冷静に対応しましょう。強く引き止められた場合は、まずは書面で意思を再確認し、引き継ぎの提案をすることで話を前向きに進めます。もし脅しや不当な扱いを受けたら、労働相談窓口や専門家に相談してください。
給与・有給・書類の確認
最終給与や残りの有給消化、離職票や保険関連の書類の手配時期を確認し、回答は書面で受け取るようにしましょう。金銭や手続きに関する認識違いを避けるためです。
派遣・バイトなど雇用形態ごとの注意点
派遣社員
・連絡先:まず派遣元(紹介元)に必ず連絡します。派遣先に直接伝えると契約違反や伝達漏れの原因になります。
・契約確認:派遣契約書に退職ルールや通知期間があるか確認します。即日退職でも契約に従う必要があります。
・証拠を残す:電話後にメールやLINEで「本日付で退職の意思を伝えました」と送って記録を残すと安心です。
アルバイト・パート
・連絡先:店長やシフト責任者に直接電話します。可能なら出勤前に伝え、迷惑を最小限にします。
・書面:余裕があれば退職届を提出します。即日で出せない場合はメールや写真で代替します。
・引き継ぎ:シフトや仕事の引き継ぎ方法を簡潔に伝え、勤務先の混乱を減らします。
契約社員・短期契約
・契約内容優先:契約期間中の退職条件を確認します。期間満了前の辞職は違約金や手続きが発生することがあります。
共通の実務ポイント
・給与や未払い残業、有給の精算方法を確認します。
・即日退職は相手の理解を得にくいため、記録を残し柔らかい言葉で伝えます。
・不安がある場合は労働相談窓口や労働組合に相談してください。


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