損害賠償でアルバイトが知るべき重要ポイントとは何か？

2025 11/05

はじめに

この資料の目的

本資料は、アルバイトが損害賠償責任を問われる可能性について、分かりやすく整理することを目的としています。無断欠勤や勤務中のミス、店の備品を壊すなど、現場で起こりやすい具体例を通して、リスクの種類と対処法を丁寧に説明します。

想定する読者

アルバイトをしている方
アルバイトを雇う立場の方（店長・経営者）
家族や支援者で、対応を一緒に考えたい方
誰でも読みやすい言葉で書いていますので、法律の専門知識は不要です。

本書で扱うこと

今後の章では、どんな場合に賠償責任が生じるか、法律上の条件、実際の請求リスク、交通事故や第三者の関与、請求を受けた時の具体的な対応策、採用辞退や退職時のトラブルまで幅広く解説します。具体例を交えて、日常で使える対応のコツも紹介します。

使い方と注意点

本資料は一般的な解説を目的としています。個別のトラブルや法的判断が必要な場合は、弁護士や労務の専門家に相談してください。まずは落ち着いて状況を整理することが何より重要です。

アルバイトが損害賠償を負う主なケース

概要

アルバイトでも、場合によっては損害賠償を請求されることがあります。実際に請求まで至るケースは少ないものの、故意や重大な過失があったと認められると責任を負う可能性が高まります。

1 無断欠勤・突然の退職（いわゆる「ばっくれ」）

無断欠勤や連絡なしの退職は、店側に代替の人員手配や営業時間短縮などの損害を与えます。例えば、シフト直前に来られず、従業員を急遽残業させたために発生した割増賃金や、売上減少の具体的な金額を根拠に請求されることがあります。ただし、単なる迷惑行為だけでは損害の裏付けが難しく、請求が認められにくい点に注意してください。

2 勤務中のミス・トラブル

商品の破損、現金の紛失、顧客への損害（飲食店での誤配やケガなど）が該当します。軽微なミスは会社が負担することが多いですが、レジから現金を持ち出したり、注意義務を著しく怠って大きな損害を招いた場合は賠償を求められることがあります。

3 故意・重大な過失がある場合

故意に損害を与えた場合や、通常期待される注意を大きく欠いた場合（重大な過失）は、賠償責任が認められやすいです。例として、備品を故意に壊す、酒を提供して泥酔客に危害を与えるなどがあります。

実際の請求が少ない理由と対処の基本

請求を成立させるには損害の具体的な金額や因果関係の立証が必要で、これが難しいため実際の請求は少なめです。求められた場合は、まず冷静に事実を確認し、証拠（シフト表、連絡記録、被害状況の写真など）を保存してください。必要なら労働相談窓口や弁護士に相談し、自己負担に応じるべきか交渉するかを判断しましょう。

損害賠償請求が成立するための条件と法的根拠

1. 成立の三要件

損害賠償請求が認められるには、次の三つが必要です。
– （1）違法な行為または契約違反があること
– （2）雇用主に実際の損害が生じていること
– （3）行為と損害に因果関係があること
これらがそろって初めて請求が成立します。

2. 民法の根拠

債務不履行（民法415条）: 労働契約上の義務を果たさない場合に適用されます。例：無断欠勤でシフトが埋まらず店舗が損失を受けた場合。
不法行為（民法709条）: 故意や過失による違法な行為で第三者や雇用主に損害を与えた場合に適用されます。例：勤務中の重大なミスで商品を壊した場合。

3. 損害と範囲

損害は実損（修理費、代替人件費など）や逸失利益（本来得られたはずの利益）が含まれます。雇用主は合理的な方法で被害を最小限にする義務があり、過大な請求は認められにくいです。

4. 因果関係と立証

雇用主が「行為→損害」の因果関係を示す責任を負います。領収書やシフト表、目撃証言など具体的な証拠で示す必要があります。アルバイト側は反証として状況の説明や不可抗力を示すことができます。

5. 故意・過失の程度と賠償額

故意や重大な過失が認められると賠償額は高くなります。一方、初回の軽微なミスや指導不足が原因の場合、全額賠償は否定されることが多いです。

6. 実務上の注意点

まず雇用主は損害の証拠を整理し、過失の程度や代替措置の有無を検討します。アルバイトは誠実に事情を説明し、必要なら労働相談や弁護士に相談してください。

実際のリスクと現実的な対応

概要

アルバイト1人の離脱や軽いミスで損害賠償が発生することはまれです。ただし、重大な損害、繰り返しの問題行動、故意や重大な過失があると請求される可能性が高まります。ここでは実例と現実的な対処法を分かりやすく説明します。

リスクの具体例

商品の誤出荷で大口取引先に損害を与えた場合
店内での不注意で顧客が怪我をした場合
故意の窃盗や情報漏えいで会社に大きな損害が出た場合
こうしたケースは金額や継続性で重大性を判断されます。

請求されやすいケースの特徴

単発ではなく繰り返し問題がある
指導や注意を受けても改善しない
故意や重大な注意義務違反が認められる
事業者は損害と行為の因果関係を示す必要があります。

事前の現実的対策

就業規則や業務マニュアルを整備する
教育とチェックリストでミスを減らす
業務上の損害に備えて保険に加入する
重要業務は複数人で確認する仕組みを作る

事後の対応（アルバイト本人と事業者双方）

まず事実関係を速やかに記録する（日時、状況、証拠写真など）
金額や因果関係を冷静に検証する
不当な請求に対しては労働基準監督署や弁護士に相談する
示談交渉では過失の程度や就業規則、保険の有無で負担が変わる

相談先と流れの目安

店長や管理者に速やかに報告
事実確認と証拠保存
金額提示や示談の検討
解決が難しい場合は弁護士相談や労働基準監督署へ

丁寧な記録と早めの相談で不必要なトラブルを避けやすくなります。

交通事故や第三者による損害とアルバイトの損害賠償

交通事故での休業損害

アルバイトが交通事故でケガをして働けなくなった場合、加害者（またはその保険会社）に対して休業損害を請求できます。算定には事故前の収入を示す書類が必要です。具体的には給与明細、源泉徴収票、確定申告書などと、休めた日を裏付けるシフト表や出勤簿、医師の診断書をそろえます。保険会社はこれらを基に日額を算出し、休んだ日数分を支払います。

第三者による損害と対応

職場で第三者（客や通行人など）によって損害を受けた場合も、相手やその保険に損害賠償を請求できます。被害が故意・重大な過失を伴う場合は刑事手続き（被害届や告訴）につながることがあります。闇バイトや違法行為に関与して起きた損害は、民事の賠償責任に加え刑事責任が問われる点に注意してください。

実務上のポイント

証拠を早めに集めることが重要です。給与やシフトは保存しておき、事故直後は医師の診断書を受け取り、必要なら警察や保険会社に連絡します。勤務中や通勤中の事故は労災の対象になる場合があり、労災と民事の両方での手続きを検討します。会社と連絡を取り、必要書類を確認して進めると手続きがスムーズです。

損害賠償請求を受けた場合の対処法

1) まずは請求内容を冷静に確認します

請求書や連絡の文面を受け取ったら、請求者・金額・理由・期日を確認します。口頭だけならまず書面での提示を求めましょう。

2) 証拠を速やかに保存します

事故やトラブルの当日の写真、タイムカード、レシート、メールやメッセージの履歴、目撃者の氏名・連絡先を保存します。店舗の防犯カメラも重要です。

3) 支払いや謝罪は安易にしない

根拠が不明な高額請求には応じず、まずは支払い・示談に応じないでください。支払いは事実上の認めたことになり得ます。

4) 専門家に相談する

請求が妥当か判断できない場合は弁護士に相談します。雇用関係や労働条件が絡む場合は労働基準監督署に相談するのも有効です。無料相談窓口や法テラスを利用する手もあります。

5) 実務的な対応

連絡はできるだけ書面で行い、やり取りの記録を残します。個人賠償保険や勤務先の保険が使えるか確認し、早めに専門家へ相談して対応方針を決めましょう。

採用辞退や退職時の損害賠償

採用辞退（内定辞退）は基本的に損害賠償の対象にならない

採用辞退は、雇用契約が成立する前の行為が多く、原則として本人の自由です。電話やメールで辞退を伝えれば契約は結ばれません。企業が損害賠償を求めるケースは例外的です。

損害賠償が認められる可能性がある場面

既に雇用契約が成立している場合：入社日を過ぎて無断欠勤や一方的に辞めた場合、契約違反として損害賠償を請求されることがあります。
企業が辞退前に具体的な費用負担をした場合：転居費用や特別な研修費など、辞退で直接失われる合理的な費用は請求対象になり得ます。ただし、その費用が妥当かどうかが問題になります。
虚偽の申告や不法行為がある場合：経歴詐称などで企業に損害が出たときは賠償対象になり得ます。

実務上のポイント（求職者向け）

内定を受ける前に条件をよく確認し、辞退の意思は速やかに伝えてください。
書面（メール）でやり取りを残すとトラブル予防になります。

実務上のポイント（企業向け）

入社前の費用負担は契約書や合意で明確にしておくとよいです。
実際に損害賠償を求める場合は、支出の根拠や金額の合理性を示す必要があります。

相談先

労働問題に詳しい労働相談窓口や弁護士に相談すると、具体的な判断や対応が分かります。

まとめ

アルバイトでも損害賠償のリスクはゼロではありませんが、賠償責任が生じるのは限定的なケースに限られます。ここでは最も大切なポイントと、万が一請求を受けたときの実務的な対応を分かりやすくまとめます。

主な要点
故意や重大な過失がない限り、アルバイトが全額を負うことは稀です。多くは雇用者や保険で対応されます。例：店の備品を通常業務で壊した場合、簡単な過失なら本人負担になりにくいです。
業務外の事故や第三者による被害は、個人の責任になることがあります。例：勤務時間外に店の備品を持ち出して壊した場合。
請求を受けたときの具体的な手順
落ち着いて請求内容を文書で受け取る。口頭だけで物事を決めない。
現場写真や報告書、シフト表など証拠を集める。証拠が重要です。
まずは雇用主に報告して対応を相談する。店側の保険や管理責任の有無を確認します。
不当だと感じたら、労働相談窓口や法律相談で助言を受ける。早めの相談が有利です。
絶対に自分で勝手に全額を支払う旨の念書にサインしない。
よくある誤解
「アルバイト＝無条件で自己負担」は誤りです。事情と過失程度で判断されます。

今後のブログでは、実際の相談事例やQ&A形式で具体例を紹介すると読者の理解が深まります。気になる点があればご相談ください。