はじめに
目的
本ドキュメントは「損害賠償 請求方法」について、実務で役立つ情報を分かりやすく整理したものです。検索上位の記事や実務のポイントを参考にし、個人や企業が自分で請求を進める際の手順や注意点を丁寧に解説します。
誰のための文書か
- これから損害賠償請求を検討する個人や中小企業
- 弁護士に相談する前に基礎知識を整理したい方
具体例を交えて実務で使える知識を優先して記載します。
このドキュメントの構成と使い方
全7章で、基本概念、成立要件、全体の流れ、証拠収集、損害額の算定、任意請求と交渉を順に説明します。章ごとに読み進めると実務で必要な準備と対応が分かります。場面に応じて証拠や算定方法の章を参照してください。
注意事項（法律相談との違い）
本稿は一般的な解説であり、個別の事件に対する法的助言を提供するものではありません。複雑なケースや早急な対応が必要な場合は、専門の法律家に相談してください。
損害賠償請求とは何か？基本概念を押さえる
定義
損害賠償請求とは、他人の違法な行為や契約違反などで被った損害について、加害者にその填補（補償）を求める手続き全般を指します。被害者が受けた損害を金銭で回復することが目的です。
対象となる主なケース（具体例）
- 不法行為：交通事故、医療事故、暴行など
- 契約違反：売買契約で商品が届かない、工事が仕様どおりでない
損害の種類
- 財産的損害：修理費、治療費、休業損害（働けなかった分の収入）など
- 精神的損害：慰謝料など、精神的苦痛に対する賠償
請求のために押さえるべきポイント
- 法的根拠の確認（不法行為か契約違反か）
- 損害額の算定（領収書や勤務記録で裏付け）
- 証拠の収集（写真、診断書、契約書、やり取りの記録）
簡単な流れ（全体像）
まず事実関係と法的根拠を整理し、損害額と証拠を揃えます。次に相手方へ請求や交渉を行い、合意が得られなければ訴訟に進むことになります。必要に応じて弁護士に相談すると手続きがスムーズになります。
損害賠償請求が成立するための基本要件
1. 違法行為または契約違反の存在
損害賠償を請求するには、まず法律に反する行為（不法行為）か契約で定めた約束が守られなかったことが必要です。例えば、交通事故では信号無視が違法行為、納期を守らない発注先は契約違反になります。
2. 損害の発生
実際に損害が生じていることを示します。治療費や修理代、休業損失などが具体的な例です。評価しにくい精神的苦痛も場合によって認められます。
3. 因果関係
相手の行為と損害の間に直接のつながりが必要です。相手の行為がなければ損害は起きなかったと説明できることが求められます。証拠として写真や診断書、納品記録などを用います。
4. 過失または故意（不法行為の場合）
不法行為では相手に注意義務違反（過失）や故意があることが要件です。注意を払っていれば防げた事故なら過失が認められます。
契約違反に基づく請求の場合は、契約書の損害賠償条項や免責条項を必ず確認してください。違約金の定めや損害賠償の範囲が限定されていることがあります。
立証責任は基本的に請求者側にあります。証拠を集め、いつ・誰が・どのように被害を受けたかを整理して示すことが大切です。また、損害を軽くする努力（損害軽減義務）も求められる点に注意してください。
損害賠償請求の全体の流れ
概要
損害賠償は順序立てて進めると結果が出やすくなります。ここでは、事故直後から裁判までの典型的な流れを分かりやすく説明します。
1. 事故・トラブル発生直後〜記録・証拠の収集
現場写真や相手の連絡先、目撃者の名前をすぐに記録します。医療機関の受診や領収書も重要です（例：交通事故なら車の損傷と診断書）。
2. 損害額の算定
治療費や修理代、休業損失などを集計します。将来の治療費や逸失利益も見込む場合は専門家に相談すると良いです。
3. 相手方への任意請求・交渉
まずは話し合いで解決を試みます。内容証明郵便で請求書を送ると証拠になります。交渉では請求根拠と金額を明示します。
4. 調停・ADRなど裁判外手続の利用
話し合いで決着しない場合、調停やADRで第三者を交えて解決を図ります。裁判より短期間で終わることが多いです。
5. 訴訟提起
合意に至らなければ裁判を起こします。訴状提出後は証拠提出・証人尋問など手続きが進みます。判決で賠償が命じられれば相手に強制執行できます。
注意点
証拠は時間とともに失われます。早めに記録を残し、弁護士や消費生活センターに相談することをおすすめします。
ステップ1：証拠と記録を徹底的に集める
概要
損害賠償の第一歩は、発生直後から証拠を残すことです。証拠がそろっていると、請求の説得力が増し解決が速くなります。焦らず確実に集めましょう。
主な証拠の種類
- 写真・動画：現場の全体・被害箇所・日時が分かるもの
- やり取り：メール・LINE・書面・領収書・請求書
- 医療・修理関連：診断書・領収書・見積書
- 契約書：約款や特約の記載
- 目撃者：氏名・連絡先・陳述書
写真・動画のポイント
現場は広く撮り、被害部分は近接で撮ります。日時が分かるようスマホの日時設定を確認し、複数角度から残してください。動く証拠は短い動画で記録します。
メッセージや書面の保存方法
スクリーンショットだけでなく、元データ（メールの原文やトーク履歴のエクスポート）を保存します。紙の書類は裏表スキャンしてPDF化し、クラウドにバックアップすると安心です。
医療費・修理費の記録
領収書や見積は必ず保管し、費目ごとに日付と金額を明記した一覧を作ります。診断書は症状と治療期間が分かるよう依頼してください。
目撃者の確保
目撃者がいる場合は、連絡先を聞き、簡単な陳述を文書で取ります。口頭だけでなく書面があると信頼性が高まります。
契約違反の場合の確認
契約書は特に重要です。解除・損害賠償の条項や免責事項を確認し、どの条項に基づいて請求するかを整理します。
証拠の保管とタイムライン作成
取得日順にフォルダを作り、複製を複数保管します。出来事の時系列を短い日誌にまとめておくと、後で説明しやすくなります。
注意点
録音やプライバシーに配慮してください。相手の同意が必要な場合や法的制限があるため、問題があると感じたら専門家に相談してください。
ステップ2：損害額を算定する
損害額の算定は請求の根拠になります。できるだけ実費や客観的な資料に基づき、一つひとつ丁寧に金額を算出します。
算定の基本方針
- 実際に発生した費用を優先して計上します。将来分は合理的な見積りで表します。
- 項目ごとに証拠をそろえ、説明できる形にまとめます。したがって、請求の信頼性が高まります。
主な損害の種類と具体例
- 医療費：診療明細書や領収書で実額を示します。
- 通院交通費：領収書や交通ICの履歴で裏付けます。
- 休業損害：給与明細や勤怠記録を使って計算します。簡単な目安は「日額＝月給÷30×休業日数」です。
- 逸失利益（働けなくなった将来の損失）：基礎収入×喪失率×期間の考え方で算出します。具体的には、年収を基に妥当な喪失率と期間を示します。
- 物損：修理見積書や買替え領収書で金額を示します。
- 慰謝料：通院日数や後遺症の程度を根拠に相場を参考にします。
契約違反の場合は、履行利益（契約通りに得られたはずの利益）、代替手配費用、遅延による追加費用などを同様に証拠で示します。
証拠で裏付ける方法
領収書、診断書、見積書、給与明細、交通履歴、写真、メールややり取りの記録などを項目ごとに整理します。専門家（医師、整備工、会計士、弁護士など）の意見書があると説得力が増します。
計算の実務ポイントと注意点
- 過大な推計を避け、根拠を明示します。
- 相手や保険会社に提示するために、明細書をわかりやすく作成します。
- 必要なら専門家に相談して算定方法を確認してください。
以上を基に、一つずつ証拠で裏付けしながら金額を積み上げていきます。
ステップ3：相手方への任意請求と交渉
損害額を算定したら、まず当事者同士で解決を試みます。任意請求は裁判前の話し合いで、費用と時間を抑えられる可能性が高いです。
連絡手段と特徴
- メール：記録が残るため証拠になります。丁寧な書面で要点を整理してください。
- 電話：早く反応を得やすいです。要点は後でメールで確認しましょう。
- 対面：誤解を減らせますが感情的になりやすいので第三者を同席させると安心です。
- 書面（損害賠償請求書）：正式な請求には書面送付が有効です。内容証明郵便を使えば到達証明になります。
請求書に含める主な項目
- 作成年月日・相手の氏名／会社名
- 事実の経緯（簡潔に）
- 損害額と内訳（領収書や見積を添付）
- 支払期日と振込先
- 連絡先と交渉の意思（和解案があれば提示）
交渉の進め方のコツ
冷静に事実と証拠を提示し、相手の言い分も聞きます。最初から全額を強硬に求めず、譲歩の余地や分割案を用意すると合意に至りやすいです。相手が支払に応じない場合は、弁護士に相談する目安になります。脅しや感情的な表現は避け、合意に達したら示談書で書面化してください。
記録の徹底
すべてのやり取り（メール、電話の要点、面談メモ）を残しましょう。証拠が揃っていると交渉が有利になります。
この段階で丁寧に対応すると、訴訟を避けて早期解決できる可能性が高まります。
コメント