はじめに
この資料では、退職日を月末にするか月途中にするかで変わる社会保険料の負担や手取り給与への影響を、やさしく丁寧に解説します。
- 本資料の目的
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退職日によりどのように保険料が計算され、いつ差し引かれるのかを具体例で示します。計算の仕組みを理解し、実際の手取りにどう反映するかを把握できるようにします。
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想定する読者
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退職を考えている方、給与明細で控除が分かりにくい方、人事・総務の担当者など、広く役立つ内容です。
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本書の構成と読み方
- 第2章で社会保険料が発生する基本を説明します。第3章と第4章でそれぞれ月末退職・月途中退職の違いを扱い、第5章で手取りへの具体的影響を示します。第6章は給与支払いのタイミング、第7章で退職日選択の判断ポイントをまとめます。順に読むと理解が深まりますが、必要な章だけ読むこともできます。
次章から、まず社会保険料の基本に入ります。具体例を交えて丁寧に進めます。
社会保険料が発生する仕組みの基本
基本ルール
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、月末時点で会社の保険に加入しているかどうかで、その月に保険料が発生するかが決まります。つまり、月の最終日に在籍していればその月ぶんの保険料が発生します。
資格喪失のタイミング
退職した翌日が「資格喪失日」となります。退職日が月末か月途中かで、資格喪失日が変わるため、どの月の保険料を負担するかが変わります。
実例で確認
- 例1(末日退職): 8月31日に退職した場合、資格喪失は9月1日です。8月31日時点で在籍しているため、8月分の社会保険料は発生します。
- 例2(月途中退職): 8月15日に退職した場合、資格喪失は8月16日です。8月31日時点で加入していないため、原則として8月分の保険料は発生しません。
注意点
実際の給与からの控除や会社の精算方法で扱いが変わることがあります。最終給与の支払いや控除については、会社の総務や人事に確認してください。
月末退職の場合の社会保険料負担
前提
月末に退職すると、資格喪失日は退職日の翌日になります。退職した月の社会保険料も最終的に支払う必要があります。会社がどう控除するかは給与の支払い形態で変わります。
給与形態別の控除パターン
- 月末締め・翌月支払い:退職月の保険料は翌月の給与から差し引かれます。例:6月30日退職なら6月分は7月の支払いで控除されます。
- 月末締め・当月支払い:退職月の給与から2か月分が控除される場合があります。これは会社の締め・支払いの流れで前月分も同時に処理されるためです。
会社負担の扱い
社会保険料は会社と従業員で折半されます。したがって、月末退職では退職月分について会社が半分を負担する扱いになり、結果として従業員の実負担が軽くなるメリットがあります。
具体例
月の保険料総額が30,000円で従業員負担が15,000円だった場合:
– 翌月払い:7月給与で15,000円が差し引かれる。
– 当月払い:6月給与で30,000円が差し引かれる可能性がある(会社負担分が残るか確認が必要)。
確認ポイント
退職前に給与規程と総務・人事に控除のタイミングを確認してください。支払い形態で手取りが変わりますので、具体的な給与明細で最終確認をおすすめします。
月途中退職の場合の社会保険料負担
概要
月の途中で退職した場合、原則として退職月の健康保険料・厚生年金保険料は発生しません。資格喪失日はその月の末日となるため、会社が給与から控除するのは前月分までです。
健康保険と厚生年金
健康保険料と厚生年金保険料は、在籍した月の月末時点で資格があるかで判断します。月途中で退職すると退職月は資格喪失扱いになり、個人負担・事業主負担ともに原則発生しません。具体例:4月15日に退職すれば、4月分の保険料は給与から差し引かれません。
雇用保険(日割り)の扱い
雇用保険料は日割り計算になるケースが多く、退職日までの在籍日数に応じて算出します。金額は少なくなるため、月途中退職は雇用保険料の節約につながります。計算は給与支払日や会社の取り扱いに依ります。
注意点
会社の給与締め日や支払い方法、加入状況によって取り扱いが変わる場合があります。離職票や保険証の返却タイミング、会社の就業規則を確認してください。必要であれば人事に相談しましょう。
手取り給与への具体的な影響
前提
退職日によってその月の社会保険料(健康保険・厚生年金)や雇用保険の負担が変わります。ここでは会社が給与から差し引く額がどう変わり、手取りにどのように影響するかをわかりやすく説明します。
月末退職のケース
月末で退職すると、その月の健康保険と厚生年金は満額を負担します。会社負担分はあっても手取りは減ります。雇用保険も満額扱いになる例が多く、給与からの天引きが大きくなります。
月途中退職のケース
月途中で退職すると、健康保険と厚生年金は通常その月分を負担しません。雇用保険は日割りで計算され、負担が小さくなります。結果として手取りが多くなることが一般的です。
具体例(仮定)
例:手取りを分かりやすくするため、総支給30万円で考えます(実際の料率は会社や年度で異なります)。
– 月末退職:社会保険などで仮に5万円が差し引かれると、手取りは25万円になります。
– 月途中退職:健康保険・厚生年金がかからず、雇用保険が日割りで仮に3千円の差引だとすると、手取りは約29万7千円になります。
実務上の注意点
具体的な差額は料率や給与の内訳で変わります。退職届提出前に総務や給与担当に日割り計算の扱いを確認してください。
給与支払いシステムと退職日の関係
概要
給与の締め日を月末にしている会社が多く、月途中退職では給与計算がやや複雑になります。支払日(当月払いか翌月払いか)によって、社会保険料がどの給与から控除されるかが変わる点がポイントです。
支払タイミングが控除に与える影響
一般に、社会保険料は「給与が実際に支払われる月」に控除されます。したがって、月末締めで当月払いなら退職月の給与で控除され、翌月払いなら支払われた翌月の給与で控除されることになります。例えば、月の前半で退職して残り給与を翌月にまとめて支払うと、控除の計上月が変わり手取りが退職時点で異なるように見えます。
月途中退職時の実務的注意点
・残日数の按分(日割り計算)の扱い
・最終給与と賞与や精算分の支払タイミング
・保険喪失日と会社が控除するタイミングのズレ
会社によって処理が違うため、最終給与がいつ振り込まれ、どの給与から保険料が差し引かれるかを必ず確認してください。
社員として確認すべき項目
- 締め日と支払日の規定
- 最終給与の支払日と内訳(基本給、未消化の有給、精算)
- 社会保険の喪失日と手続き
- 源泉徴収票や最終明細の受け取り方法
実務的なアドバイス
不明点は人事・給与担当に書面で確認すると安心です。退職日を決める際は、支払タイミングと保険料の控除月を合わせて考えると、手取り額の見通しが立てやすくなります。
退職日選択時の判断ポイント
概要
社会保険料の負担を減らしたい場合、退職日で負担額が変わることがあります。会社の締め日や転職先の手続き次第で結果が変わるため、事前確認が重要です。
主な判断ポイント
- 転職先の入社日と保険開始日
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入社日が翌月以降だと、退職月と入社月の両方で保険料を負担する可能性があります。具体例は下に示します。
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現職の給与締め日・支払日
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締め日の扱いで「その月に在籍したか」が決まる場合があります。人事に確認してください。
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資格喪失日と手続きのタイミング
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資格喪失が月の末日扱いになる会社もあります。手続きが遅れると余分に支払う場合があります。
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国民健康保険や年金への切替
- 退職から転職まで期間が空く場合は国民健康保険に加入する必要があり、負担の差を比較してください。
具体例(簡易)
- 月の社会保険負担を仮に3万円とすると、月末退職で退職月と入社月両方負担なら6万円になります。月途中退職で退職月の負担を免れれば3万円で済みます。
最終確認事項
- 人事・総務に退職日での保険扱いを必ず確認してください。手続きを早めに進めると想定外の負担を避けられます。


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