はじめに
概要
本稿は「退職日を月末にするべきか否か」を、社会保険料や給与の手取り、有給の扱い、転職先との調整といった観点からわかりやすく解説します。退職日と最終出勤日、離職日の違いも整理し、月末退職と月途中退職それぞれの損得や注意点を具体例で示します。
誰に向けた記事か
転職や退職を控え、退職日をいつにするか悩んでいる人向けです。会社都合や自己都合の違い、年金や保険料の扱いをざっくり理解したい方にも役立ちます。
この記事で得られること
・退職日と最終出勤日の違いが分かります
・月末退職と中途退職で何が変わるかが分かります
・有給消化や給与支払、社会保険の負担についての具体的な着眼点を得られます
読み方のポイント
専門用語は最小限にし、具体例で説明します。次章以降で順を追って詳しく見ていきます。ご自身の状況に応じて、会社の人事や転職先とも確認してください。
そもそも「退職日」とは何か?最終出勤日との違い
1-1. 退職日の基本定義
退職日とは、会社との雇用契約が正式に終了する日です。この日までは法律上その会社に在籍しています。社会保険や厚生年金、年次有給休暇の扱いなど多くの手続きが退職日を基準に決まります。銀行の手続きや健康保険の切替えも退職日を基点に進めます。
1-2. 最終出勤日との違い
最終出勤日は実際に出勤する最後の日です。一方、退職日は有給休暇の消化期間を含めた在籍の最終日になります。たとえば、最終出勤日が6月15日で有給が10日残っている場合、退職日は6月30日になることがあります。この違いを理解しないと、社会保険の資格喪失や有給の消化トラブルに発展します。
1-3. 離職日との違い
離職日は退職日の翌日です。雇用保険(失業保険)の申請や受給開始の時期は離職日が基準になります。失業手当の給付開始日や通算の雇用保険加入期間の扱いで用いられます。
1-4. 退職届に書くべき日付
退職届には、提出日(記入日)、退職希望日(退職日)、最終出勤日を明示します。最終出勤日が有給消化で退職日と異なる場合は両方を記載してください。これで社内の手続きと公的手続きがずれにくくなります。
退職日を「末日」にするかどうかで何が変わる?
2-1 社会保険料の仕組みのキモ
健康保険や厚生年金の保険料は「その月の末日時点で会社に在籍しているか」で判断します。月末に在籍しているとその月分の保険料が発生し、月末の前日までに退職していればその月分の保険料は発生しません。つまり、退職日を月末にするかどうかで負担が変わります。
2-2 資格喪失月の考え方と具体例
社会保険の資格喪失日は「退職日の翌日」です。会社は資格喪失月の前月分までを給与から天引きします。例を挙げます。
– 8月31日退職:資格喪失月は9月。8月分まで徴収されます。
– 7月30日退職:資格喪失月は7月。6月分まで徴収されます。
このため、月末まで働くと一か月分多く保険料を負担することがあります。
2-3 月末退職と月途中退職の違い(ポイント一覧)
- 月末退職:健康保険料・厚生年金保険料はその月分が発生し、会社側も同額を負担します。雇用保険料も満額かかります。
- 月途中退職:健康保険料・厚生年金はその月分の負担が基本的に発生しません。雇用保険料は日割り計算になることが多く、会社の負担も少なくなります。
退職日を決める際は、保険料負担だけでなく、有給消化や給与の締め・支払日も合わせて確認すると安心です。
退職日を「月末にしないほうがいい」と言われる理由
退職日を月末にしないほうがいいと言われる主な理由を、分かりやすく4つに分けて説明します。
3-1. 社会保険料を1か月分節約できる
多くのケースで、月末の前日に退職すればその月の健康保険料や厚生年金保険料が発生しません。結果として、一か月分の社会保険料を節約できることがあります。例えば、月の最終日を最後の出勤日にするとその月の保険料がかかる場合があるため、日程をずらすと負担が軽くなります。
3-2. 給与の手取り額が増える可能性
社会保険料が減ることで、退職月の手取りが増えることが多いです。特に給与水準が高い方ほど差が出やすく、退職後の生活資金や次の職場への準備費用に余裕が生まれます。
3-3. 転職先との調整がしやすい場合も
月の途中で退職すると、新しい職場の入社日を柔軟に決めやすくなります。月中入社を受け入れる企業なら、無駄な空白期間を減らしてスムーズに移れることが多いです。
3-4. 社会保険「二重払い」を避けやすい
月末に退職してすぐに新会社に入ると、退職月の保険料と新会社の翌月分が重なり「二重に支払っている」感覚になることがあります。退職日をずらして入社時期を調整すると、不必要な二重負担を避けやすくなります。


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