はじめに
ご挨拶
このガイドでは「退職願」「退職届」「辞表」という三つの書類の違いと使い分けを、できるだけ分かりやすく丁寧に解説します。仕事を辞める場面は気持ちが揺れることが多く、書類の使い方を間違うと誤解やトラブルにつながります。円満な退職のために、正しい知識を身につけていただくことを目的としています。
この章で得られること
- 各書類がどんな場面で使われるか
- 提出のタイミングや撤回の可否の基本
- 役職や立場ごとの使い分けのポイント
- 書き方や提出方法の実務的な注意点(第5章で詳述)
この記事の読み方
第2章で各書類の概要を説明し、第3章で一覧表にまとめます。第4章で使い分けのコツを示し、第5章で実際の書き方と提出方法を具体例とともに紹介します。第6章で最終判断の助けになるポイントを整理し、第7章でよくある質問に答えます。
必要な箇所を先に読んでも問題ありません。どうぞ気軽に読み進めてください。
そもそも「退職願」「退職届」「辞表」とは?その概要
はじめに
退職に関わる書類は主に「退職願」「退職届」「辞表」の三つです。目的や出す時期、誰が使うかが違います。ここでは分かりやすく説明します。
退職願とは
退職願は「辞めたい」という意思を会社に伝え、承認を願う書類です。退職が確定する前に提出します。例:上司に相談してから、正式な退職日を相談するために出すケースが多いです。取り下げや変更が比較的可能です。
退職届とは
退職届は退職の意思を最終的に伝える書類で、提出後は原則取り消せません。会社と合意して日付が決まった後に出すのが一般的です。実務上は「退職願」→「退職届」の流れをとる職場が多いです。
辞表とは
辞表は主に役員や公務員など、特別な立場の人が職や役職を辞する際に使います。一般の社員は通常、辞表を使いません。形式や扱いが異なるため、該当する立場の人は就業規則や法的手続きを確認してください。
ポイントの整理
- 時期:退職願=確定前、退職届=確定後
- 取り消し:退職願は可、退職届は原則不可
- 対象:辞表は役員・公務員向け
以上を踏まえ、自分の状況に合った書類を選んでください。
「退職願」「退職届」「辞表」の違いを表で比較
以下は、3種類の書類を主要ポイントで比較した表です。見比べて使い分けの参考にしてください。
| 項目 | 退職願 | 退職届 | 辞表 |
|---|---|---|---|
| 意味・目的 | 退職の意思を会社に願い出る文書 | 退職が決まったことを届け出る確定書 | 役職・職の辞任を申請する書類 |
| 提出する人 | 一般社員 | 一般社員 | 役員・公務員など役職者 |
| 提出のタイミング | 退職の意思が固まったとき | 退職日が決まり、手続き最終段階のとき | 役職を辞めるとき(職務に関する辞任) |
| 撤回 | 会社承認前なら可能 | 原則撤回不可 | 原則撤回不可 |
| 効力発生 | 会社の承認で確定 | 提出により確定(会社との合意により通知) | 提出で辞任の手続きが進む(決定には手続き要) |
| 書式・署名 | 比較的簡易(願いの形) | 正式な届出書式 | 非常に正式・堅い表現が必要 |
| 提出先 | 人事・上司 | 人事・上司(会社規定に従う) | 会社の代表者や所轄機関 |
各欄の短い補足:
– 退職願は”お願い”の形で、会社と話し合いながら進めます。撤回の余地が残ります。
– 退職届は退職を確定させるための書類です。提出後の取り消しは難しくなります。
– 辞表は役職を辞するための正式な文書で、社外的な影響も大きいので注意が必要です。
使い分けのポイントと注意点
退職願・退職届・辞表を選ぶときの実務的なポイントと注意点を、分かりやすくまとめます。
- 提出のタイミング
- 退職願:退職の意思を会社に伝えるお願いです。退職確定前に出すため、上司と相談してから提出するとトラブルを避けやすいです。例:プロジェクトが終わる月の1〜2か月前に提出。
- 退職届:退職が合意した後に提出する通知です。提出すると原則として撤回しにくくなります。
-
辞表:役員や公務員向けで、提出すると辞任が事実上確定します。社内規定を必ず確認してください。
-
撤回の可否
- 退職願は会社の承認前なら撤回できることが多いですが、相手の承諾が得られた後は撤回が難しくなります。
-
退職届・辞表は原則撤回不可と考えてください。例外は相手の合意がある場合のみです。
-
書き方・提出方法の注意
- 日付と退職希望日を明確に書く。口頭でのやり取りだけで済ませないほうが安全です。
- 提出前に直属の上司へ一言伝える。社内の就業規則や雇用契約書を確認してください。
-
コピーを保管し、受領印やメールでの承諾があれば保存する。
-
人間関係や引継ぎの配慮
-
円満退職を目指し、引継ぎ計画や業務の整理を事前に準備すると印象が良くなります。
-
特に気をつけるケース
- 重要な業務中や繁忙期は、会社側の混乱を招きやすいので時期を配慮しましょう。
- 役員や公務員は手続きが厳格です。法的な影響がある場面では専門家に相談することを検討してください。
退職願・退職届・辞表の実際の書き方と提出方法
基本の文例
- 退職願:退職させていただきたく、お願い申し上げます。
- 退職届:退職いたします。(断定の表現で記載)
- 辞表:辞職いたしたく、ここに辞表を提出いたします。
書き方のポイント
- 日付:提出日を右上に記載します。
- 宛名:会社名・代表者名または所属長の氏名を明記します。
- 本文:上の簡潔な一文のあと、退職希望日(例:○年○月○日)を記載します。
- 氏名と押印:左下または文末に氏名を記載し、必要なら実印や認印を押します。
提出方法と順序
- まず直属の上司に口頭で伝え、了承を得ます。2. 上司に手渡すか人事に提出します(辞表は代表者や取締役会へ)。3. 郵送する場合は配達記録を残します。メールでの連絡は口頭・書面の補助として使います。
実際の流れ(例)
- 口頭で退職の意思を伝える→退職願(または届)を作成→上司に手渡す→人事で受理・控えをもらう。
注意点
- 退職日と引継ぎ予定を明確にすること。受理の有無は必ず確認してください。辞表は形式や提出先が厳格なので事前に人事に確認することをおすすめします。
まとめ:どの書類を使うべきか
退職に使う書類は立場と会社の規定で決まります。以下を目安に選んでください。
誰がどれを使うか
- 一般社員・契約社員:まず退職願を提出し、会社の承認が得られたら退職届を提出するのが基本です。承認を得ずに一方的に退職届を出すと誤解やトラブルのもとになります。
- 役員・管理職、公務員:辞表を使います。役員は取締役会宛、公務員は所属機関の手続きに従ってください。
提出のタイミングと撤回
就業規則に提出時期や所定の手続きが書かれています。退職の撤回可否も会社規定によるため、必ず就業規則や人事に確認してください。
宛先と手続きの注意点
宛先は直属の上司や人事、役員の場合は会社側の定める窓口です。書類は原本を提出し、控えを受け取って保管しましょう。
提出前のチェックリスト
- 就業規則の確認
- 退職日と引継ぎ計画の準備
- 書類の署名・押印と控えの確保
不安な場合は人事担当や外部の相談窓口に相談してください。
よくある質問(FAQ)
以下は、退職に関してよくある質問と簡潔な答えです。実際は会社の就業規則や雇用契約を優先してください。
Q1: 退職願と退職届、どちらを出すべきですか?
A: 会社の規定で決まります。形式が指定されていなければ、まずは退職願(「お願い」)を出して相談するのが一般的です。
Q2: 退職願は撤回できますか?
A: 原則として、会社が承諾する前なら撤回できます。ただし、口頭で合意が進んだ場合は状況が変わるため、速やかに書面で確認してください。
Q3: 退職届を出したら撤回できますか?
A: 退職届は受理されると効力が強くなります。受理後は撤回が難しいので注意してください。
Q4: 辞表は誰が使いますか?
A: 一般の社員はほとんど使いません。会社役員や公務員など、辞職を正式に示す場面で使います。
Q5: 退職の効力発生日はいつですか?
A: 通常は退職届に書いた日か、会社と合意した日です。就業規則の通知期間に従ってください。
Q6: 電子メールやチャットでの提出は可能ですか?
A: 会社の運用次第です。許可があれば問題ありませんが、書面での提出を求める会社も多いです。
Q7: 退職時の手続きで注意することは?
A: 有休の消化、引き継ぎ、最終給与や保険の手続きを事前に確認してください。
その他気になる点があれば、会社の人事担当や労働相談窓口に相談すると安心です。


コメント