はじめに
病院に提出する退職願は、丁寧で簡潔に書くことが基本です。本章ではまず、退職願を書くときの心構えと全体像をわかりやすく説明します。
目的と対象
医療現場で働く方が、患者や同僚に迷惑をかけずに円満に退職するための基本を示します。看護師、臨床検査技師、事務職など、職種を問わず役立ちます。
基本的な考え方（要点）
- 文章は簡潔に：理由は「一身上の都合により」とするのが一般的で、詳述は不要です。
- 事前の相談を優先：まず口頭で直属の上司に伝え、その後に書面を提出すると印象がよくなります。
- 患者対応と引継ぎを重視：シフト調整や業務の引き継ぎ計画を準備すると、職場の負担を減らせます。
- 提出先と保管：人事や所属長に提出し、控えを手元に保管してください。
このあと各章で、具体的な書き方やマナー、退職届との違い、文例のポイントを順に解説していきます。
基本的な考え方
退職願とは
退職願は「退職したい」と希望を伝える文書です。提出は退職交渉の段階で行います。会社側と話し合いを進めるための出発点だと考えてください。
宛名と提出先
宛名は病院の規定に従いますが、一般的には「○○病院 院長 ○○○○ 殿」と記します。提出は通常、まず直属の上司に手渡しして、上司を通じて人事や院長へ届く流れが多いです。
退職理由の書き方
理由は簡潔に「一身上の都合により」とするのが一般的です。病院から詳しい理由を求められない限り、プライベートな事情を詳述する必要はありません。例：
– 正式な文面：一身上の都合により退職いたします。
提出のタイミングと配慮
退職の意向は口頭で上司に伝えてから書面を提出するとスムーズです。勤務引き継ぎや勤務表の調整に配慮し、可能な限り余裕を持って申し出てください。
注意点
手渡しの際は日時と相手を明確にし、受け取り印や控えをもらうと安心です。病院側の指定がある場合は、それに従ってください。
退職願に書く項目
表題
「退職願」と明記します。中心や左上など、目立つ場所に書きます。
書き出し（頭語）
本文の最初は「私儀」または「私事」とします。簡潔で正式な印象になります。
退職理由
「一身上の都合により」で十分です。詳しい理由は口頭で伝えればよく、文章は短くまとめます。
退職希望日
退職したい日を明確に記入します。例：令和○年○月○日。引継ぎ期間が必要ならその旨を別途記載してください。
届出年月日
書類を提出する日付を記入します。日付は和暦か西暦どちらでも構いません。
所属・役職・氏名・押印
所属部署・役職名・氏名を記載し、氏名のそばに押印します。押印は認印でも差し支えない場合が多いですが、職場のルールに従ってください。
宛名
病院の最高責任者（院長など）の役職と氏名を記し、最後に「殿」を付けます。例：院長 山田太郎 殿
連絡先（任意）
必要なら自宅や携帯の連絡先を記載します。退職後の連絡が必要な場合に役立ちます。
注意点
・本文は簡潔に。長文は避けます。
・手渡しする際は一言添えると印象が良くなります。
・直属の上司へ事前に相談してから提出すると円滑です。
病院でのマナーのポイント
口頭での相談
まず直属の上司に退職の意向と希望時期を口頭で伝えます。事前に面談の時間を取ってもらい、忙しい時間帯は避けます。例：「私事で恐縮ですが、退職を考えております。希望時期は○月頃です。一度ご相談させていただけますか」などと簡潔に伝えます。
就業規則の確認
就業規則で退職願の提出期限や書式の有無を必ず確認します。提出期限がある場合は予定を早め、必要書類や届け先（人事・総務など）を確認します。
用紙と封筒の選び方
便箋は白無地（B5程度）を用います。封筒は白の長形封筒が一般的です。手書きで書く場合は丁寧な字を心がけます。
宛名と裏書きの書き方
宛名面には大きく「退職願」と書きます。裏面には所属と氏名を記します。封をするときはのりで軽く留め、表に押印が必要か就業規則で確認してください。
提出時のマナー
直接手渡す場合は上司に一言「退職願を提出いたします」と伝えます。受領者が多忙なら事務窓口を活用します。メールや内線で事前連絡を入れるとスムーズです。
引き継ぎと患者対応
業務引き継ぎは具体的に書面に残します。担当患者の情報や治療計画、緊急連絡先を整理し、後任が困らないよう準備します。院内の信頼を保つ配慮が大切です。
退職願と退職届の違い
退職願とは
退職願は「退職したい」と申し出る文書です。交渉のために提出します。例えば「一身上の都合により退職を希望いたします」といった柔らかい表現を使います。退職日も希望日として記載するのが一般的です。
退職届とは
退職届は「退職します」と会社に正式に届け出る文書です。受理後は手続きが進みます。文面は断定的で、例として「退職いたします。退職日：20XX年X月X日」と記します。
文末表現の違い
退職願は相手にお願いする語調（〜お願い申し上げます）が多いです。退職届は意思を明確にする語調（〜いたします／〜届け出ます）を使います。
退職日表記の違い
退職願は希望日を記載します。退職届は確定した日付を記載します。引継ぎ期間や就業規則に従った開始日を書くとトラブルが減ります。
提出のタイミングと注意点
退職願は相談段階で、退職届は会社の承認や退職条件が決まったあとに出します。印鑑や控えの用意、上司への事前説明を忘れないでください。
無難な文面の例のポイント
はじめに
冒頭には「私儀（私事）、一身上の都合により」を入れると形式的で無難です。看護師や医療職の方に広く使われています。
冒頭の表現
短く丁寧に始めます。例：「私儀、一身上の都合により一身を以て退職いたしたく存じます。」といった形で充分です。理由は詳細に書く必要はありません。
文末の表現
へりくだった表現を使います。よく使う例は「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」「退職させていただきたく、ここにお願い申し上げます」です。どちらも敬意が伝わります。
具体例（短い文面）
・私儀、一身上の都合により、令和X年X月X日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
書き方のポイント
- 日付と希望退職日を明記する。- 実務的な引継ぎや患者対応については別途相談する旨を付け加えると親切です。- 署名と所属（病棟名など）を忘れないでください。
提出時の注意
- まず口頭で上司に伝え、その後書面を提出すると円滑です。- 退職時期は業務に支障が出ないよう配慮すると印象が良くなります。
これらを踏まえれば、無難で礼儀正しい退職文面を作れます。
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