はじめに
目的
この章は、退職を考える方が「誰に」「いつ」「どのように」相談すればよいかを理解するための導入です。退職願を出す前に相談を適切に進めることで、トラブルを減らし円満退職につなげることを目指します。具体的な例や流れ、注意点を後の章で丁寧に説明します。
本書の対象
- これから退職を検討している人
- 上司や人事にどう伝えるか迷っている人
- 同僚や家族との調整に不安がある人
専門用語をなるべく避け、実務で使える具体策を中心にまとめます。
進め方の概略
まずは相談相手の選び方とタイミングを確認します。次に相談の切り出し方や準備、相談から退職願提出までの一般的な流れを示します。最後に注意点やトラブル回避策、退職願と退職届の違いを解説します。
読み方のポイント
各章は短く分かりやすくまとめています。まずは第2章から順に読み、実際の行動に移すときはチェックリストを参考にしてください。
退職の相談、まず誰に・いつ伝えるべきか
まず誰に相談するか
退職を考え始めたら、最初に相談すべき相手は必ず直属の上司です。上司に先に話すことで業務調整や引き継ぎ計画が立ちやすく、職場に余計な噂が広がるリスクを減らせます。上司に相談しづらい場合は、人事に先に相談する選択肢もありますが、同僚や他部署に先に話すのは避けましょう。
いつ伝えるべきか（目安）
退職の意思が固まってから、遅くとも退職希望日の1〜3か月前に伝えるのが一般的です。繁忙期や人事異動直後は避け、業務の引き継ぎや後任探しの余裕を確保できる時期を選んでください。急な事情で早めの退職が必要な場合は、まず上司と人事に事情を説明して相談します。
具体的な順序と注意点
- 家族と相談（必要なら）→2. 直属の上司→3. 人事→4. チームや関係部署→5. 同僚へ。上司に伝える際は、退職理由と希望時期を簡潔に伝え、引き継ぎについての意向を示すと話が進みやすくなります。
相談の切り出し方と準備すること
面談の場を設定する
退職の相談は、落ち着いて話せる時間と場所を確保してください。上司に「相談したいことがあります。◯月◯日か◯日で30分ほどお時間をいただけますか」とアポイントを取り、二人きりで話せる会議室や静かな場所を指定すると安心です。急なタイミングや他人がいる場は避けます。
伝える内容のポイント
前向きな理由を中心に伝えると印象が良くなります（例：キャリアチェンジや家庭の事情など）。ネガティブな本音を伝える場合は感情的にならず、事実と改善希望を分けて説明します。例：「業務の幅を広げたいので別の環境で経験を積みたいと考えています」
退職希望日の伝え方
希望日は相談ベースで明確に伝えます（例：◯年◯月末を希望しています）。就業規則の退職予告期間や引き継ぎに必要な日数を確認しておくと具体的な話がしやすいです。
引き止めや質問への準備
上司からの引き止めや詳しい理由の質問が来る想定で、答えを用意しておきます。代替案を示すと話が進みやすいです（例：業務の引き継ぎ計画や後任候補の提案）。急に決めた印象を与えないために、退職を決めた経緯を短く整理しておきます。
事前に用意するもの
・退職希望日を記したメモ
・引き継ぎに必要な業務一覧（簡潔）
・感謝の言葉を伝えるための要点
これらを準備すると、落ち着いて話せて円滑に相談を進められます。
相談から退職願提出までの流れ
- はじめに
直属の上司への相談から退職願提出までの一般的な流れを、実務上の注意点とともに順を追って説明します。
1) 直属の上司に面談で相談する
簡潔に「退職を考えている」と伝え、理由や希望時期を話します。事前に話す内容をメモしておくと安心です。面談後、話した要点をメールで確認して記録を残しましょう。
2) 上司と調整する
上司と退職日や引き継ぎについて話し合います。業務の進行状況やチームの状況を踏まえ、必要な引き継ぎ期間や後任探しの調整案を提示すると話が進みやすいです。
3) 正式に退職願を提出する
会社の所定の手続きに従い、書面で退職願を提出します。提出後は会社の承認を待ち、承認をもって手続きが進みます。手続きの担当部署（総務など）に提出先や必要書類を確認しましょう。
4) 退職日・引き継ぎ・有給消化を決める
退職日、業務引き継ぎのスケジュール、有給休暇の扱いを具体的に詰めます。引き継ぎ資料やチェックリストを作成し、後任やチームと共有してください。必要なら顧客や取引先への挨拶方法も調整します。
実用ポイント
・会話は記録に残す（日付・要点）
・引き継ぎ資料は最小限の操作手順と連絡先を明示
・有給や退職金などは就業規則で確認
・不安がある場合は人事に相談して早めに確認を取る
この流れを踏めば、双方が納得しやすく円滑な退職につながります。
相談時の注意点・トラブル回避策
いきなり退職届を出さない
退職届は一方的な意思表示になりがちです。まずは上司や人事に相談して、退職の意向や希望時期を伝えましょう。突然の提出は誤解や感情的な対立を招き、円満退職が難しくなります。例：口頭で「（月）末ごろに退職を考えています」と伝えてから話し合う。
相談内容は口外しない
同僚や後輩に相談する場合、内容が広まると職場の雰囲気が悪化します。信頼できる相手のみに留め、社内で共有が必要な場合は上司と相談して進めてください。
準備と伝え方の工夫
事実（退職理由、希望日、引き継ぎ案）を簡潔にまとめて持参します。口調は冷静に、感情的な批判を避けます。例：「業務の方向性が合わず、自分の成長のため退職を希望します。引き継ぎは○○までに完了させます。」
トラブルが起きたときの対処
脅しや未払い、長期の引き止めがあれば、会社の相談窓口や労働相談（労基署）、弁護士に相談します。証拠（メール、録音、勤怠記録）を保存してください。
第三者相談を検討する目安
・話し合いで解決しないとき
・パワハラや不当な待遇を受けたとき
・給与や退職日で重大な争いがあるとき
最後に：関係をできるだけ保つ
感謝の言葉や円滑な引き継ぎで関係を保つ努力をします。将来の推薦や再会に役立ちます。丁寧に進めることで、トラブルを最小限にできます。
退職願と退職届の違い
意味の違い
退職願は「退職させてください」と会社にお願いする文書です。会社の了承を得て初めて退職の手続きが進みます。退職届は「退職します」と意思を届ける文書で、一方的な意思表示になります。両者の違いは、願いか届出か、という点です。
タイミングと使い分け（具体例）
一般的には、まず上司に口頭で相談し、了承を得たら退職願を提出します。たとえば退職希望日が3か月後なら、まず相談→了承後に退職願→引継ぎ調整→必要に応じて退職届を出す、という流れが安全です。突然退職届を出すと職場が混乱することがあります。
書き方と記載内容の違い
退職願は「退職願」と題し、氏名と希望退職日、お願いの文言（例：「退職いたしたくお願い申し上げます」）を記します。退職届は「退職届」と題し、氏名と退職日、断定的な文言（例：「右の通り退職いたします」）を記します。どちらも日付と捺印を忘れないでください。
会社の対応と注意点
会社が退職願を承諾すると手続きが進みます。退職届を一方的に出すと法的な解釈や職場の対応でトラブルになることがあります。特に引継ぎや有給消化、最終出社日については事前にすり合わせると円滑に進みます。
提出のマナーとトラブル回避
まずは口頭で丁寧に相談し、文書は正式な記録として残すと安心です。控えのコピーを手元に置き、提出日を記録してください。問題が起きそうなら社内の人事や外部の相談窓口にも相談しましょう。
まとめ：円満退職を目指すために
要点
退職は「相談」から始め、順序を守ることで余計なトラブルを防げます。まず直属の上司に面談で伝え、ポジティブな理由と相談ベースの伝え方を心がけましょう。
実践チェックリスト
- 伝える相手：まず直属の上司、必要なら人事へ。
- タイミング：就業規則や業務状況を確認し、余裕を持って相談する。
- 伝え方：感謝を述べ、理由は前向きに。引き継ぎ案を用意する。
- 書類の順序：相談 → 退職願（書面） → 会社の受理 → 必要なら退職届。
注意点と手続き
重要なやり取りはメールで記録し、感情的な発言を避けます。引き継ぎは具体的に作成し、給与や有給、保険の扱いは人事と確認してください。
退職後の心構え
関係をできるだけ良好に保つと将来の紹介や協力につながります。礼儀と準備を忘れず、気持ちよく新しい一歩を踏み出してください。
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