はじめに
目的
この章では、本記事の目的と読み方をやさしく説明します。退職後に受け取る源泉徴収票で「乙欄」と記載されている意味や、どのような場合に乙欄が適用されるかをわかりやすく解説するための導入です。年末調整や確定申告で迷わないように、基本的な流れと注意点も整理します。
対象読者
- 退職したばかりの方
- 副業やアルバイトで複数の収入がある方
- 源泉徴収票の見方を確認したい方
本記事で分かること
- 乙欄とは何か（簡単な説明）
- 乙欄が適用される代表的なケース
- 年末調整や確定申告での扱いと注意点
- 退職後にすべき具体的な手続きの流れ
読み方のポイント
手元に源泉徴収票があると理解が早まります。章ごとに具体例を交えて説明しますので、気になる箇所から順にお読みください。必要であれば税務署や税理士に相談することも検討してください。
源泉徴収票の「乙欄」とは何か？
概要
源泉徴収票の「乙欄」は、給与所得者の扶養控除等申告書を提出していない人や、年末調整が行われない人に適用される欄です。支払者（会社）は乙欄に基づき、扶養控除などを反映しない税率で源泉所得税を計算・徴収します。
いつ使われるか
- 扶養控除等申告書を提出していないとき
- アルバイトやパートで短期間に働いたとき
- 退職後に再就職して申告書が間に合わないとき
勤務者への影響
乙欄だと、同じ給与でも甲欄より税額が多くなります。年末調整を受けられない場合、確定申告で払い過ぎた税金が戻ることがあります。
具体例
時給1,000円で月10万円の給与を得るAさん。扶養控除等申告書を提出していなければ、会社は乙欄の税率で源泉税を差し引きます。結果、手取りが少なくなります。
受け取ったらどうするか
乙欄の源泉徴収票を受け取ったら、まず扶養控除等申告書を提出できるか確認してください。年末調整ができない場合は、確定申告で調整できます。必要なら会社に相談しましょう。
甲欄・乙欄・丙欄の違い
概要
源泉徴収票の「欄」は、給与からどのように税金を引くかの分類です。主に甲欄・乙欄・丙欄の三つがあり、それぞれ適用される状況と税率が異なります。
甲欄（主たる給与）
甲欄は、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している主たる給与に使います。税率は低めで、扶養や配偶者控除などを反映して源泉徴収されます。普段の給与がここに当たる人が多いです。
乙欄（副業や申告未提出）
乙欄は、主たる給与以外の給与や、扶養控除等申告書を提出していない勤務先に適用されます。たとえば、昼に本業A社があり夜に副業B店で働く場合、B店の給与は乙欄になります。税率は甲欄より高めに引かれやすいです。
丙欄（日雇い等の特殊ケース）
丙欄は日雇いの仕事などで使われます。日単位で短期間働く場合に適用され、源泉徴収の計算方法が異なります。
実際の例で確認
例1：会社に扶養の申告書を出しているAさんは、その会社では甲欄。土日のアルバイトは乙欄。
例2：一つの仕事しかなく申告書を出していないBさんは、その勤務先で乙欄になります。
注意点（簡単に）
欄の違いで税額が変わります。年末調整や確定申告で調整できる場合があるため、どの欄になっているか確認してください。
退職後の「乙欄」適用となるケース
概要
退職後に支払われる給与や残業代は、原則として「乙欄」で源泉徴収されます。理由は、退職後に新しい勤務先へ扶養控除等申告書を提出していないことが多いためです。したがって、前の勤務先から支払われる一時的な給与も乙欄で処理されることがあります。
主な適用ケース
- 再雇用（元の会社で短期間だけ働く場合）
- 扶養控除等申告書を提出していないと、再雇用分は乙欄で計算されます。例：退職後に登録して単発で働くケース。
- 短期雇用・アルバイト
- 退職後に短期間だけ雇われるとき、給与は乙欄で源泉徴収されることが多いです。
- 副業や掛け持ち
- 本業で扶養控除等申告書を出していても、副業先では未提出なら乙欄になります。例：本業の会社で甲、本業外のアルバイトが乙。
- 給与の一時的な支払い
- 退職後に残業代や精算金が後から支払われる場合も乙欄になり得ます。
実務上の注意点
- 乙欄で源泉徴収されると税額が高めになります。後で年末調整や確定申告で精算できます。
- できるだけ早めに扶養控除等申告書を提出すると甲欄扱いになる場合がありますが、提出先の判断に左右されます。
次章では、乙欄の源泉徴収票と年末調整の関係を詳しく説明します。
乙欄の源泉徴収票と年末調整
概要
乙欄で源泉徴収された給与は、転職先の年末調整に含められません。前の勤務先が乙欄で源泉徴収票を発行している場合、原則としてその源泉徴収票は本人に返却されます。年の最後に税額の過不足を精算する必要があるときは、本人が確定申告で手続きを行います。
なぜ年末調整に含められないのか
乙欄は、その勤務先で扶養控除等申告書を提出していない人や副業・掛け持ちの人に適用されます。転職先の年末調整は、その勤務先に提出された控除情報を前提に行うため、別の勤務先で乙欄だった給与を合わせて処理できません。したがって、転職先が持っている情報だけで正しい税額を算出できないためです。
実際の手続きと具体例
例：Aさんは前職で乙欄で源泉徴収され、転職先で甲欄扱いになった場合、転職先は甲欄の給与分のみ年末調整します。前職分の税額は前職の源泉徴収票をもとにAさんが確定申告で精算します。返却された源泉徴収票は確定申告の添付書類になります。
確定申告での精算方法と注意点
確定申告の期間は例年2月中旬から3月中旬です。確定申告書に返却された源泉徴収票を添付し、他に必要な控除証明（社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除の明細など）を用意してください。過払いがあれば還付を受けられますし、不足があれば納付が必要です。書類は原本を保管し、e-Taxを利用すれば添付方法が変わる場合がありますので、国税庁の案内や税務署に確認してください。
乙欄が適用される主な条件
はじめに
乙欄が適用されるのは、主に「給与の受け取り側が事前の申告をしていない場合」や「主たる給与が別にある場合」などです。ここでは分かりやすく条件と具体例を挙げます。
主な条件
- 扶養控除等申告書を提出していない
- 新しく入った職場で申告書を出していないと、原則として乙欄で源泉徴収されます。例：初日を過ぎて申告書を提出し忘れたアルバイト。
- 他に主たる給与がある（そちらに申告書を提出している）
- 正社員としての給料に申告を出している場合、副業の給与は乙欄になります。例：正社員＋副業のコンビニバイト。
- 勤務期間が短い・臨時雇用
- 1か月や数日だけの短期バイトは、給与計算が簡便な乙欄になることが多いです。
- 退職後に支払われる給与・賞与など
- 退職後に支払う残業代や賞与は、申告書の提出が間に合わず乙欄で源泉徴収される場合があります。
確認しておくと良いこと
- その職場に扶養控除等申告書を出せるか
- どの給与が“主たる給与”に当たるか
- 源泉徴収票は必ず受け取り、年末調整や確定申告で調整すること
上記を確認すれば、なぜ乙欄になったかが分かりやすくなります。分からない点は勤務先の給与担当に相談してください。
乙欄で源泉徴収されるとどうなる？
1) 手取りが一時的に減る
乙欄は甲欄より高い税率で源泉徴収します。給料や報酬から差し引かれる税金が多くなるため、受け取る手取りが一時的に少なく感じます。たとえば、同じ支払額でも甲欄と比べて数千円〜数万円の差が出ることがあります。
2) 年末調整で精算されない
勤務先が年末調整を行わないか、乙欄の支払い分は年末調整の対象になりません。そのため、給与所得の過不足は年末に自動的に戻ってきません。
3) 確定申告で精算する必要がある
乙欄で多く引かれた税金は確定申告で精算します。確定申告を行うと、払い過ぎていれば還付、足りなければ追納となります。確定申告の手続きは翌年の確定申告期間に行います。
4) 準備する書類と注意点
必ず保管するもの：乙欄の源泉徴収票、他の給与の源泉徴収票、控除の証明書（社会保険料や生命保険料など）、マイナンバー確認書類。確定申告の際は源泉徴収票をもとに税額計算します。還付を受ける場合、申告が早いほど還付が早くなります。追納が生じる場合は納期限に注意してください。
退職後の具体的な流れ・注意点
1) 源泉徴収票を受け取ったらまず確認
退職後に受け取る源泉徴収票は、給与額や天引きされた所得税の金額が記載されています。氏名・マイナンバー・支払金額・源泉徴収税額が正しいかを必ず確認してください。誤りがあれば発行元の会社に問い合わせて再発行を依頼します。
2) 転職先への提出と年末調整について
転職先に提出しても、その会社の年末調整に含まれない場合があります。前職分は別に扱われることが多く、自分で確定申告をして精算する必要があります。転職先に渡す際は原本をコピーして控えを残してください。
3) 確定申告での手続き（流れ）
- すべての源泉徴収票をまとめる
- 必要書類（控除証明など）をそろえる
- 確定申告書を作成して税務署に提出（e-Taxも利用可）
- 過払いがあれば還付されます。申告期間を確認して期限内に手続きを行ってください。
4) 必要書類の例
- 全ての源泉徴収票（前職、現職）
- 保険料控除証明書（生命保険、地震保険など）
- 医療費控除の領収書（該当する場合）
- マイナンバーカードまたは通知カード、振込先銀行口座
5) よくある注意点
- 源泉徴収票を紛失しないように保管する
- 発行が遅れている場合は早めに会社へ連絡する
- 期限を過ぎると還付手続きが遅れることがある
複数の源泉徴収票がある場合は、合算して申告することで正しい税額が計算されます。手続きに不安があるときは税務署や税理士に相談してください。
まとめ：乙欄の源泉徴収票を受け取ったらどうする？
1) まず確認すること
受け取った源泉徴収票で「支払金額」「源泉徴収税額」「支払者名」を確認してください。これらが申告時の基本情報になります。特に年末調整を受けていない旨（乙欄扱い）を確認します。
2) 確定申告の準備
乙欄は年末調整の対象外です。自分で確定申告を行う必要があります。準備する書類は源泉徴収票のほか、控除を受けるための領収書（医療費、社会保険料、生命保険料など）です。申告はe-Taxまたは税務署窓口で行えます。
3) 申告でのポイント
- 複数の乙欄収入がある場合は合算して申告します。\n- 源泉徴収額が多ければ還付、少なければ追加納付になります。\n- 期限（通常は翌年3月15日）を過ぎると延滞税が発生する可能性があるので注意してください。
4) 実務上の注意と相談先
手取りが予想より少ない場合や、申告方法に不安がある場合は税務署や税理士に相談するのが有効です。短期雇用や退職後の収入で乙欄になったケースはよくあるので、早めに書類をそろえて対応してください。
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