はじめに
目的
本資料は、退職時期や退職者の年代別傾向、退職理由や業界ごとの違いを分かりやすく伝えることを目的としています。企業の人事担当者は人材戦略の参考に、働く個人は自分のキャリア選択の判断材料にしていただけます。
本資料で扱う主な内容
- 年代別の退職者数ランキング(20代が最も多い傾向)
- 退職が集中しやすい時期(年度末、ボーナス後など)
- 離職率が低い企業の特徴
- 早期退職の主な理由と傾向
- 業界別の退職時期の違い
各項目は統計データを基に整理し、具体例を交えて解説します。専門用語は最小限に抑え、読みやすさを重視しました。
利用上の注意
本資料は集計データをもとにした一般的な傾向の紹介です。個別の企業や個人の事情により結果は異なります。数値や順位は調査時点の状態を反映しており、時間とともに変わる可能性があります。具体的な対策や判断を行う際は、自社のデータや専門家の助言と併せてご活用ください。
この先の章で、年代別ランキングや退職理由の詳細、退職日を決める際のポイントなどを順に解説していきます。ご自身の状況に合わせて読み進めてください。
最も退職している年代ランキング
ランキング(割合)
- 20代:30.5%(最も高い)
- 30代:20.0%
- 新入社員(入社1年未満):9.5%
- 60代以上:9.0%
- 40代:4.5%
- 50代:3.0%
傾向の解説
20代の退職が突出して多い背景には、働き方やキャリアの模索期であること、入社時の期待と実際の業務のミスマッチ、将来性への不安が挙げられます。転職のハードルが比較的低く、早い段階で環境を変える選択をする方が多いです。
30代は職責の増加や昇進・昇格の停滞、家庭や生活の変化が重なり退職につながることが多いです。企業が育成に投資した人材が離れる点で影響が大きい年代です。
新入社員の早期離職はオンボーディング不足や職場の雰囲気の不一致、60代以上の退職は定年や健康、介護などライフイベントが主因となります。
企業が特に抑えたい年代と理由
- 30代(28.5%):管理職候補や中核人材が多く、離職は組織の安定性に直結します。
- 20代(27.0%):将来の戦力であり、早期離職を防げれば長期的な成長につながります。
具体的な対策例
- 20代向け:入社1年目の定期面談やローテーションで適性を早めに見極める。キャリア相談窓口を設ける。
- 30代向け:昇進ルートや報酬の透明化、リーダー育成プログラムを提供する。
- 全世代共通:業務負荷の見直し、メンター制度、スキル研修、柔軟な働き方の導入。
これらの対策を組み合わせることで、年代ごとの課題に的確に対応できます。
退職率が低い大企業ランキング
はじめに
離職率が低い企業は、社員の定着や働きやすさで評価されます。ここでは代表的な企業と、その共通点をわかりやすく紹介します。
ランキング(抜粋)
- 大阪ガス:退職率 約1.1%
- 三井不動産:退職率 約0.8%
- 王子ホールディングス:退職率 2.0%未満
数値は企業公表や報告書の例を基にしています。業種や雇用形態で差が出る点にご注意ください。
低退職率の共通点
- 柔軟な働き方:時短勤務やテレワークを導入し、ライフステージに合わせた働き方を許容します。
- 教育研修の充実:新入社員研修だけでなく、キャリア研修やスキルアップ支援を継続的に行います。
- 福利厚生の充実:住宅手当や健康支援、家族向け制度などで生活面を支えます。
- キャリアパスの明確化:昇進や職務の選択肢を示し、将来像が描きやすくなっています。
企業が実施している具体策
- メンター制度や社内公募で社内異動を促進
- 外部研修や資格取得支援の費用補助
- 育児・介護休業の柔軟な運用
求職者が見るべきポイント
- 退職率だけで判断せず、理由や制度の内容を確認してください。
- 社内のキャリア支援や働き方に関する実例を面接で尋ねると具体的な情報が得られます。
企業は制度と運用の両方で社員の定着を図ります。数値と制度の両面をチェックすることをおすすめします。
退職に選ばれやすい時期・タイミング
概要
退職が多い時期と背景を分かりやすく整理します。会社側の区切りや個人の事情が重なり、一定のタイミングに退職が集中します。
年度末(3月)
多くの企業は年度区切りで人事異動や組織改編を行います。そのため引き継ぎ先が決まりやすく、4月からの体制変更に合わせて退職を選ぶ人が増えます。例えばプロジェクトが3月で区切れると、後任に渡しやすく辞めやすくなります。
ボーナス支給後(夏・冬)
夏・冬の賞与を受け取った直後に辞めるケースが多いです。金銭的な安心を得たうえで転職や独立に踏み切るためです。例えば12月賞与を受けて翌年1月に退職届を出す人が目立ちます。
転職市場が活発な時期(春・秋)
4月や9〜10月は求人が増え、選択肢が広がります。次の職場を探しやすいため、この時期を狙って退職時期を決める人が多いです。
定年退職の多い時期
定年は誕生月末や年度末に合わせる会社が多く、3月末に退職する例がよく見られます。年齢に応じた手続きの都合も影響します。
その他のタイミング
人事異動直後や大きなプロジェクト完了後、結婚・出産などのライフイベント時にも退職が増えます。
退職日を決める際の実務ポイント
・引き継ぎに必要な期間を見積もる
・賞与や有給の消化時期を確認する
・上司や人事へ早めに相談する
・失業給付など公的手続きの期限を把握する
これらを踏まえ、自分と職場の事情を照らし合わせて最適な時期を選んでください。
早期退職の傾向と理由ランキング
概要
入社3年以内に退職する割合は約3割と高めです。特に転職して1年以内の退職でも、理由の順位は変わらず「人間関係」が最も多く挙がります。
早期退職 理由ランキング(上位5)
- 人間関係
- 上司との相性や職場の雰囲気が合わない例が多いです。例えば指示が曖昧で不信感が募る場合など。
-
対策:入社直後の面談やメンター制度で早めに相談できる場を設けると効果的です。
-
労働条件の悪さ
- 長時間労働や残業の常態化、休暇が取りにくい環境が原因になります。
-
対策:就業ルールの明確化や配属前の労働時間の確認が重要です。
-
収入の不満
- 想定より低い給与や昇給の見通しが立たないことが理由になります。
-
対策:求人票と契約書の比較、給与制度の説明を求めましょう。
-
会社都合
-
配置転換や事業縮小で本人の意思と合わない異動が起こることがあります。
-
定年・契約満了
- 契約社員などで期限満了に伴う退職が含まれます。
傾向メモ
人間関係は特に短期離職で強く影響します。採用側は入社後のフォローを強化し、求職者は面接で職場の雰囲気や働き方を具体的に確認すると早期退職を減らせます。
退職日を決める際のポイント
就業規則と法的ルール
基本は就業規則の定めた申告期間(1〜3ヶ月)を守って退職日を決めます。民法上は2週間前に申し出れば退職できますが、職場のルールや業務引継ぎを考えると就業規則に従うのが無難です。
社会保険・年金の切り替え
退職日の翌日から保険や年金の資格が変わる場合があります。次の就職先で社会保険に加入するか、離職中は国民健康保険・国民年金に加入する必要がある点を確認してください。
次の就職先との入社日の調整
入社日を受ける側と相談し、給与支払いや有給消化を踏まえて調整します。有給を消化してから再就職するか、退職日と入社日の間に空白期間を設けるかを決めます。
円満退職に望ましい時期
年度末(3月)やボーナス支給後は会社側の整理がつきやすく、協力を得やすい傾向があります。業務繁忙期や大きなプロジェクト期間は避けると円満に進みやすいです。
実務チェックリスト(例)
- 就業規則の申告期間を確認
- 上司へ口頭で相談→書面で提出
- 有給・最終給与・賞与の扱い確認
- 社会保険・年金の手続き確認
- 引継ぎ資料と引継ぎ日程を作成
これらを順に進めれば、混乱を減らして円満に退職できます。
業界ごとの傾向・特記事項
医療・福祉(看護師含む)
年度末(3月)や入職・転職が増える時期(3月・6月)に退職が多くなります。理由はシフト調整や新年度の人員入れ替えが関係します。具体例として、子育てや夜勤負担を理由に家庭の都合で退職する人が目立ちます。
IT・情報通信
プロジェクト単位の契約や需要変動で転職が活発です。新しい技術を学びたい若手が職場を変える例が多く、年次よりもスキルアップのタイミングで動く傾向があります。
製造・建設
繁忙期や工期の切れ目で退職が増えます。体力的負担や現場の長時間労働が理由となることが多く、待遇改善が退職抑制につながります。
サービス・飲食、小売
人手不足で求人が多い一方、短期離職も多い業界です。シフトの急変や低賃金を理由に若年層の早期退職が目立ちます。
公務員・教育
定年まで勤める人が多い一方、異動や職場環境で辞めるケースもあります。教育分野では年度替わりで退職や転職が起きやすいです。
退職代行サービスの利用傾向
利用は20〜30代が中心です。業種ではサービス業や小売、ITの若手で利用が多い傾向があります。直接交渉を避けたい、すぐ辞めたいというニーズが背景にあります。
定年退職の時期傾向
定年退職は年度末や誕生月末に合わせる人が多いです。手続きや次の生活設計を考え、区切りの良い時期を選ぶ傾向があります。


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