はじめに
本調査は、5月に退職する人が多い背景と、その際に知っておきたいポイントを分かりやすくまとめたガイドです。退職を考えている方や、その家族、職場で相談を受ける方に向けて書いています。
本文では次の点を扱います。
- 5月に退職者が集中する主な理由(例:年度切り替えや引越しの都合)
- 5月退職のメリット・デメリット(生活面・手続き面から具体例付きで説明)
- 社会保険料や税金の扱いが退職時期でどう変わるか
- 退職時に注意すべき手続きやタイミングのコツ
各章は実例や図式を使って、実務で役立つ情報を優先して解説します。読み終える頃には、退職の時期を決める際に必要な要素が整理でき、次に取るべき行動が明確になります。まずは第2章で、なぜ5月に退職者が増えるのかを見ていきましょう。
5月に退職者が多い理由
概要
5月は業務が比較的落ち着き、繁忙期を避けられるため退職しやすい時期です。ゴールデンウィークをきっかけに将来を考え直し、決意が固まる人が増えます。企業側でもボーナス支給のタイミングや人件費の調整を考え、退職を受け入れやすい傾向があります。
理由1:業務の繁閑(ひんかん)差
多くの企業で繁忙期は年度末や決算期に集中します。4月は新年度の始まりで業務が落ち着くため、5月に退職手続きや引継ぎを進めやすくなります。たとえば顧客対応の件数が減り、残業が少なくなる会社では時間を確保して退職準備できます。
理由2:ボーナス前の調整
ボーナス支給の前後で人件費の管理をする企業が多いです。5月に退職すると会社側は賞与支給の負担を避けやすく、個人も翌月以降の手続きや給与調整を見据えて行動できます。給与面のタイミング調整が、退職時期の選択に影響します。
理由3:大型連休での判断
ゴールデンウィークなど長期休暇は、普段と違う時間の中で家族や友人と話したり、自分の働き方を見直したりする機会になります。休暇中に将来設計を考え、帰省や旅行先で決意が固まる人が多いです。
理由4:休み明けのモチベーション低下
長期休暇明けに仕事へ戻ると、やる気が出ないと感じる人がいます。連休でリセットされた気持ちが続かず、転職や退職を現実的に検討するきっかけになります。
補足:次の職場や手続きの都合
新しい職場の入社時期や保険・年金の手続きの都合も、退職時期の判断に影響します。例えば次の勤務開始が夏以降で調整したい場合、5月退職が都合よいことがあります。
5月退職のデメリット
夏のボーナスを受け取れない可能性
多くの会社は賞与(ボーナス)を支給する際に在籍を条件にします。5月に退職すると、夏のボーナス支給対象から外れる可能性が高く、賞与がまるごと支払われないことがあります。例えば、支給基準が「6月1日時点で在籍していること」の場合、5月末退職だと対象外になります。
住民税の一括徴収で手取りが減る
退職月に前年分の住民税が一括で徴収されると、給与から多額が差し引かれて手取りが大きく減ります。たとえば年額12万円の住民税を分割で支払っている人は、通常は月1万円ずつですが、会社が退職時に一括徴収すると一度に12万円が引かれます。
給与を超える場合は普通徴収への変更を検討
住民税の一括徴収額が退職月の給与を超える場合、納税方法を『普通徴収(自分で支払う方法)』に変更する選択肢があります。市区町村役場に相談すると手続き方法を教えてもらえます。退職前に会社と税務署(または市役所)に確認すると手続きがスムーズです。
その他のデメリット(簡潔に)
- 健康保険や年金の切替手続きが必要になり、空白期間が生じると負担が増える場合があります。
- 年末調整や源泉徴収の扱いで手続きが発生することがあります。
退職タイミングによる不利益を避けるため、退職前にボーナスの支給条件と住民税の扱いを必ず確認してください。必要なら市区町村や会社の人事に早めに相談すると安心です。
退職日のタイミングによる社会保険料の違い
基本の考え方
社会保険の資格喪失日は原則として退職日の属する月の末日になります。たとえば5月30日に退職すると、資格喪失日は5月31日となり、会社側の扱いで社会保険料は4月分までしか給与から差し引かれないことが多いです。これにより5月の保険料を節約できる可能性があります。
具体例
- 5月30日に退職:資格喪失日5月31日→会社は4月分までを控除することが多い
- 5月15日に退職:資格喪失日5月31日でも、給与計算の関係で5月分の調整が発生する場合あり
月末退職の利点
月末退職は給与や有給休暇の精算が明確になりやすく、社会保険料の負担を抑えられる場合があります。手続きもまとまりやすく、トラブル回避に有利です。
注意点
会社の給与締めや支払日、社会保険の取り扱いは企業ごとに異なります。最終的には人事・総務に確認して、退職日を決めると安心です。
5月退職時の注意点
月末退職をおすすめする理由
5月末で退職すると給与や保険料の計算がすっきりします。会社側の給与締めや社会保険の取り扱いと合うため、清算が円滑になります。転職先が決まっている場合は、入社日の調整で収入の途切れを防げます。
給与・有給の扱い
最終給与に残業代や未払い手当が正しく含まれるか確認してください。有給を消化する場合は事前に申請し、買い取りになるかを会社規定で確認しましょう。
社会保険・雇用保険の手続き
雇用保険の給付を受けるなら、離職票が必要です。退職後の健康保険は国民健康保険に加入するか、配偶者の扶養に入るかを早めに決めて手続きを進めてください。
税金と書類の準備
年内に再就職しない場合は確定申告が必要になることがあります。源泉徴収票や離職票など、退職後に必要な書類は会社に請求して受け取っておきましょう。
手続きの流れと連絡のポイント
就業規則で退職の通知期間を確認し、上司や人事に早めに伝えて引き継ぎ計画を立ててください。最終的な清算日や各種証明書の発行時期を確認すると安心です。
まとめと推奨事項
要点のまとめ
5月はゴールデンウィークをきっかけに退職を決めやすく、企業側も繁忙期を避けて受け入れやすい時期です。メリットとして引き継ぎや転職活動が行いやすい点が挙げられます。一方で夏のボーナスを受け取れない可能性や、住民税の一括徴収・手続きの負担などのデメリットがあります。社会保険や税金の扱いは退職日で変わるため、確認が重要です。
推奨事項
- 退職日を決める前に給与や賞与の支給条件、社会保険の扱いを人事に確認してください。
- 有給消化や引き継ぎのスケジュールを早めに作成し、文書で合意を取っておきます。
- 住民税や健康保険の切替えは市区町村や勤務先の担当窓口に確認し、必要書類を揃えておきます。
- ボーナスの有無や退職金の取り扱いは就業規則や雇用契約で確認し、疑問があれば書面で求めてください。
- 不安がある場合は社労士やハローワークに相談することを検討してください。
退職は生活に直結する手続きです。事前に情報を整理して、安心して次の一歩を踏み出せるよう準備しましょう。


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