はじめに
本記事の目的
退職に関する書類は、種類や扱い方を誤るとトラブルにつながります。本記事は「退職願」と「退職届」の違いをわかりやすく解説し、正しい書き方や提出のタイミング、マナーまで丁寧に説明します。
誰に向けた記事か
- 退職を考えている社員の方
- 退職手続きを初めて経験する方
- 人事や総務で手順を整えたい担当者の方
本記事で得られること
- 退職願と退職届の役割の違いが理解できます
- いつ、どのように提出すればよいかがわかります
- 書き方のポイントとテンプレートを使って実際に書けます
- 提出時のマナーや注意点、辞表との違いも把握できます
記事の構成について
全9章で段階的に説明します。次章からは定義と違いに入ります。実例やテンプレートを交え、迷わず手続きを進められるようにします。
退職願と退職届の定義と違い
定義
-
退職願:従業員が会社に退職の意思を伝え「お願い」する書面です。退職日が未確定のときや、まず相談したいときに使います。提出後も原則として撤回できます。
-
退職届:退職の意思を正式に「通知」する書面です。会社が受理した時点で退職が確定することが多く、原則として撤回できません。
受理と効力の違い
退職願は会社との話し合いを前提とします。退職届は受理されれば効力が生じる場合が多いです。就業規則や会社の運用で扱いが異なることがあるため、事前に確認してください。
使い分けの目安
- まず上司と相談して調整したい:退職願
- 決意が固まり、正式に手続きを進めたい:退職届
撤回についての注意
退職願は事情が変われば撤回や取り下げが可能です。退職届は受理後に撤回が難しいため、提出前によく確認してください。
書き方のポイント(簡単)
退職願は「お願い」や希望日を柔らかく書きます。退職届は断定的な表現で要点を明確にします。提出前に社内ルールを確認すると安心です。
退職願・退職届の提出タイミングと流れ
提出の基本的な流れ
通常はまず直属の上司に退職の意思を口頭で伝え、退職願を提出して会社の承諾を得ます。承諾後に正式な退職日が決まったら退職届を提出します。企業によっては独自の申請用紙や提出様式がありますので、就業規則を必ず確認してください。
退職願を出すタイミング
・退職の1〜3か月前に伝えるのが一般的です(業務や引き継ぎ期間により変動)。
・まずは上司と面談し、退職の理由や希望時期を相談します。書面は面談後に提出するとスムーズです。
退職届を出すタイミング
・会社が退職を承認し、退職日が確定した後に提出します。
・退職届は効力のある正式な書面になるため、内容や日付を必ず確認してください。
会社手続きと注意点
・就業規則や雇用契約で定められた手続きに従ってください。
・人事担当にも早めに連絡し、必要書類や年次有給、社会保険の扱いを確認しましょう。
引き継ぎと周囲への連絡
・引き継ぎ資料作成、後任への引継ぎを計画的に行います。顧客対応やプロジェクトの引継ぎ日時も明確にしましょう。
・同僚や関係部署への連絡は上司と相談して段取りを決めます。
例外や特別なケース
・即日退職や合意が難しい場合は、労働相談窓口や専門家に相談してください。
退職願・退職届の書き方のポイント
タイトルと書き出し
文書の上部に「退職願」または「退職届」と明記します。書き出しは「私儀(私事)」から始めるのが一般的です。読み手に失礼がないよう、まず意図を明確に示します。
退職理由の書き方
理由は簡潔に「一身上の都合により」と記します。具体的な私的事情を書く必要はありません。会社側が確認を求める場合は別途説明します。
日付の記載
退職願では「希望退職日」を記載します(例:令和○年○月○日をもって退職を希望します)。退職届では「確定した退職日」を記載し事実を報告します。
文末の表現
退職願はお願いの形にします(例:何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます)。退職届は事実の報告にして簡潔に結びます。
必要な記載事項
届出日、所属部署、氏名(フルネーム)、押印を忘れずに記載します。押印はシャチハタ不可の印鑑を使ってください。
宛名とその他の注意
宛名は会社の代表取締役社長のフルネーム+「殿」が一般的です。手書きでもパソコン作成でも構いませんが、署名と押印は明瞭にします。コピーを控えとして保管すると安心です。
退職願・退職届のテンプレート・例文
退職願(テンプレート)
退職願
私儀
一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
〇年〇月〇日
所属:〇〇部
氏名:山田太郎(捺印)
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇 殿
退職届(テンプレート)
退職届
私儀
一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたします。
〇年〇月〇日
所属:〇〇部
氏名:山田太郎(捺印)
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇 殿
記入のポイント
- 日付は「年・月・日」を明確に記入します。口頭で伝えた日と混同しないようにしましょう。
- 所属と氏名は正確に。氏名は必ず押印してください(会社の慣習に合わせます)。
- 宛先は代表取締役社長宛が一般的ですが、会社の指示に従ってください。
例文(記入例)
退職願
私儀
一身上の都合により、2025年11月30日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
2025年9月30日
所属:営業部
氏名:山田太郎(捺印)
株式会社〇〇
代表取締役社長 佐藤一郎 殿
必要に応じて、理由欄を簡潔に記す・上司に相談して提出時期を調整するなど工夫してください。
退職願・退職届の提出マナー・注意点
提出方法とタイミング
直属の上司に直接手渡しするのが基本です。忙しい時間帯や会議中を避け、あらかじめ面談のお願いをしてから渡してください。退職日は余裕をもって伝えると引き継ぎがスムーズです。
封筒と書式のマナー
封筒は白無地を用い、表に「退職願」または「退職届」と記載します。裏面に所属と氏名を書いてください。手書きが一般的ですが、社内でPC作成が許容されている場合や会社指定フォーマットがあればそれに従います。
手渡しの際の振る舞い
短く落ち着いて伝え、感謝の言葉を添えます。感情的にならず、業務の引き継ぎ方や最終出社日についても簡潔に触れると印象が良くなります。
郵送・メールでの注意点
やむを得ず郵送する場合は書留や配達記録を利用して到達を証明してください。メールで送る際は件名を明確にし、添付にファイル形式と氏名を入れます。会社の方針に従うことを最優先にしてください。
撤回・取り下げの扱い
退職願は承認前なら撤回可能なことが多いです。しかし退職届は受理されると原則撤回できないため、提出前に最終確認を行ってください。
その他の注意点
コピーを自分で保管し、部署や人によって手続きが異なる点に注意します。口頭での告知と書面提出の順序も会社の慣例に合わせてください。
辞表との違い
定義と対象
辞表は、取締役や役員、公務員など、役職(地位)を辞する際に提出する書類です。一般社員が職を辞めるために出す「退職届」や「退職願」とは用途が異なります。
誰が使うか
- 取締役・役員:会社の経営に携わる立場の人が提出します。取締役会や株主総会での手続きが関わることがあります。
- 公務員:身分や職務を辞する際に所定の手続きを踏んで提出します。
手続き上の違い
辞表は、単に会社に届けるだけで完了する場合は少なく、役員の辞任は社内の決議や登記、株主への報告など別の手続きが必要です。公務員の場合も許可や承認が求められることがあります。一般社員が提出する退職届は、上司に届け出て受理されれば退職の意思表示として扱われるのが通常です。
書き方の違い(例)
- 辞表の例:
「私、○○は一身上の都合により取締役の職を辞任いたします。年月日 氏名」 - 退職届の例:
「私、○○は一身上の都合により退職いたします。年月日 氏名」
注意点
役職を辞する際は、会社や所属機関の規程に従って手続きを進めてください。状況によっては法的な手続きや登記が伴うため、会社の担当部署と早めに相談することをおすすめします。
退職手続き全体の流れ
1. 退職の意思表示(相談と事前準備)
まず上司に口頭で退職の意思を伝えます。タイミングや理由を落ち着いて説明し、業務の引き継ぎや退職日候補を用意しておくと話が進みやすいです。
2. 退職願の提出(書面)
口頭で合意が得られたら、退職願を正式に提出します。簡潔に退職理由と希望退職日を記載します。
3. 退職日と引き継ぎの調整
会社と退職日を確定し、引き継ぎ計画を作成します。引き継ぎ資料(業務フロー、連絡先、未処理案件一覧)を用意し、後任や関係部署と引き継ぎミーティングを行います。
4. 退職届の提出(確定届)
最終合意後に退職届を提出します。退職日が確定したことを明記し、会社の指示に従って提出先に出します。
5. 人事・労務手続き
有給休暇の消化、最終給与の精算、源泉徴収票や雇用保険の手続き、健康保険・年金の資格喪失手続きが行われます。不明点は人事に早めに確認してください。
6. 最終出勤日と精算・挨拶
貸与物の返却、パソコンや名刺の整理、勤務実績や未払金の最終確認をします。退職日に向けて同僚へ挨拶やメールでの連絡を行います。
7. 退職後の手続き
転職先への書類提出、国民健康保険や国民年金への切替え、失業給付を申請する場合は離職票の受け取り・手続きが必要です。源泉徴収票など重要書類は大切に保管してください。
まとめ・ポイント
要点の整理
- 退職願は「お願い」の書面で、通常は撤回できます。状況により会社との合意が必要です。
- 退職届は「通知」の書面で、提出すると原則撤回できません。提出前に慎重に確認してください。
実務で押さえるポイント
- まず上司に口頭で相談してから、書面(退職願または退職届)を手渡しするのが基本です。
- 提出する書式は会社の規定や就業規則を確認して合わせます。誤字・脱字を避け、日付と氏名を明記してください。
- 退職日は会社と合意して決めます。業務の引継ぎや有給消化の取り扱いを早めに話し合ってください。
マナーと注意点
- 書面の控えを必ず残すこと。受領印やメールでの確認を受け取りましょう。
- 社内備品の返却や最終手続きは労務担当と連携して進めます。
- 円満退職のために、誠実で冷静な対応を心がけてください。
正しいフォーマットとマナーで作成・提出することが円満退職の第一歩です。就業規則の確認を忘れず、疑問があれば早めに相談してください。


コメント