はじめに
目的
この資料は、上司に退職の意思を伝える際の「言い方」と「進め方」を分かりやすくまとめたガイドです。適切なタイミングや表現、退職理由の伝え方、引き止められたときの対応などを具体例を交えて解説します。円満に退職したい人に向けた実践的な内容です。
対象読者
・初めて退職を伝える人
・言い方に不安がある人
・引き継ぎやマナーを確認したい人
本資料の使い方
各章は単独で読めるように作っています。まず第2章以降で基本的なアプローチを学び、第5章〜第7章で実際の伝え方や対応例を確認してください。事例はシンプルにしているので、自分の状況に合わせて言い換えて使ってください。
心構え
退職は個人的な決断ですが、職場との関係を大切にすることが将来のためになります。誠実で明確な伝え方を意識すると、相手も落ち着いて対応してくれます。
退職相談の基本的なアプローチ方法
アポイントメント取得の重要性
退職を伝える際は、立ち話で唐突に切り出さないことが大切です。落ち着いて話せる環境を用意し、上司と二人きりで向き合える時間を確保します。事前に時間を取ることで、相手も心の準備ができ、冷静に話が進みます。
アポイントの取り方(口頭)
短く丁寧に切り出します。例えば:「少しご相談したいことがあるのですが、後ほど15〜20分ほどお時間をいただけますか?」と伝えます。具体的な日時を提示すると調整がスムーズです。
アポイントの取り方(メール・チャット)
件名は簡潔に「相談のお願い」とし、本文は短めにします。例文:
「お疲れ様です。相談したいことがあり、15〜20分ほど二人でお話しできる時間をいただけないでしょうか。ご都合の良い日時を教えてください。よろしくお願いいたします。」
相手が多忙な場合は複数候補を示すと良いです。
当日の場所と話し方
会議室や応接室など、周囲が気にならない場所を選びます。始めは要点を伝え、「ご相談があります」「退職を考えています」と事実を短く述べます。理由は正直に、簡潔に説明し、詳細は求められたら補足します。メモを用意しておくと話がブレません。
注意点
公共の場やグループチャットで一斉に報告しないこと、相手を驚かせないことを心がけます。上司と直接会えない場合は、まずメールでアポを取り、面談が難しければ電話やオンラインで調整します。
退職相談を伝えるタイミングの重要性
はじめに
退職を伝えるタイミングは、退職後の円満な関係や引き継ぎのしやすさに直結します。目安を押さえて、相手に負担をかけすぎない配慮をしましょう。
目安:退職予定日の1〜3ヶ月前
一般的には1〜3ヶ月前に相談するのが良いです。この期間があれば会社は代替要員の手配や業務の引き継ぎ計画を立てられます。たとえば6月末に退職する予定なら、3月〜5月頃に上司へ相談すると調整がしやすくなります。
繁忙期や人事異動直後は避ける
忙しい時期に伝えると、誤解や余計な混乱を招くことがあります。繁忙期や大型プロジェクト、人事異動直後は可能な限り避け、上司の状況を確認してから伝えましょう。
伝える前に確認すること
- 自分の退職希望日とその理由を整理する
- 現在の業務と引き継ぎに必要な期間を見積もる
- 上司のスケジュールを確認し、面談のアポを取る
伝え方の例(簡潔)
「〇月末で退職を希望しています。引き継ぎ期間として約2ヶ月を想定しており、業務の引き継ぎ計画を一緒に作りたいです。」と伝えると、具体的な調整に進みやすいです。
注意点
社内のルール(就業規則の提出時期など)を確認し、必要な手続きを忘れないようにしましょう。周囲への配慮を意識すると、円満退職につながります。
退職を伝える際の心構えと報告意識
はじめに
退職を伝えるときは、相手への配慮を忘れずに、でも迷いを見せないことが大切です。ここでは「相談」ではなく「報告」として臨むための心構えと具体的な対応を説明します。
「相談」ではなく「報告」と自分に言い聞かせる
相談の形で切り出すと、引き止めや長い説得に巻き込まれやすくなります。意思は固いと自分に言い聞かせ、退職は最終決定であることを内心で確認してください。丁寧な言葉遣いは必要ですが、結論は明確に伝えます。
言い方のポイント
- 一文目で退職の意思を明確に述べる(曖昧にしない)。
- 感謝は伝えるが、許可を求めない表現にする。
- 希望日や引き継ぎの意向は続けて示す。
態度と準備
- 事前に伝える内容を要点にまとめ、口頭と書面(退職届)を準備します。
- 上司と一対一で落ち着いて話す場所を選びます。
- 練習して声のトーンと姿勢を整えます。過度の謝罪は避けます。
反応への対処
引き止めや質問が来たら、感謝を示しつつも決意を繰り返します。例:「お申し出に感謝しますが、私の決意は変わりません。引き継ぎは責任を持って行います。」長引く議論が続く場合は、後日改めて文書で提出すると伝えて一旦切り上げます。
具体的な言い回し例
- 「本日はご報告があります。私事で恐縮ですが、○月○日付で退職させていただきたく存じます。」
- 「在職中は大変お世話になりました。退職の意思は固く、引き継ぎは責任を持って行います。」
実際に伝える時は、丁寧さと堅さのバランスを保ち、自分の決意が相手に伝わるよう心がけてください。
退職希望日の伝え方の基本構成
基本の流れ
退職を伝える基本は「お詫びの言葉+退職意思の表示」です。最初に急な話であることを詫び、続けて具体的な希望日を明確に伝えます。例:「突然で申し訳ないのですが、〇月末での退職を希望しています。」「急なことで申し訳ございませんが、退職させていただきたく本日はお時間をいただきました。」
具体的な例文
- はっきり告知型:
「本日はお時間をいただきありがとうございます。〇月〇日付で退職を希望しております。」 - 相談ベース:
「〇月〇日での退職を希望していますが、ご都合や手続き上いかがでしょうか?」 - フォロー用メール:
「本日の面談でお伝えした通り、〇月〇日での退職を希望します。手続き等ご指示をお願いいたします。」
伝えるときのポイント
- 日付は具体的に示す。曖昧にせず期日を明確にします。
- 会社の就業規則や引継ぎ期間を確認し、可能なら代替案を用意します。
- 相手の反応を待ち、相談の余地を残すと角が立ちにくいです。
注意点と報告後の対応
- 口頭報告後は必ず書面(メール)で確認します。これで誤解を防げます。
- 感謝の意や引継ぎへの協力姿勢も伝えましょう。これで円滑に話を進めやすくなります。
退職理由の適切な伝え方
はじめに
退職理由は短く、前向きに伝えることが大切です。相手に不快感を与えず、次の一歩を丁寧に示すことで、円満な退職につながります。
ポジティブに伝える基本
・結論を先に言う(例:「新しい分野で経験を深めたいです」)。
・理由は具体例を添える(これまでの経験や学びを活かしたいなど)。
・感謝を示す(在職中の学びや支援への感謝を一言添える)。
職場への不満や人間関係の扱い方
ネガティブな事実をそのまま話さないでください。直接的な不満は対立を生みます。どうしても触れる場合は「業務内容と自分の適性に差がありました」など、個人の適性に帰する表現にします。
体調・精神的理由の伝え方
体調やメンタルが理由なら「一身上の都合」と伝して差し支えありません。必要なら医師の診断書を示す旨を伝えます。詳細を求められても無理に語らず、療養が必要だと落ち着いて説明してください。
転職先の情報の扱い方
転職先の社名は必ずしも伝える必要はありません。聞かれたときは「まだ決めていません」や「差し控えさせてください」と答えて構いません。誠実に、しかし自分の範囲で対応します。
伝え方の例文
1) 「これまでの経験を活かし、新しい分野で挑戦したく、退職を希望します。これまでお世話になりありがとうございました。」
2) 「個人で事業を始めるため退職します。引き継ぎは責任をもって進めます。」
3) 「体調面の理由により、一身上の都合で退職を希望します。必要であれば診断書を提出します。」
以上の点を意識して、簡潔で丁寧に伝えてください。
引き止められた場合の対応方法
上司に引き止められたときの基本対応
まずは感謝をはっきり伝えます。相手の好意や評価を受け止めることで、冷静なやり取りが続けられます。その上で、退職の意思は揺るがないことを短く明確に伝えます。
伝え方の順序と例文
- 感謝を述べる:例「お声がけいただき大変うれしく思います」
- 意思表明:例「大変ありがたいのですが、私の中ではすでに心が決まっております」
- 理由(簡潔に):例「家庭の事情/新しい挑戦のため」
- 協力の申し出:例「引き継ぎは責任を持って対応します」
条件提示で揺らがないために
提示された条件は一度受け止めてから、家族や信頼できる人と相談すると伝えます。長時間その場で判断しない旨を明確にし、決断を先延ばしにする場合でも締め切りを設定します。
感情的にならないための注意点
提案や叱責に感情的に反応せず、ゆっくり深呼吸してから応答します。言い争いを避け、記録(メールやメモ)を残すことをお勧めします。
人事や第三者を交える場面
上司との会話で解決が難しい場合は、人事に正式に報告し、面談を設定してもらいましょう。プロセスを公正に進められます。
退職受け入れ後の対応と引き継ぎ
感謝の表明と前向きな姿勢
退職が受け入れられたら、まず感謝を伝えます。例:「これまで親身にご指導いただいたこと、心より感謝しております。」と口頭やメールで伝えます。同時に引き継ぎに協力する姿勢も示します。例:「引き継ぎも精いっぱい行いますので、〇月末までよろしくお願いいたします。」
引き継ぎ計画の作成
担当業務を洗い出し、優先順位と期限を決めます。引き継ぐ項目ごとに現状、今後の注意点、残作業を明記します。関係者と早めに共有して合意を得ます。
ドキュメントの整備
作業手順、連絡先、ファイルの保存場所、ログやパスワード管理方法を分かりやすくまとめます。図やスクリーンショットを添えると理解が速くなります。
引き継ぎミーティングの進め方
アジェンダを用意し、実演を交えて説明します。相手の理解度を確認し、その場で質問に答えます。録音や議事録を残すと後で便利です。
残務管理と最終確認
残作業はチェックリスト化し、完了時にサインやメールで報告します。引き継ぎ完了後も短期間はフォロー可能な旨を伝えると安心感が生まれます。
円満退職につながる態度
最後まで責任を持ち、誠実に対応します。感謝の言葉と具体的な協力で、職場との良好な関係を保ちながら退職できます。
精神的理由や体調不良による退職の伝え方
伝える前の準備
退職を伝える前に、主治医の意見や診断書を確認します。医師の判断があると会社側も対応しやすくなります。必要な手続き(健康保険・年金・雇用保険の確認)も把握しておくと安心です。
伝え方の基本方針
病名や細かい症状を必ずしも詳しく話す必要はありません。本人の負担を減らすため、事実と希望を簡潔に伝えます。例文をいくつか示します。
- 「このところ体調が優れず、医師とも相談した結果、退職を希望しています。」
- 「精神的な不調により業務継続が難しくなったため、退職させていただきたいです。」
- 「医師から休職・退職を勧められており、正式に手続きをお願いできますか。」
伝える相手と方法
まずは直属の上司に面談で伝えます。対面が難しければ電話やWEB面談でも構いません。人事部への相談を同時に進めると手続きがスムーズです。
診断書や証明の扱い
診断書は必要な範囲で提出します。個人情報は社内でも限られた担当者に共有してもらうよう依頼してください。プライバシーを守る権利があります。
引き継ぎや退職後の連絡
可能なら引き継ぎ案を用意します。体調優先で無理がある場合は、同僚や人事と協力して分担を相談しましょう。退職後も医療機関の受診や休養を優先してください。
緊急時の対応
自傷や重い症状がある場合は、まず医療機関に連絡してください。会社への連絡は落ち着いてからで構いません。


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