はじめに
本章の目的
退職の相談を切り出すときの基本をやさしく整理します。目的は、直属の上司に迷惑をかけずに自分の意思を伝え、次の対応にスムーズにつなげることです。
なぜ落ち着いて伝えるか
退職は感情が動きやすい話題です。感情が高ぶると誤解や不必要な摩擦が生まれます。落ち着いて話すと、相手も冷静に受け止めやすく、引き継ぎ計画など具体的な話に進みやすくなります。
相談前に押さえる基本ポイント
- 退職時期:いつまでに辞めたいかを明確にします。例:1か月後、3か月後など。
- 理由:できるだけ簡潔で前向きに伝えられる表現を準備します。例:キャリアの方向性や家庭の事情。
- 希望する引き継ぎ案:主要業務の引き継ぎ方法をざっくり考えておくと印象が良くなります。
本書(全章)の流れ
次の章で事前整理、切り出すタイミング、最初の一言、伝える流れ、やりづらいときの工夫を具体例とともに説明します。順を追って準備すれば、伝えやすくなります。
事前に整理しておくこと
目的を明確にする
退職の第一歩は、いつ辞めたいか(例:〇月末)と大枠の理由を自分の中で言葉にすることです。具体的な時期があると上司との調整や引き継ぎ計画が立てやすくなります。
前向きな理由に整える
不満の羅列ではなく、「今後こうしたい」という前向きな言い方を用意してください。例:
– 専門性を高めたい(例:プロジェクト管理を深めたい)
– 別の業界で経験を積みたい
– 家庭の事情で時間の使い方を変えたい
短い一文で伝えられるようにすると誤解が少なくなります。
具体的な説明の準備
退職理由の裏付けとなる事実を2〜3点ほど用意します。成果や経験、学びたい分野、ライフプランなど具体例を挙げると説得力が増します。
引き継ぎのイメージを描く
誰に何を引き継ぐか、想定される期間と主要タスクを書き出しておきます。引き継ぎ案を示すことで話がスムーズに進みます。
手続きや生活面の確認
給与、保険、退職金、残業代、有給の消化などの基本事項を確認してください。転職先が決まっている場合は開始日の調整も重要です。
身近な相談相手を決める
家族や信頼できる友人に先に相談しておくと気持ちが整理しやすくなります。感情的になりそうな点を共有しておくと、実際の報告時に落ち着いて話せます。
伝え方の簡単な例(参考)
「〇月末で退職を考えております。理由は◯◯を深めたいと考えているためです。引き継ぎは△△さんに主要業務をお願いし、1ヶ月で段階的に進める案を考えています。」
事前の準備で話しやすさが大きく変わります。整理しておくことで、相手に伝わりやすく、今後の道も明確になります。
話を切り出すタイミング
概要
日中の慌ただしい時間は避けます。業務が一段落した頃や終業前など、相手が落ち着いているタイミングを選ぶと話がスムーズになります。
避けたほうがよい時間
- 朝の始業直後(緊急対応や朝礼がある)
- 昼休み直後や会議の直前
- 納期が近い繁忙時間
勧めのタイミング
- 午後の業務が一段落した後
- 定時の30分〜1時間前(急ぎでなければ)
- 相手のスケジュールに余裕がある時間帯
場所の選び方
個室や会議室など落ち着ける場所を確保します。オープンスペースで内容が漏れると誤解を招くため、プライベートな場所が望ましいです。
アポの取り方(例)
「ご相談したいことがありまして、お時間いただけますか?」と短く切り出し、相手の都合を聞いてから場所を決めます。急ぎの場合はその旨を一言添えます。
リモート時の工夫
チャットでまず時間を確認し、短いビデオ通話を設定します。会話の前に通信環境を整え、通知をオフにしておくと集中できます。
注意点
相手の表情や作業中かどうかを確認してから声をかけます。タイミングを間違えると受け止め方が変わるため、配慮を忘れないでください。
最初の一言・言い出し方
はじめに
面談が始まったら最初の一言で場が決まります。角を立てず、誠実さと配慮を示す言い方を心がけます。短く切り出すと受け止めやすくなります。
相談の形で切り出す(意思が固まっていない場合)
“突然のご相談で恐縮ですが、退職を考えており、ご相談のお時間をいただきました。”
この言い方は相手に検討の余地を残しつつ配慮を示します。
はっきり示す(意思が固い場合)
“突然で申し訳ありませんが、〇月末で退職させていただきたく、本日お時間を頂戴しました。”
結論を先に伝えると話がブレません。退職日を明示できるとより伝わりやすいです。
相手別の一言例
- 上司に対して:”お時間よろしいでしょうか。重要なご相談がありまして…”
- 人事に対して:”退職の意向について正式にお伝えしたく、本日はお時間をいただきました。”
言い方のコツ
- まず結論を短く伝える。理由は後で説明する。
- 感謝の言葉を添える(例:長い間お世話になりました)。
- 表情は落ち着いて、姿勢を正す。声は明瞭に。
予想される質問への短い対応例
- 退職理由を問われたら:”個人的な事情でして、詳細は差し控えさせてください。”
- 退職日を問われたら:”〇月〇日を考えておりますが、調整は可能です。”
最初の一言で丁寧さと確かさを示せば、その後の話し合いがスムーズになります。
実際に伝える流れの例
1. 事前にアポを取る
短く端的に伝えます。例:「ご相談があるのですが、少しお時間をいただけますか?」早めに時間を確保すると落ち着いて話せます。
2. 面談の冒頭で切り出す
面談が始まったら本題へ。例:「突然のご相談で恐縮ですが、〇月頃の退職を考えております。時期や引き継ぎについてご相談させてください。」率直に伝えると相手も対応しやすいです。
3. 退職理由は前向きに、感謝を添えて
例:「今後は〇〇に挑戦したく、その準備のため退職を決めました。これまでのご指導に感謝しています。」批判や愚痴は避け、前向きな理由を示します。
4. 具体的な時期と引き継ぎ案を示す
例:「希望時期は〇月末です。主要業務はAさんに引き継ぎ、マニュアルを作成します。引き継ぎ期間は約1カ月を想定しています。」具体案があると調整が進みます。
5. 最後に確認と協力のお願い
例:「ご迷惑をおかけしますが、ご相談の上で最善の方法を決めたいです。ご意見いただけますでしょうか。」相手の意見を求めて会話を閉じます。
やりづらい・怖いときの工夫
まずは「相談」として場を作る
いきなり「辞めます」と言うのではなく、「キャリアについて相談したいことがあります」と伝えて面談の場を作ると、気持ちが落ち着きます。相手も防御的になりにくく、話しやすい雰囲気を作れます。
事前に準備すること
- 話したいポイントを箇条書きで作る(理由、希望時期、引き継ぎ案など)。
- 重要な事実だけを短くまとめると伝えやすいです。
- 近しい人にロールプレイを頼み、言い方を試すと自信がつきます。
誰に相談するかの工夫
直属の上司が言いづらい場合は、信頼できる先輩や人事に先に相談してください。言い方やタイミングを一緒に考えてもらえます。社内で相談窓口があれば、まずそちらを使うのも安全です。
対面が難しいときの代替手段
- メールやチャットで面談希望を伝え、口頭は面談で行う方法があります。
- 書面で伝える場合は、感情的な表現を避け、事実と希望を簡潔に書きます。
- 例文(短く):「お時間をいただけますか。キャリアについて相談したいことがあります。ご都合の良い日時を教えてください。」
当日の小さな工夫
短く切り出す、深呼吸して話す、感情的になりそうなら一度中断を申し出る。相手の反応を書き留めておくと後で整理しやすくなります。もし不安が強ければ、同席を頼める人がいないか確認してください。


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