はじめに
退職を考えたとき「いつ退職届を出せばいいのか」「会社とトラブルにならないか」など、不安がつきものではないでしょうか。この記事は、退職届の提出時期や法律で定められた「14日前ルール」を中心に、実務で知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
この記事で扱うこと
- 退職届の提出期限(法律の考え方)
- 会社規則との関係と優先順位
- 退職届提出から退職日までの手続きの流れ
- 即日退職が認められる例外ケース
- パート・アルバイトや有期雇用での注意点
- 退職後に必要な手続き
誰に向けて書いたか
- 会社を辞めようとしている社員の方
- 退職の時期や方法で迷っている方
- 会社とのやり取りに不安がある方
各章は実務に即した説明と、具体的な例を交えて進めます。この記事を読むことで、退職の手続きを迷わず進められることを目指しています。
退職届の提出期限は法律で「14日前」と定められている
法律の根拠
民法第627条により、期間の定めのない雇用契約では、退職の意思表示から14日(2週間)経過すれば契約が終了すると定められています。つまり法律上は、会社に意思を伝えてから14日後に退職できます。
どの雇用に適用されるか
主に正社員などの無期雇用が対象です。契約期間が決まっている有期雇用(契約社員など)には別のルールがあるため、該当する場合は契約書を確認してください。
いつから数えるか(例)
一般には、退職の意思を伝えた日を起点に14日目に退職できます。たとえば4月1日に申し出れば、4月15日が退職日になります。
通知方法と実務上の注意点
法律は口頭でも成立しますが、混乱を避けるため書面(退職届)で提出し、受領印や控えを残すことをおすすめします。会社の就業規則や雇用契約で異なる定めがないかも事前に確認しましょう。
会社規則と法律の関係:どちらが優先される?
結論
法律(民法)の規定が優先され、一般に退職の申し出は14日前で効力が生じます。会社の就業規則で「1か月前」などとあっても、14日前に申し出があれば退職自体は認められます。ただし、円満退職や業務の引き継ぎを考えると、社内ルールに沿う対応が望ましいです。
法律と社則の関係をわかりやすく
民法上、雇用はどちらからでも契約解除できますが、通常は「相当の期間」の予告が必要とされています。実務上は14日(2週間)が目安とされています。会社の規則は社内での運用ルールであり、法律の効力を上回ることはできません。
実務で気をつけること
- 就業規則や雇用契約書をまず確認してください。
- 可能なら上司に早めに相談し、引き継ぎ計画を作成しましょう。
- 退職届は書面で提出し、控えを受け取ります。
- 会社が1か月を求める場合は、残務の整理や引き継ぎ方法を提案すると円満になりやすいです。
トラブルになったら
会社が退職を認めないと言っても、法的には退職できます。給与の未払いなど問題がある場合は、労働基準監督署や労働相談窓口に相談することをおすすめします。
退職届提出から退職日までの流れ
1. まずは退職の意思を伝える
退職の意思は、まず「退職届」を提出して正式に示します。口頭で伝えるだけでも意思表示になりますが、書面に残すと後のトラブルを防げます。
2. 法律上は提出日から14日後に退職成立
民法上、従業員が一方的に退職を申し出た場合、原則として提出日(申し出日)から14日後に退職が成立します。たとえば6月1日に提出すれば、6月15日が法律上の退職日です。
3. 実務上のやり取り(上司と日程を相談)
多くの会社では、上司と相談して実際の最終出社日を決めます。業務引き継ぎや欠員の手配を考慮して、会社側と合意のうえで退職日を早めたり延ばしたりすることが可能です。合意があれば、提出日から14日より早く退職できる場合もあります。
4. 手続きと引き継ぎの流れ
- 引き継ぎ計画を作成して、引き継ぐ業務と担当者を書き出す。
- 備品やカード類を返却する(PC、ID、備品など)。
- 人事・総務で最終給与、年休の精算、保険・年金の手続きを進める。
- 退職面談(退職理由や手続きの確認)を行う会社が多いです。
5. 退職届・退職願・辞表の違い
- 退職届:退職の意思を確定して会社に提出する書面。取り消しにくい。
- 退職願:願いの形で提出し、会社が受理すると退職となる。
- 辞表:役員や公務員が使うことが多い書式です。
6. 希望日が14日未満の場合
退職希望日が提出日から14日未満だと、会社はその日を退職日にする義務はありません。その場合、提出日から14日後が退職日になります。会社と合意が得られれば例外的に早めることができます。
7. 簡単な例
6月1日提出→法律上は6月15日退職。但し会社と6月10日で合意すれば6月10日が最終出社日になります。
この章では、提出から実際の退職日までに何を進めるかをイメージできるよう、手順と注意点をまとめました。
即日退職は原則不可。例外が認められるケース
原則として即日退職はできない
一般には、退職の意思を示したその日をもって即日退職することは認められません。事業の運営や引き継ぎのために一定の予告が必要だからです。可能であれば退職日は会社と相談して決めましょう。
会社と合意した場合の即日退職
会社側と合意すれば、書面やメールで即日退職に同意してもらえます。合意があれば両者トラブルを避けて退職できます。口約束だけでなく、後で証拠になるよう書面に残すと安心です。
やむを得ない事由がある場合
深刻な健康問題(急な入院や精神的な危機)、明らかな違法労働(長時間残業の強要や未払い賃金)、重大なハラスメントや暴力など、労働継続が著しく困難な場合は例外として即日退職が認められることがあります。医師の診断書や未払いの記録、やり取りの履歴など、証拠を集めておくことが重要です。
実務上の注意点
即日退職を考える際は、まず会社に事情を伝え書面で意思表示してください。体調不良なら診断書を用意し、違法行為があるなら労働基準監督署や労働相談窓口に相談しましょう。会社が同意しない場合でも退職の意思表示は有効ですが、後のトラブルを避けるため専門家に相談することをおすすめします。
パート・アルバイト、有期雇用の退職届提出期限
概要
パート・アルバイトや有期雇用は、正社員と違い「契約内容」や「就業規則」で提出期限が変わります。給料の支払い間隔や契約の種類によっては、14日前より長い期間を求められることがあります。まずは契約書を確認しましょう。
確認するポイント
- 雇用契約書/労働条件通知書:退職の申告期限が明記されているかを確認します。
- 就業規則:店舗や事業所ごとにルールが書かれています。パート専用の規定があることも多いです。
- 給与の締め日:月末締めの会社なら1か月前の申告で支払い処理が間に合う場合があります。
具体例(わかりやすく)
- シフト制のアルバイト:口頭で2週間前に伝えるケースが多いですが、契約で1か月とあれば1か月前に申告します。
- 有期契約(期間の定めあり):契約に「更新の意思表示は○日前」と書かれていればその期間が優先です。契約期間満了で辞める場合は、更新しない旨を期日内に伝えます。
- 報酬が月給や手当で複雑な場合:退職前に精算が必要なら早めに知らせた方が安全です。
実務的な手順
- 契約書と就業規則を確認する。書面がない場合は総務や店長に確認する。
- 必要な期間を守って書面で退職届を提出し、受領印やコピーを保管する。
- 退職日までの引き継ぎや最終給与の確認をする。
注意点
契約で短い通知期間が定められていない場合は、一般に2週間〜14日程度でも問題になりにくいことが多いですが、職場のルールに従う方がトラブルを避けられます。疑問があるときは労働相談窓口に相談してください。
退職届提出後にやるべきこと
業務の引き継ぎ
退職日までに、担当業務の要点を書面化しましょう。進行中の案件、納期、関係者の連絡先、使用中のツールやパスワード(会社の規定に従い安全に扱う)を明記します。後任が決まっている場合は、実務を一緒に行い、よくある質問と対応例も伝えておくと安心です。
備品・情報の返却と整理
社員証、PC、携帯、鍵、名刺、書類など会社所有物は指示に従って返却します。個人データは職場のデータ規定に従って削除または持ち出し不可の扱いにします。メールの自動返信設定や共有フォルダのアクセス権を整理して、業務が途切れないようにします。
各種手続きの確認
- 給与・最終精算(未消化の有休の扱い、退職金の有無)
- 社会保険・雇用保険の手続き(保険証の返却や離職票の発行時期確認)
- 住民税や年末調整の扱い(特別徴収から普通徴収に切替える場合の確認)
必要書類や期日を人事に確認し、口座情報や住所変更も早めに届け出ます。
最終チェック(退職直前)
退職日が近づいたら、引き継ぎ書の最終版、返却リスト、手続きの受領書をそろえます。面談で疑問点を解消し、円満に退職できるよう礼儀正しく対応しましょう。
(退職後のトラブルを防ぐため、記録はメールや書面で残すことをおすすめします。)
まとめ:14日前ルールを守り、トラブルなく退職を
退職届は法律上、退職希望日の14日前までに提出すれば問題ありません。ただし、会社の就業規則でより長い期間が定められている場合はその規則にも従う必要があります。可能であれば1か月以上前に申し出ると、引き継ぎや関係者への調整がしやすくなり、円満退職につながります。
即日退職は原則として認められません。例外は、健康上の緊急事態、賃金不払い、ハラスメントや違法行為など、直ちに継続できない合理的な理由がある場合です。そのような場合は証拠を残し、労働相談窓口や弁護士に相談してください。
退職届提出後は次の点を着実に行いましょう。
– 引き継ぎ資料の作成と口頭説明
– 備品や書類の返却、社内手続きの確認
– 最終給与や有給消化、離職票・源泉徴収票の確認
– 退職届の控えややり取りの記録を保管
トラブルが起きたらまず社内の人事に相談し、解決できない場合は労働基準監督署や労働相談窓口に相談してください。円満退職を目指しつつ、権利はしっかり守ることが大切です。ご不明点があればいつでもご相談ください。
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