退職届の書き方と会社が負う退職届義務の詳しい解説

目次

はじめに

本資料の目的

本資料は、退職に関わる書類や会社の義務を分かりやすく解説することを目的としています。退職届の意味や作り方、退職届・退職願・辞表の違い、会社が交付すべき書類、離職票と離職証明書の関係、失業手当申請の流れ、転職先に提出する書類まで、順を追って説明します。

対象読者

退職を考えている方、手続き担当者、人事に不安がある方などを想定しています。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。

使い方

各章は独立して読めますが、初めから読むと全体像がわかりやすくなります。必要なときは該当章だけ参照してください。

注意点

本稿は一般的な説明を目的とします。個別の法的判断や事例については、労働相談窓口や専門家に相談することをおすすめします。

退職届とは何か

定義と役割

退職届は、労働者が自ら退職の意思を明確に示すための書面です。口頭の申し出よりも証拠が残るため、後でトラブルになりにくくなります。法律上は民法第627条が退職の意思表示に関係しますが、退職届はその意思を記録する実務的な手段と考えてください。

法的な位置づけ

退職は原則として労働者の意思表示で成立します。退職届自体が退職の効力を生む場合もありますが、多くは退職の意思を会社に伝える証拠として扱います。会社側は受理の記録を残すことが望ましいです。

用紙・形式

白無地の便箋やA4用紙が一般的です。手書きでもパソコン作成でも受理されることが多いです。押印を求める会社もありますので、事前に確認してください。

記載項目と具体例

主な記載項目は以下です。
– 提出日(例:2025年6月1日)
– 退職日(例:2025年6月30日)
– 所属部署・役職
– 氏名(押印)
– 退職理由(簡潔で可)

文例:
「私事都合により、2025年6月30日をもって退職いたします。2025年6月1日提出 営業部 山田太郎 印」

提出先とタイミング

直属の上司や人事部に提出します。口頭での意思表明後、速やかに書面で提出すると誤解を避けられます。就業規則に提出期限がある場合はそれに従ってください。

注意点

退職届は取り消しが難しい場合があります。提出前に退職日や引き継ぎについて上司と調整し、必要なら労働相談窓口に相談すると安心です。

退職届・退職願・辞表の違いと使い分け

おおまかな違い

  • 退職願:会社に対する「退職したい」という申し入れです。会社が受理して初めて手続きが進みます。たとえば、まず上司に相談して同意を得たうえで書面を出す場合に使います。
  • 退職届:本人が退職の意思を確定して一方的に提出する書面です。原則として会社側が受け取っても形式的な受理で済むことが多いです。急に辞める場合や最終決定を示すときに用います。
  • 辞表:役員や管理職が在任を辞するときに使うことが一般的です。通常の社員が使う書類ではありません。

使い分けのポイント

  • タイミング:まず相談して合意を得たいなら退職願。退職日を明確にして決意を示すなら退職届。取締役など立場がある場合は辞表を使います。
  • 会社のルール:就業規則や慣例を確認してください。書式や提出先が決まっている会社もあります。
  • 取り下げ:退職願は会社が受理する前なら撤回できる可能性が高いです。退職届は既に効力を生じる場合があるため、慎重に提出してください。

提出先と例文の扱い

  • 提出先は通常、直属の上司や人事担当です。口頭で伝えた後に書面で提出すると手続きがスムーズです。
  • 簡単な例文は社内のテンプレートに従うと安心です。必要なら、上司に相談して文章を調整してください。

会社が負う義務と書類交付の法的根拠

法的根拠

労働基準法第22条は、労働者が退職証明書の交付を請求したとき、使用者(会社)はこれを発行する義務があると定めます。退職証明書は在職期間や職務内容を示す重要な書類で、請求があれば会社は応じる必要があります。

会社が交付すべき主な書類

  • 源泉徴収票:前年分の給与・税金の証明。次の勤務先や確定申告で必要です。
  • 雇用保険被保険者証:雇用保険の記録に使います。紛失時は再交付を請求できます。
  • 離職票:失業給付申請に使う書類で、会社が事業主として手続きを行い発行します。
  • 退職証明書:労働基準法に基づく交付義務のある書類です。
  • 健康保険資格喪失証明書:健康保険の資格を失ったことを証明する書類で、国民健康保険への移行などに使います。
  • 年金手帳(預かっている場合):会社が保管している場合は返却を求めましょう。

交付の手続きと実務ポイント

請求は口頭でもできますが、書面で日付と必要な書類を明記して提出すると確実です。会社には速やかに発行する責任がありますので、受け取り方法(手渡し・郵送)と期日を確認してください。書類の内容に誤りがあれば訂正を求める権利があります。

交付を拒否されたときの対応

会社が応じない場合は、まず書面で再請求し、それでも改善しないときは最寄りの労働基準監督署やハローワークに相談してください。請求の記録(メールや日付入りの書面)は後の手続きで役立ちます。

退職時に必要な主要書類と目的

退職時に受け取る主な書類と、それぞれの目的や受け取り後の手続きについて分かりやすく説明します。具体例を交えて、どこで使うかを押さえましょう。

離職票

目的:失業手当(雇用保険)の申請用。ハローワークで提出します。
ポイント:会社が発行します。受け取ったら早めにハローワークで手続きをしてください。

雇用保険被保険者証

目的:転職先で雇用保険に再加入する際に必要です。
ポイント:次の職場に提出します。紛失時は再交付を依頼します。

給与明細

目的:退職時の最終給与・残業・控除など確認。税額や未払いの確認に使います。
ポイント:手取りや未払い残業代が正しいか確認してください。

源泉徴収票

目的:年末調整や確定申告での所得確認用。
ポイント:年内に転職した場合や副収入がある場合は確定申告で使います。

年金手帳(または基礎年金番号通知)

目的:厚生年金の加入記録をつなぐために使います。
ポイント:転職先や年金事務所で提出・確認します。

健康保険資格喪失証明書

目的:退職後に国民健康保険へ切り替える際に必要です。
ポイント:市区町村の窓口で手続きをする際に提出します。

退職証明書

目的:転職先やハローワークなどで在職期間・職務内容を証明する書類として使います。
ポイント:内容に誤りがある場合は会社に修正を依頼します。

離職票と離職証明書の関係

離職証明書と離職票の役割

離職証明書は会社が作成する内部書類で、退職者の賃金支払状況や離職理由を記載します。これを基にハローワークが離職票(離職票1・離職票2)を発行します。離職票は失業給付の申請に使う公的書類です。

手続きの流れ(簡潔に)

  • 会社が「雇用保険被保険者資格喪失届」に離職証明書を添付してハローワークに提出します。
  • ハローワークは内容を確認し、離職票1・離職票2を作成します。
  • 通常は退職後、申請から約10日ほどで離職票が交付されます(混雑状況で前後します)。

添付が必要な書類とポイント

  • 賃金の支払状況が分かる書類(賃金台帳や給与明細)。例:直近数か月の給与明細。
  • 離職理由を確認できる資料(退職願や懲戒に関する記録など)。
  • 会社は正確に記載し、虚偽があると給付に影響します。退職者は不明点を早めに確認しましょう。

離職票1・離職票2の違い

  • 離職票1:ハローワーク内部での手続きに使われる部分を含むことが多い書類。
  • 離職票2:本人が失業給付を申請する際に提出する書類です。両方がセットで交付されます。

必要な書類が揃っていれば、スムーズに離職票が受け取れます。疑問があれば早めに会社かハローワークに相談してください。

失業手当申請時の手続き

必要書類

  • 雇用保険被保険者離職票(離職票-1・離職票-2)
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード。無い場合は通知カード+身元確認書類)
  • 身元確認書類(運転免許証、パスポート等)
  • 本人写真(指定サイズ。一般に縦3cm×横2.4〜2.5cm程度、最近撮影したもの)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(振込先確認用)
  • 印鑑(窓口で必要な場合があるため持参を推奨)

申請の流れ(簡潔)

  1. 書類を準備する
  2. お住まいのハローワークに行き、求職の申し込みを行う。離職票を提出します。
  3. ハローワークで受給資格の説明を受け、受給手続きが行われます。初回は窓口で説明と書類確認を受けます。
  4. 待期期間(通常7日)を経て、失業の状態が認められると失業認定日が設定されます。認定日には求職活動の報告が必要です。
  5. 失業認定を受けると、指定の口座に支給されます。振込は認定ごとに行われます。

注意点

  • 離職票が会社から届かない場合は、届出前でもハローワークへ相談してください。
  • 写真は背景が無地で上半身がはっきり写ったものを用意してください。
  • 振込口座は本人名義であることを必ず確認してください。
  • 求職活動の記録が支給に影響します。求職票や実績は指示に従って保存してください。

転職先への提出書類

転職先に提出する主な書類と、なぜ必要か・提出時の注意点をまとめます。入社手続きで求められることが多いので、原本を準備し、コピーを控えておくと安心です。

  • 年金手帳(または基礎年金番号通知書)
  • 目的:年金記録の引継ぎや手続きの確認。年金番号が分かれば足ります。
  • 注意:紛失した場合は市区町村窓口や日本年金機構で手続きしてください。

  • マイナンバー確認書類

  • 目的:税・社会保険の手続きに必要です。
  • 例:個人番号カード(表面コピーで提出することが多い)または通知カード+運転免許証等の身分証明書。

  • 雇用保険被保険者証

  • 目的:雇用保険の資格確認と履歴の引継ぎ。
  • 注意:手元にあれば必ず提出してください。紛失時は前職に再発行を依頼します。

  • 源泉徴収票

  • 目的:年末調整や課税額の算定に使います。前職の1年分の給与と税額が記載されています。
  • 注意:入社時に提出を求められることが多いです。未交付なら早めに前職へ請求してください。

  • 退職証明書(必要に応じて)

  • 目的:在職期間や退職理由の確認。転職先が求める場合のみ提出します。

  • 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書(場合による)

  • 目的:住民税の特別徴収開始手続きで使います。自治体との調整があるため、転職先から案内があれば対応してください。

その他の注意点:原本を優先して提出し、受け取ったら控えをもらいましょう。不明点は入社先の総務に確認してください。

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