はじめに
本記事では、退職届の提出時期や退職日設定に関する基本と実務上の注意点を、わかりやすく解説します。
目的
退職の手続きは人生の大きな転機です。法律や会社規則を押さえた上で、スムーズに進められるよう実務的なポイントを整理しました。
この記事で学べること
- 退職届・退職願・辞表の違いと使い分け
- 退職届に書くべき日付とその意味
- 提出タイミングの法的根拠と会社規則の関係
- 退職の一般的な流れとスケジュール例
- 提出後の注意点や撤回の可否、特別なケースの対応
- すぐ使える記載例とテンプレート
想定読者
退職を考え始めた方、上司や人事へ正式に伝えるタイミングに迷っている方、退職手続きを正しく進めたい方。
読み方の目安
各章は独立して読みやすくまとめました。まずは第2章から順に読むと、全体の流れがつかめます。必要な章だけ参照していただいても問題ありません。
退職届とは?退職願・辞表との違い
概要
退職届は従業員が会社に対して退職日を明示して一方的に通告する文書です。民法627条に基づき、原則として提出後2週間で雇用契約は終了します(就業規則や雇用契約で別の定めがある場合はそちらが優先されます)。
退職願との違い
- 退職願:退職する意思を示す「お願い」の書類です。会社が受理する前なら撤回できることが多く、まず退職の相談として使います。
- 退職届:意思表示が確定した段階で出す「通知」です。原則として撤回できません(会社が了承すれば可能なこともあります)。
辞表との違い
- 辞表は主に役員や公務員が辞任する際に使う書類で、一般の従業員は通常用いません。
実務的な使い分けと注意点
- まずは上司に口頭で相談し、合意を得たら退職届を提出すると安全です。
- 就業規則や雇用契約で規定された手続きや通知期間を確認してください。
- 記載例の一文は「一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。」が一般的です。
必要があれば、実際の書き方やテンプレートもご用意します。
退職届に記載するべき2つの日付
退職日(実際に退職する日)
退職日は会社を正式に離れる最終日です。実際に仕事を終える日を指し、上司や人事と相談して決めます。就業規則や雇用契約に定められた予告期間(例:1カ月前)を確認し、そのルールに合わせて設定してください。具体的には「2025年6月30日(最終出勤日)」のように書きます。
提出日(退職届を提出した日)
提出日は退職届を会社に渡した日付です。書面の文末に記載するのが一般的で、署名や押印の近くに書きます。形式は「2025年5月31日」のように年・月・日で明確に記載します。
書き方のポイント
- 本文中で退職日を明記する(例:「退職日は○年○月○日といたします」)。
- 文末に提出日を記入し、氏名を添えて署名・押印します。
- 日付は西暦でも和暦でも問題ありませんが、読み間違えがない形式にします。
具体例
本文:私事で恐縮ですが、○年○月○日をもって退職いたします。
文末:○年○月○日(提出日) 氏名
注意点
- 退職日は会社と合意して決めることが大切です。合意なしに一方的に日付を設定するとトラブルになる恐れがあります。
- 提出日は証拠になりますので、コピーを取って保管してください。
退職届の提出タイミングと法的根拠
法的根拠(民法627条)
民法627条は、無期雇用の場合、労働者が退職の意思を14日前に通知すれば退職できると定めます。つまり法的には退職日の2週間前までに申し出ればよいと考えて差し支えありません。
実務上の提出タイミング
多くの会社は就業規則や雇用契約で1〜2か月前の申告を求めます。これは業務の引き継ぎや後任手配、給与や社会保険の処理を円滑にするためです。会社のルールに従うことが職場の混乱を避ける近道です。
早めに伝えるメリット
- 引き継ぎに余裕ができるため、トラブルを減らせます。
- 引継書やマニュアル作成に時間が取れます。
- 最終の給与・年休消化の調整がしやすくなります。
具体例:退職日が4月30日の場合、法的には4月16日までの申し出で足りますが、会社規定で1か月前を求めるなら3月31日までに伝える方が安全です。
提出の流れ・実務上の注意点
- まず直属の上司に口頭で伝え、了承を得ます。
- 次に所定の書式で退職届を人事または上司に提出します。
- 提出先は就業規則で確認してください。
- 月末直前の提出は給与締めに影響するため、余裕を持ちましょう。
以上を踏まえ、法的な最低ラインは14日前ですが、職場の秩序と円滑な手続きを考え、できるだけ早めに申し出ることをおすすめします。
退職までの一般的な流れ・スケジュール
1〜2カ月前:まずは上司に口頭で伝える
- 退職の意思をまず上司に伝えます。理由は簡潔に話し、引き継ぎの協力姿勢を示すと印象が良くなります。
退職日確定後:退職届の準備・提出
- 退職日を決めたら書面(退職届)を作成します。一般的には退職日の1カ月前に提出することが多いです。法的には2週間前でも可ですが、社内ルールや円満退社を考慮して余裕を持ちましょう。
引き継ぎ期間:業務・書類・マニュアル作成
- 担当業務の洗い出し、引き継ぎ資料作成、後任教育を行います。重要業務や期限のある作業は優先して移譲します。
最終月・最終週:手続きと整理
- 社会保険・年金の手続き、残業や有休の精算、貸与物の返却、退職証明や離職票の確認をします。退職日直前に最終チェックを行います。
退職日とその後
- 退職日は次の入社日の前日を選ぶと社会保険の切れ目が無くなり有利です。退職届提出後の撤回は原則できないので、提出前に条件や日程を十分に確認してください。
簡単なチェックリスト
- 退職理由の整理、退職日候補の確認、引き継ぎ計画、必要手続きの洗い出し、書類の保存。
以上が一般的な流れです。状況により前後するので、早めの準備をおすすめします。
退職届提出後の注意点・撤回の可否
撤回は原則できません
退職届が会社に受理された後は、原則として撤回できません。会社は受理を前提に退職手続きを進め、異動や採用計画、給与・社会保険の処理も開始します。ただし、会社と話し合い、双方の合意が得られれば撤回は可能です。口頭だけでなく書面やメールで合意を残すと安心です。
撤回を申し出る場合のポイント
- できるだけ早く上司や人事に事情を説明する
- 理由を簡潔に伝え、撤回を希望する旨を明確にする
- 書面での同意を求める(口頭のみだと争いになりやすい)
- 合意が得られない場合は退職手続きが進む点を理解する
退職届受理後にやるべきこと
- 業務引き継ぎを速やかに作成し、関係者と共有する
- 機密情報や社内システムの取り扱いに注意する
- 勤怠、有給、未払いの精算について人事と確認する
- 会社貸与物(PC、鍵、IDカードなど)は返却方法を確認する
会社の義務とあなたの記録
会社は退職手続きを速やかに進める義務があります(最終給与の支払い、必要書類の交付など)。連絡や合意内容はメールや書面で記録を残してください。トラブルを避け、円満な退職につながります。
円満退職のための心がけ
短期間での撤回は混乱を招きます。可能なら早めに意思を固め、周囲に配慮した対応を心がけましょう。
有期契約・特別なケースの注意点
有期契約や特別な事情がある場合は、退職届の提出時期や手続きが一般の無期雇用とは異なります。まず契約書と就業規則を必ず確認してください。
- 契約満了で退職する場合
-
退職日は契約書に記載された満了日を基本とします。満了で離職する旨を明確に書くと誤解を避けられます(例:「契約満了により〇年〇月〇日をもって退職します」)。
-
契約期間中に退職したい場合
-
多くの場合、契約に定める手続きや事前の合意が必要です。合意なく一方的に辞めると違約金や損害請求の対象になることがあります。まずは人事に相談して、書面で合意を取りましょう。
-
派遣・登録型社員や試用期間中、定年再雇用の場合
-
雇用形態により提出先や必要書類が変わります。派遣は派遣元、定年再雇用は再雇用先との取り決めを確認してください。
-
実務チェックリスト
- 契約書の終了日・更新規定
- 退職通知の必要日数や方法(書面・メール)
- 有休・未消化分の扱い、給与・賞与・退職金規定
- 引継ぎや機器返却の手順
不安があれば労働相談窓口や労働組合に相談すると安心です。落ち着いて書類と規定を確認し、可能な限り書面で合意を残しましょう。
退職届の記載例・テンプレート
はじめに
退職届は簡潔で正確に書くことが大切です。提出先、提出日、退職日、理由を書き、捺印や署名を忘れないでください。
基本テンプレート(例)
退職届
令和〇年〇月〇日
株式会社○○○○ 代表取締役 ○○ ○○ 様
(提出先が直属の上司なら上司名でも可)
私事ではございますが、一身上の都合により
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
部署名 氏名(署名)
印
短い例(簡潔に)
退職届
令和〇年〇月〇日
私は一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職します。
部署名 氏名
手書きする場合の注意
社内で直筆を求められることがあります。黒または青のボールペンで、読みやすく丁寧に書いてください。
書き方のポイント
- 日付は西暦か和暦を統一する
- 退職理由は「一身上の都合」で差し支えないことが多い
- 提出日は必ず明記する
- 直属の上司を提出先にするのが一般的です
必要に応じて会社の規定や労務担当に確認してから提出しましょう。
まとめ:退職届提出時期のポイント
退職届の提出時期は、法的には退職日の2週間前に申し出れば退職できます。多くの企業は就業規則で1〜2カ月前の提出を求めるため、まず就業規則や雇用契約を確認してください。実務上は、業務の引き継ぎや繁忙期、後任の手配を考え、余裕を持って1カ月前を目安にすることが無難です。
提出後は原則として撤回が難しいので、退職日やタイミングは慎重に決めてください。転職先の入社日、年休の消化、給与の締め日や社会保険の手続きも考慮しましょう。口頭で上司に相談したうえで、退職届は書面(紙またはメールの記録)で提出し、受領の確認を取ると安心です。
ポイント:
– 就業規則と契約を必ず確認する
– 引き継ぎや入社日を踏まえて余裕を持って決める
– 提出後の撤回は原則不可。記録を残す
これらを意識して、無理のない最適な退職日を設定してください。


コメント