はじめに
本記事は「退職届を出して当日退職ができるか」をわかりやすく整理した入門ガイドです。急に退職を考える方へ、法律上の基本ルール、即日退職を実行する方法、注意点やリスク、例外的に認められるケース、そして退職届の正しい書き方までを網羅します。
目的
- 即日退職を検討する際に必要な情報を短時間で把握できるようにします。
- 法律や会社の対応で困らないための準備を示します。
対象となる読者
- 緊急で退職を考えている方
- 会社との話し合い方や書類の書き方が知りたい方
- リスクを理解して安全に退職したい方
読むときのポイント
- 次章から具体的な手順と注意点を順に説明します。具体例を交えて実践的に解説しますので、まずは全体を通してから自分に当てはまる箇所を確認してください。
- 退職は生活に関わる重大な決断です。必要なら家族や専門家に相談してください。
退職届を出して当日退職はできるのか
法的な基本
民法では、雇用期間の定めがない場合、退職の意思表示から2週間後に退職が成立すると定められています。つまり原則として「即日」は認められていません。ただし就業規則や雇用契約で別段の定めがあるときはその規定が優先されます。
会社規則との違い
多くの会社は就業規則で「1か月前の提出」を定めします。こちらは会社側の業務調整のためで、守ることが望ましいです。就業規則に違反すると、会社から注意を受けたり、最悪の場合に損害賠償を求められる可能性があります。
当日退職が認められるケース
病気や精神的な不調、セクハラ・パワハラなどで安全や健康が脅かされる場合、やむを得ない事情として即日退職が認められることがあります。また会社と合意が取れれば、話し合いで当日退職にすることも可能です。
実際の進め方（簡潔に）
1) 上司や人事に口頭で事情を伝える。2) 退職届を用意し、理由を簡潔に記載する。3) 合意が得られない場合は労基署や弁護士に相談する。緊急性が高ければまず安全確保を優先してください。
注意点
当日退職は例外扱いです。事前に話し合いと書面での記録を残すと後々のトラブルを避けやすくなります。
即日退職を成立させる具体的な方法
退職届を使う理由
即日退職を目指すときは、原則として「退職届」を提出します。退職届は撤回しにくく、会社側にあなたの意思を強く示せます。口頭や「退職願」より効力が強まります。
退職届の基本的な書き方（文例）
文面は簡潔で構いません。例：
「私事ですが、一身上の都合により、本日をもって退職いたします。」
日付は必ず「本日」と明記し、差出人の署名・捺印を忘れないでください。
提出方法と証拠の残し方
- 手渡し：可能なら上司や人事に直接渡し、受領印をもらうと確実です。受け取りを拒否されたら記録を残します。
- 郵送：速達・簡易書留・内容証明郵便を使うと、送付日や文面を証明できます。控えは必ず保管してください。
- 電子手段：メールやFAXでまず意思を伝え、後で郵送で確定する二重対応が有効です。送信記録や受信確認を保存してください。
やむを得ない事由がある場合の書き方
病気や家庭事情などが理由なら、具体的に記載し診断書や証拠を添付すると説得力が増します。例：
「民法第628条に基づき、やむを得ない事由（〇〇）により、本日をもって退職させていただきます。」
上記を組み合わせ、証拠を残すことが即日退職を成立させる鍵です。
即日退職の注意点とリスク
概要
即日退職は意思表示の仕方で無断欠勤に当たるかどうかが変わります。事前に会社へ通知すれば無断欠勤を避けられますが、連絡なく出社をやめると懲戒処分や損害賠償のリスクが出ます。
法的・規則上のリスク
就業規則や労働契約に反する行為は懲戒や懲戒解雇の対象になり得ます。実際に損害賠償請求に発展することは少ないものの、会社が具体的な損害を示せば請求を受ける可能性があります。
社会的信用・転職での影響
無断退職は前職とのトラブルとなりやすく、職務経歴の説明で不利になる場合があります。転職先での信頼にも影響するため、可能な限り穏便に収める配慮が望ましいです。
実務上の注意点（最低限やること）
- まず口頭・メールなどで退職の意思を伝える。記録が残る方法が望ましい。
- 退職届と同時に簡潔な業務引継ぎメモを作成する（担当業務、進行中の案件、重要連絡先、引継ぎの優先度）。
- 連絡手段を確保する（会社からの問い合わせに応じるための連絡先を残す）。
- やり取りは可能な限り保存する（送信済みメール、LINEのスクリーンショットなど）。
セキュリティと個人情報
ログイン情報や顧客情報の扱いは慎重に。パスワードを安易に共有せず、必要があればIT担当者を通じて適切に移管してください。
最後に
問題が大きくなりそうなら早めに労働相談窓口や弁護士に相談することをお勧めします。円満に退職するための最低限の配慮が、後のトラブルを防ぎます。
即日退職を認めてもらいやすいケース・例外
1) 病気・ケガが理由のとき
医師の診断書や緊急受診の領収書を提示すると説得力が増します。体調不良で出社できない旨を具体的に伝え、診断書を後日提出する旨を申し出る例が多いです。
2) パワハラ・セクハラなど職場の危険があるとき
録音やメールなどの証拠、産業医や医師の所見を用意すると会社は対応せざるを得ません。社内相談窓口や労基署、弁護士に相談すると退職の合意が得やすくなります。
3) 会社側が合意した場合
上司と話し合いで即日退職に合意すれば、その日のうちに退職可能です。合意は書面（退職合意書）で残すと後のトラブルを避けられます。
4) 有給休暇の消化を使う方法
最終出社日を即日にして、その後を有給消化にする手もあります。就業規則や有給の承認ルールを確認し、申請方法を明確にしておきましょう。
5) 契約内容や緊急家庭事情
有期契約や家庭の緊急事由（介護・災害等）は契約書や証拠で対応できます。まず雇用契約書を確認し、必要書類を用意してください。
実務的なポイント
診断書、証拠、退職合意書、有給申請の写しなどを準備し、社内外の相談窓口に早めに相談すると即日退職が認められやすくなります。
退職届の正しい書き方と提出例
簡単な説明
退職届は事実を簡潔に伝える書類です。日付・宛名・本文・署名（押印）が基本です。以下で項目ごとに具体例を示します。
記載項目とポイント
- 日付：提出日（本日）を記載します。和暦・西暦どちらでも可ですが、社内と合わせるとよいです。
- 宛名：代表取締役社長 ○○○○ 殿 と正式に記載します。
- タイトル：「退職届」と冒頭に明記します。
- 本文：一身上の都合で退職する旨を明確にします。例文は下記。
- 署名・押印：自署と印鑑を忘れずに。実印でなく認印で差し支えありません。
記載例（通常）
退職届
令和○年○月○日
代表取締役社長 ○○○○ 殿
一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。
住所：○○○
氏名：（署名） 印
記載例（即日・やむを得ない理由がある場合）
退職届
令和○年○月○日
代表取締役社長 ○○○○ 殿
民法第628条に基づき、やむを得ない事由（例：健康上の理由）により、本日をもって退職させていただきます。
住所：○○○
氏名：（署名） 印
※やむを得ない事由を記載する場合は、後で理由を説明・証明できる資料を用意しておくと安心です。
提出方法と注意点
- 直属の上司または人事に手渡すのが基本です。受領印や受取書をもらい、控えを保管してください。
- すぐに手渡しできない場合は配達証明付きの書留郵送や、メールで事前に連絡してから原本を送る方法が安全です。
- 手書きが丁寧ですが、パソコンで作成して印刷したものでも正式な効力はあります。
- 就業規則や雇用契約書を確認し、必要な手続きに従ってください。
まとめ・即日退職時の重要ポイント
即日退職を考える際の基本は、労働契約上は原則として2週間前の申し出が必要という点です。ただし、やむを得ない事情や会社の同意があれば当日退職も可能です。トラブルを避けるため、退職の意思は必ず証拠が残る形で伝えてください（メール、内容証明、書面＋目撃者など）。
最低限行うこと（チェックリスト）:
- 退職の意思を記した書面やメールを残す
- 引き継ぎすべき最小限の業務・連絡先をまとめる
- 未払い賃金や有給、社会保険・雇用保険の手続きを確認する
- 会社と連絡が取れない場合の対応（証拠保存や退職代行の検討）
どうしても即日退職する場合は、退職代行サービスも選択肢です。費用や対応範囲、会社側とのやり取り方法を事前に確認してください。最後に、感情的にならず冷静に証拠を残すことが、あとで不利益を避けるために最も重要です。
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