はじめに
概要
本資料は、企業や人事担当者が従業員から退職届を受理した際に行うべき手続きや対応、注意点を分かりやすくまとめたガイドです。退職届の受領から社内外への情報共有、法的・実務的なポイント、退職者との関係維持までを扱います。
本資料の目的
・退職届を受け取った後の流れを段階的に示します。
・担当者が見落としやすい手続きや注意点を具体例付きで説明します。
・トラブルを未然に防ぎ、円滑な退職手続きを支援します。
対象読者
人事担当者、管理職、総務部門の方々を主な対象とします。中小企業の実務担当者にも活用できるよう、専門用語をできるだけ抑えて解説します。
本資料の構成と読み方
本資料は全4章構成です。第2章で手続きの具体的な流れ、第3章で法的・実務的な注意点、第4章で全体のまとめを示します。まずは第2章へ進んで、実務で使えるチェックリストを確認してください。
注意点
退職に関わる対応は感情面にも配慮が必要です。丁寧な聞き取りと記録を心がけてください。
退職届を受け取ったらやるべきこと
1. 退職届の内容確認と受理
まず書面の形式(手書き・電子)や日付、署名を確認します。不備があれば速やかに本人に確認し、受理の意思表示を書面やメールで伝えてください。例:受領書を発行する、メールで「受け取りました」と返信する。
2. 退職日の確定と社内調整
退職希望日と就業規則で定める日数(引継ぎ期間や勤続年数に応じた手続き)を照らし合わせます。業務への影響が大きければ調整案を提示し、部署間で日程を調整します。
3. 社内情報共有と関係部署への連絡
人事、総務、経理、ITなどに退職情報を共有します。例:アカウント停止日時、備品返却の担当者決定、引継ぎ予定の周知。
4. 退職手続き・必要書類の説明
雇用保険被保険者証、源泉徴収票、健康保険・年金の手続きなど必要書類を一覧で渡し、窓口や期限を明示します。
5. 業務引き継ぎの計画と実行
引継ぎリストを作り、担当者と期限を決めて進めます。マニュアルやシステムの権限移譲を忘れずに。口頭だけでなく書面で記録を残してください。
6. 社外への周知と挨拶
取引先へいつ、誰が対応するかを案内します。本人の希望があれば挨拶メールや会議での紹介を調整します。
7. 最終給与計算・精算
未払残業代、未消化の有給、貸与物の精算などを確認し、最終給与に反映します。税・社会保険の扱いも確認してください。
8. 退職後の手続き案内
退職証明、健康保険の任意継続、失業給付の受給手続きなど、退職後に必要な手続きを案内しておきます。書類の送付方法や窓口を明確に示してください。
法的な注意点・実務上のポイント
退職の通知期間と就業規則
正社員は、退職日の2週間前までに退職届を出せば使用者の承諾がなくても退職できます。ただし会社の就業規則や雇用契約で別の定めがある場合は、それに従う必要があります。例えば就業規則で1か月前の届出を求めている場合は、先に相談して調整すると円滑です。
退職理由・退職日の調整
退職理由や日程が会社の業務に大きな支障を与えると判断されれば、企業側から変更を求められることがあります。個人の希望は尊重されますが、引継ぎや業務継続の観点から双方で話し合い、可能な範囲で調整案を提示すると良いです。例:重要なプロジェクトがある場合は、代替の引継ぎスケジュールを作成して提示します。
実務上の手続き(確認事項)
- 提出書類:退職届と、必要なら退職願の取り扱いを明確にする。退職届は一方的な意思表示、退職願は了承を得るための文書です。
- 給与・未消化休暇:最終給与の支払日や未消化の有給休暇の取り扱いを確認します。
- 保険・年金手続き:健康保険や年金の資格喪失や、離職票発行の時期を確認してください。
- 引継ぎ:業務引継ぎ書やマニュアルを作成し、引継ぎ先と日程をすり合わせます。
トラブル回避のために
記録を残すことが大切です。退職の意思表示や企業とのやり取りはメールや書面で行い、やり取りの控えを保存してください。企業側は丁寧な説明を行い、退職者の意向を尊重しつつ業務上必要な手続きを速やかに進めることが望まれます。意見が折り合わない場合は、労働基準監督署や専門家に相談すると安心です。
まとめ
退職届を受理した後は、段取りよく、漏れなく対応することが大切です。以下に実務で押さえるべきポイントを分かりやすく整理します。
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退職日の確定と受理連絡:退職日を明確にし、書面で受理を伝えます。例えばメールで受理日・最終出勤日を記載しておくと誤解が生じません。
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社内外への周知タイミング:部署内や関係部署に早めに共有し、必要な場合は顧客や取引先へ引き継ぎ予定を伝えます。
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必要書類の準備:離職票、源泉徴収票、健康保険・年金関係の説明を行います。例えば離職票は退職後すぐに申請が必要です。
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業務引き継ぎ:引継書(業務手順・保留案件・重要連絡先)を作成し、担当者を決めて実務で確認します。
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最終給与と精算:未消化の有給休暇や立替金の精算、賞与や退職金の扱いを社内規程に沿って計算します。
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退職後の手続き案内:失業保険や健康保険の切替、年金の届出など、本人が行うべき手順を分かりやすく伝えます。
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記録と関係維持:書類は保管し、必要なら一定期間フォローアップできる窓口を案内します。円滑な退職対応は事業継続と良好な関係につながります。


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