はじめに
本記事の目的
本記事は、退職時に発生するお金の流れを分かりやすく整理することを目的としています。退職月の給与計算、支払いのタイミング、税金や社会保険料の扱い、退職金の考え方、失業給付の受け取り方などを具体例を交えて説明します。
読者想定
転職や退職を検討している人、退職後の収入が不安な人、また人事担当者でも基本を確認したい人に向けて書いています。専門用語はできるだけ使わず、実務で役立つポイントに絞って解説します。
読み方のポイント
各章で具体的な計算例や対応策を示します。まずは第2章で退職月の給与計算の基本を押さすと、以降の章が理解しやすくなります。疑問点は各章の注意点を確認してください。
退職月の給与計算の基本ルール
基本の考え方
退職月の給与は、基本的に普段の給与計算と同じ方法で求めます。会社の「締日」を基準に、基本給や各種手当から社会保険料や所得税などの控除を差し引いて支払います。支払日がいつになるかは会社の規程に従います。
退職日が月の途中の場合(日割り計算)
退職日が月の途中であれば、働いた日数に応じて日割りで計算します。日割りの代表的な方法は次の2つです。
– 所定労働日数で計算:月の所定労働日数(例:20日)で割って働いた日数を掛ける
– 暦日で計算:1か月を暦日(例:30日)として割って働いた日数を掛ける
どちらを使うかは就業規則で決まります。
例:基本給30万円、所定労働日数20日で10日出勤の場合
30万円 ÷ 20日 × 10日 = 15万円
同じ例を暦日(30日)で計算すると30万円 ÷ 30日 × 10日 = 10万円となり、差が出ます。
手当や控除の取り扱い
手当は種類によって日割りしない場合があります(通勤手当や完全歩合給など)。社会保険料や税金は事業所の計算ルールで月単位の扱いになることがあるため、金額が変わる場合があります。
就業規則・給与規程の確認
会社ごとに細かい運用が違います。退職前に就業規則や給与規程、雇用契約書を見て、日割りの基準や手当の扱いを確認してください。分からない場合は総務・人事に問い合わせると確実です。
退職月の給与が少なくなる理由と注意点
日割り計算と出勤日数
退職月は月の途中で離職することが多く、給与が日割りで支払われます。たとえば月給30万円、所定労働日数が20日の場合、10日で退職すると支給は30万円÷20日×10日=15万円になります。有給を使った場合は出勤日数が変わるため、日割りの計算に影響します。
欠勤や有給の扱い
欠勤があると欠勤控除で支給額が減ります。会社の規程で有給の消化扱いや買い取りのルールが異なりますので、未消化の有給があるときは事前に確認してください。買い取りがある場合は最終給与に加算されることがあります。
社会保険料・税金の取り扱い
健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険料や源泉所得税は、給与計算の時期によって差が出ます。退職日が月末だとその月分の控除が発生しない場合がありますが、給与締め・支払いのタイミング次第で前月分だけ控除されるケースもあります。細かい扱いは会社の給与処理に依存します。
会社独自の控除と注意点
貸与品の未返却や立替金、社内規程による清算(制服代など)が最終給与から差し引かれることがあります。不足があると手取りが大きく減るので、退職前に精算や返却を済ませておくと安心です。
確認すべき項目と対応方法
最終の給与明細で「基本給(日割り)」「欠勤控除」「有給消化の扱い」「社会保険料」「源泉税」「個別控除(立替・貸与品など)」を確認してください。不明点は給与担当に一覧で照会し、納得できない場合は労働基準監督署や労働相談窓口に相談することをおすすめします。
退職後の給料の支払い日と未払いへの対応
支払日の原則
退職後の給料は原則として会社の通常の給与支払日に振り込まれます。たとえば毎月25日払いの会社なら、退職月も25日に支払われるのが基本です。給与明細や就業規則で支払日を確認してください。
退職日から7日以内の規定
労働者が請求すれば、労働基準法により退職日から7日以内に支払う義務があります。急ぎで受け取りたい場合は、会社に「退職日の支払いを希望する」旨を伝え、書面やメールで証拠を残すとよいです。
未払いがある場合の対応手順
- まず会社に請求する:担当者や総務に口頭で伝え、応答があれば記録を残します。応答がない場合はメールや書面で請求します。
- 内容証明郵便で請求する:支払いを求める正式な通知として有効です。到達の事実が残ります。
- 労働基準監督署に相談する:未払い金の是正指導や助言を受けられます。最寄りの監督署に相談してください。
- 法的手段:支払われない場合は、労働審判や民事訴訟、弁護士相談も選択肢です。
実務上の注意点
- 給与明細や振込記録、やり取りのメールは必ず保管してください。証拠になります。
- 退職時の未払いが年休の買い取りや残業代に関することもあります。項目ごとに確認しましょう。
- 振込先口座が変わっていると未着になることがあります。振替先を事前に伝えておくと安心です。
必要なら、請求文の書き方や監督署に相談する際のポイントも具体的にお伝えします。ご希望があればお知らせください。
退職金の相場と計算方法
退職金の種類
退職金には主に「退職一時金」と「退職年金」があります。退職一時金は一度にまとまった金額を受け取る方式、退職年金は年金のように分割で受け取る方式です。どちらか一方、または両方が支給されます。
代表的な計算方法
- 定額制:勤続年数に応じて定められた金額を支給します。例)勤続10年で50万円。
- 基本給連動型:基本給×勤続年数×支給率で計算します。例)基本給30万円、勤続20年、支給率0.5→30万×20×0.5=300万円。
相場の目安
業種や企業規模で差が大きいです。金融や大手企業の定年退職では数千万円に達することもあります。中小企業では数十万〜数百万円が一般的な場合もあります。
受け取り時の注意点
- 就業規則や退職金規程で算定方法を確認してください。
- 自己都合退職と会社都合で金額が変わることがあります。
- 退職一時金は税制上の「退職所得控除」が適用され、有利になることが多いです。
不明点は人事担当に問い合わせると具体的な金額や条件を教えてもらえます。
退職後にもらえる主な給付金・失業手当
失業給付(基本手当)
退職後に最も一般的なのは雇用保険の失業給付(基本手当)です。支給額は退職前6カ月間の給与総額を基に算定し、年齢や離職理由で給付日数や給付率が変わります。例として月給30万円が6カ月続いた場合、6カ月の合計を日数で割った額が賃金日額の目安になります。受給にはハローワークでの求職申し込みと離職票が必要です。
受給手続きの流れ
- 退職後は速やかにハローワークへ行き、求職申し込みをします。
- 離職票、本人確認書類、印鑑、通帳等を用意します。
- 説明会参加や認定日に出席し、求職活動の実績を報告します。
その他の給付・支援
- 求職者支援制度:職業訓練を受ける場合に支援金や手当が出ることがあります。
- 再就職手当:受給期間中に早期に就職した場合に支給されることがあります。
- 未払賃金立替払制度:会社の倒産などで賃金が支払われないとき、一定の範囲で国が立替える制度です(労働局や労基署で相談)。
申請時の注意点
退職理由によって受給開始時期や支給の有無が変わります。求職活動の記録がないと給付が止まるため、ハローワークの指示に従って手続きを進めてください。分からない点は早めにハローワークへ相談すると安心です。
退職時の手続きと確認ポイント
事前に用意する書類
- 身分証明書、振込先口座、源泉徴収票(必要な場合)を用意します。
- 会社が発行する書類(就業規則、退職届のコピー、雇用契約書)を確認します。
給与の確認(最終給与)
- 日割り計算の方式と控除項目を会社に確認します。例:月給30万円、退職日が月中で就業日数が20日の場合は30万÷20×15日で支給する会社もあります。必ず自社の計算方法を確認してください。
- 未払いがある場合は支払日を明確にし、給与明細を保存します。
退職金の有無と計算
- 退職金制度があるか、規程に基づく計算方法を確認します。加入条件や勤続年数で変わります。
- 金額が不明なときは社員窓口か人事に請求しましょう。
社会保険・税金の精算
- 健康保険・厚生年金は資格喪失手続きが必要です。任意継続や国民健康保険への切替を確認します。
- 年末調整や源泉徴収について最終給与で調整されるか確認します。
雇用保険と失業給付の手続き
- 離職票の発行を会社へ依頼します。離職票が届いたらハローワークで求職の申請と給付手続きを行います。
- 手続きに必要な書類や本人確認書類を揃えて早めに動くと安心です。
退職証明書・各種証明の請求
- 退職証明書や在職証明書、給与証明が必要な場合は会社へ依頼します。転職や手続きで必要になることが多いです。
支払日・未払いへの対応
- 最終支払日を確認し、未払いがあれば書面で請求します。対応が難しいときは労働基準監督署や弁護士に相談できます。
トラブル防止のためのチェックリスト(簡易)
- 最終給与の計算方法を確認したか
- 退職金の有無と見積りを受け取ったか
- 離職票・退職証明書を依頼したか
- 社会保険・健康保険の切替方法を確認したか
- 給与明細や重要書類のコピーを保管したか
以上を順に確認すると、手続きの抜けやトラブルを防げます。分からない点は早めに人事窓口や最寄りの公的機関に相談してください。


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