はじめに
目的
退職を考えたとき、多くの人が迷うのは「誰に」「いつ」「どうやって」伝えるかです。本書は上司に退職を相談する流れとマナーを、具体例を交えて分かりやすく解説します。感情的にならず、職場の関係をできるだけ良好に保ちながら退職を進めることを目指します。
本書の構成
全6章で構成しています。相談相手の選び方、相談のタイミング、伝え方、言葉選び、交渉のポイントを順に扱います。各章は実践で使える例文やチェックリストを含みます。
読者のみなさまへ
転職・退職は人生の大きな選択です。不安や後悔を少なくするために、準備と配慮が重要です。本書は「スムーズに話を進めるための道具」としてお使いください。個別の事情がある場合は、職場の規則や労働契約も確認してください。
本書の使い方
まず第2章で相談相手の優先順位を確認してください。その後、タイミングや言葉の章を読み、実際の会話を想定して練習すると効果的です。
退職相談の相手は誰か?直属の上司が最優先
最初に相談すべき相手
退職を決めたら、まず相談すべきは直属の上司です。上司は業務の割り振りや引き継ぎ計画を把握しています。直接伝えることで、後の調整がスムーズになりますし、礼儀としても一般的です。
人事部に直接相談しない方がよい理由
人事は手続きや制度に詳しいですが、最初に人事へ行くと職場の情報共有が混乱することがあります。まず上司に話し、必要に応じて上司から人事に連絡してもらう流れが安全です。ただし、上司が相談に不適切な場合は別ルートを検討してください。
直属の上司に言いにくいときの選択肢
- 上司の上長に相談する方法。上司に直接言いにくい事情があるとき有効です。
- 信頼できる同僚やメンターに相談して、助言や同席を頼む方法。口外しないようお願いしておきます。
- 就業規則にある相談窓口や産業医、ハラスメント相談窓口を利用する方法。個別事情に応じて使い分けます。
伝えるときの実務的な注意点
- 伝える前に退職理由と希望時期、引き継ぎの大まかな案を用意します。
- 感情的にならず簡潔に伝えます。相手の質問には冷静に答えます。
- 上司の反応を受けて調整する余地を残すと話が進みやすいです。
伝え方の一言例
「お時間よろしいでしょうか。退職を考えており、まず相談したく伺いました。希望時期は○月ごろで、引き継ぎはこう考えています。」
まずは直属の上司に相談することを心がけてください。次章では相談のタイミングについて解説します。
相談のベストなタイミングは「決意を固める前」
退職を伝える前に、まず“迷っている段階”で一度相談することをおすすめします。理由は三つあります。
なぜ決意前が良いのか
- 対話の余地が生まれ、感情的になりにくいです。
- 会社側が引き継ぎや人員補充の検討をしやすくなります。
- あなた自身も情報や選択肢を集められます。
伝えるタイミングの目安
- 最低:退職希望日の1ヶ月前には直属の上司に伝えます。急な対応が必要な場合でも調整が可能です。
- 理想:1〜3ヶ月前。引き継ぎ計画や後任探しの余裕が生まれます。
避けるべき時期・時間帯
- 繁忙期やプロジェクトの山場、人事異動直後は避けます。
- 上司が会議中や始業直後、終業間際、昼休み直後の忙しい時間帯は選びません。
相談時の実務的な工夫
- 面談の約束を取り、落ち着いた時間に話します。
- 「迷っている」と前置きして、理由と希望時期を簡潔に伝えます。
- 引き継ぎの考えや代替案を用意すると話が進みやすいです。
これで上司との対話がスムーズになり、円満な退職につながります。
退職を伝える方法と環境設定
対面で伝える理由
退職は相手の時間と感情に配慮する必要があります。対面で伝えると誠意が伝わり、誤解を減らせます。メールやチャットは補助手段に留めましょう。
事前のアポイントメントを取る
いきなり呼び止めるのは避けます。上司に「ご相談したいことがあります。何時がよいですか?」と短いメールや口頭で予定を確認します。30分程度の時間を確保すると安心です。
場所の選び方
会議室や応接室など、静かで人の出入りが少ない場所を選びます。1対1で話せる環境が望ましいです。オープンスペースや飲み会の場は避けましょう。
当日の準備と心構え
要点をメモにまとめ、感情的にならないよう冷静に話します。退職希望日や引き継ぎの意向も準備しておくと話が進みやすいです。
避けるべき行為
メールだけで伝える、同僚を通して間接的に伝える、上司を急に責めるような言い方は避けます。礼儀を守って丁寧に伝えることが大切です。
退職相談時の具体的な伝え方と言葉選び
1. 切り出しの一言
最初は「相談があります」と伝えて時間を取ってもらいます。例:「お忙しいところ失礼します。少しご相談したいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」と丁寧に切り出します。
2. 伝えるべきポイント(順序を意識)
- 退職の意思表示:「退職させていただきたいと考えています」
- 希望時期:「○月末を希望していますが、調整は可能です」
- 理由(ポジティブに):例:「キャリアの幅を広げたい」「家族の事情で環境を変える必要がある」
- 引き継ぎ案:「引き継ぎ資料を作成し、後任への引き継ぎは○週間で完了する見込みです」
3. 言葉の具体例
- 初動:「ご相談があります」
- 意思:「退職を考えております。◯月末で退職させていただきたいです」
- 余地を残す:「もし調整が必要でしたら柔軟に対応します」
4. 不平不満を避ける工夫
不満は感情的に伝わりやすいので詳細は控え、事実と希望に置き換えます。改善点を伝える必要がある場合は建設的な言い方にします。
5. 引き継ぎとフォロー
具体的な引き継ぎスケジュールと担当者候補を示すと交渉がスムーズです。必要なら中間報告を約束します。
円満退職のための交渉ポイント
交渉前の準備
・目的を明確にします(退職日、引継ぎ方法、有給消化など)。
・譲れることと譲れないことを分け、優先順位を決めます。
・事実と希望を箇条書きにしておくと話がぶれません。
交渉で話すべき具体項目
- 退職日と最終出勤日
- 引継ぎの担当者と期間(引継ぎ資料の有無)
- 有給の消化方法と買取りの可否
- 秘密保持や競業避止の範囲(必要なら弁護士相談)
話し方のコツ
・感情を抑え、事実と意思を淡々と伝えます。例: “○月末を最終出勤日にしたいです。引継ぎは~”。
・代替案を用意すると合意に至りやすいです(短期間の業務集中、マニュアル作成など)。
・相手の事情も聴き、調整点を探します。ここで配慮を示すと印象が良くなります。
文書化と最終確認
・口頭で合意した内容はメールや書面で残します。トラブル防止になります。
・退職日や有給扱い、引継ぎ内容は最終確認を行い、双方が同意した文面を保存してください。
断り文の例(短め)
“お時間をいただきありがとうございます。個人的な理由で○月末に退職させていただきたいと考えています。引継ぎは□□さんにお願いし、資料は作成します。詳細は調整させてください。”
円満退職は準備と誠実さがカギです。落ち着いて、事実ベースで交渉してください。


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