はじめに
この記事では、転職した際に「前職分の源泉徴収票」を現職の給与と合算して年末調整を行う方法と注意点を、わかりやすく解説します。転職による税金の手続きは不安を感じやすいですが、基本の流れと必要書類を押さえれば対応できます。
この章での目的
- 記事全体の概要を示す
- 読者が次章で何を学べるかを明確にする
対象となる方
- 年の途中で転職した方
- 前職の源泉徴収票の扱いに不安がある方
記事の構成(概要)
第2章以降で、前職分が求められる理由、合算の具体的手順、合算できる/できないケース、注意点、よくあるトラブルと対処法を順に説明します。
事前に用意するもの
- 前職の源泉徴収票(原本または写し)
- 現職の給与明細や雇用期間の情報
次章から順に、具体的な手続きと注意点を丁寧に説明していきます。安心して進められるよう、実例を交えてお伝えします。
転職時に前職分の源泉徴収票が求められる理由
前提
転職先の会社は、その年に支払われた給与を合算して年末調整を行います。所得税は1年分の合計所得で計算するため、前職分の金額が必要です。
求められる具体的な情報
- 前職の支払金額(給与・賞与)
- 前職で差し引かれた所得税(源泉徴収税額)
- 社会保険料や控除の情報
これらを合わせて正しい税額を算出します。
なぜ必要か(具体例で説明)
例:前職で年100万円、現職で年200万円受け取った場合、税率は合算した300万円に対して決まります。前職で払った税金があると、最終的な過不足が分かり、還付や追徴の調整ができます。
提供方法と注意点
原本またはコピーを提出します。早めに渡すと年末調整がスムーズです。個人情報を含むため、取り扱いに注意してください。紛失した場合は前職に再発行を依頼します。
提出しないとどうなるか
源泉徴収票を出さないと、転職先で年末調整できず、自分で確定申告が必要になる場合があります。税の過不足が年明けに生じる可能性があります。
年末調整で前職分を合算する具体的な方法
準備
前職の源泉徴収票(支払金額、源泉徴収税額、社会保険料等の金額、退職日)が揃っているか確認します。控除に関する書類(扶養控除等申告書)は現職で提出済みか確認してください。
手順(実務的)
- 支払金額:前職給与+現職給与を合算して「支払金額」に記載します。例:前職300万円+現職400万円=700万円。
- 給与所得控除後の金額:合算した支払金額から給与所得控除額を計算して求めます(年収ごとの所定の計算式を適用)。
- 源泉徴収税額:前職と現職それぞれで天引きされた所得税を合計して記載します。
- 社会保険料等の金額:前職の支払い分と現職の支払い分を合算します。
摘要欄の記載例
摘要には「前職:退職日○年○月○日、支払金額○円、源泉徴収税額○円、社会保険料等○円」と明記します。これにより後の確認が容易になります。
確認ポイント
計算が合っているか、源泉徴収票の数字と合算後の値が一致するかを必ず照合してください。必要なら前職に再発行を依頼します。
合算できるケースとできないケース
合算できるケース
- 前職の源泉徴収票を現職の勤務先に提出した場合、現職は前職分と現職分を合算して年末調整できます。書類があれば給与額や源泉徴収税額を合計し、過不足を調整します。
合算できないケース
- 前職の源泉徴収票があるいは提出できない場合は合算できません。現職分のみで年末調整を行います。
- 前職で既に年末調整が済んでいる(前職で最終の年末調整を受けた)場合も、現職で合算できない取り扱いになります。前職の調整済みの扱いによっては、現職での調整対象外となります。
副業・兼業の扱い
- 副業や兼業先が主たる勤務先でない場合、その分は原則として確定申告で申告します。主たる勤務先で年末調整するのが基本ですが、書類が揃わなければ確定申告での対応が必要です。
具体例
- 例1: 1〜4月をA社、5月からB社に勤務。A社の源泉徴収票をB社に提出すればB社で合算可能。
- 例2: A社で年末調整が既に完了し、源泉徴収票を提出できない場合はB社では合算せず、B社分のみで処理。副業分は確定申告でまとめて申告する。
ただし、不明点は早めに人事や税務署に確認してください。
前職分の源泉徴収票が年末調整済みだった場合の扱い
概要
前職で年末調整が既に行われているときは、現職側で前職分を再び合算しません。前職の給与や税額を重ねて計算することはありませんので、二重の調整が起きません。
具体的な扱い
- 現職の年末調整は、通常、現職で支払われた給与のみを対象に行います。前職が年末調整を終えている場合、現職分だけで計算します。
- 前職の源泉徴収票は、現職から求められたときに提出します。提出の目的は、税務上の確認や記録のためであり、現職で合算して税額を再計算するためではありません。
提出が必要なケースとその意味
- 現職から源泉徴収票の提出を求められたら、速やかに渡してください。企業は給与の履歴を確認し、内部処理や書類保管のために必要とします。
- 前職で年末調整済みでも、示すことで誤りや抜けを防げます。
万一、現職で重複処理されたら
- もし現職が誤って前職の金額も合算して税額を計算した場合、過剰に納税される可能性があります。過払いが起きたら、確定申告で還付を請求できます。
いつ確定申告が必要か
- 前職の調整で税が確定している場合は、通常は確定申告不要です。ただし、医療費控除や住宅ローン控除の初年度など特別な事情があるときは確定申告が必要になります。
注意点
- 源泉徴収票は必ず保管してください。将来の税処理や申告の際に役立ちます。
- 不明点があるときは、会社の総務や税務署へ早めに相談してください。
源泉徴収票合算時の注意点・ミスを防ぐポイント
合算前に必ず確認する原本項目
源泉徴収票の原本(紙または電子)を照合してください。確認する主な項目は「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料の控除額」「扶養控除等の有無」です。数字の入力ミスを防ぐため、原本と合算後の数値を行ごとに突き合わせます。
よくあるミスと具体例
- 支払金額の桁違い(例:500万円を50万円と入力)
- 源泉徴収税額を二重に合算して過剰に計上
- 社会保険料の記載漏れで課税所得が過大に算出
これらは従業員の手取りや会社の年末調整に影響します。
提出忘れ・合算できなかった場合の対応
合算できない・源泉徴収票を提出忘れした場合、従業員本人が確定申告で調整する必要があります。会社は速やかに原本の再発行や写しの提出を依頼してください。
ミスを防ぐ実務フロー(簡潔)
1) 提出時に原本とチェックリストで初期確認
2) データ入力は二重チェック(別担当またはソフトの検証)
3) 合算後、従業員に内容確認を依頼
4) 保存期間とアクセス権を明確に設定
書類管理と機密保持のポイント
源泉徴収票は個人情報です。アクセス制限を設け、電子保存する場合はバックアップと暗号化を検討してください。以上を習慣化するとミスが減りトラブルを防げます。
よくある質問・トラブル事例
Q1: 前職の源泉徴収票が年末調整に間に合わない
前職からの源泉徴収票が年度末の年末調整に間に合わない場合は、まず前職に再発行を依頼してください。それでも間に合わないときは、年明けの確定申告で前職分を含めて申告します。給与明細や退職証明のコピーを用意すると申告がスムーズです。必要があれば税務署に相談してください。
Q2: 副業・Wワークの給与はどうする?
会社での年末調整は主たる勤務先(通常は給与が多い方)分だけ扱われることが多いです。副業分の給与は本人が確定申告で合算して申告します。副業の源泉徴収票や支払調書、給与明細は必ず保管してください。
トラブル事例1: 源泉徴収票の金額が違う
金額の相違を見つけたら、まず前職(または現職)の人事・経理に確認します。訂正が必要なら再発行してもらい、その新版を年末調整や確定申告で使います。記録(メール等)も残しておきましょう。
トラブル事例2: 源泉徴収票を紛失した
再発行を依頼してください。再発行不可の場合は、給与明細や振込記録を使って確定申告で説明します。税務署に相談すれば代替方法を教えてもらえます。
トラブル事例3: 二重で税が引かれている/還付が必要
複数の勤務先で源泉徴収されて多く税を払っている場合、確定申告で還付を受けられます。必要書類を揃えて申告すれば、過払い分が戻ります。
相談窓口: まずは勤務先の総務・経理、それでも解決しない場合は最寄りの税務署へ連絡してください。書類を整理しておくと対応が速くなります。
まとめ:正しい合算と記載でトラブル回避
転職時は前職と現職の給与・税金を正確に合算し、源泉徴収票の内容を正しく記載することが重要です。年末調整で合算すれば税額が整い、後の手間や税務トラブルを防げます。
合算の基本
- 前職の源泉徴収票を現職に提出する。支払金額と源泉徴収税額を確認してください。
- 社会保険料や扶養などの控除も合わせて確認します。
合算漏れが見つかったとき
- まず前職へ源泉徴収票の再発行や内容確認を依頼します。
- 年末調整で修正が間に合わない場合は、確定申告で調整します。確定申告書に前職分を合算して申告すれば税金が正しく還付・追徴されます。ここで必要書類(源泉徴収票や控除証明)は忘れずに添付します。
実務チェックリスト
- 源泉徴収票の原本をコピーして保管する。
- 現職の人事・経理に正しい金額を確認してもらう。
- 控除証明(生命保険料、医療費など)を準備する。
- 不明点は早めに税務署や社労士に相談する。
最後に、書類の提出と記載は早めに行うと安心です。しかし、万一の漏れは確定申告で取り戻せますので、冷静に手続きを進めてください。


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