はじめに
この章では、この記事の目的と読み方を丁寧に説明します。
この記事の目的
- 有給休暇を土日・祝日など“休日”に使えるかどうか、その基本的なルールをわかりやすく解説します。
- 労働契約や就業規則の違い、退職時の扱い、シフト制や派遣社員の注意点、具体的な有給取得の進め方まで幅広く扱います。
こんな方におすすめです
- 有給の使い方で迷っている方
- 退職前に有給消化を考えている方
- シフト勤務や派遣で働いている方
記事の読み方
各章は実務でよくある疑問に沿って構成しました。まず基本ルールを押さえ、その後にケース別の注意点や手順を説明します。実例を交えて丁寧に解説しますので、順に読んでいただくと理解が深まります。
注意事項
本記事は一般的な説明にとどめます。具体的な判断は会社の就業規則や労働契約書、必要に応じて人事担当や労働相談窓口にご確認ください。
有給休暇の基本ルール
有給休暇とは
有給休暇は、労働者が本来働くべき日に取得できる休暇で、休んでも賃金が支払われる制度です。労働者の健康や生活の安定を図るために設けられています。
取得できる日とできない日
原則として、有給は「勤務日」に使います。会社の休日(例:土日や祝日)には、有給を取得しても意味がありません。たとえば平日出勤の人が月曜日に休みたいときに有給を使いますが、もともと休みの土日に有給を申請してもその日は休暇の対象になりません。
取得の条件
一般的に、雇入れから6か月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤していると付与されます。常勤の例では、最初に10日程度の有給が付与されることが多く、その後勤続年数に応じて増えていきます。
申請の流れと会社の対応
有給は本人の申し出で取得します。会社は業務に支障がある場合、時期の変更を求めることができますが、一方的に取り消したり、理由なく拒否したりしてはいけません。
保存期間(消滅)
使わなかった有給は原則として2年間保存され、その期間を超えると消滅します。会社と相談して計画的に使うことをおすすめします。
なぜ土日(休日)に有給を使えないのか
概要
有給休暇は、会社があなたに働くことを予定している日に対して与えられる休暇です。会社があらかじめ休日と定めている土日や祝日は出勤の義務がないため、基本的に有給を使う対象になりません。
理由をやさしく説明します
有給は「働く日に休めなかった分」の補償にあたります。たとえば平日(月〜金)が所定労働日なら、そこで休めないときに有給を取ります。土日がもともと休みなら、出勤義務がないため有給で補う必要がないのです。これは正社員・アルバイト・派遣と雇用形態に関係なく共通の考え方です。
具体例
- 例1:完全週休二日制(平日勤務)の会社で土日に有給を申請しても、会社は認めません。
- 例2:シフトで日曜に出勤予定がある人は、その“その日の出勤”に対して有給を申請できます。つまり“所定の労働日かどうか”がポイントです。
注意点
就業規則や雇用契約で扱いが決まります。疑問があれば人事や上司に確認してください。職場によっては取り扱いの細かいルールがあるため、早めに確認すると安心です。
退職時の有給消化と土日の扱い
概要
退職前に有給を消化する場合、土日や会社の休日は有給日数に含まれません。実際に有給として扱われるのは、あなたの所定労働日(出勤予定日)のみです。
具体例で理解する
例えば、最終出社日が金曜日で、その前の月曜日から金曜日までの5日間を有給で取りたいとします。土日の2日間は元々の休日なので、有給の消化日数は5日ではなく、平日のみの扱いになります。別の例では、退職日直前に有給を取り、間に土日が入る場合でも、土日は有給のカウント対象になりません。
手続きと注意点
- 有給消化の希望を早めに申し出してください。会社側のスケジュール調整が楽になります。
- 有給申請は所定の手続き(書面や社内システム)に従って行ってください。口頭だけだと記録に残らない恐れがあります。
- 最終出勤日や給与明細で有給消化日数を確認してください。給与に反映されているか重要です。
未消化分の扱い
未消化の有給が残る場合、会社が給与で精算するケースがあります。会社の規程や雇用契約に従って処理されるため、事前に確認すると安心です。
連絡と記録を大切に
有給消化はトラブルになりやすいので、申請時のメールや承認の記録を残してください。疑問があれば人事担当に早めに相談しましょう。
シフト制・派遣社員の場合の注意点
原則は同じだが“出勤予定”が鍵
シフト制や派遣社員でも、会社が休日とする日は有給を使えません。重要なのは「その日に出勤義務があるか」です。シフト表で出勤予定になっている日は、有給申請が可能です。出勤予定でない日(会社の休日や未割当の日)には有給を設定できません。
勤務カレンダー・シフト表の確認方法
- 自分の勤務カレンダーや直近のシフト表を必ず確認します。
- 派遣社員は派遣先と派遣会社の双方のシフト確認が必要です。
申請の手順と記録
- 有給は出勤予定日の前に申請します。メールや書面で残すと後で証拠になります。
- シフト交代で休む場合は、交代が成立したことも記録してください。
時季変更権と調整
企業は業務上の理由で取得をずらす「時季変更権」を行使できます。希望通り取れないこともありますが、休日を有給に変えることは認められません。
実例でわかりやすく
- 例1: ローテーション勤務で自分の出勤日を有給申請→可能
- 例2: 会社が定める休日に休みのとき→有給は使えない
- 例3: 派遣で急にシフトが消えた場合は派遣会社に相談して記録を残すと安心です。
早めにシフト管理者や派遣会社と相談し、書面で申請・確認する習慣をつけるとトラブルを避けられます。
有給消化の具体的な進め方
1) 残日数をまず確認します
勤務先の就業規則や勤怠システムで残りの有給日数を確認します。紙で記録している場合は最新の受領印や記録日も確認してください。
2) どの日が「所定労働日」かを確かめます
自分の出勤予定(シフトや固定の勤務日)をカレンダーで確認します。土日や祝日は原則有給日数に含まれません。例:月〜金勤務で月〜金を連続取得すれば5日分の消化です。
3) 申請の手順を踏みます
会社の申請方法(紙・メール・勤怠システム)に従い、必要な期間を申請します。可能なら余裕をもって申請し、上司に口頭で伝えると承認がスムーズになります。
4) 半日・時間単位の取り方
会社が認めていれば半日や時間単位で取得できます。始業・終業時刻や最低申請単位を事前に確認してください。
5) 申請後の確認と記録
承認が下りたら勤怠システムの表示やメールを保存してください。承認がないまま出社しなかった場合、欠勤扱いになることがあります。
実例:金曜と翌月曜を休む場合、出勤日が金曜と月曜なら2日分の有給消化です。休日が間に挟まれても日数は増えません。予定を立てる際はカレンダーで出勤日を必ず確認してください。
休日出勤・代休と有給の違い
概要
休日出勤、代休(振替休日)、有給休暇は目的も扱いも異なる制度です。同じ「休み」に関する言葉でも混同するとトラブルになります。ここでは違いを分かりやすく整理します。
休日出勤とは
休日に出勤して働くことを指します。会社の指示で出勤した場合、賃金の割増が発生することが多いです(会社の規定や労使協定により扱いが異なります)。例:日曜に出勤して、その分の割増賃金が付く場合。
代休・振替休日とは
休日出勤の代わりに後日休みを与える制度です。代休は後から休むこと、振替休日はあらかじめ別の日を休日にすることを意味します。例:日曜出勤の代わりに翌火曜を休みにする。
有給休暇とは
年次有給休暇は法的に認められた休みで、休んでも通常の賃金が支払われます。理由を問わず取得できますが、業務の都合で時季変更を求められることがあります。
主な違い(ポイントで整理)
- 取得理由:代休は休日出勤の埋め合わせ。有給は労働者の権利で私用も可。
- 賃金:有給は通常賃金を払う。休日出勤は割増が発生する場合がある。代休で割増が不要になるかは会社の扱い次第。
- 申請と拒否:代休は会社の管理で扱う。有給は原則取得可能だが、業務上のやむを得ない事情で時季変更が求められることがある。
注意点と実務上の例
- 代休を使ったからといって有給を消化したことにはなりません。
- 退職間際やシフト調整では、どの制度を使うかで給与や残日数が変わります。就業規則を確認し、疑問があれば総務や労働相談窓口に相談してください。
よくある誤解とまとめ
よくある誤解
誤解の代表は「土日も有給で休めば有給消化になる」というものです。多くの人はカレンダー上の休みを有給で埋めれば日数が減ると考えますが、会社の出勤予定日だけが有給の対象になります。たとえば平日出勤の人が金曜と月曜に有給を取っても、土日は勤務日でないため有給は消費されません。
退職時の扱い
退職時に残日数を消化する場合も同じルールです。会社が有給消化期間を設定しても、土日や祝日は有給日数に数えません。カウントするのは本来出勤すべき日だけです。
勤務形態により違う点
シフト制や週末出勤がある場合、土日も勤務予定日なら有給で休めます。逆に勤務しない日を有給で消化することはできません。
休日出勤・代休との違い
休日出勤は本来の休日に働くことで、代休や割増賃金の対象になります。これは有給とは別の制度です。
確認のポイント
自分の勤務日がどう定められているかを就業規則やシフトで確認してください。不明な点は総務や労基署に問い合わせると安心です。


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