第1章: はじめに
この文書は、8月に退職する場合の源泉徴収票の交付時期や必要な手続きについて、分かりやすく解説します。源泉徴収票の役割や会社の手続きの流れ、住民税や雇用保険の扱い、転職時と転職しない場合の対応、そして届かない場合の対処法まで、実務で使える情報をまとめています。
源泉徴収票は給与や税額を証明する大切な書類です。年末調整や確定申告、転職先での手続きに必要になります。例えば、転職先で年末調整を受ける場合は前職の源泉徴収票が必須ですし、退職金があると税金の扱いが変わります。
このガイドは次のような方に向けています。
– 8月に退職予定の方
– 退職後の税手続きが不安な方
– 会社の人事担当者で交付時期を確認したい方
読み方の目安:
– 転職する場合は第3章(交付時期)と第9章(年末調整)を優先してください。
– 退職金がある方は第6章を確認してください。
– 源泉徴収票が届かないときは第11章を参考にしてください。
以降の章で、具体的な手順や注意点を順を追って丁寧に説明します。まずは全体の流れを把握してから、該当する章をお読みください。
源泉徴収票とは何か
概要
源泉徴収票は、会社が1年間に支払った給与と会社が天引きした所得税の額を記載した重要な書類です。退職した場合は、1月1日から退職日までの給与を基に「給与所得の源泉徴収票」が発行されます。
主な記載項目
- 支払金額:その年に受け取った給与の合計
- 所得税の額:会社が差し引いて納めた税金
- 勤務期間や支払者の情報:勤務先名や支払日など
いつ、なぜ必要か(具体例)
転職先で年末調整を受けるときや、自分で確定申告する際に必ず必要です。例えば、8月に退職して9月に転職する場合、転職先では前の会社の源泉徴収票をもとに年末調整を行います。これがなければ税金の過不足が正しく計算できません。
ポイント
源泉徴収票は税金に関する“証明書”です。紛失しないよう保管し、転職先や税務署への提出が必要な場面です。必要があれば会社に再発行を依頼できます。
8月退職時の源泉徴収票の交付時期
概要
8月に退職した場合、源泉徴収票は退職後1カ月以内に交付されると法律で定められています。つまり、8月退職なら原則として9月末までに受け取れます。これは企業が果たすべき義務です。
法的根拠と期限
所得税法第226条により、給与等の支払者はその支払年の末日以降に退職した者に対しても、退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。例:8月31日退職→9月30日までに交付。
受け取り方法と実務例
企業は手渡し、郵送、または電子データで交付します。多くの会社は郵送か人事窓口での手渡しを選びます。電子交付には本人同意が必要な場合があります。
期限に届かない場合の対処
まずは人事または給与担当に連絡し、交付時期を確認してください。連絡しても対応がないときは、所轄の税務署に相談できます。税務署は法令に基づく対応方法を案内してくれます。
注意点
・複数の勤務先があるときは、それぞれの会社から源泉徴収票を受け取る必要があります。\n・年末調整や確定申告で必要になるため、大切に保管してください。
会社側が行う退職手続きの流れ
1. 退職届の受理
従業員から退職届を受け取ったら、会社は受理の日時を記録します。口頭での申し出でも書面で確認するようにしてください。例:メールで受け取った場合は受領メールを返信しておく。
2. 離職票(雇用保険)関連
雇用保険加入者には、離職票を作成・交付します。退職理由や最終出勤日を正確に記載し、本人へ送付します。失業給付の申請に使うため、できるだけ早く準備します。
3. 業務書類・備品の回収
パソコン、社員証、名刺、機密書類などの返却を求めます。回収物はリスト化して返却状況を管理すると後のトラブルを防げます。
4. 社会保険の手続き
健康保険・厚生年金の資格喪失や変更手続きを行います。提出書類は速やかに年金事務所・保険者へ送付します。従業員へ保険証返却や国民健康保険への切替案内を出します。
5. 所得税・源泉徴収票
最終給与や未払い手当の計算、年税額の精算を行います。源泉徴収票は退職日から1カ月以内に交付するのが望ましいため、速やかに発行手続きを進めます。
6. その他の注意点
退職理由の記録や、退職金の有無の確認、引継ぎ書の作成も行います。手続きの期限は社内で統一し、担当者を明確にしておくとミスを減らせます。
源泉徴収票発行の具体的な手続き
発行義務と期限
会社は退職者に対して、退職後1カ月以内に「給与所得の源泉徴収票」を発行し交付します。記載内容はその年の1月1日から退職日までの支払額や源泉徴収税額などです。
交付方法
- 書面で手渡しするのが一般的です。郵送でも構いません。
- 会社によっては電子交付の仕組みを用意している場合もあります。
税務署への提出要件
その年の1月1日から退職日までの給与等の合計が250万円を超える場合、会社は税務署にも同じ源泉徴収票を提出する必要があります。例:1月から8月までの給与合計が300万円なら提出対象です。
会社の実務手順(例)
- 人事・経理が給与データを確定する(支給総額、控除額、源泉徴収税額の算出)。
- 源泉徴収票を作成する(記載漏れがないか確認)。
- 退職者へ交付する(対面または郵送)。
- 合計が250万円を超える場合は税務署へ提出する。
従業員が確認すべきポイント
- 氏名や住所、支払金額、源泉徴収税額が正しいかを確認してください。
- 不明点があれば人事または経理に問い合わせてください。
退職金がある場合の対応
概要
退職手当(退職金)が支給されると、給与分とは別に「退職所得の源泉徴収票」が発行されます。この書類には支給額や退職所得控除後の金額、源泉徴収された税額などが記載されます。退職後1カ月以内の交付が義務付けられており、転職先へ提出する必要はありません。
受け取ったときに確認すること
- 支給金額が給与明細や退職合意書と一致しているか
- 退職所得控除の記載や計算結果に誤りがないか
- 源泉徴収税額と支払日が正しいか
不明点があれば、まず会社の人事・経理担当に確認してください。
書類の保管と確定申告の扱い
退職所得の源泉徴収票は、確定申告や将来の問い合わせに備えて大切に保管します。目安として少なくとも5年間は保管すると安心です。一般的には退職金は退職所得控除を使って税額が計算され、源泉徴収で精算されているため、単独で受け取った場合は確定申告が不要なことが多いです。ただし、他に給与所得がある、医療費控除などで還付を受けたい場合は確定申告が必要になることがあります。
発行や記載に問題がある場合の対応
記載ミスや交付が遅れたときは、まず会社に訂正・再発行を依頼してください。それでも解決しない場合は税務署に相談できます。早めに対応すると、確定申告や住民税の手続きで困る可能性を減らせます。
実務上の一言アドバイス
退職金は税制上の扱いが特殊です。受け取った書類は他の所得書類と一緒にまとめ、必要なら税理士や税務署に相談して処理方法を確認しましょう。
住民税に関する手続き
概要
8月に退職すると、会社による特別徴収(給与からの天引き)が続けられなくなることがあります。その場合、市区町村への届出と納付方法の切り替えが必要です。
提出書類と期限
提出書類:給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
期限:退職で特別徴収ができなくなった翌月の10日までに、従業員の居住地の市区町村に提出します。会社が提出するのが原則です。
転職先が決まっていない場合の対応
届出書には「普通徴収」に切り替える旨を記載します。普通徴収は市区町村が納税通知書を送付し、本人が納付する方法です。納付方法は銀行振込、口座振替、コンビニ払いや市区町村のオンライン決済などが一般的です。
転職先が決まっている場合
転職先が決まっているときは、新しい会社に特別徴収へ戻す手続きを行うことがあります。市区町村への情報が新しい会社に連絡されれば、新会社が給与から差し引く形になります。
チェックしておくこと
- 退職後に市区町村から納税通知書が届くか確認する。
- 会社が届出を出しているか前職に確認する。
- 届出や納付方法に不明点があれば、居住地の市区町村税務課へ相談してください。
雇用保険関連の手続き
期限と提出書類
会社は退職日の翌々日から10日以内に、管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。離職票を交付する場合は「雇用保険被保険者離職証明書」も合わせて提出します。これらの書類には資格喪失日や賃金・離職理由などを記載します。
退職者が受け取る書類と意味
- 離職票:失業給付(基本手当)の申請に必要です。ハローワークに提出します。
- (会社からハローワークへ提出する)離職証明書:会社が作成する書類で、離職票の根拠になります。
手続きの流れ(簡単な例)
- 会社が必要書類を作成し、期限内にハローワークへ提出。
- ハローワークが離職票を作成し、退職者へ郵送(数日〜数週間かかることがあります)。
- 退職者は離職票を受け取ったらハローワークで求職申込と失業給付の手続きを行います。
退職者の注意点
- 失業給付を受けるには離職票が必須です。届かない場合はまず会社に確認してください。
- 会社が手続きを怠っているようなら、ハローワークに相談すれば状況確認や指導をしてもらえます。
- 郵送で受け取るまでの期間を見越して、手続き準備を進めておくと安心です。
転職時の年末調整について
概要
8月に退職して年内に転職した場合、転職先で12月に給与が支払われると、原則として転職先が年末調整を行います。転職先は年末の給与でその年の税額を精算します。
転職先で年末調整を受けるために必要な書類
- 前職の源泉徴収票:年間の給与と既に差し引かれた所得税が記載されています。必ず提出してください。
- 控除関係の証明書類:生命保険料控除証明書、地震保険や社会保険料の控除証明など。扶養控除等(扶養控除等申告書)も忘れずに。
転職先で年末調整ができない場合
転職先で12月に給与がない、あるいは自分で確定申告すると伝えた場合は、年明けに確定申告(2月16日以降、通常は2月〜3月)で前職・現職双方の源泉徴収票を使って申告します。
手続きの流れと注意点
- 転職先に前職の源泉徴収票を早めに渡す。
- 控除証明書は最新のものを揃える。
- 年末調整を職場に依頼しない場合は、確定申告の準備をする。期間を過ぎると還付が遅れるので注意してください。
よくあるミスは源泉徴収票の提出忘れです。提出が遅れると年末調整が正しく行われませんので、転職時は早めの準備をおすすめします。
転職しない場合の確定申告
退職後に年内に転職しない場合は、翌年の確定申告が必要です。確定申告期間は2月16日から3月15日までで、この期間に前年分の所得と税額を申告します。
必要書類
– 前職の源泉徴収票(年末調整が済んでいれば必須)
– 本人確認書類(マイナンバーカード等)
– 経費や控除を示す領収書(医療費、生命保険料、寄附金など)
申告の流れ
1. 書類をそろえる。源泉徴収票が特に重要です。2. 税務署で書面申告するか、e-Taxを利用して電子申告します。3. 税額が不足なら納付、還付なら指定口座へ振込されます。
注意点
– 源泉徴収票がないと正確な申告が難しくなります。前職から受け取っていない場合は早めに連絡してください。税金が戻る場合と追加で払う場合がありますので、領収書は必ず保管してください。
分かりやすく進めれば手続きはそれほど難しくありません。不明点があれば税務署に相談してください。
源泉徴収票が届かない場合の対応
退職後1カ月以上たっても源泉徴収票が届かない場合は、速やかに対応しましょう。以下の手順で進めるとスムーズです。
1. まず状況を確認する
住所変更が会社に届いているか、郵便物が別の場所に届いていないかを確認します。メーリングミスや転居の可能性がよくあります。
2. 会社へ連絡する
人事・総務・経理の担当者に電話やメールで問い合わせます。記録が必要なのでメールや文書で依頼すると安心です。例文:「退職者の源泉徴収票の発行状況をご確認いただけますか。郵送またはPDFでの送付を希望します。」
3. 催促のポイント
源泉徴収票の交付は会社の義務ですから、遠慮せずに期限を確認してください。発送方法(簡易書留やPDF送付)や送付予定日を明確にしてもらいましょう。
4. それでも届かない場合
一定期間連絡しても対応がないときは、税務署に相談して対応方法を確認します。確定申告の期限が迫っている場合は、給与明細や最終の給与支払明細を揃えて申告の準備をしてください。
5. 事前対策
退職時に退職後の住所と連絡先を会社に必ず伝え、可能ならPDF送付の希望も伝えておくと受け取りがスムーズです。郵送の際は書留指定を依頼すると確実です。


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