はじめに
この文書は、源泉徴収票の「原本」と「コピー」の違い、使い分け、法的効力、提出先ごとの必要性、電子交付の扱い、再発行・紛失時の対応、よくある疑問について分かりやすく解説します。特に転職や確定申告、各種手続きで「原本が必要か」「コピーでよいか」といった実務上の疑問に答えることを目的としています。
対象は、転職・退職を控える方、確定申告を行う方、人事・総務の担当者、各種手続きを行う窓口に書類を提出する方です。専門用語はできるだけ避け、具体例や手順を示して実務で使える情報に重点を置きます。
本書の読み方としては、まず第2章で源泉徴収票の基本を確認してください。急ぎで「原本が必要か」を知りたい場合は第4章、第6章は紛失時の対応に役立ちます。各章は独立して読めるように構成していますので、必要な箇所からお読みください。
源泉徴収票とは
概要
源泉徴収票は、1年間に支払われた給与や賞与、そこから差し引かれた所得税(源泉徴収税額)を記載した公式な証明書です。会社(雇用主)が年末調整時や退職時に作成し、従業員に交付します。
主な記載項目(やさしい説明)
- 支払金額:その年に会社から受け取った給与の合計です。
- 源泉徴収税額:給与から天引きされた所得税の合計です。
- 社会保険料等の金額:健康保険・厚生年金など会社が差し引いた額が書かれます。
- 支払者・受給者の情報:会社名やあなたの氏名・マイナンバーの一部などが記載されます。
使う場面(具体例)
- 確定申告:医療費控除などで申告するときに必要です。
- ローン申請:住宅ローンやカードローンで収入証明の代わりになります。
- 転職手続き:退職後、次の会社で年末調整が必要なときに提出します。
注意点
源泉徴収票は公式な証明書です。紛失すると再発行が必要になりますので、大切に保管してください。必要なときにすぐ出せるよう、保管場所を決めておくと安心です。
(この章では基礎的な説明にとどめ、次章で「原本」と「コピー」の違いを詳しく解説します。)
「原本」と「コピー」の違い
定義と見分け方
原本は会社が正式に発行した「本物」の源泉徴収票です。発行日や金額、会社名に加え、社印や押印・担当者の署名がある場合があります。コピーは原本を紙やスキャンで複写したもので、「写し」「コピー」と書かれていることが多いです。
法的効力と利用場面
原本が正式な証明書類として扱われます。税務署や金融機関、年末調整や確定申告の場面では原本提示を求められることがあります。コピーは参考用や控えとして使いますが、受け取り側がコピーで足りると判断すれば書類として受け付けられる場合もあります。
実務上の具体例
- 転職時や退職時:会社は原本を交付します。転職先や税務の手続きで原本を提示することが多いです。
- 住宅ローンなど:金融機関が原本確認を求め、コピーと原本の照合を行うことがあります。
注意点と対応策
原本は大切に保管してください。提出先が原本を求める場合は、原本を持参または郵送で提出します。コピーしかないときは、発行元に原本の再発行や原本確認を依頼すると安心です。必要に応じてコピーに「写し」などの注記を付けておくと分かりやすくなります。
提出先ごとの取り扱い
転職先(年末調整)
転職先で年末調整を受ける場合、原則として源泉徴収票の原本が必要です。企業は給与額や所得税の過不足を正確に確認するために原本を求めます。コピーを出すと受理されないことが多いので、原本を持参し、企業に提出したら写真を撮るか控えをもらいましょう。
確定申告(税務署)
2019年以降、確定申告で税務署に提出する際は原本の提出は基本的に不要になりました。コピーや電子交付(PDF等)を用いることができます。ただし、税務署が追加確認を求める場合があるので、原本は手元に保管しておくと安心です。
役所・自治体、銀行などの手続き
住民税や福祉関連、銀行の一部手続きでは「コピー可」と明示されていればコピーで足ります。多くの場合、申請書類の案内に取り扱いが書かれています。記載がないときは原本を用意してください。
各種控除証明書(保険料控除等)
保険会社などが発行する控除証明書も、用途によって扱いが変わります。年末調整や税務手続きでは原本を求められることが多いです。提出先に事前に確認し、原本が必要なら再発行を依頼する準備をしましょう。
実務的な注意点
・提出前に提出先の指示を確認する。電話や社内手順に従うと安心です。
・原本を渡す場合は、戻るか控えの有無を確認する。受領印や控えのコピーをもらうと後で安心です。
・紛失リスクを避けるため、重要書類はコピーを取り保管する。原本は可能なら郵送控えや写真で記録しておきましょう。
電子交付(PDF等)の扱い
概要
近年、源泉徴収票の電子交付(PDFや画像データ)が増えています。確定申告では電子交付分やスキャンしたコピーを用いる場面が多くなりました。ここでは、税務手続きや職場での扱い方を分かりやすく説明します。
税務署・確定申告での扱い
確定申告書類の作成では、電子交付やコピーを利用できることが一般的です。e-Taxや税務署の書面提出で、添付書類を省略できる場合もあります。ただし、税務署が原本を求めるケースもあり得ます。
年末調整・転職先への提出
しかし、年末調整や転職先の手続きでは、企業が原本を求めることが多いです。企業が電子データを正式な原本と認めるには、電子署名や改ざん防止の措置(タイムスタンプなど)が必要になる場合があります。
電子データを原本扱いにする条件
電子署名やタイムスタンプが付与され、改ざん防止の仕組みがあると原本とみなされやすくなります。送付時のメールや受領確認も証拠になります。
実務上のポイント
- 交付元に電子証明があるか確認する
- ファイル名・日付を分かりやすく保管する
- 求められたら印刷して原本として提出する準備をする
- 不安があれば交付元や提出先に事前に確認する
以上を押さえれば、電子交付の扱いで困ることは少なくなります。
再発行・紛失時の対応
紛失した場合は、まず勤務先(現職・前職)に再発行を依頼します。会社は原本での交付が原則であり、コピーやスキャンのみでの再発行は認められないことが多いです。ただし、電子交付の制度が整っている場合は電子データでの再交付が可能です。
依頼の手順
1. 人事・総務に再発行を口頭とメールなどの証跡で依頼します。確定申告や各種手続きの期限がある場合は、その旨を伝えてください。
2. 本人確認のため身分証の提示を求められることがあります。運転免許証やマイナンバーカードなどを準備してください。
3. 再発行に手数料が発生するかは会社の規定によります。通常は無償のことが多いですが、確認してください。
会社が対応できない場合の対処
– 退職後に連絡がつかない、会社が廃業したなどの場合は、最寄りの税務署に相談してください。税務署から代替の対応や必要書類について案内があります。
– 確定申告の期限が迫っているときは、給与明細や銀行の振込記録などで一時的に申告できる場合もあります。税務署に相談のうえ進めてください。
注意点
– コピーや写真のみで済ませないようにしてください。提出先によっては原本や正式な電子データを求められます。
– 早めに手続きを開始し、やり取りは記録に残しておくと安心です。
よくあるQ&A
Q1: 転職先にPDFやコピーで提出してもよいですか?
A: 基本は原本を求められることが多いです。雇用保険や住民税の手続きで原本が必要な場合があるため、まず提出先に確認しましょう。どうしても原本を渡せないときは、PDFやコピーを提出して「原本は前職に依頼して再発行中です」などと一言伝えると誤解が減ります。
Q2: 確定申告では原本が必要ですか?
A: 2019年以降は、確定申告で源泉徴収票の原本を税務署に提出する必要は基本的にありません。電子交付分のPDFやコピーを添付して申告できます。ただし、税務署が確認を求めた場合は原本提示を求められることがあるので、保管は大切です。
Q3: 原本とコピーの違いは何ですか?
A: 原本は発行者の正式な書類で、法的な証明力が高いです。コピーは確認用や控えとして使います。提出先の指示に従うことが最優先です。
Q4: 前職に再発行を依頼する流れは?
A: まず前職の総務・人事に連絡し、再発行の理由と送付先(あなたか転職先)を伝えます。本人確認書類や手数料が必要な場合があるので確認しましょう。発送方法や到着目安も聞くと安心です。
Q5: 電子交付(PDF)の注意点は?
A: PDFで受け取ったら、ファイル名や日付がわかるよう保存し、印刷しておくと手続きがスムーズです。改ざんが疑われないよう、メール原本や送付履歴も残しておきましょう。
Q6: 紛失したときはどうすればいいですか?
A: 紛失したらまず前職に再発行を依頼します。再発行が難しい場合は、転職先や税務署に事情を説明して代替書類(給与明細や源泉徴収の写し)で対応できるか相談してください。
Q7: 保管期間や提出のタイミングは?
A: 源泉徴収票は確定申告が終わる年の翌年以降も数年は保管しておくと安心です。転職先へは入社手続き時期に合わせて早めに用意しましょう。
まとめ
この記事では源泉徴収票の「原本」「コピー」「電子交付」の扱いと、提出先ごとの違いを中心に解説しました。
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公式な手続き(年末調整、転職時の手続きや公的証明の提出など)では、原本が求められるのが基本です。受け取った原本は丁寧に保管してください。
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税務署への確定申告については、2019年以降、コピーや電子交付の書類で代替できる場合があります。ただし、申告の種類や状況によって要件が変わります。
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提出先によって受付の要件は異なります。書類を渡す前に、提出先の案内や窓口で「原本が必要か」「コピーでよいか」「電子データの形式」などを必ず確認してください。
実務では、「まず確認する」「必要なら原本を用意する」「保管と再発行の方法を知っておく」ことが安心につながります。迷ったときは提出先に問い合わせるのが一番確実です。
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