はじめに
ブログの記事をどう書けばいいかわからない、という悩みと同じように、「懲戒解雇されたら賞与はどうなるの?」という疑問を持っていませんか? 本章ではこの記事の目的と読み方を丁寧に説明します。
- この記事の目的
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懲戒解雇された従業員に対する賞与(ボーナス)の支給可否や、法的な考え方、実務上の扱いを分かりやすく整理します。
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対象となる読者
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解雇や賞与の扱いに不安がある従業員、労務担当者、人事担当者など。
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読み進め方の目安
- 第2章で懲戒解雇の意味をやさしく解説し、その後、賞与と懲戒処分の関係、法的制限、無効とされるケース、最後に実務上の注意点を順に説明します。例えば、会社規程に「賞与は在籍期間に応じて支払う」と書かれている場合でも、懲戒解雇の理由やタイミングで扱いが変わります。具体例を挙げながら、難しい法律用語は最小限にして解説します。
懲戒解雇とは何か
定義と目的
懲戒解雇とは、従業員が会社の規律やルールに重大な違反をした際に、制裁として会社が行う解雇です。職場の秩序や他の従業員の安全・信頼を守ることが目的です。
典型的な理由(具体例)
- 横領:会社のお金や物を私的に使う行為。
- 重大な業務命令違反:安全ルール無視や重大なミスを放置する行為。
- 無断欠勤:長期間にわたり連絡なしで欠勤する場合。
- 経歴詐称:履歴書や面接で学歴・職歴を偽る行為。
普通解雇との違い
普通解雇は業績不振や能力不足など業務遂行上の理由で行われます。懲戒解雇は違反行為に対する罰であり、重い処分です。懲戒解雇は即時性が高く、退職金や予告手当などの権利に影響することが多いです。
懲戒解雇の影響(主なデメリット)
- 退職金の減額・不支給
- 解雇予告手当の不支給
- 失業給付の受給に制限が付く場合
- 再就職で不利になる可能性
会社が懲戒解雇を行うには、事実の有無や違反の重大性を明らかにする必要があります。しかし、恣意的な運用は認められません。
懲戒解雇と賞与(ボーナス)の支給関係
前提
賞与は多くの企業で就業規則や賃金規程に基づき支給されます。一般的に「賞与支給日に在籍していること」を支給条件にする規定が多く、まずは規程の内容を確認することが出発点です。
原則
懲戒解雇で解雇された場合、支給日に在籍していなければ原則として賞与は支給されません。賞与は会社の業績や個人の成績を反映する性質が強く、必ずしも労働の対価(賃金)とは見なされない場合があります。そのため、規程に「支給日に在籍する者に限る」と明記されていれば支給されないことが多いです。
具体例
例1:賞与支給日が12月25日、懲戒解雇が12月10日であれば、支給対象外となるのが通常です。例2:就業規則に支給要件がなく、過去に解雇者にも支給していた慣行がある場合は、支給を求める余地が生じます。
留意点
賞与が既に確定している、または労働の対価に近い性質があると判断される場合は支給義務を争えることがあります。また、懲戒処分の手続きの適正さが問題となるケースもあります。本章では基本原則と典型例を示しました。詳細な判断は次章以降で扱います。
懲戒処分としての賞与減額・不支給の法的制限
就業規則に明確な根拠が必要
賞与を懲戒処分として減額・不支給にするには、就業規則に根拠を置く必要があります。口頭や習慣だけでは不十分です。規程に処分の種類や対象行為、手続きの流れを明記してください。
賞与を賃金とみなす場合の制限(労基法第91条)
賞与が賃金と認定されると、減給による制裁は労働基準法第91条の上限に従います。具体的には、1回の減給は平均賃金の1日分の2分の1を超えてはいけませんし、1支払期の賃金総額の10分の1を超えてはいけません。
一時金・功労報奨としての取扱い
賞与を一時金や功労報奨と位置づけると会社の裁量は大きくなります。しかし、恣意的に不支給にすると無効とされる可能性があります。理由の説明や過去の運用との整合性が求められます。
判断基準:支給規程と運用実態
裁判所は支給規程の文言と、過去の支給実績・運用方法を重視します。規程が不明確で過去にほとんど支給していた場合は、賃金と認められやすいです。
実務上の注意点
・就業規則や支給規程を明確に整備する
・懲戒の相当性(行為の重さに応じた処分)を検討する
・処分前に本人に説明・弁明の機会を与える
・記録を残し、社内で一貫した運用を行う
これらを守れば、法的リスクを低くできます。
賞与の不支給・減額が無効とされるケース
解雇のタイミングで支給回避した場合
賞与支給日の直前に解雇し、賞与を受け取れないようにしたと判断されると、不支給は無効となることがあります。例えば、ボーナス支給日の前日に理由の薄い解雇を行った場合、裁判所は支給回避が目的だったと認めることがあります。実例を挙げると、長年同じ条件で支給していた社員を支給日前に解雇したケースで支給を命じた判決があります。
解雇が無効とされた場合
解雇自体が無効と判断されれば、その期間の賃金や賞与請求が認められる可能性が高くなります。解雇の無効が確定すると、社員は本来受けるべき賞与について請求できます。
賞与が賃金と認められる場合
賞与が「報酬の一部」として扱われ、算定方法や支給基準が明確に定められているときは賃金性が強く、不支給は違法になることが多いです。過去の支給実績がある場合も同様です。
手続きや基準がない場合(恣意的な不支給)
支給基準や手続きが不明確で、企業が恣意的に不支給や減額を行った場合、裁判で無効と判断されることがあります。待遇を変更するなら、就業規則の変更や周知が必要です。
救済手段
不支給が無効と判断されれば、労働審判や訴訟で賞与の支払いを求められます。未払い分には遅延損害金が付く場合があります。まずは就業規則や支給実績を確認し、弁護士や労基署に相談することをお勧めします。
まとめと実務上の注意点
要点の確認
懲戒解雇された場合、原則として賞与は支給されないことが多いですが、支給の可否は就業規則や賞与支給基準の内容で決まります。労基法91条の制限や不当な取り扱いがないかも確認が必要です。
会社(人事・経営者)向け注意点
- 支給規程を明確に記載する:支給対象、基準期間、算定方法、懲戒処分ごとの取り扱いを具体例で示す。例えば「懲戒解雇は不支給、停職30日以上は比例減額」など。
- 手続を整備する:事実調査、弁明の機会、処分記録を残す。手続き上の不備は後で争いになります。
- 周知徹底:就業規則は全員に配布・掲示し、説明会で理解を促す。
従業員向け注意点
- 規程を確認して下さい。曖昧な記載や遡及的な不利益変更は争える場合があります。
- 不支給が不当と思うときは、証拠(業務成績、評価書、メール)を集め、まずは会社に説明を求める。必要なら労働相談窓口や弁護士に相談してください。
実務では、透明性と手続の適正さがトラブル防止の鍵です。
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