労働基準法と試用期間を正しく理解するための基礎知識

目次

はじめに

本資料の目的

本資料は、試用期間に関する基本的な考え方と実務上の注意点を分かりやすくまとめています。労働基準法に基づく取り扱いや、企業と労働者それぞれが押さえておくべきポイントを丁寧に伝えます。

誰に向けた資料か

主に企業の人事・労務担当者と、これから就職・転職をする労働者を想定しています。例えば、人事担当者が採用時に試用期間を設ける際や、労働者が自分の権利を確認する際に役立ちます。

本資料の使い方

各章は具体的な事例を交えて説明します。まず試用期間の法的な位置づけを示し、その後、期間設定、賃金・待遇、解雇・不採用のルール、研修期間との違い、実務上の注意点へと進みます。必要な箇所だけ読み進めても理解できる構成です。

試用期間とは:その目的と法的な位置づけ

試用期間の意味と目的

試用期間は、企業が採用した人の職務適性や働きぶりを実際の業務で確かめるための期間です。書類や面接だけで分からない実務能力や職場になじむかを評価します。たとえば、接客業なら客対応やチームとの連携を確認するため、事務職なら業務処理の正確さや速度を見ます。

法的な位置づけ

法律(労働基準法等)に「試用期間」の明確な定義はありません。ただし、試用期間中でも労働契約は成立しており、最低賃金や労働時間、社会保険の適用など基本的な労働法規は守る必要があります。試用期間を理由に一方的に基本的権利を奪ってはいけません。

実務上のポイント

多くの企業は就業規則や労働契約書に試用期間の長さ、評価基準、待遇を明記します。例:試用期間3か月、評価基準は業務習熟度と出勤状況、給与は本採用と同額または一定の扱い。明確に書くとトラブルを避けやすくなります。

試用期間の設定方法と期間の上限

設定は事業者の裁量

試用期間を設けるかどうかに法的義務はありません。導入するかは企業の判断です。新卒や未経験者に短期間の適応期間を設ける場合が多いです。

設定方法(実務上の書き方)

  • 就業規則や労働契約書に明確に記載します。例:「試用期間3か月、業務適性を確認のうえ本採用を決定」
  • 期間の開始日・評価基準・延長や免除の条件・待遇(賃金や手当)を入れて周知します。
  • 就業規則がある事業場はそちらに、ない場合は労働契約書で個別に取り決めます。

期間の目安と上限

法的な明確な上限・下限はありませんが、一般的には1~3か月程度、場合によって6か月以内とするケースが多いです。1年を超える長期の試用期間は、公序良俗に照らして無効と判断される可能性があります。

延長・免除の扱い

  • 延長する場合は理由と期間を明記し、原則として書面で本人の同意を得ます。無期限に繰り返す運用は避けてください。
  • 経験者などは当初から試用期間を免除する旨を契約に書いておくと明確です。

実例

  • 新入社員:試用期間3か月(評価で本採用)
  • 専門職:試用期間6か月(長期研修が必要なため)
  • 他社で同職務経験あり:試用免除

上記を明文化して従業員に周知することが大切です。

試用期間中の労働条件・待遇

賃金

試用期間中でも、基本的な労働条件は原則として通常の従業員と同じです。賃金を本採用後より低く設定することは可能ですが、事前に契約書や書面で明示してください。例えば「試用期間は月給20万円、正社員登用後は月給23万円」といった具体的な表示が必要です。

労働時間・休憩・休日

所定の労働時間や休憩、休日は試用期間であっても適用されます。時間外労働が発生した場合は割増賃金を支払う必要があります。

社会保険・雇用保険

勤務日数や労働時間が一定の基準を満たせば、試用期間中でも社会保険や雇用保険の加入対象になります。条件に応じて手続きを行ってください。

平均賃金や手当の取扱い

試用期間中の賃金は、平均賃金算定の対象から除かれる場合があります。ただし、手当や賞与の取扱いは契約内容や就業規則によって異なりますので、具体的に明示することが大切です。

実務上のポイント

待遇に差を設ける場合は、雇用契約書や就業規則で明確にし、労働者に説明してください。書面での確認と記録を残すとトラブルを防げます。例:試用期間の賃金・昇給ルール・社会保険の適用時期などを明示する。

試用期間中の解雇・本採用拒否のルール

法的な基礎

労働基準法第21条では、雇入れ後14日以内の解雇には解雇予告や予告手当が不要とされています。15日目以降は30日前の予告か30日分の解雇予告手当が必要です。

解雇・本採用拒否の要件

試用期間中でも、理由なく安易に解雇したり本採用を拒むと無効や不当と判断される可能性があります。企業は合理的で客観的な理由と、手続き上の公正さを備える必要があります。具体的には業務成績不良・勤務態度・規律違反など、評価基準に基づく説明が求められます。

手続き上の注意(実務のポイント)

・採用時に試用期間の目的や評価基準を文書で示す。例:業務習得状況や出勤率など。
・評価の記録や面談の記録を残す。改善の機会を与え、指導の履歴を残す。
・不採用決定時は理由を明確に伝え、必要なら説明の機会を設ける。

具体例

業務が著しく遂行できない場合は不採用理由になり得ますが、単なる性格や個人的相性だけでは不当とされることがあります。疾病や妊娠などの理由による差別は許されません。

上記を踏まえ、試用期間の解雇・不採用は慎重に判断し、記録と説明を徹底してください。

試用期間と類似概念(研修期間・仮採用など)の違い

はじめに

試用期間と研修期間、仮採用や見習いなどは似て見えますが、目的や法的扱いが異なります。ここでは違いを分かりやすく整理します。

定義と主な目的

  • 試用期間:採用後に適性や勤務態度を確認することが主目的です。実務での評価が中心になります。
  • 研修期間:業務知識やスキルを教えることが主目的で、教育的な色合いが強いです。
  • 仮採用・見習い:社内呼称で、試用か研修か両方の意味で使われることがあります。

雇用契約と賃金の扱い

名称だけで扱いが決まるわけではありません。雇用契約がある場合は労働基準法などの適用対象です。賃金や労働時間は契約内容に従います。たとえば「研修」と書いてあっても賃金を支払う必要がある場面があります。

運用上の違いと具体例

  • 研修期間の例:座学やOJTで業務の進め方を教える。評価は学習の習熟度中心。
  • 試用期間の例:通常の業務を任せて実務成績や勤務態度を評価する。採用可否を判断する。

呼称に関する注意点と実務対応

  • 呼び方より内容で判断してください。契約書や就業規則に目的、期間、賃金、評価基準を明記すると誤解を避けられます。
  • 評価基準は具体的に示し、労働者に説明してください。どの段階で本採用にするか明確にします。

この章では、名称よりも実態を重視すること、契約書や説明で透明にすることが重要だとまとめます。

試用期間に関する実務上の注意点

就業規則・雇用契約書への明記

試用期間の有無・期間・延長条件・本採用判断の基準を必ず書面で示してください。例えば「評価項目(業務習得度、勤務態度、欠勤状況)に基づき判断する」と具体化すると誤解が減ります。

評価と記録の整備

合否を決める評価は日時や評価者、内容を記録します。面談記録や業務成績の一覧を残すと客観性が高まります。口頭だけで判断しないでください。

延長扱いの注意点

延長を行う場合は事前に基準と上限期間を定め、書面で同意を得ます。例:病気で評価不能なら最長1か月延長とするなどです。

労働条件・不利益取扱いの禁止

試用期間だからといって社会保険未加入、著しい賃下げ、正当な休暇の不許可は認められません。待遇は原則として本採用と同一または合理的な説明が必要です。

解雇・本採用拒否の対応

不採用や解雇時は評価根拠を提示し、必要に応じて面談記録を説明します。不当解雇と疑われないよう配慮してください。

実務チェックリスト(簡易)

  • 試用期間条項の書面化
  • 評価基準と記録方法の明確化
  • 延長条件の規定と同意取得
  • 社会保険・賃金の確認
  • 面談・通知の記録保管

これらを整備するとトラブルを未然に防げます。丁寧に運用してください。

第8章: まとめ

試用期間は、本採用前に適性や能力を確認するための重要な期間です。企業は期間や評価方法を決めますが、労働基準法や判例に基づく制約を守る必要があります。実務では、トラブルを防ぐために以下を徹底してください。

  • 書面で明示する:試用期間の長さ、評価基準、給与・待遇を雇用契約や就業規則に明記します。例:3か月の試用、1か月・2か月に評価面談。
  • 公平な評価を行う:評価基準を具体化して、複数の担当者で記録を残します。
  • 労働条件の明確化:給与や社会保険の扱いを明示し、差別扱いを避けます。
  • 改善機会を与える:問題がある場合は指導や期限を示し、記録します。
  • 解雇判断は慎重に:不当解雇とならないよう証拠を残し、必要なら専門家に相談します。

これらを実行すると、従業員との信頼関係を保ちつつ、法的リスクを減らせます。企業と労働者双方にとって、透明で公正な運用が大切です。

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