はじめに
退職届の「退職日」をどう書くかで、不安を感じる方は多いです。本記事は、退職日を「月末」にする場合や、その月末が土日・祝日にあたる場合に、どのように記載し対応すればよいかを分かりやすく解説します。
対象は、退職を検討している会社員・契約社員・パートの方です。書類の書き方だけでなく、実務上の扱い(会社との合意の取り方や手続きの流れ)、社会保険や翌月の給料・手続きへの影響まで幅広く扱います。
具体例を交えて、実際に書くときの注意点やよくある誤解を丁寧に説明します。例えば「○月末日」「最終出勤日」「月の最終営業日」などの表記の違いと、それぞれのリスクを見ていきます。
この章では、全体の構成と読み進め方を示します。各項目は実務で使えるように具体的な例やテンプレートを用意しますので、次章以降で順にご覧ください。
退職届に記載する日付の基本ルール
必ず明記する2つの日付
退職届には「退職日」と「提出日」を必ず書きます。退職日=実際に会社を辞める日、提出日=退職届を会社に渡した日です。両方がないと手続きで混乱が生じます。
縦書き・横書きの書き方
- 縦書き:文末に退職日を記載します。正式感を出すなら漢数字で書きます。例)「令和五年十二月三十一日 退職」
- 横書き:右上に提出日を記入し、文中で退職日を明記します。例)右上「提出日:2025年12月31日」本文中「退職日:2026年1月31日」
漢数字と算用数字の扱い
形式を重視する場合は漢数字(「一、二、三」)が望ましいです。ただし算用数字(「2025年12月31日」)でも法律的な問題はありません。どちらを使うかは一つに統一してください。
表記の統一と実務上の注意
- 年号(和暦・西暦)はどちらかに揃えます。混在させないでください。
- 手渡しで提出するなら提出日を記入し、受領印や受領書をもらうと証拠になります。
- 退職日と就業最終日が異なる場合は、本文で理由(有給消化など)を簡潔に書いておくと処理がスムーズです。
退職日を月末に設定する場合の注意点
退職日を月末(例:3月31日、4月30日)にすることは問題ありません。ただし、退職届には「3月末日」や「月末」といった曖昧な表現を使わず、具体的な日付を必ず書いてください。
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日付は具体的に記載する
例:『退職日:2025年3月31日』。これで会社側の手続きや給料・保険の処理が明確になります。 -
就業規則の申出期限を確認する
会社で「退職は1か月前に申し出る」と定めている場合、退職日の1か月前までに退職届を出す必要があります。たとえば3月31日退職なら、一般的には2月28日(または2月29日)までに提出します。余裕を持って数日前には出すと安心です。 -
提出方法と証拠を残す
口頭だけでなく書面で出すとトラブルを避けられます。窓口で受領印をもらうか、メールで送る場合は送信記録を残してください。 -
実務上の注意点
月末退職は給与計算や有給消化、社会保険の手続きに影響します。会社の人事や総務に早めに確認すると手続きがスムーズです。詳しい扱いは次章以降で説明します。
月末が土日・祝日の場合の退職日記載・実務
基本ルール
月末が土日や祝日でも、その日を退職日として記載できます。例:3月31日が日曜日でも「3月31日付退職」と書けます。会社の就業規則に別段の定めがない限り、休日でも法的・実務的に有効です。
実務上の注意点
- 就業規則・雇用契約を確認してください。企業によっては給与支払や手続きの運用ルールがあります。
- 人事や総務に口頭・メールで早めに伝え、書面での確認を必ず受け取りましょう。退職日を確定させるためです。
手続きへの影響(具体例)
- 給与:締め日や支払日によって最終給与の扱いが変わるため、締め日を確認してください。たとえば25日締めなら最終月の支給範囲が異なります。
- 社会保険・年金:資格喪失日は記載した退職日になります。行政手続きで前倒しされることは原則ありません。
- 有給・離職票:有給消化の扱い、離職票の発行時期も退職日基準で処理されます。
実務的な進め方
- 就業規則と雇用契約を確認する
- 上司・人事に退職日を伝え、承認と書面確認を得る
- 最終給与・保険・有給の扱いを人事に確認する
- 離職票や健康保険資格喪失証明などの発行タイミングを確認する
これらを踏まえれば、月末が休日でも混乱を避けて退職手続きを進められます。
退職日が月末か月中かによる社会保険料の違い
基本的な違い
退職日を月末にすると、その月の社会保険料(健康保険・厚生年金など)が給与から1か月分差し引かれるのが一般的です。月中(例:15日)に退職すると、その月の社会保険料を会社が支払う義務が生じないため、給与から差し引かれないケースが多いです。
具体例(イメージ)
- 月末退職:最終月の給与から社会保険料がまるまる引かれる。手取りが減る可能性があります。
- 月中退職:その月の社会保険料は発生しないため、最終給与は保険料分が多くなることがあります。
実際の金額は給与額や保険料率で変わりますので、総務で試算してもらうと安心です。
保険・年金の切替えと注意点
月中に退職すると、会社の健康保険や厚生年金の資格は会社側の扱いで早めに喪失扱いになる場合があります。そうなると、退職後は以下のどれかに切り替える必要があります。
– 家族の扶養に入る(条件あり)
– 国民健康保険・国民年金に加入する
– 任意継続被保険者制度を利用する(条件あり)
切替え手続きや保険料支払いのタイミングを放置すると医療費負担や年金未納のリスクが出ます。手続きは市区町村窓口や会社の総務で案内を受けてください。
判断のポイント
- 最終月の手取りを重視するなら月中退職を検討できます。
- 保険の手続きや給付の受け方をスムーズにしたいなら月末退職の方が手続きが分かりやすい場合があります。
会社の締め日や総務の扱いで処理が変わることがありますので、退職日の決定前に必ず総務に確認してください。
退職届提出のタイミング・マナー
概要
退職届は就業規則・引き継ぎ・有給の計画を踏まえて、早めに上司や人事へ相談した上で出すと安心です。法律上は2週間前の申し出で退職できますが、円満退職や業務影響の軽減のためには1ヶ月以上前の提出をおすすめします。
提出時期の目安
- 就業規則で定めがあればそれに従う。特に契約社員や雇用期間に注意。
- 一般的には1か月前が目安。部署の繁忙期や引き継ぎの長さで早める。
- 緊急の場合は2週間でも可能だと覚えておく。
相談の仕方と順序
- まず直属の上司に口頭で相談し、退職日と引き継ぎの希望を伝える。事前に面談時間を取ると話しやすいです。
- 上司と合意したら人事に連絡し、書面(退職届)の提出日を決める。
- 引き継ぎ案や有給消化の案を準備して提示すると調整が進みます。
提出のマナー(実務)
- 口頭で伝えた後、正式な退職届を手渡しまたはメールで送付する。退職届は日付・氏名・退職日を明記します。
- 言葉は簡潔に。「一身上の都合により○月○日をもって退職いたします」といった表現で十分です。
円満退職の心がけ
- 引き継ぎ資料を用意し、後任やチームに配慮する。
- 最後まで誠実に勤務し、感謝の挨拶をする。
- 退職理由をネガティブに話しすぎない。SNSでの詳細な投稿は控えましょう。
急ぎで辞めたいときの対応
- 事情を簡潔に伝え、書面で意向を残す。
- 会社側と折り合いがつかない場合は外部の相談窓口に相談する選択肢もあります。
退職届の書き方・テンプレート例
基本構成
- 日付(提出日)
- 宛名(会社名・代表者名)
- 表題(退職届)
- 本文(退職理由と退職日)
- 署名・印
本文は短く具体的に書きます。退職日は必ず具体的な西暦・和暦または年月日で明記します(例:「一身上の都合により、令和5年3月31日をもって退職いたします」)。
書き方のポイント
- 提出日を必ず記載する。
- 理由は「一身上の都合で可」簡潔で良い。
- 手書きかワープロかは会社の慣例に従う。印鑑を求められることがあります。
テンプレート(正式・短文)
令和5年3月1日
株式会社○○
代表取締役 ○○○○ 殿
退職届
一身上の都合により、令和5年3月31日をもって退職いたします。
令和5年3月1日
氏名(署名)
テンプレート(詳細)
提出理由や引継ぎ希望日などを追記すると親切です。例:「業務の引継ぎは4月中に完了予定です」など。
提出時の注意
上司に口頭で伝えたうえで書面を提出します。控えを1通残すと安心です。
退職後の手続き(社会保険・税金等)
会社から受け取る書類
退職時に会社から受け取る主な書類は「雇用保険被保険者証」「離職票」「源泉徴収票」「健康保険資格喪失届(確認書類)」などです。まずこれらを確認し、紛失しないよう保管してください。
健康保険
健康保険は原則として資格喪失が発生します。会社の健康保険を続ける「任意継続」と、市区町村の「国民健康保険」への切替のどちらかを選びます。任意継続は資格喪失日から20日以内に手続きが必要なため、早めに決めて申請してください。
年金
厚生年金から国民年金へ変更する手続きが必要な場合があります。年金手帳や基礎年金番号を準備し、年金事務所または市区町村窓口で手続きを行ってください。
雇用保険・失業給付
離職票を受け取り、ハローワークで求職の申請をします。受給資格や給付開始日は離職理由や加入期間で変わります。離職票が届いたら速やかにハローワークへ行ってください。
税金・年末調整
年内に再就職しない場合や年末調整を受けられない場合は、翌年に確定申告が必要です。源泉徴収票をもとに所得税の精算を行います。退職金がある場合は退職所得として別計算になります。
必要書類と注意点
マイナンバー、身分証明書、印鑑を持参すると手続きがスムーズです。退職日と資格喪失日や手続きの期限を混同しないよう注意してください。分からない点は会社の総務や最寄りの年金事務所・ハローワークに相談しましょう。


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