はじめに
本資料の目的
本資料は、有期雇用契約の「契約期間満了」による離職に関する実務的なポイントを分かりやすくまとめたものです。離職票に記載される離職理由の区分や、失業保険の給付にかかわる扱い、履歴書への記載方法、異議申し立ての手続きなどを具体例を交えて解説します。
対象読者
契約社員や派遣社員、アルバイトなど有期契約で働く方、人事担当者、ハローワークで手続きを行う方を想定しています。法律や制度に詳しくない方でも読み進められるよう配慮しました。
本書で学べること
- 契約満了時の離職理由の意味と分類
- 離職票の書き方とチェックポイント
- 失業保険申請時の注意点
- 履歴書記載や今後の対応、トラブル時の初期対応
読み方と使い方
章ごとに典型的な事例と実務上の注意点を示します。まず本章で全体像を把握し、必要な章を参照してください。
注意点
本資料は一般的な説明を目的とします。個別のケースでは対応が異なることがあるため、必要に応じてハローワークや専門家に相談してください。
契約期間満了とは何か
定義
契約期間満了とは、あらかじめ定めた有期雇用契約(例:1年の契約社員、3か月の派遣)がその終了日を迎え、自動的に雇用関係が終わることを指します。雇用期間の終わりが契約どおりに来るだけで、特別な手続きが不要なことが多いです。
対象となる雇用形態と具体例
- 契約社員:1年契約で期間満了と共に雇用終了
- 派遣社員:プロジェクト終了で3か月の派遣契約が終わる
- 有期のパートタイム:季節業務の期間だけ雇う場合
期間中の解除と雇止め
期間中は原則として契約どおり雇用が続きます。双方が合意すれば中途解約できますが、理由や手続きに注意が必要です。期間満了で契約が終わることを「雇止め」と呼ぶことがあります。
更新と期待感(契約更新の扱い)
契約書に更新の定めがある場合や、これまで繰り返し更新されてきた実績がある場合、更新を期待する社員もいます。しかし、明確な約束がない限り雇用者は更新をしない選択もできます。
実務上の注意点
契約書の終了日と更新条件を必ず確認してください。口頭の約束だけではトラブルになりやすいため、書面で残すことをおすすめします。
離職票における「契約期間満了」の離職理由
意味と位置づけ
離職票では「契約期間満了」が独立した離職理由として扱われます。雇用期間があらかじめ定められている有期契約が満了して退職した場合に記載されます。自己都合や会社都合とは別枠です。
契約更新の有無で変わる取扱い
契約が更新されず満了で退職しただけなら基本的に「契約期間満了」となります。ただし、本人が更新を希望していたか、会社が更新しなかった理由によって失業保険の扱いが変わることがあります。
特定理由離職者となる場合
更新を希望していたのに会社側の事情(業績悪化や雇用調整)で更新されなかった場合は、「特定理由離職者」として扱われ、給付制限が緩和されることがあります。反対に、本人が更新を拒否した場合は自己都合扱いになることが多いです。
離職票の記載で確認する点
離職票の「離職理由」と「詳細事項」を確認してください。更新の希望や会社からの通知が明記されているかが重要です。内容に不明点があればハローワークや労働相談窓口で相談しましょう。
具体例
例1:契約満了で会社が更新不可と通知→契約期間満了(場合により特定理由)
例2:本人が別の仕事を希望して更新を断った→契約期間満了(自己都合扱いになる可能性あり)
自己都合・会社都合・特定理由離職者の違い
概要
契約期間満了での離職は一律ではなく、自己都合・会社都合・特定理由に分かれます。分類で失業保険の扱いが変わるため、違いを押さえておきましょう。
自己都合離職(例とポイント)
- 労働者側の事情で契約を更新しない、または辞めると選んだ場合。例:別の仕事を希望した、契約書に「更新なし」と明記されていた。
- ポイント:基本的に給付開始に一定の制限(給付制限)がつきます。契約前後の明示的な合意や申出の記録が判断材料になります。
会社都合離職(例とポイント)
- 会社側の事情で更新しない場合に当てはまることがあります。例:事業縮小や雇用維持が困難になった場合。
- ポイント:会社側の都合と認められれば失業保険の取り扱いが有利になりますが、実際の分類は事実関係で決まります。
特定理由離職者(例と効果)
- 労働者が更新を希望したのに会社都合で更新されなかったなど、特別な事情がある場合に該当します。例:契約満了時に更新を求めたメールや口頭の記録があるのに会社が更新を拒んだケース。
- 効果:給付制限が免除されることが多く、申請後に比較的早く給付が始まる可能性が高くなります。
実務的な注意点
- 分類は雇用主が記載しますが、最終的な判断はハローワークが行います。
- 更新を希望した証拠(メール、申出記録、面談のメモ)を残しておくと有利です。
- 判断に納得がいかないときは、ハローワークで事情を説明してください。
離職票作成時の実務ポイント
要点の整理
離職票の「離職理由」欄には通常「契約期間満了」や「労働契約期間満了による離職」と記載します。記載と同時に、契約の開始・終了日、更新の有無、更新打診の有無を明記してください。
更新打診があった場合の扱い(具体例)
- 会社が更新を口頭や文書で打診し、本人が拒否した場合は一般に自己都合になります。例:会社が書面で「更新案内を送付」→本人が「更新不要」と書面で回答。
会社側で残すべき記録
- 契約書、更新案内のメールや文書、面談の記録(日時・出席者・要旨)、本人の意思表示(書面やメール)。
- 記録は後の判断に大きく影響します。可能な限り日時と証拠を揃えてください。
判断に疑義がある場合の対応
- 会社と本人の主張が異なるときは、両者の言い分を簡潔に書面で残すとよいです。解釈が難しければ労働相談窓口やハローワークへ相談してください。
実務チェックリスト
- 契約満了日を確認
- 更新案内の有無を確認
- 本人の意思表示を記録・保存
- 離職理由の文言を正確に記載
- 記録の写しを本人に渡す
丁寧な記録管理と透明な対応が、後のトラブル防止につながります。
失業保険(雇用保険)との関係
概要
契約期間満了で退職した場合、失業保険(雇用保険)の受給条件は離職理由で変わります。特定理由離職者に該当すれば、7日間の待機期間の後、給付制限なしで受給できます。自己都合に該当すると、原則として給付制限(約2か月)が付きます。
給付の開始条件と待機・給付制限
- 待機期間:受給手続き後に原則7日間の待機があります。これが最初の期間です。
- 給付制限:自己都合の扱いだと通常2か月(※状況により変動)給付が始まりません。特定理由なら制限はありません。
ハローワークでの判断材料
雇用契約書、契約更新に関する通知、解雇や契約満了を示す文書、会社とのやり取り(メールなど)を持参してください。これらが離職理由の認定に重要です。面談では退職に至った経緯を具体的に説明しましょう。
申請の実務ポイント
- まずハローワークで離職票を提出して手続き開始します。
- 書類はコピーを取り、日付や署名が分かるものを揃えます。
具体例
- 契約満了で更新打診がなく、会社からの説明がない場合は特定理由に該当する可能性があります。
- 自分の意思で更新を断った場合は自己都合になります。
注意点
判断はハローワークが行います。書類で証明できる事実をできるだけ用意すると認定が有利になります。
履歴書や今後の対応
履歴書への書き方
履歴書には簡潔に「契約期間満了により退職」と記入します。派遣だった場合は「派遣社員(契約期間満了)」と明記すると採用担当に伝わりやすいです。例:2024年3月 退職(契約期間満了/派遣社員)。
職務経歴書での補足
業務内容や成果を具体的に書きます。担当した業務、使用したツール、達成した数値や期間を記載すると説得力が増します。短期の契約でも「何をしたか」を重視してください。
ブランクや面接での説明
空白期間は正直に説明し、前向きな行動を添えます。例:「契約満了後、次の業務を探す中で○○の資格を取得しました」といった説明が効果的です。
派遣社員向けの具体的行動
派遣会社へ早めに相談し、次の案件を紹介してもらいます。ハローワークや求人サイトも並行して活用し、面談準備や職務経歴書の更新を定期的に行ってください。
実務上の注意点
離職票や雇用保険の手続き、退職証明や給与明細の保管を忘れずに。前職の上司や派遣元に推薦をお願いできる場合は頼んでおくと安心です。
異議申し立て・トラブル対応
離職理由に納得できないときの基本
離職票の記載内容に納得できない場合は、受け取ったら速やかに行動します。まずは会社に事実確認を求め、訂正を依頼してください。口頭だけで進めず、メールや書面でやり取りを残すと後で役に立ちます。
異議申し立ての手順(例)
- 会社に訂正を求める:いつ、どのように退職したかを明確に伝えます。
- ハローワークに相談する:離職理由の扱いについて相談・照会してもらえます。
- 証拠を用意する:雇用契約書、退職願、メール記録、タイムカード、就業規則などを集めます。
例:更新契約満了のはずが「自己都合」になっている場合、契約書や更新履歴を提示します。
会社側が取るべき記録
会社は退職経緯や面談記録、解雇理由を文書で残すべきです。後で争いになった際、説明責任を果たしやすくなります。
争いが長引くときの対応
ハローワークの相談で解決しない場合、労働相談センターや労働局、最終的には弁護士に相談します。裁判や調停に進む前に証拠を整理し、費用や期間を見積もって判断してください。
注意点
交渉は冷静に進め、証拠を優先して示します。感情的なやり取りは避け、記録を確実に残してください。


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