はじめに
退職届に書く「日付」は意外と悩みどころです。本記事は、退職届に記載するべき日付の種類とその意味、正しい書き方、提出タイミングの違いをわかりやすく説明します。退職届提出日(届出日)と退職日(雇用契約終了日)の違いや、会社規則と法律上の期限の差、提出時の注意点やトラブルの対処法も取り上げます。テンプレート例も用意しているので、実際の作成にも役立ちます。
対象は、これから退職を考えている方や、退職手続きに不安がある方です。人事担当者や上司が確認する際にも参考になります。文章は具体例を交えながら、専門用語をできるだけ避けて丁寧に解説します。
章立ては次の通りです。第2章で日付の種類を整理し、第3章で書き方と記載位置を解説します。第4章以降で提出日と退職日の違いや提出のベストタイミング、期限と注意点、トラブル対処、テンプレートを順に説明します。まずは全体像をつかんでから、必要な章を読み進めてください。
退職届に記載するべき日付とは
主に記載する2つの日付
退職届に書く日付は、基本的に「退職届提出日(届出日)」と「退職日(雇用契約終了日)」の2つです。
退職届提出日(届出日)とは
会社に正式に退職の意思を伝えた日を指します。直接手渡しならその日、郵送ならポストに投函した日を記載します。郵送の場合は配達記録や特定記録、簡易書留などを利用すると後で証明しやすくなります。
退職日(雇用契約終了日)とは
会社との雇用関係が実際に終わる日です。上司や人事と相談して決めます。就業規則や雇用契約で定められている日があればそれに従ってください。
最終出勤日について
最終出勤日は実際に出勤する最後の日で、有給消化がある場合は退職日より前になることがあります。最終出勤日は通常、退職届には記載しません。必要なら別途、上司や人事に伝えて調整します。
日付の書き方のポイント
・「年・月・日」まで明記すること
・西暦か和暦かは統一すること
・郵送なら投函日を正確に記入し、証拠を残すこと
以上を押さえると、日付に関する誤解やトラブルを防げます。
退職届の書き方と日付の記載位置
基本の構成
退職届は「宛先(会社名・上司名)」「本文」「退職日(本文内)」「提出日(文末)」「氏名・押印」の順で書きます。本文に退職理由を簡潔に示し、最後に退職日を明記します。
本文に退職日を明記する方法
本文では「いつをもって退職するか」を明確に書きます。例:「このたび、一身上の都合により、2025年3月31日をもって退職いたします。」と年・月・日まで正確に記載してください。
文末・提出欄に提出日を記載する方法
文末または提出枠には、実際に書類を作成・提出した日を記します。例:「2025年1月31日」と記入し、その下に署名・押印をします。こうすることで「いつ申し出たか」と「いつ退職するか」が明確になります。
記載例
宛先:株式会社○○ 代表取締役 山田太郎 殿
本文:このたび、一身上の都合により、2025年3月31日をもって退職いたします。
提出日:2025年1月31日
氏名:山田 花子 (印)
押印・署名と日付の位置の注意点
提出日と署名は同じ場所にまとめると分かりやすいです。訂正がある場合は二重線で訂正し、押印で承認すると良いでしょう。文面と提出日の整合性を必ず確認してください。
退職届提出日(届出日)と退職日(契約終了日)の違い
この章では、届出日・通知日・退職日・最終出勤日の違いをわかりやすく説明します。
届出日(提出日)とは
書面で会社に退職届を提出した日です。労務上の手続きや法的効力は原則としてこの日から動きます。受理された日付を控えておきましょう。
通知日とは
上司に口頭やメールで退職の意思を伝えた日です。社内で相談や調整を始めるための合図になりますが、法的効力は届出日が基準です。
退職日(契約終了日)とは
雇用契約が正式に終了する日です。給与の精算や保険の手続きなど、契約上の終期になります。
最終出勤日とは
実際に出社する最後の日です。引継ぎや有給消化のスケジュールにより退職日と一致しないことがあります。
混同しやすい点と実務上の注意
通知日と届出日を混同しやすい点に注意してください。重要なのは届出日を明確にし、会社に受理された証拠(控えやメール)を残すことです。就業規則や雇用契約に定めがあるかも確認しましょう。
具体例
例:4月1日(口頭で通知)→4月10日(書面を提出=届出日)→4月30日(退職日)。最終出勤は4月20日で、その間は有給消化というケースがあります。
退職届提出のベストタイミング
まずは就業規則を確認
会社の就業規則や雇用契約が優先されます。多くは「退職予定日の1カ月前まで」などの規定があり、まずそこを確認してください。民法627条では原則として2週間前の通知で退職できますが、就業規則に従うのが一般的です。
目安となる提出時期
- 一般社員:退職希望日の1カ月前を目安にすると円満です。例:3月末退職なら2月末に報告。
- 管理職・重要業務担当:1〜2カ月前を推奨。引継ぎ量が多いため余裕を持ちます。
- 契約社員・アルバイト:契約内容を優先。短期なら最低2週間でも可能です。
提出の順序と具体例
まず直属の上司へ口頭で伝え、その後人事へ書面を提出します。例として、退職希望日を6月末にする場合、5月中に上司と話し合い、遅くとも5月末に退職届を出すと安全です。
注意点
提出当日に退職することは基本的に認められません。引継ぎ、事務処理、給与や有給の精算のため時間を確保しましょう。繁忙期や締め日の関係で手続きに時間がかかることがあります。急な事情がある場合は早めに相談してください。
退職届の提出期限と注意点
提出期限の基本
退職届は原則として退職日より前に提出します。会社の就業規則や雇用契約に提出期限が定められていることが多いので、まずそれを確認してください。例として「1か月前提出」とある場合は、その通りに手続きを進めます。
やむを得ない事情と対応
急病や家庭の事情などやむを得ない場合、退職日後の提出を認めてもらえることがあります。まずは上司や人事に事情を説明し、必要に応じて医師の診断書などの証拠を用意します。口頭だけで済ませず、メールや書面で記録を残すと安心です。
有給消化や引継ぎとの調整
有給休暇の消化や業務の引継ぎで最終出勤日が退職日より前になることが多いです。退職届を出す際に、提出日・退職日・最終出勤日の区別を明確にし、上司とスケジュールを調整してください。
提出が遅れた場合の影響
遅れて提出すると、会社が受理しない、給与計算や有給の扱いで不利になる、引継ぎが不十分でトラブルになる可能性があります。可能なら早めに相談し、合意を得た内容は書面で確認してください。
実務のチェックリスト
- 就業規則・雇用契約の提出期限を確認する
- 提出日・退職日・最終出勤日をすり合わせる
- 有給や引継ぎ計画を作成する
- 重要なやり取りはメールや書面で残す
- やむを得ない場合は証拠(診断書等)を用意する
これらを踏まえて、余裕を持って上司や人事と相談しながら決めてください。
退職届の日付記入ミス・トラブルへの対処
日付の間違いに気づいたら
まず速やかに上司か人事に連絡し、訂正の意思を伝えてください。口頭だけでなく、メールで連絡履歴を残すと安心です。
訂正方法と再提出の手順
- ペンでの訂正:訂正箇所に二重線を引き、訂正後の正しい日付を記入して押印または署名をしてください。必ず訂正理由と訂正者の署名を付けてください。例:「誤記入のため訂正(本人署名)」。
- 新しい書面で再提出:訂正に不安がある場合は、新しい退職届を作成して再提出してください。原本は控えとして保管します。
控えの保管・証拠
提出した退職届の控えを必ず保管してください。手渡しの場合は受領印をもらい、メールで送った場合は送信済みメールと受信確認を保存します。
会社が退職を認めない・争いになった場合
法律上は原則として2週間前通知で退職できます(民法545条、一般原則)。それでも就業規則や会社との合意に従うことが望ましいため、引継ぎや人員補充に協力する姿勢を示してください。争いが続く場合は、労働基準監督署や弁護士に相談して書面での立証を進めてください。
デジタル提出や印鑑の注意点
メールや社内システムで提出する場合も、送信履歴や受信確認を保存してください。電子署名が必要な場合は会社のルールに従いましょう。
実務的な心構え
冷静に迅速に対応し、記録を残すことが最も重要です。トラブルを避けるために、早めに上司と相談し円滑な引継ぎに努めてください。
退職届のテンプレート例
以下は、実際に使いやすい退職届の例文と記入のポイントです。本文で退職日(契約終了日)を明示し、文末に提出日(届出日)と氏名を記載します。
テンプレート(正式)
退職届
私事で恐縮ですが、一身上の都合により、2025年3月31日をもって退職いたします。
2025年1月31日
氏名(署名)
所属部署・役職
テンプレート(簡易)
退職届
2025年3月31日付で退職いたします。
2025年1月31日
氏名
記入のポイント
- 退職日(本文中):「○年○月○日をもって退職します」と明確に書きます。会社との合意日や就業規則に合わせて決めます。
- 提出日(文末):届出日を文末に記入し、氏名を添えます。提出日と退職日が異なる場合は両方を記載してください。
- 署名・押印:会社が指定する場合は押印を行います。手書きで署名することで正式な書類になります。
注意点
- 上司や人事と事前に退職日を調整してから提出してください。
- 電子提出の場合も、会社のルールに従い日付と氏名を明記してください。
まとめ:退職届の日付はどう決める?
要点
退職届には「退職日(雇用契約の終了日)」と「提出日(届出日)」の両方を必ず記載します。就業規則や雇用契約に定めがあればそれに従ってください。規定がない場合は法律上、原則として2週間前の通知で退職できます。
日付の決め方(手順)
- 就業規則・雇用契約を確認する。退職の必要予告期間が書いてあればその日数に従います。
- 業務引継ぎや有給消化、給料支給日を考慮して退職日を決める。例:月末締めで給料調整したい場合は月末を退職日にする。
- 提出日は実際に書類を渡す日、または郵送の消印日を記入します。
- 上司・人事と事前に相談し、提出のタイミングを調整します。
注意点・トラブル防止
退職届の控えを受け取り、受領印やメールでの受領確認を残してください。日付を間違えた場合は速やかに訂正して再提出し、記録を残します。証拠があれば誤解が生じにくく、スムーズに手続きできます。


コメント