はじめに
本書の目的
本ドキュメントは、離職票における「会社都合退職」の書き方をやさしく、実務的に解説します。離職票の基本構成や離職理由の分類を理解できるようにし、企業側と退職者側の具体的な記入手順を示します。現場で迷いやすいケースも取り上げ、対応方法を分かりやすくまとめています。
想定する読者
- 人事・総務で離職票を扱う担当者
- 退職手続きを行う従業員
- 離職票の記載内容に不安がある方
どなたでも読みやすい言葉で説明しますので、専門知識がなくても安心してお読みください。
本書の構成と使い方
第2章で書き方の基本を説明し、第3章以降で具体的な記入例やトラブル時の対応を順に解説します。実務で使いやすいように、具体例やチェックポイントを多く載せています。必要に応じて該当章だけを参照してください。
注意点
離職票は公的な書類です。記載内容は事実に基づいて正確に記入してください。疑問がある場合は、労務の専門家やハローワークに確認することをおすすめします。
離職票の会社都合退職における書き方ガイド
概要
離職票は「離職票-1」と「離職票-2」から成り、特に離職票-2に退職理由や期間が記載されます。会社都合扱いになると、失業給付の待機期間や給付日数に影響が出ますので、正確な記載が大切です。
離職理由の区分と影響
会社都合には主に「解雇」「倒産」「整理解雇」などがあります。会社都合だと給付制限がなく、早めに受給できる場合が多いです。自己都合だと給付開始までの期間が長く、給付日数も異なります。
書き方のポイント(事業主向け)
- 離職区分欄:該当する「会社都合(特定受給資格者)」にチェックを入れます。
- 退職理由欄:具体的な事実を短く記載します(例:事業縮小による解雇、会社の倒産など)。
- 退職日・最終出勤日:実際の最終出勤日を正確に記入します。
- 休業や賃金支払状況:休業手当や未払賃金がある場合は明記します。
従業員への配慮と確認
従業員には離職票の写しを渡し、記載内容を確認してもらいます。従業員が内容に疑義を持つ場合は、証拠(通知書・通達メール等)を保管し、ハローワークで相談するよう案内してください。
よくある誤り
- 書き方があいまいで具体性がない(「一身上の都合」など安易な記入)。
- 日付が不一致。
- 休業や賃金の扱いを記載漏れ。
正確に記入することで、従業員の失業手続きがスムーズになります。必要に応じて社内の総務や社会保険労務士に相談してください。
会社都合退職時の具体的な記入方法
概要
企業の人事は離職票-2の「離職理由」で会社都合に該当する項目を選び、具体的事情欄にその内容を明記します。基本情報(氏名、入社・退職日、給与など)も正確に記入してください。
企業側の記入手順(詳しい流れ)
- 離職理由の選択:解雇、人員整理、定年・契約満了など該当するものを選びます。
- 具体的事情の記載:いつ・どのような理由で退職に至ったかを短く事実ベースで記載します(例:業績悪化による人員整理のため、○年○月に業務縮小)。
- 基本情報の確認:最終出勤日、賃金支払日、休業の有無なども記載します。
退職者の確認と記入
退職者は企業が記載した離職理由を受け取り、事実と異なる点がなければ「離職者本人の判断」欄に同意を示します。異議がある場合は『離職者本人の判断』で不同意を選び、補足欄に具体的な事情(例:解雇の理由に納得できない、契約更新の意思があった)を記載します。
記入例(短文)
- 企業:人員整理のため解雇。業務縮小に伴う整理で、○年○月に対象部署で実施。
- 退職者:内容に不同意。解雇の事実関係について詳細説明を求める。
注意点と保管
記載後は必ずコピーを受け取り、ハローワークでの給付手続きに備えて保管してください。記載内容に疑問があればまず会社に確認し、解決しない場合はハローワークに相談してください。
記入内容が事実と異なる場合の対応
会社が離職票で「自己都合」と誤記した場合、退職者はまず離職票の該当欄に「異議あり」に○を付けます。次に「具体的事情欄」に実際の退職経緯を簡潔に書きます。例えば「上司からの退職勧奨により合意のうえ退職した(年月日、場所、担当者名など)」と記載すると判断に役立ちます。
状況別の対応手順
– 退職勧奨による退職:企業側が会社都合扱いにすべきです。具体的事情欄には「退職勧奨による合意退職」と明記し、退職者は自分の署名欄に署名します。
– 一方的な解雇や配置転換で実質的に退職に追い込まれた場合:その経緯を時系列で書き、証拠を揃えます(メール、面談記録、録音や同僚の証言など)。
証拠の集め方と相談先
– 証拠を保存し、会社に訂正を求めて文書で請求します。行政のハローワークや労働基準監督署、労働相談窓口に相談すると具体的な手続きや主張の仕方を教えてもらえます。必要なら弁護士や労働組合に相談してください。
会社都合による休業がある場合の記入
概要
会社都合で従業員に休業が発生した場合は、離職票の備考欄に休業の事実を明確に記載します。ハローワークが給付の可否や給付額を判断しやすくするため、簡潔かつ正確な記載が大切です。
記載すべき項目
- 休業の発生日(年月)
- 休業日数(その月ごと)
- 休業手当の支給状況(全額支給、部分支給、無支給など)
記載は短い文で明確にします。例:「○年○月:休業○日、賃金100%支給」や「○年○月:休業○日、賃金50%支給・差額未支給」などです。
具体例(記載例)
- 2024年4月:休業5日、賃金100%支給
- 2024年5月:休業12日、賃金50%支給(差額未支給)
注意点
備考欄は簡潔に書いてください。詳細な事情や争いがある場合は、別添で休業命令書、給与明細、出勤簿などの証拠を用意して添付または窓口で提示します。記載内容が事実と異なると給付に影響するため、誤りがないか再確認してください。
ハローワーク対応のための補足
ハローワークから照会が来る場合があります。その際は休業の根拠書類を速やかに提出し、事実を説明してください。正確な記載と証拠の提示で手続きがスムーズになります。
月途中での退職における注意点
月の途中で退職する場合でも、離職票の退職者記入欄の書き方自体は変わりません。ただし企業側は基礎日数や賃金支払対象期間の日割り計算を正確に行い、記載内容の正確性を特に確認する必要があります。
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退職日と記載項目の確認
退職年月日は正確に記入してください。給与の締め日や支給対象期間と退職日がずれると、賃金の対象日数の算定が変わります。 -
賃金の日割り計算のポイント
日割りの計算方法は会社の規定(暦日基準か所定労働日基準か)に従います。例:月給30万円で暦月30日が基準、退職日が15日なら日額1万円×15日=15万円を支給対象とします。締め日が異なる場合は、支払対象期間を明確にして計算してください。 -
基礎日数の扱い
雇用保険の算定に使う「基礎日数」は、給与支払の実績に基づいて記載します。不明な点は給与明細やタイムカードで確認します。 -
実務上のチェックリスト
1) 退職日と支給対象期間が一致しているか
2) 日割りの計算根拠を明文化しているか
3) 給与明細や出勤記録を添えて確認しているか
4) 従業員に最終確認を取って署名や合意を得ているか
以上を守ることで、離職票の記載ミスや後からの争いを防げます。必要なら労務担当と相談して正確に処理してください。
まとめ
離職票の「会社都合退職」は、企業と退職者の双方が正確に記入・確認することが大切です。記載が事実と異なると、失業給付の受給や後の手続きに影響します。以下を参考に、落ち着いて対応してください。
- 退職者の実務ポイント
- まず離職票の各欄をよく確認します。気になる点はその場で会社に質問しましょう。
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企業の記載に納得できない場合は「異議有り」を選び、具体的な事情や日時、証拠(メールや出勤記録など)を添えて記入します。早めにハローワークへ相談すると審査がスムーズです。
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企業の実務ポイント
- 事実に基づいて正確に記載し、必要な証拠を保存します。退職者に説明を行い、離職票の写しを渡してください。
- 記載内容に争いが生じた場合は、ハローワークの審査で正確な判断が出るよう協力します。
したがって、双方が記録を残し、早めに相談することが最も重要です。冷静に事実を整理すれば、適切な対応が取りやすくなります。


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