懲戒解雇, 例を徹底解説!具体事例と注意点まとめ

目次

第1章: はじめに

本書の目的

本ドキュメントは、懲戒解雇について基礎から実務的な注意点まで分かりやすく解説することを目的としています。企業の人事担当者や労働者が、判断や対応の際に参照できる包括的なガイドを目指しています。

対象読者

  • 企業の人事・総務担当者
  • 労働者本人やその代理人
  • 労働問題に関心のある方

本書の構成と読み方

全9章で構成します。第2章で定義や法的な考え方を示し、第3章で懲戒処分の段階と種類を説明します。第4章は懲戒解雇に該当し得る具体的な行為を挙げ、5章以降で実際の裁判事例を紹介します。まずは第2章の基礎を押さし、その後に事例を読むと理解が深まります。

注意事項

ここでの説明は一般的な解説です。個別の事案では事情が異なるため、具体的対応は労働法に詳しい専門家(弁護士・社労士)に相談してください。

懲戒解雇の基本定義

定義

懲戒解雇とは、従業員の規律違反に対する最も重い制裁として会社が行う解雇を指します。通常の整理解雇や普通解雇とは異なり、社員の違法・不誠実な行為を理由に直ちに雇用関係を終了させるものです。

懲戒解雇が認められる要件

懲戒解雇を有効とするために必要な要素は主に次の3点です。①重大な事実(不正行為や重大な勤務違反)があること、②就業規則や社内ルールにその行為が懲戒事由として定められていること、③事実関係の調査や本人への弁明機会の付与など、手続きが適正に行われていることです。企業は冷静に事実を確認し、軽重を判断する必要があります。

典型的な行為例

職場の金銭の横領、取引先からのリベート受領、重要な業務命令の拒否、長期の無断欠勤、重大なハラスメント、経歴の詐称などが挙げられます。

手続きの流れと注意点

事実確認→聴取(弁明機会)→社内判断→書面での解雇通知という流れが望ましいです。手続きが不十分だと無効と判断されることがあります。懲戒解雇は労働者の生活に大きく影響しますので、慎重な対応が求められます。

懲戒処分の段階性と種類

懲戒処分は、重大な問題がある場合でもいきなり解雇に踏み切るのではなく、段階を踏んで行うのが一般的です。段階性は処分の重さを徐々に高め、違反の程度や再発状況に応じて対応します。

  • 戒告(厳重注意)
    軽度の違反に対する最初の措置です。口頭または書面で注意を与え、今後の改善を求めます。記録を残しておくことで、後の処分の根拠になります。

  • 減給
    賃金を一定期間減らす処分です。法律上は平均賃金の1日分の5割を超えない範囲で行うのが基準とされます(例:日給1万円なら最大5千円の減給)。生活への影響が大きいため慎重に運用します。

  • 出勤停止
    一定期間を無給で出勤停止にします。数日から数か月まで幅があります。安全配慮や調査のために用いることもあります。

  • 降格
    役職や職位を下げ、責任と報酬を減らします。管理責任の軽減や再教育を目的に行います。

  • 諭旨解雇(退職勧告)
    会社が退職を勧めるもので、実質的に退職に至らせる処分です。最後の手段として使われることが多く、合意が得られない場合は形式上の解雇に移行することもあります。

  • 懲戒解雇
    最も重い処分で、重大な不正や信用失墜行為が対象です。即時解雇され、通常は退職金が支払われないことが多いです。

どの段階でも、処分を正当化するために事実関係の確認と本人の弁明機会を与えることが重要です。処分は違反の程度と一貫性を考えて決めるべきです。

懲戒解雇に該当する具体的な行為

重大な不正行為

会社の金を私的に使う、領収書を改ざんして経費を水増しする、顧客や会社資金を横領するなど、明白な経済的被害を与える行為は懲戒解雇の典型例です。例えば、私用の買い物を会社カードで支払う、売上を着服する等が該当します。

犯罪行為

業務外・業務中を問わず、盗撮、盗難、暴行など刑事事件に該当する行為は重大です。刑事処分を受ければ、勤務継続は著しく困難になります。

長期間の無断欠勤(14日以上)

連絡なく長期間欠勤し業務に支障を与える場合、信頼関係が破壊されます。一般に14日以上の無断欠勤は懲戒解雇の対象となり得ます。

経歴詐称

学歴や資格、職歴を偽って採用された場合、職務遂行の根拠が失われます。例えば、医師免許や国家資格の虚偽申告は重大です。

ハラスメント(セクハラ・パワハラ)

性的な言動や身体的・精神的な嫌がらせは被害が深刻です。繰り返しや重大な一回の行為も懲戒解雇に該当します。

情報漏洩・業務命令違反

顧客情報や機密を無断で外部に出す、業務命令を重大に違反して業務遂行を妨げる行為も該当します。例として顧客リストを転用する、不正な外部送信などがあります。

会社の誹謗中傷(SNSでの批判等)

勤務中の機密暴露や虚偽の中傷を公に行い会社の信用を傷つけた場合も対象になります。ただし、軽微な批判と違法な名誉毀損は区別されます。

調査と手続きの重要性

これらの行為が疑われる場合、事実確認と本人の弁明機会を確保することが重要です。懲戒解雇は最終手段であり、行為の重大性と手続きの適正性を慎重に判断する必要があります。

実際の裁判事例(不正請求事件)

事例概要
日本郵便北海道支社事件(札幌高等裁判所判決 令和3年11月17日)では、出張旅費の不正請求を理由に懲戒解雇された社員に対し、裁判所が懲戒解雇を不当と認め、約1800万円の支払いを命じました。企業側の一方的な処分が必ず有効とは限らないことを示す判例です。

裁判所の着目点(わかりやすく)
– 証拠の明確さ:不正行為と故意を立証する客観的な証拠が十分かどうかを重視しました。単なる不一致や書類の不備だけでは故意の証明に足りない場合があります。
– 懲戒の相当性:行為の程度、業務への影響、被雇用者の経歴や反省の有無などを総合的に判断しました。重い処分が過剰と評価されることがあります。
– 手続きの適正:本人に十分な弁明機会を与えたか、社内調査が適正に行われたかも検討されました。

実務上の教訓(具体例で)
– 会社側は不正を疑う場合、領収書や出張記録など確実な証拠を集め、まず説明を求めるべきです。段階的に軽い処分から検討すると有効です。
– 従業員は旅費精算時に領収書や行程表を保存し、説明できる記録を残すとトラブルを避けられます。

実際の裁判事例(セクハラ事件)

事案のあらまし

霞アカウンティング事件(東京地方裁判所判決 平成24年3月27日)では、男性社員が女性従業員に対し「性交渉経験人数」を尋ねるなどの発言をしたことが問題になりました。会社はこれを理由に懲戒解雇としましたが、裁判所は懲戒解雇を不当解雇と判断し、約1,100万円の支払いを命じました。

裁判所が重視した点(一般的な観点を含む)

裁判所は懲戒解雇の相当性を慎重に判断します。具体的には、発言の内容・態様、被害の程度、加害者の勤務状況や前科の有無、会社の調査や手続きの適正さなどを総合して判断します。本件では、発言が不適切である一方、懲戒解雇という厳しい処分が相当でないと評価されたことが考えられます。

企業・従業員への実務上の示唆

  • 企業はセクハラの疑いがある場合、丁寧に事実関係を確認し、被害者の保護と公正な調査を行う必要があります。
  • 懲戒の程度は段階的に検討し、教育や厳重注意など軽い処分で済むか評価してください。
  • 従業員は被害を受けた場合、記録を残し相談窓口に報告するとよいです。

本件は、セクハラ事案でも懲戒処分の相当性が法的に厳しく問われることを示す裁判例です。処分を行う側は慎重な対応が求められます。

実際の裁判事例(不正貸付事件)

事案の概要

りそな銀行事件(平成18年1月31日 東京地裁判決)は、行員が融資先に対して不正な貸付を行ったとして、銀行が懲戒解雇したケースです。裁判では、銀行側が懲戒解雇の正当性を主張し、被解雇者は不当解雇を争いました。最終的に裁判所は被解雇者の訴えを認め、約1400万円の支払いを命じました。

裁判所の判断のポイント

裁判所は、行為の社会的非難性だけでなく、手続きや証拠の整合性を重視しました。具体的には、懲戒処分に至る調査や事実認定が十分でなかった点、本人に弁明の機会が十分に与えられていない点を問題視しました。そのため、懲戒解雇は相当とは認められませんでした。

実務上の教訓

  • 事実確認は丁寧に行うこと。証拠を集め、わかりやすく整理する必要があります。
  • 被疑者に対する弁明機会を確実に与えること。口頭・書面での説明機会を残してください。
  • 処分の重さは行為の程度と比例させること。軽微な過失と重大な背信行為は区別すべきです。

以上を踏まえ、企業は調査と手続きを慎重に行うべきです。

実際の裁判事例(KDDI事件)

事案の概要

KDDIの社員が住居手当や単身赴任手当を不正に受給しました。複数回にわたる虚偽申請が発覚し、会社は懲戒解雇を行いました。東京地裁平成30年5月30日判決は、懲戒解雇の有効を認めました。

裁判所の判断ポイント

裁判所は、(1)不正受給が繰り返された点、(2)金額や期間の程度、(3)社員の説明が信用できない点を重視しました。これらにより、雇用上の信頼関係が回復困難と判断しました。

判断理由の詳説

裁判所は単一のミスではなく継続的な不正行為と認定しました。具体的には虚偽の居住情報や単身赴任の事実を隠して手当を受け取った点が問題視されました。会社は内部調査を行い、被告人に弁明の機会を与えたことも考慮されています。

企業が取るべき対応

・疑義のある支給は速やかに調査する
・申請に対する確認手続きを整備する
・処分前に十分な弁明機会を確保する
これらの対策を取ることで、適正な懲戒処分と社員の権利保護を両立できます。

実際の裁判事例(弁明機会不足事件)

事案の概要

東京地裁(平成22年7月23日)は、従業員が請求明細を改ざんしたとして懲戒解雇した事案を審理しました。会社は事情聴取を行いましたが、最終的に従業員本人が十分に弁明する機会を与えずに解雇を決定しました。

裁判所の判断と理由

裁判所は、事情聴取があっただけでは十分な弁明機会とは認められないと判示しました。会社側が把握した事実関係や証拠を踏まえ、解雇という重大な処分の前に当該社員に最終的な説明と反論の機会を与える必要があると判断しました。解雇の相当性も欠くとして、不当解雇を認め、会社に約480万円の支払いを命じました。

実務上のポイント

  • 解雇前には、書面での指摘事項提示や最終弁明の場を設けることが重要です。
  • 調査過程と理由を記録し、従業員が準備できる時間を確保してください。
  • 懲戒の程度は行為の内容・頻度・業務影響を総合的に判断します。

従業員向けの助言

説明の機会が不十分と感じたら、書面で弁明を求めるか、記録を残すことを検討してください。弁明の機会は手続きの公正さに直結します。

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