はじめに
本稿は、アリバイ会社が提供する「源泉徴収票の偽造」サービスについて、実態と法的な位置づけ、サービスの中身や料金、偽造書類の見分け方、利用に伴うリスクを整理した調査報告です。
調査の目的
読者が冷静に状況を理解できるように、事実と問題点を分かりやすく示すことを目的としています。賃貸契約の審査を通すために虚偽書類を用いる動機や、業者の提供する具体的な手口を明らかにします。
調査の範囲
本書はサービスの実態把握と法的評価を中心に扱います。現行法の解釈や判例の一般的な見方を紹介しますが、個別事案の法的助言は行いません。具体的なケースでは専門家に相談してください。
本書の読み方
第2章以降で、アリバイ会社の説明、源泉徴収票偽造の違法性、使われる理由と問題点、サービスの詳細、料金、見抜き方、リスクと課題について順に解説します。日常的に起こりうる問題として、被害防止や社会的影響も意識して読んでください。
アリバイ会社とは何か
定義
アリバイ会社とは、賃貸契約などの審査を通すために、実在しない勤務先や虚偽の収入を示す書類を作成・提供する業者を指します。依頼者の希望に合わせて、源泉徴収票や給与明細、在籍証明書などを用意します。
提供される書類の例
- 源泉徴収票：年収や支払者名を記載した書類
- 給与明細：月々の給与や控除の内訳
- 在籍証明書：特定の会社に在籍していることを示す文書
具体例を挙げると、賃貸契約の審査で提出するために偽の源泉徴収票を作るケースがあります。
利用の流れ
依頼→提示する収入や勤務先の条件の確認→書類作成→受け渡し、という流れが一般的です。支払いは前払いが多く、インターネット経由で完了する業者もあります。
利用目的と注意点
利用者は契約を確実にしたい、信用情報に不安がある、などの理由で依頼します。後の章で詳しく扱いますが、この種のサービスはトラブルや法的問題に発展することが多い点に注意が必要です。
源泉徴収票偽造の違法性について
現状の法的位置付け
アリバイ会社が作る源泉徴収票の偽造は、一般に「グレーゾーン」と説明されます。源泉徴収票は公的文書ではなく私文書に当たるため、公文書偽造罪は適用されにくい事情があります。とはいえ無罪というわけではありません。
どのような場合に罰則が及ぶか
自分で私文書を偽造したり、偽造文書を他人に使わせたりすると、私文書偽造や偽造私文書の行使、または詐欺などの罪に問われる可能性があります。例えば、偽の源泉徴収票を銀行に提出して融資を受ければ、相手を欺いて財産的利益を得たとして詐欺に当たることがあります。
提供側の責任について
源泉徴収票を作成・販売する側（アリバイ会社）も、偽造を幇助したり教唆したりすれば刑事責任や民事責任を問われる可能性があります。売買の経緯や使用目的が証拠になりやすい点に注意が必要です。
実務的な注意点
罰則の有無にかかわらず、偽造文書を用いることは大きなリスクです。発覚すれば刑事処分だけでなく、信用失墜や経済的損害につながります。疑問がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
源泉徴収票が使用される理由と問題点
使用される主な理由
源泉徴収票は税務に関わる公的な書類で、年収や雇用先の情報が一目で分かるため、家賃審査やローン審査で広く使われます。例えば賃貸契約では、貸主や管理会社が入居者の返済能力を短時間で確認したいときに重宝します。
具体的な利用場面
代表的な場面は賃貸契約の審査です。ほかにも住宅ローン、カードの与信、ビザ申請などで使われることがあります。書類一枚で収入証明になる点が便利です。
現実に起きている問題点
アリバイ会社は法的な抜け穴や帳票の形式差を利用して、非常に精巧な偽造源泉徴収票を作成します。審査側は形式や記載項目を確認して「本物らしい」と判断しやすく、結果的に騙されるケースが増えています。主な問題は次の通りです。
– 書式の多様性：会社ごとに様式が違うため、違和感に気づきにくい
– 確認手法の不足：発行元に直接照会しない運用が多い
– 見た目の真偽：印影や桁数などを真似できる
– 時間的制約：短時間で多数の申請をさばくため深堀りがされにくい
審査側が騙されやすい理由
審査側は効率を重視し、書類の細部まで確認しないことがあります。加えて公的文書というイメージがあるため安心しやすく、偽造された場合の発見が遅れやすい点が問題です。
アリバイ会社が提供するサービスの詳細
書類作成（源泉徴収票・在職証明書など）
アリバイ会社は、源泉徴収票や在職証明書などの書類を作成します。様式は実際に使われる一般的なフォーマットに沿い、PDFや紙の両方で受け取れます。たとえばPDFをメールで受け取り、翌日郵送で紙を受け取ることも可能です。
在籍確認の電話対応代行
勤務先への在籍確認電話を代行します。発信元番号や応対内容を依頼者と調整し、必要に応じて担当者名を名乗る対応も行います。電話でのやり取りを録音するかどうかは事前に確認します。
保証人紹介・緊急連絡先代行
保証人が必要な場面では、紹介や代行を行います。緊急連絡先として連絡対応を代行するサービスもあり、家族や知人に連絡が行くのを避けたい場合に使われます。
即日対応・発行形式
急ぎで必要な場合は即日発行に対応する業者もあります。電子データ（PDF）で即受取、紙は翌日発送など、スピードと形式を選べます。
利用の流れと注意点
申し込み→希望内容の確認→書類作成→納品という流れが一般的です。依頼時に受け取り方法や対応範囲を明確に伝えてください。
アリバイ会社利用のメリットと料金体系
主なメリット
- 賃貸審査の通過がしやすくなる
収入証明や在籍確認が足りない場合、書類作成や確認代行を受けることで審査に提出できるケースが増えます。例えば、急ぎで引越しをしたいときに間に合いやすくなります。 - 書類作成や在籍確認の代行
源泉徴収票や在籍確認の代行対応を請け負うサービスがあり、手間を省けます。実務的には書類の体裁を整えたり、確認の電話を代行したりします。 - 即日対応が可能
急ぎの依頼に対し、当日対応をうたう業者もあります。手続きのスピードが必要な場面で役立ちます。
料金体系の目安
- 基本料金：1〜2万円程度
書類作成や基本的な代行がこの範囲に収まることが多いです。 - オプション：5千〜2万円程度
在籍確認の代行、即日対応、追加の書類作成などは別料金になります。例として、電話代行が5千円前後、特急対応で1万円〜2万円の追加が発生することがあります。
格安サービスの注意点
極端に安いサービスは、対応が雑だったり書類の質が低かったりして審査で見抜かれるリスクが高まります。費用だけで選ばず、実績や連絡先の明確さ、領収書の発行などを確認してください。
利用時のポイント
- 料金明細を事前に確認する
- オプション内容と追加費用を把握する
- 実績や口コミ、問い合わせ対応をチェックする
以上の点を踏まえて、費用と信頼性を比較しながら検討してください。
源泉徴収票の偽造を見抜く方法
はじめに
源泉徴収票が本物か疑わしいときは、数字と記載内容の整合性を順に確認します。簡単な照合で不自然さを見つけやすくなります。
支払金額と差引支給額の整合性
支払金額（総支給額）から社会保険料や所得税を差し引くと差引支給額になります。例：総支給300万円、社会保険30万円、源泉徴収10万円なら差引支給額は260万円です。計算が合わない場合は要注意です。
所得税額の計算根拠を確認
所得税は課税対象額に税率を掛けて算出します。扶養控除や基礎控除の有無で金額が変わります。計算理由が記載されていないときは、課税対象額の算出方法を問い合わせてください。
社会保険料控除額のチェック
健康保険・厚生年金・雇用保険の額が給与に応じた割合になっているか確認します。地域や保険組合で料率が異なるため、大きくずれていると不自然です。
会社所在地と税務署名の一致
記載された税務署名が会社所在地の管轄と一致するかを確認します。自治体の管轄表や税務署のサイトで照合できます。
健康保険証や給与振込口座での照合
健康保険証の記号・番号、振込口座の通帳の入金履歴と源泉徴収票の記載（会社名・支払日）が一致するか確認してください。実際の入金記録は強い裏付けになります。
形式的な点の確認
フォントの不自然さ、印影のぼかし、PDFの編集履歴やメタデータの有無も手掛かりになります。見た目が整いすぎている場合は注意してください。
問い合わせと対応手順
まず発行元に原本確認を求め、会社に直接問い合わせます。疑わしい場合は銀行通帳の写しや健康保険証を提示して照合し、必要なら税理士や弁護士に相談してください。証拠は保存しておきましょう。
アリバイ会社利用のリスクと今後の課題
アリバイ会社を利用すると、短期的なメリットがあっても重大なリスクが伴います。ここでは主な危険と、不動産業界や利用者が直面する課題を分かりやすく説明します。
法的リスク
- 詐欺や偽造文書の提供に当たる可能性が高く、刑事罰や民事責任を負う場合があります。
- 例：源泉徴収票を偽造して賃貸契約を結んだ場合、契約解除や損害賠償、場合によっては逮捕につながります。
自作偽造の発覚リスク
- 書式や数字の矛盾、発行元確認で簡単に見破られることが多いです。信用情報や勤務先への照会で露見する例が増えています。したがって、安易に自作してはいけません。
不動産業界の対策と課題
- 複数書類の提出や発行元への直接確認、電子データの照合を導入する業者が増えています。
- 業界全体でのルール整備や審査基準の統一、違法業者への対応強化が求められます。
個人が取るべき行動
- 正規の書類を準備し、必要があれば事前に相談することが最も安全です。したがって、短期的な便宜より長期的な安全を優先してください。
今後は業界の透明性向上と利用者への啓発が鍵になります。違法な方法に頼らず、正しい手続きを選ぶことが最終的に被害を防ぎます。
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