はじめに
本資料は、退職届の提出に関する「14日前(2週間前)」の期間の正確な数え方と法的ルールをやさしく解説するために作成しました。暦日数での計算方法、初日不算入の原則、休日や祝日の取り扱い、民法627条の法的根拠、就業規則との関係、例外ケース、退職届と退職願の違い、実務上の推奨タイミングなど、退職時に押さえておきたい重要ポイントを順にまとめます。
目的
- 退職時に「いつまでに提出すればよいか」を自信を持って判断できるようにすることです。
想定読者
- 退職を検討している方、退職手続きに携わる人事担当者、労働関係の初学者などです。
本書の読み方
- 次章から具体的な日数の数え方と実務上の注意点を例で示します。まずは全体像をつかんでから、該当する章を順にお読みください。
注意点
- 就業規則や個別の労働契約で取り決めがある場合は、それに従う必要があります。本資料は一般的なルールの説明であり、特別な事情があるときは専門家に相談してください。
退職届の14日前の期間計算は暦日数が基本
概要
退職届を出す際の「2週間前(14日間)」は、カレンダー上の暦日数で数えます。営業日や出勤日ではなく、土日祝日も含めて連続した日数をカウントします。
暦日数の考え方
暦日数は提出した日を含めて数えるかどうかで誤解が生じますが、実務上は提出日から数えて14日目までを一区切りとする扱いが一般的です。本章では詳細は後の章で説明しますが、基本は“連続する日数”を基準にします。
具体例
例えば3月18日に申し入れた場合、土日祝日を含めて連続14日を数えると、退職日は3月31日になります。週末や祝日が間にあっても影響しません。
実務上の注意点
会社の就業規則でより長い期間が定められていることがあります。早めに相談すると誤解を避けられます。書面の到達日を明確にしておくとトラブル防止になります。
初日不算入の原則について
概要
民法140条に基づき、退職の申し入れ日(届け出をした日)は期間に含めません。申し入れ日の翌日を「1日目」として数え、14日目に退職できます。申し入れ日を1日目と誤ると、退職日を間違いやすくなります。
具体例
- 例1:申し入れ日が3月1日→3月2日を1日目→3月15日が退職可能日
- 例2:申し入れ日が4月30日→5月1日を1日目→5月14日が退職可能日
時間帯にかかわらず「その日」は含めません。郵送した場合は会社が受け取った日が基準になります。
注意点と実務的な対処
- カレンダーに翌日から数える習慣をつけて下さい。
- 退職届の受領日を受領印やメールで確認すると誤解を防げます。
- 日付の計算ミスでトラブルが起きないよう、余裕を持って申し入れることをおすすめします。
休日と祝日の取り扱い
基本の考え方
退職までの2週間(14日)を数える際は、土日や祝日も必ず含めてカウントします。営業日だけを数えるのではなく、連続した暦日数で計算します。つまり、休日を除外する必要はありません。
具体例で見ると
例えば、月曜日に退職届を出した場合、14日後のその曜日や日付で退職日が決まります。途中に土日や祝日が入っても日数は変わりません。金曜に出して翌週の木曜が14日め、というように数えます。
祝日が最終日に当たる場合
最終日が祝日や会社の休日でも、民法上はその日をもって契約は終了します。実務上は業務の引き継ぎや有給消化の調整が必要になるため、早めに上司と日程確認してください。
注意点
- 就業規則で別のルール(例:1か月前の届け出)を定めていることがあります。- 退職日と給与・有給の扱いは別に確認してください。円滑な退職のために、休日を含めた暦日で日程を確定し、社内での調整を行いましょう。
民法627条による法的根拠と就業規則との関係
民法627条の趣旨
民法627条は、期間の定めのない雇用契約について「少なくとも14日前に通知すれば退職できる」と定めています。要するに、労働者は法律に基づいて2週間前の告知で退職できます。会社の同意は不要です。
就業規則との優先関係
就業規則で1か月前の申告を求めても、法律の規定が優先します。したがって、2週間前の通知は違法とはなりません。ただし、就業規則は業務の引き継ぎや職場運営のために長めの期間を定めることが多いです。
具体例
例えば、就業規則に「退職は1か月前に申し出る」とあっても、社員が14日前に退職を申し出れば法的には有効です。会社は退職を強制的に留めることはできません。
実務上の注意点
法律的に問題なくても、急な退職は職場に迷惑をかけます。可能なら就業規則に従い、余裕をもって申し出してください。円満退職が今後の信用につながります。
2週間ルールが適用されない例外ケース
概要
退職の「2週間前」ルールは多くの場合に当てはまりますが、契約の種類や給与形態によって適用されないことがあります。ここでは代表的な例を分かりやすく説明します。
年俸制の場合
年俸制では「一定期間ごと」に報酬が決められます。とくに報酬が6か月以上の単位で定められる場合、契約や就業規則で3か月以上前の意思表示を求めることがあります。例:年俸を半年ごとに評価・支給する契約では、3か月前の通知が必要とされ、2週間前の申告は無効になる可能性があります。
完全月給制や月末締めの待遇
月給が月単位で決まる場合、会社は月末での区切りを重視します。退職日が給与計算や業務の区切りに影響するため、月の途中での短期間申告が認められないことがあります。具体的には“当月末で退職”などのルールが就業規則に明記されていることがあります。
有期雇用(契約社員・派遣など)
契約期間が決まっている場合は契約内容が優先します。契約満了まで働く義務や、途中解約の手続き(通知期間や違約金など)が定められていることがあります。例:1年契約で「退職の1ヶ月前に書面で通知」とある場合はそれに従います。
実務上の注意点
必ず雇用契約書と就業規則を確認してください。口頭だけで済ませず、書面やメールで通知すると証拠が残ります。疑問があれば総務や労働相談窓口に相談してください。
退職届と退職願の違い
- 概要
退職願は「退職したい」という意思を伝えるための書類です。雇用主と話し合い、了承を得て退職日を決める趣旨で使います。退職届は「退職する」と退職日を明確に示す文書です。提出すると退職の意思表示になります。
- 主な違い(具体例で説明)
1) 意思の確定度
退職願:意思は伝えますが、雇用主の了承を前提にすることが多いです。例)「退職を希望します。退職日は相談させてください」
退職届:退職を確定させます。例)「本日をもって退職いたします。退職日:20XX年X月X日」
2) 手続き上の影響
退職願だけを渡すと会社は調整の余地があります。退職届を出すと、通常は退職の効力が生じます。したがって、誤って退職願を出して意思が伝わらないとトラブルになります。
3) 実務的な注意点
書面は日付と氏名を明記し、一部は手元に残してください。口頭での申し出に加えて書面で出すとあとで証拠になります。提出は人事や直属の上司に直接渡し、受領印や控えをもらうと安心です。
- まとめ代わりの一言
退職の意思を確実に示したいときは、退職届で退職日を明記し、控えを取ることをおすすめします。
実務上の推奨タイミングとマナー
推奨タイミング
法律上は2週間前の申告で退職できますが、円満退職を目指すなら余裕を持つのが良いです。目安は口頭で2〜3ヶ月前、正式な退職届は1〜2ヶ月前です。特に引き継ぎが長い業務やプロジェクト途中の場合は早めに伝えてください。
提出の順序(具体例)
- まず上司に口頭で退職の意思を伝える(2〜3ヶ月前)
- 上司と退職時期の調整後、1〜2ヶ月前に退職届を提出
- 人事に必要な手続きを確認する
例:プロジェクトの山場が3か月先なら、プロジェクト後に辞める旨を口頭で伝え、正式書面は1か月前に出す。
引き継ぎの進め方
- 引き継ぎ資料を作成し、担当者を決める
- 重要業務はチェックリスト化する
- 引き継ぎの進捗を上司に報告する
マナーと注意点
- 感謝の気持ちを言葉や書面で伝える
- 職場の同僚には混乱を与えないよう配慮する
- 有給消化や最終出勤日については早めに相談する
急な退職がやむを得ない場合でも、誠意ある対応が信頼を保ちます。
会社側の拒否権と法的制限
法的な立場
民法の考え方では、労働者が退職を申し入れてから最低14日後に退職することが原則です。会社は退職の申し出を否定して労働者を無条件に留める権利を持ちません。ただし、会社が退職日を調整するために話し合いを求めることは可能です。
会社が早期退職を認める場合
会社が同意すれば、14日未満でも退職できます。例えば、繁忙期ではない時期に引継ぎが済んでいれば、会社が「本日付で退職可」と合意することがあります。
会社が退職時期を遅らせられない理由
判例には、会社が一方的に退職日を二週間以上遅らせることを認めないものがあります。過度の延長は労働者の意思を不当に制約すると評価されるからです。
実務上の手続きと注意点
退職の申し入れは書面で行い、受領の証拠を残すと安心です。会社と日程調整する際は、具体的な引継ぎ内容と期日を提示してください。会社が応じないときは、労働相談窓口や弁護士に相談することを検討しましょう。
留意点
業種や就業規則によって取り扱いが異なることがあります。円満な退職のために、なるべく早めに話し合いを始めるとスムーズです。


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