はじめに
本書の目的
この文書は、会社を退職する際に上司や会社にどのように意思を伝えるかを分かりやすくまとめたガイドです。退職の切り出し方、伝えるタイミング、アポイントの取り方、言葉選び、円満退職の基本ルール、入社年数別の伝え方まで、実務的で具体的なアドバイスを提供します。
想定する読者
- 退職を考えている方
- 伝え方に不安がある方
- 円満退職を目指したい方
初心者の方にも分かりやすい説明を心がけています。
本書の構成と読み方
第2章で基本ルール、第3章でタイミングの選び方、第4章でアポイントの取り方、第5章で言葉選びのポイント、第6章で入社年数別の伝え方を扱います。順に読めば準備が整いますが、必要な章だけを先に読むこともできます。
注意点
話す前に就業規則や契約内容を確認してください。感情的にならず、事実と今後の引き継ぎを中心に話すと円満に進みやすくなります。
円満退職のための基本ルール
1. 最初に伝える相手は直属の上司
退職の意思は必ずまず直属の上司に伝えます。同期や他部署の同僚に先に話すと、情報が広がり内容が変わる恐れがあります。まずは個別に面談を申し込み、直接伝えましょう。
2. 伝える準備を整える
退職理由は簡潔で正当なものを用意します(例:家庭の事情、健康、キャリアチェンジなど)。希望退職日や引き継ぎに必要な期間を考え、上司が納得しやすい説明を準備してください。
3. 引き継ぎと退職日の提案
退職の際は引き継ぎ計画を用意します。引き継ぎ表、業務マニュアル、後任候補の提案など具体案を示すと話が進みやすいです。可能な範囲で教育や資料作成を引き受ける姿勢を見せましょう。
4. コミュニケーションの注意点
話すときは冷静に、感情的な批判は避けます。会社や上司の非を強く追及すると関係が悪化しやすいです。必要な手続きや有休消化についても確認し、記録を残しておきます。
5. 伝える順序(例)
1) 面談を依頼 2) 退職の意思を明確に伝える 3) 簡潔に理由と希望日を伝える 4) 引き継ぎ案を提示 5) 今後の連絡方法を確認
上司に誠意を示し、具体的な準備をすることで円満退職につながります。
退職を伝えるタイミングの選び方
いつ伝えるか(目安)
退職は最低でも1〜2ヶ月前が目安です。会社は後任者探しや業務の引き継ぎ準備が必要ですし、こちらも心の準備と整理ができます。早めに伝えるほど引き継ぎの質が上がり、円満に退職しやすくなります。
避けるべきタイミング
- 繁忙期(決算期、繁忙シーズン、重要プロジェクトの納期直前)
- 人事異動直後やチーム再編の時期
- 上司の出張や長期不在の直前
これらの時期に伝えると業務に大きな負担をかけたり、受け取り方が厳しくなることがあります。
伝える場所と方法
初めは口頭で直接伝えるのが基本です。個室や会議室などプライベートな場所で、周囲に聞かれないように配慮します。メールはその後の正式な記録として使うと良いです。
具体的な選び方の手順
- 自分と上司のスケジュールを確認する
- 繁忙期を避けられる日を選ぶ(平日の午前や落ち着いた午後がおすすめ)
- 最低限伝える内容を箇条書きで準備する(退職理由、退職希望日、引き継ぎ案)
- 直接面談で伝え、同意を得たらメールで正式に通知する
短期間での退職を考える場合の注意点
どうしても短期間での退職になるときは、正直に事情を伝え、引き継ぎ資料を丁寧に用意して負担を減らします。就業規則や契約の退職手続き(通知期間)も必ず確認してください。
アポイントメントの取り方
なぜ面談時間が必要か
退職の話は突然だと驚かせ、感情的な反応を招きやすいです。まず短時間でも正式な面談を設定すると、話が整理され、冷静に進められます。
依頼の仕方(メール・チャットの例)
- 件名例: 「ご相談のお願い(お時間をいただけますか)」
- 本文例: 「お忙しいところ失礼します。ご相談したいことがあるのですが、30分ほどお時間をいただけますでしょうか。ご都合の良い日時を教えていただけますと助かります。」
要点だけに留め、退職であることは伏せます。
口頭での切り出し方
出社時や終業前の挨拶のあとに一言、「ご相談したいことがあるのですが、今日か明日で少しお時間いただけますか?」と伝えます。短く具体的に日時を提示すると決まりやすいです。
面談日時の決め方と準備
- 所要時間は15〜30分を目安に設定します。
- 会議室や静かな場所を選び、他の人が入りにくい時間帯を選びます。
- 面談では要点をメモにまとめておくと話がスムーズになります。
リスケ時の対応
上司が忙しい場合は、代替日時を2〜3候補示すと調整が早くなります。急な予定変更があれば柔軟に対応しましょう。
注意点
- 依頼段階で感情的な理由や詳細は伝えないこと。驚かせず礼儀正しく進めます。
- 面談での結論は急がず、話し合いの時間を確保することを優先してください。
退職を伝える際の言葉選びの3つのポイント
1) 簡単なお詫びと退職の意思をはっきり示す
退職を伝えるときは冒頭で一言お詫びを述べてから、退職が決定事項であることを明確に伝えます。お詫びで場の緊張を和らげ、結論を先に示すと話がスムーズです。
例文:
「急なご報告で申し訳ありません。本日をもって退職させていただきたいと考えています。」
2) 会社の責任を問わない納得できる理由を伝える
不満を直接述べると感情的になりやすいです。代わりに、キャリアアップ・体調・家庭の事情など、会社側では対応が難しい理由を挙げます。理由は簡潔に、かつ誠実に伝えます。
例文:
「キャリアを深めたいと考え、別の環境で挑戦したいと判断しました。」
3) 希望退職日を提示するが、一方的に決めない姿勢を見せる
具体的な希望日は示しますが、調整をお願いする形にします。業務引き継ぎや繁忙期を考慮して柔軟に対応する旨を伝えると印象がよくなります。
例文:
「希望としては○月○日を考えていますが、引き継ぎの状況に合わせて調整させていただければと思います。ご相談させてください。」
Tips:
・声は落ち着いて、敬意を持った言葉遣いを心がけます。
・感情的な理由は避け、事実と今後の協力姿勢を示します。
・面談後に要点をまとめたメールを送ると誤解が生じにくくなります。
入社年数別の伝え方のポイント
在籍半年未満
伝え方のポイント:理由を簡潔に伝え、感謝を述べることが重要です。急な退職は困惑を招くため、今後の引き継ぎ意向を示すと印象が良くなります。
具体例:”短い間でしたが学びが多く感謝しています。個人的な方向性を考え、別の道を選ぶことにしました。引き継ぎは責任を持って対応します。”
注意点:感情的な批判は避けます。
1〜3年(入社2年前後含む)
伝え方のポイント:短期間でも出した成果を明確に伝え、なぜ会社で実現できないのかを具体的に説明します。育ててもらった点への感謝を忘れません。
具体例:”この1年で○○プロジェクトに参加し、△△の改善に貢献しました。今後は□□を深めたいと考え、社内で実現が難しいため退職を決めました。ご指導に感謝します。”
注意点:責任放棄に受け取られないよう、引き継ぎ計画を提示します。
3〜5年
伝え方のポイント:経験と成果を整理して伝えます。中長期のキャリア目標と今回の決断の関連性を説明すると納得されやすいです。
具体例と注意点:実績の数字や案件名を挙げ、後任育成の提案を準備します。
5〜10年
伝え方のポイント:会社への貢献と感謝を中心に、次のステップの意義を丁寧に伝えます。組織への影響を考え、引き継ぎ期間やフォローを具体的に示します。
10年以上
伝え方のポイント:責任ある立場なら丁寧な段取りが不可欠です。感情的な言葉より事実と計画で示し、後継者育成やナレッジ移転を最優先にします。
具体例:退職意向表明→中期引き継ぎ計画の提示→感謝の言葉を順に行います。


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