はじめに
本書は、2024年分の源泉徴収票で新設された「控除外額」について、わかりやすく解説するために作成しました。
- 目的:控除外額が何を意味するのか、どのように発生するのか、給付や税金との関係で何を確認すべきかを整理します。
- 対象:会社の給与担当者、個人の給与受給者、年末調整や確定申告を行う方に向けています。
本書では第2章以降で定義、関連項目との関係、給付金の計算や端数処理、発生ケース、実務上の対応まで順に説明します。実例を交えて具体的に説明するので、初めてこの項目を目にする方でも理解しやすくなっています。
まずは本章で読み方と全体の流れを把握し、続く章で詳しい確認と対応方法を学んでください。
源泉徴収票の「控除外額」とは何か
概要
源泉徴収票の「控除外額」は、年末調整で定額減税として差し引かれるはずだったが、実際の所得税額から控除しきれなかった金額を指します。2024年分から新たに設けられた項目です。簡単に言うと「控除の余り」が記載されます。
発生する仕組み(具体例)
たとえば定額減税で控除すべき金額が50,000円、年末調整で算出されたその年の所得税額が30,000円だった場合、差の20,000円が控除外額として記載されます。控除対象額が所得税額を上回るときに生じます。
どんな人に影響するか
所得税額が小さい人、扶養や各種控除で税額がほとんどゼロに近い人が該当しやすいです。会社員の年末調整で確認されるため、自営業者や別途確定申告をする人の扱いとは異なります。
確認すべき点と対応
源泉徴収票の該当欄を確認し、金額に疑問があれば給与担当者や税理士に相談してください。控除外額は控除しきれなかったことを示す記載であり、そのまま自動的に還付につながらない場合もあります。必要なら確定申告での取り扱いを相談するとよいです。
「源泉徴収時所得税減税控除済額」との関係
関係の基本
「源泉徴収時所得税減税控除済額」と「控除外額」を合計すると、その人が受けた定額減税の総額が分かります。つまり、合計は実際に減税された金額そのものです。合計を確認すれば、定額減税の受け取り状況が一目でわかります。
計算の式
総減税額 = 源泉徴収時所得税減税控除済額 + 控除外額
この式で合計すれば、受けた減税の合計値が出ます。
具体例
- 控除済額が12万円、控除外額が0円なら、総減税額は12万円。源泉徴収で全額が適用されています。
- 控除済額が8万円、控除外額が4万円なら、総減税額は12万円。一部は源泉徴収で反映されず、別途扱われたことを示します。
注意点
控除外額がある場合は、源泉徴収の段階で全額が差し引かれていないことを意味します。理由は給与の支払時期や計算の端数処理、収入構造など様々です。合計を見れば、必要に応じて次の対応(不足分の給付など)を検討できますが、詳細な手続きは別章で説明します。
控除外額と不足額給付の関係
概要
控除外額は、税の定額減税に伴う調整給付制度の一部で、不足額給付の計算に使われます。控除外額が記載されている場合、将来的に不足額給付を受ける可能性がありますが、金額がそのまま給付額になるとは限りません。
給付と控除外額の関係
控除外額は給付の計算材料の一つです。市区町村や税務署が前年の所得や控除状況を基に不足分を算出し、それを給付額に反映します。したがって控除外額が存在しても、実際の給付額は別の計算結果によって決まります。
金額に差が出る主な理由
- 基準年の違い:控除外額は当年の源泉徴収票に記載される一方、給付は前年の税額や控除で決まる場合が多いです。
- 控除や扶養の状況変更:家族構成や所得の変化で給付額が変わります。
- 計算ルールや端数処理:市町村ごとの計算方法や端数処理で差が生じます。
具体例
給与から2万円が控除外額として記載されても、前年の所得が低く追加給付が1万5千円にとどまることがあります。逆に前年の所得が高ければ給付が増えることもあります。
手続きと確認方法
不足額給付の案内は市区町村から届きます。疑問があれば源泉徴収票を持って税務窓口や市役所に相談するのが確実です。領収や通知を保管してください。
注意点
控除外額は給付の目安にすぎません。最終的な給付額は制度の規則や前年の状況で決まるため、案内をよく確認してください。
不足額給付が発生するケース
不足額給付は、年の途中で家族構成や収入などが変わり、年初に想定した減税額(定額減税額)と実際に適用されるべき減税額にずれが生じたときに発生します。主なケースを分かりやすく説明します。
- 子どもが生まれて扶養家族が増えた場合
-
例:4月に子どもが生まれ、扶養控除や税額控除の対象が増えると、年初の見込みより減税額が大きくなります。差額が発生すると、不足額給付の対象になり得ます。
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年の途中で新たに就職した場合
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例:中途入社で給与支払者が変わると、年間の給与見込みが変わります。源泉徴収時に計算された減税額と実際の税額にズレが生じるため、不足が出ることがあります。
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収入が大きく減った場合(休職・退職・給与カット等)
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例:休職で年間収入が想定より下がると、適用されるべき控除や税率が変わり、結果として不足が生じる可能性があります。
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配偶者の収入変動や控除の新規適用
- 例:配偶者が働き始めたり、年の途中で生命保険料控除などを適用した場合も差が出ます。
これらは源泉徴収時の前提が変わることによるものです。該当する場合は年末調整や確定申告で調整されることが多く、詳しい対応は次章で説明します。
給付金の計算方法と端数処理
概要
不足額給付や当初給付の金額は、源泉徴収票の控除外額を基に算出します。算出後の金額に端数が生じた場合は、1万円単位で切り上げて支給します。
計算手順
- 源泉徴収票の控除外額を確認します。
- 給付に必要な金額を決定します(例:実際の不足分)。
- その金額を1万円単位で切り上げます。10,000円の倍数ならそのまま支給します。
端数処理の具体例
- 本来1万5,000円必要な場合→2万円が支給されます。
- 本来ちょうど2万円必要な場合→そのまま2万円支給されます。
- 本来9,000円必要な場合→1万円が支給されます。
実務上の注意点
端数処理は当初給付・不足額給付のいずれにも適用します。計算ミスを防ぐため、控除外額と算出結果を別々に記録しておくと安心です。問い合わせがある場合は、具体的な金額と計算過程を示すと説明がスムーズになります。
源泉徴収票に控除外額がある場合の対応
確認するポイント
源泉徴収票を受け取ったら、まず「控除外額」の欄を確認してください。金額が記載されていれば、不足額給付の計算に使われます。控除外額以外に支払金額や源泉徴収税額の欄も合わせて目を通すと安心です。
特別な手続きは不要です
控除外額があるからといって、あなたが特別な申請を行う必要はありません。不足額給付は令和7年に自動的に実施される制度であり、控除外額は支給額を算出するための資料として用いられます。
問題があると感じた場合の対応
金額に誤りや記載漏れがある場合は、まず勤務先(給与担当部署や経理)に確認してください。勤務先で訂正してもらうか、説明を受けてください。勤務先で解決できないときは最寄りの税務署に相談するとよいです。
書類の保管と通知の確認
源泉徴収票や勤務先とのやり取りは大切に保管してください。給付の時期や支給方法について通知が届いたら、内容を確認して必要なら問い合わせを行ってください。
控除外額の存在を確認し、問題があれば早めに連絡することで安心して給付を受けられます。


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