はじめに
本記事の目的
本記事は、源泉徴収票が2枚ある場合にどう対応するかをわかりやすく説明します。複数の勤務先から給与を受け取る人や、年の途中で転職した人向けに、実務で迷わないための手順をまとめます。
対象となる人
- 1年のうちに複数の会社で働いた人
- 副業やダブルワークで給与を受け取っている人
- 年末調整や確定申告に不安がある人
本記事で学べること
- 源泉徴収票が2枚あるときの基本的な扱い
- 発行・受け取りの流れと注意点
- 年末調整と確定申告の違いと実務的な手順
読み進めることで、実際の手続きで何を用意し、どの順序で進めればよいかが明確になります。次章から順に具体的に説明します。
源泉徴収票とは何か
定義
源泉徴収票は、1年間に受け取った給与や天引きされた所得税などが記載された書類です。雇用主が作成し、給与所得者に交付します。税金の計算と申告で大切な根拠になります。
誰が受け取るか
正社員・契約社員・アルバイト・パートなど、給与を得るすべての人が対象です。副業で別の会社から給与をもらっていれば、その会社からも別の源泉徴収票が発行されます。
記載される主な項目
主な項目は、支払金額(年間の給与合計)、源泉徴収税額、社会保険料の金額、扶養親族の数などです。これらをもとに年末調整や確定申告で所得税額を確定します。
枚数のルールと具体例
原則として1つの勤務先につき1枚です。たとえばA社とB社で働く人はA社分とB社分の2枚を受け取ります。
使い道と注意点
年末調整や確定申告で必須です。住宅ローン申請や住民税の手続きで提示を求められることもあります。退職時には必ず受け取り、紛失しないよう保管してください。
受け取り時期
通常は年明けに前年分として交付されます。退職した場合は退職時に発行されることが多いです。
源泉徴収票が2枚になるケース
ダブルワーク(副業)の場合
複数の会社から同時に給与を受け取ると、それぞれの会社が源泉徴収票を発行します。たとえば、本業A社と副業B社があると、A社から1枚、B社から1枚の計2枚になります。各社分の支払金額や源泉徴収税額が別々に記載されます。
転職の場合
年の途中で転職すると、前職と現職それぞれが勤務期間の給与について源泉徴収票を発行します。前職分は退職後に受け取り、現職分は年末にまとめて受け取るのが一般的です。両方の票を合わせて年間の給与と税額を把握します。
年末調整・確定申告での扱い
転職者は原則として前職の源泉徴収票を現職に提出すると年末調整で精算できます。本業と副業の両方がある場合は、本業の勤務先で年末調整を受け、副業分の税額は確定申告で合算するケースが多いです。どの処理が適切かは収入の合計や税金の過不足で決まるため、不明な点は勤務先の総務や税務署に相談してください。
源泉徴収票の発行・作成プロセス
作成の基本方針
企業は税務署提出分と従業員交付分を同時に用意します。2枚同時作成が基本で、手書き用の複写式でも給与システムでも対応します。
手書き(複写式)の場合
複写式は通常3〜4枚複写です。使用するのは源泉徴収票2枚で、3枚目以降は給与支払報告書として市区町村へ提出します。記入は誤字がないよう丁寧に行ってください。
給与システム(電子作成)の場合
多くのシステムが源泉徴収票と給与支払報告書を同時に出力します。印刷ミスやデータの不一致がないか、出力後に必ず確認します。
提出と交付の流れ
作成後、税務署提出用と従業員交付用を分けます。市区町村提出は通常事業所ごとにまとめて行います。従業員へは交付期限を守って渡してください。
よくある注意点
氏名・マイナンバー・勤務期間・支払金額は特に確認します。訂正が必要な場合は所定の手続きを踏んで修正します。
転職者向けの年末調整の基本知識
なぜ前職の源泉徴収票が必要か
転職で源泉徴収票が2枚になるのは普通です。年末調整は1年間の給与と税額を合算して精算します。現職は前年の合計所得を把握できないため、前職の源泉徴収票を使って正しい税額を計算します。
提出しない場合の対応
前職の源泉徴収票を現職に提出しないと、現職は年末調整で過不足を調整できません。結果として自分で確定申告を行い、税金の過不足を清算する必要があります。手間と時間が増えるので注意してください。
提出の方法と期限
前職の源泉徴収票は原本またはコピーを現職に提出します。提出時期は年末調整を行う年の10〜12月頃が一般的です。早めに用意すると手続きがスムーズです。
具体例と注意点
例:前職で年収300万円、現職で年収400万円なら、年収合計700万円で年末調整や確定申告の計算を行います。副業や退職金がある場合は別扱いになることがあります。紛失した場合は前職に再発行を依頼してください。
転職者の年末調整の3ステップ
以下は、転職した年に年末調整を正しく行うための3つのステップです。各ステップでの期限と注意点をやさしく説明します。
ステップ1:前職の源泉徴収票を入手する
退職後、前の会社から源泉徴収票が交付されます。通常は退職後1か月程度で届きます。源泉徴収票には前職で受け取った給与の合計と、すでに差し引かれた所得税が記載されています。年末調整や確定申告で必ず必要になるので、受け取ったら大切に保管してください。
ステップ2:転職先に必要書類を提出する
転職先には、前職の源泉徴収票のほか、扶養控除等申告書や保険料控除の証明書などを提出します。提出期限は基本的に「最初の給与が支払われる前日まで」です。早めに人事・給与担当へ渡すと手続きがスムーズになります。書類に不備があると年末調整に反映されないため、控えを取っておくと安心です。
ステップ3:申告書に前職と現職の給与を合算して記入する
年末調整の計算では、前職と現職の給与を合算して年間の給与額を算出します。たとえば、前職が300万円、現職が250万円なら合計は550万円です。転職先の年末調整書類では、前職分を所定の欄に記入するか、源泉徴収票を添付して合算扱いにしてもらいます。結果として過不足が出れば還付または追加徴収で調整されます。
必要に応じて人事へ確認し、不明点は速やかに相談してください。年末調整で手続きできない場合は確定申告で対応できます。(詳しくは第7章参照)
確定申告書への記入方法
記入前の準備
各会社から受け取った源泉徴収票を揃えます。支払金額(給与の年合計)と源泉徴収税額を確認してください。記入間違いを防ぐため、源泉徴収票と照らし合わせながら進めます。
第二表の記入手順
- 確定申告書第二表の「所得の内訳(給与)」欄を用意します。
- 源泉徴収票ごとに一行ずつ、支払金額と源泉徴収税額を転記します。会社名や支払者番号がある欄には会社名を記入すると分かりやすくなります。
※例:A社 支払金額3,000,000円/源泉徴収税額150,000円、B社 支払金額1,200,000円/源泉徴収税額60,000円
第一表への記入(合計)
第二表に記載した各社分を合算し、第一表の給与欄には合計額(支払金額合計)と源泉徴収税額合計を記入します。合計が申告の基礎になります。
源泉徴収票の保管と添付
原本は必ず保管してください。紙で提出する場合は源泉徴収票を確定申告書に添付します。電子申告(e-Tax)でも、税務署から求められた場合に提示できるよう保存しておきます。
ダブルワークの場合の年末調整
概要
2か所以上から給与を受け取る(ダブルワーク)の場合、年末調整を1か所で済ませることができます。年末調整を受けない勤務先の「源泉徴収票」を、年末調整を行う勤務先に提出して両方の給与を合算して処理します。
どの勤務先で年末調整を受けるか
原則として給与が多い、または主たる勤務先を年末調整を行う先にします。たとえば、A社で年収300万円、B社で100万円ならA社にB社の源泉徴収票を出して合算します。
提出書類と期限
提出するのは勤務先が発行した源泉徴収票(原本)です。年末調整に関連する書類の法定提出期限は1月31日です。この期限内なら勤務先が年末調整をやり直して調整する余地があります。
やり直し・訂正の扱い
提出後に金額の修正が必要になれば、勤務先は期限内に訂正し税務署へ報告できます。期限を過ぎると勤務先での再計算が難しくなり、自分で確定申告をする必要が出ます。
年末調整を受けられない場合の対応
どの勤務先も合算して年末調整を行わない場合は、翌年に自分で確定申告をします。確定申告では両方の源泉徴収票を添付して所得や税額を正しく申告します。
留意点
年末調整は主に所得税の調整です。書類は早めに提出し、不明点は勤務先の総務・経理に相談してください。
前職の源泉徴収票がない場合の対応
まず確認すること
退職後に源泉徴収票が手元にないときは、まず郵便やメール、前職の勤怠・給与のオンラインサービスを確認してください。会社には退職後1か月以内に交付する義務がありますので、それを念頭に置いて行動します。
前職へ速やかに連絡する
電話で総務や人事に状況を伝え、発行を依頼してください。電話で伝えたら、同内容をメールや書面でも送っておくと証拠になります。
連絡方法の例(短文)
- 電話:「お世話になります。先日退職した○○です。源泉徴収票が届いていないため、発行をお願いできますか。」
- メール:件名「源泉徴収票の送付依頼」本文に氏名・退職日・送付先住所を明記してください。
それでも届かない場合の対応
総務の上司や給与担当に再度連絡し、可能なら内容証明で請求します。会社が応じない場合は最寄りの税務署に相談してください。税務署は代替の手続きや、確定申告での対応方法を教えてくれます。
年末調整や確定申告での扱い
新しい勤務先で年末調整を受けるには前職の源泉徴収票が必要です。間に合わないときは、翌年2月〜3月の確定申告で前職の給与と源泉税額を申告します。給与明細や離職票があれば手続きがスムーズです。
準備しておくとよいもの
離職票、給与明細、雇用契約書、本人確認書類。これらがあれば税務署への相談や確定申告で役立ちます。


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