はじめに
本資料の目的
本資料は、退職願(退職の意思表示)とボーナスの関係を整理し、実務で役立つ情報を分かりやすく伝えることを目的としています。ボーナスの支給タイミングや、退職の伝え方が受け取る金額にどのように影響するかを具体例を交えて解説します。
対象となる読者
- 退職を検討している社員
- 退職時のボーナスについて不安がある方
- 人事担当者や管理職で、社内対応を整えたい方
本資料で扱う主な項目
- ボーナス直前に退職を伝えると損をするのか
- 支給前に退職してもボーナスは受け取れるか
- 満額を得るための退職タイミング
- 支給されない代表的なケース
- ボーナスに関する法的な考え方
- 円満退職のための事前確認の重要性
読み方のポイント
各章で具体例や確認すべき事項を示します。会社の就業規則や雇用契約を必ず確認してください。用語は極力平易に説明しますので、初めての方も読み進めやすい構成にしています。
ボーナス前に退職を伝えると損するのか
概要
ボーナスの査定前に退職の意思を伝えると、支給要件を満たしていても減額される場合があります。減額の可否は会社の就業規則や雇用契約によります。満額支給の明記がなければ減額される可能性を念頭に置いてください。
なぜ減額されるのか
企業は「継続勤務への報酬」や「業績評価の反映」を理由に査定を行います。退職の意思表示があると、評価者が将来の貢献を前提に加点しにくくなり、結果として減額されることがあります。
どのような場合に減額されやすいか(具体例)
- 就業規則に「退職意思がある者は支給対象から外すまたは減額する」と明記されている場合。例:A社は通知前の勤務実績で按分する。
- ボーナスが会社の裁量(業績連動型)の場合。裁量が大きいほど減額されやすいです。
対策と確認事項
- 就業規則と雇用契約をまず確認してください。書面での記載が最も重要です。
- 人事に確認して、口頭でなく書面で取り決めを残すと安心です。
- 減額が不当だと感じる場合は労働基準監督署や専門家に相談してください。
必要な手続きと情報を事前に整えれば、無用な損を避けられます。
ボーナス支給前に退職してもボーナスはもらえるのか
概要
原則として、退職届を出しても退職日までは在籍扱いです。支給日に会社に在籍していればボーナスは支給されることが多いです。ただし、就業規則や労使協定で「支給日に在籍していること」を明確に要件とする会社もあります。
具体例で考える
- 支給日が6月30日で、退職日が7月10日の場合:支給日に在籍しているため支給されるのが通常です。
- 支給日が6月30日で、退職日が6月20日の場合:就業規則に在籍要件があれば不支給になる可能性があります。
- 賞与の計算は既に行われていても、支給日に在籍していなければ支払われない会社もあります。
一部支給や按分の扱い
会社によっては、在籍日数や出勤日数に応じて按分して支給するケースがあります。月ごとの日割り計算をする会社や、在籍期間に応じて一部を支払う慣行もあるため、扱いは会社ごとに異なります。
確認すべきポイント
- 就業規則や賃金規定の「支給在籍要件」を確認する
- 雇用契約書や労使協定を確認する
- 不明な場合は人事・給与担当に書面で確認する
具体的な状況(支給日、退職日、就業規則の文言など)を教えていただければ、より詳しく助言できます。
ボーナスを満額受け取るためのベストタイミング
基本の考え方
確実に満額を受け取りたいなら、退職の意思表示はボーナス支給後に行うのが最も安全です。多くの会社は支給月に在籍していることを前提に計算しますので、支給前に退職を伝えると査定や支給判断に影響が出る可能性があります。
具体的なタイミングと手順
- 支給日を確認する
- 就業規則や給与明細で支給日・締め日を確認します。社内ルールで「支給日に在籍」が条件になっている場合が多いです。
- 転職活動の進め方
- 面接は支給前に進めても問題ありません。内定を得たら雇用契約書にサインする前に、支給後に退職を伝える計画を立てます。
- 退職届の提出
- 支給日が過ぎてから正式に退職届を出します。口頭で伝える場合も同じです。告知タイミングは円満退社を心がけてください。
注意点
- 勤務規則で特別な取り決めがある場合は従ってください。
- 会社が早めに査定を行うこともあるため、支給日直前に退職の意思が漏れるとリスクがあります。
- 倫理面では、在職中に次の就職先と契約する時、誠実さを保つことが大切です。
具体例
- 支給日が12月25日なら、12月26日以降に退職届を出すと満額受け取りやすいです。ただし就業規則を必ず確認してください。
ボーナスが支給されないケース
1. 会社の経営状況が悪い
会社が業績不振や資金繰りの悪化でボーナスを支給できないことがあります。例:赤字が続き、臨時の支給見送りを決めたケース。こうした場合は、個人の退職有無にかかわらず支給されないことが多いです。
2. 年俸制(ボーナス相当分を含む場合)
年俸制ではボーナスを別途支給しない契約もあります。契約書や労働条件通知書に「年俸に賞与相当を含む」と明記されていれば、退職時に別の支給は期待できません。例:年俸を12分割して毎月支払う会社。
3. 就業規則や支給条件を満たしていない
支給要件として勤続期間や在籍日数が定められている会社があります。支給日や基準日を過ぎて退職すると条件未達で支給されないことがあります。例:基準日が6月1日で5月末に退職した場合。
4. 懲戒解雇など重い処分
就業規則で懲戒解雇時は未払給与や賞与を支払わない旨を定めることがあります。重大な規律違反で処分を受けた場合、ボーナスが支給されないリスクが高まります。
対処法(確認と相談)
就業規則・雇用契約書をまず確認してください。疑問があれば人事に相談し、必要なら労働基準監督署や専門家に相談することを検討してください。具体的な事実を伝えれば適切な対応を受けやすくなります。
ボーナスの法的側面
法的な位置づけ
ボーナス(賞与)は法律で必ず支払う義務があるものではありません。企業は支給の有無、支給額、支給日を就業規則や賃金規程で定めます。就業規則や労働契約に明記されている場合は、それに沿った扱いが求められます。
支給後の返還義務
原則として、一度支給されたボーナスを従業員が返す義務は生じません。ただし、支払ミスで過払いがあった場合は返還請求が可能です。将来の働きに対する期待(例:まだ達成していない業績に対する前払い的な賞与)が含まれると会社が返還を主張するケースもありますが、明確な合意や規程がないと争いになりやすいです。ここで、不当な返還要求は認められにくいです。
退職による減額・不支給の線引き
退職を理由に一方的に大幅に減額したりゼロにすることは不合理と判断される場合があります。企業は評価や在籍期間に応じて按分する規定を設けできますが、その基準は合理的で明確である必要があります。過度な減額は違法とされる可能性があります。
実務上の注意点
就業規則や賞与規程を事前に確認し、退職時は人事に支給条件を文書で確認してください。争いになった場合は労働基準監督署や労働審判、弁護士への相談を検討しましょう。
事前確認の重要性
背景
退職を決めるとき、ボーナスの有無は大きな判断材料になります。支給条件を確認せずに退職日を設定すると、満額受け取れないリスクがあります。
確認すべきポイント
- 支給日在籍条項:多くの会社は「支給日に在籍していること」を条件にします。例:ボーナス支給日が6月25日なら、その日まで在籍している必要があります。
- 支給条件の詳細:勤続要件、評価・業績連動、日割り支給の有無を確認します。
- 就業規則と雇用契約:文書での規定が最優先です。
具体的な手順(実務的)
- 就業規則や給与規程をまず読む。
- 人事へ非公式に相談し、該当規定を確認する。
- 口頭のやり取りは控え、可能ならメールで確認を取る(証拠になるため)。
- 退職届の提出日と最終出勤日を支給日と照らして調整する。
注意点
- 支給日直前に退職の意向を伝えると、社内の信頼に影響する場合があります。将来のリファレンスや関係性も考慮してスケジュールを組むと円満退職につながります。
- 社内ルールが曖昧な場合やトラブルが心配なら、労働相談窓口へ相談する選択肢もあります。
実践チェックリスト
- 支給日と在籍要件を確認したか
- 条件を人事に書面で確認したか
- 退職のタイミングを調整したか
これらを事前に確認することで、満額ボーナスを受け取りながら穏やかに退職できます。


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