はじめに
目的
本章では、本資料の目的と読み方を簡潔に説明します。退職時に有給休暇をどのように消化するかについて、手続きや伝え方、注意点を実務的にまとめます。個人で対応する際に役立つ具体例も示します。
対象読者
・退職を検討している方
・上司や人事に伝える方法を知りたい方
・有給の扱いや法的な性質を理解したい方
本資料で分かること
・退職願と退職届の違いと提出タイミングの目安
・有給休暇の法的な位置づけと時効
・退職届での有給消化の書き方と伝え方の例
・退職日と有給消化期間の決め方、人事や上司との交渉術
読み方のポイント
章ごとに実務的な手順と会話例を示します。まず第2章で提出手続きの基礎を押さえ、第3章で有給の法的な扱いを確認してください。実際に伝える場面は第6章と第7章で練習できます。
注意点
会社の就業規則や個別の雇用契約が関係します。具体的な判断が必要な場合は、人事に確認するか、専門家に相談してください。
退職願と退職届の違いと提出のタイミング
定義と違い
- 退職願:辞めたいというお願いを会社に伝える文書です。会社の承諾を前提とするため、まずは相談として出します。
- 退職届:最終的に退職を届け出る正式な文書です。一度受理されると、会社側で退職日を確定します。
有給消化と提出の関係
有給を消化して辞めたい場合、退職届を早めに提出することが重要です。退職届がないと会社は正式な手続きを進めにくく、有給の取得や給与計算に影響することがあります。
提出のタイミングの目安
- 原則:1カ月前に意思表示するのが一般的です。業務引き継ぎの時間を確保できます。
- 安心:2カ月前に伝えるとトラブルを避けやすいです。交代要員の手配や有給の調整がしやすくなります。
実際の進め方(簡単な流れ)
- まず直属の上司に口頭で伝える(電話や面談)。
- 退職願を出して話し合う(調整が必要な場合)。
- 条件が固まったら退職届を提出する(有給消化を希望する場合は希望期間を明記)。
簡潔で礼儀正しく、希望日と有給希望を明示すると会社側も対応しやすくなります。
有給休暇の法的な性質と時効
有給休暇は労働者の正当な権利
有給休暇は会社からの“サービス”ではなく、働いた人が取得する法的な権利です。取得する権利が発生したら、会社は原則としてこれを拒めません。具体例:入社1年後に10日間の年次有給が付与されれば、その10日は本人が使える権利です。
2年間の時効
付与された有給には時効があります。一般に、取得できる日から2年間で消滅します。つまり、いつ付与された分かを確認し、期限内に使うか請求することが大切です。
退職時の扱い
退職する場合、未消化の有給は退職日までに取得しないと原則消滅します。退職後に「使う」ことはできません。たとえば退職日が6月30日なら、7月1日以降に有給扱いにすることは原則認められません。
未消化分の買い取りは任意対応
未消化の有給の買い取りは、法律で義務付けられていません。会社が買い取ることもあれば、対応しないこともあります。企業の就業規則や労使協定を確認し、必要なら人事に相談してください。
退職届での有給消化の伝え方
本文中に有給取得期間を記載する方法
退職届の本文に、退職日と有給消化期間を明確に書きます。例:
「私、○○は、○年○月○日をもって退職いたします。なお、最終出勤日は○年○月○日とし、○年○月○日〜○年○月○日の間は有給休暇を消化いたします。」
この書き方は分かりやすく、書類一枚で意志を示せます。
表題を「退職届兼有給休暇消化申請書」とする方法
表題で目的を明示すると、人事が処理しやすくなります。本文は短くても構いません。表題を変えることで申請手続きがスムーズになることがあります。
伝えるタイミングと注意点
できるだけ早く上司や人事に口頭で伝え、書面を提出します。会社の就業規則によっては申請期限や承認手続きが決まっているため、事前に確認してください。承認が必要な場合は、承認されてから最終出勤日や有給期間を正式確定します。
書き方のポイント(簡潔に)
- 日付を具体的に書く
- 「有給休暇を消化する」と明記する
- 連絡先や引継ぎ予定を添えると印象が良い
記載例(短文)
「私、○○は○年○月○日をもって退職いたします。○年○月○日〜○年○月○日の間は有給休暇を消化いたします。引継ぎは○○が担当します。」
退職日の設定と有給消化期間の構成
概要
最終出勤日の翌日から有給休暇を消化し、消化期間の末日の翌日付で退職します。退職届には、有給消化後の退職日を明記して申し出ます。
手順(わかりやすく)
- 有給残日数を確認します。残日数に応じて消化期間を決めます。
- 最終出勤日を決めます。最終出勤日の翌日を有給消化開始日にするのが一般的です。
- 有給消化期間を計算します(開始日〜終了日)。
- 退職日には、消化期間の最終日の翌日を記載します。退職届や申し出時にその日付を伝えます。
具体例
例:有給が10日ある場合
– 最終出勤日:6月10日
– 有給消化期間:6月11日〜6月20日(10日間)
– 退職日:6月21日付で退職
退職届には「退職希望日 6月21日」と書き、有給消化期間も合わせて記載します。
注意点
- 会社の就業規則や上司との相談で調整が必要になる場合があります。
- 有給は原則給与が支払われますが、手続きや給与支給日を確認してください。
- 早めに申し出ると調整がしやすくなります。
上司や人事との交渉方法
はじめに
有給消化は労働者の権利です。ただ高圧的だと話がこじれやすいので、感謝と退職の意思を先に伝えてから希望を出します。
事前準備
残日数と就業規則の有給規定を確認します。希望する開始日と終了日、業務の引き継ぎ方法を用意します。
話し方のポイント
- 挨拶と感謝を述べる。2. 退職日は(例:○月○日)と伝え、有給での調整を希望すると具体的に言う。3. 代替案を示す(引継ぎ資料、担当者の指名など)。
会社の都合への対応
会社側の要望はまず聞きます。一部出勤や分割消化を提案されることがありますので、折衷案を用意して交渉します。
法律の伝え方と書面化
法律上の権利であることを冷静に説明します。会話で合意したらメールで記録を残し、必要なら退職届に有給消化の希望を明記します。
最後に
感情的にならず、実務的に話すことが円満退職の鍵です。必要なら労働相談窓口に相談する選択肢もあります。
具体的な会話例
退職時の会話は、相手の立場を尊重しつつ自分の希望を明確に伝えることが大切です。以下に場面別の具体例を示します。
上司が快諾する場合
社員: 「お時間よろしいでしょうか。退職の意向をお伝えしたく伺いました。最終出社日は◯月◯日を考えており、現在の有給が◯日残っています。退職日までに有給を消化したいのですが、引き継ぎ案として(主な担当・引き継ぎ資料・引継ぎ相手)を用意しました。ご調整いただけますでしょうか。」
上司: 「わかりました。引き継ぎ案も確認しましょう。問題なければそのスケジュールで進めてください。」
ポイント: 引き継ぎ計画を具体的に示すと承諾を得やすいです。承諾されたら口頭だけで終えず、メールで退職日と有給消化の期間を確認してください。
上司が難色を示す場合
社員: 「急なご報告でご迷惑をおかけして申し訳ありません。最終出社日は◯月◯日を希望しており、有給を消化したいと考えています。ただ、業務の都合により調整が必要でしたら、可能な限り対応します。たとえば重要な業務は優先して対応し、引き継ぎは(資料作成・後任指導・在宅での対応)で対応できます。どのように進めるのがよいでしょうか。」
上司: 「業務に支障が出るので難しいかもしれない。出社日を延ばせないか?」
社員: 「ご意見ありがとうございます。最終出社日や有給の一部消化、必要であれば有給の買い取りや残日数の精算についても相談させてください。可能な範囲で協力しますので、調整案をいただけますか。」
ポイント: 迷惑をかける点は詫び、協力姿勢を明確に示すと交渉が進みやすいです。話し合いの結果は必ず書面やメールで確認してください。


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