はじめに
本書の目的
本調査は、退職金に関する相談窓口を分かりやすく整理することを目的としています。退職金が支払われない、算定に疑問がある、あるいは受け取った退職金の運用をどうすればよいかといった疑問に対して、どこに相談すれば解決に近づくかを具体的に示します。
想定する読者
- 退職金の未払いや不明点を抱える方
- 退職金の運用や受け取り方を考えている方
- 会社側に相談したが十分な説明や対応が得られなかった方
本書の構成（全7章の概要）
- 第2章：相談窓口の種類（労働基準監督署、弁護士、労働組合、法テラス、金融機関など）
- 第3章：労働基準監督署に相談できるケースと期待できること
- 第4章：弁護士に相談するメリットと対応内容
- 第5章：相談先の選び方と具体的な相談方法
- 第6章：退職金運用に関する相談窓口
- 第7章：まとめと推奨事項
読み方のポイント
問題の性質（未払いか運用か、証拠の有無、緊急性の程度）によって適切な窓口は変わります。具体例を交えながら、各章で必要な行動と相談時の準備を丁寧に説明します。まずは本章で全体像をつかんでください。
退職金未払いの主な相談窓口
退職金の未払いや支給をめぐる問題が起きたら、まず相談先を知っておくと安心です。ここでは代表的な窓口と、それぞれに期待できる対応をわかりやすく説明します。
労働基準監督署
予約不要で無料相談を受けられます。全国の総合労働相談コーナーでも対応します。事実確認や会社への指導、必要に応じて調査を行います。労働条件の違反が疑われる場合に向きます。
弁護士
原則有料ですが、初回無料相談を行う事務所もあります。交渉や内容証明の作成、訴訟対応まで任せられます。金額計算や証拠整理もサポートします。
労働組合
会社内・外の組合が団体交渉で会社に働きかけます。個人で動きにくいときに力になります。相談や支援が無料の場合もあります。
法テラス（日本司法支援センター）
収入などの要件を満たせば無料相談や弁護士費用の立替が利用できます。手続きの案内に便利です。
ベンナビ労働問題など民間サービス
労働問題に特化した相談窓口が増えています。情報提供や弁護士・専門家の紹介を受けられます。無料情報と有料相談がありますので、信頼性を確認して利用してください。
相談前に用意するもの
雇用契約書・就業規則・退職時の給与明細・退職金規程・やり取りの記録（メールやメモ）などを揃え、希望する解決（支払額や期日）を明確にして相談に臨んでください。早めに相談すると対応の選択肢が広がります。
労働基準監督署に相談できるケースと期待できること
相談できるケース
- 会社に退職金制度や退職金規程があり、支払い義務があるのに支払われない場合。
- 退職金の計算方法が規程にあるのに説明がない、または説明と異なる金額が支払われた場合。
- 就業規則や雇用契約に退職金の記載があるのに運用されていない場合。
具体例：退職金規程に「勤続3年以上で支給」とあるのに請求しても支払わない。
相談すると期待できること
- 退職金に関する一般的な助言や手続きの案内を受けられます。
- 労働基準法違反の申告を受け付け、事実確認のための調査（臨検）を行う可能性があります。
- 調査の結果、行政指導や是正勧告を行い、会社に改善を促します。
- 必要に応じて書類の提出や面談を求め、第三者として状況を整理してくれます。
手続きの流れと必要書類
- まず電話や窓口で相談予約。概要を伝えます。2. 書面で申告する場合、就業規則・退職金規程・給与明細・雇用契約書・退職届・やり取りの記録（メール等）を用意します。3. 調査→会社への指導→必要なら是正勧告という流れが一般的です。期間はケースにより数週間〜数か月程度かかります。
注意点
- 労働基準監督署は行政指導が中心で、直接に会社に退職金支払いを強制する権限は限定的です。したがって、支払いが実現しない場合は労働審判や訴訟といった法的手続きが必要になることがあります。
- 書類ややり取りは可能な限り保存し、相談時に提示できるようにしてください。
相談後の対応例
- 会社が是正勧告を受けて退職金を支払う。あるいは、会社が応じない場合は弁護士や裁判所を紹介され、法的手段に進むことになります。
弁護士に相談するメリットと対応内容
弁護士に相談するメリット
弁護士は法的な権利を具体的に実現するための専門家です。会社との交渉を代行し、証拠に基づいた請求書を作成して説得力を高めます。支払われない退職金を強制的に回収するための手続き（例：仮差押えや強制執行）を進められます。例えば、会社が話を適当に流す場合でも、弁護士名の書面で動きが変わることが多いです。相談は守秘義務の下で行われ、安心して話せます。
弁護士の主な対応内容
- 交渉代行：会社との文書・面談でのやり取りを代行します。
- 証拠収集の助言：給与明細や就業規則、メール等の整理方法を指示します。
- 労働審判や訴訟の代理申立て：裁判所手続きの代理人として行動します。
- 債権の保全・執行支援：未払い金の差押えなどを実行します。
費用と支援の目安
着手金と成功報酬が一般的です。弁護士費用は事務所で差がありますので、初回相談で見積もりを確認してください。収入が一定基準以下なら法テラスなどの支援を利用できる場合があります。無料相談を活用すると負担を抑えられます。
相談時に準備するもの
雇用契約書、退職届や退職金規程、給与明細、退職に関するやり取り（メールやメモ）などを用意してください。時系列で出来事をまとめると相談がスムーズです。
相談の流れと期間の目安
初回相談で方針を決め、まずは交渉を試みます。交渉で解決しなければ労働審判や訴訟へ進みます。交渉は数週間〜数ヶ月、審判や訴訟は数ヶ月〜1年程度かかることがあります。
早めに弁護士へ相談したほうが良いケース
会社が対応しない、証拠隠滅の恐れがある、相手が弁護士を立てている場合は早めの相談が有利です。迅速な対応が権利の実現につながります。
相談先の選び方と具体的な相談方法
はじめに
退職金未払いは感情的になりやすい問題です。冷静に相談先を選び、準備して相談することで解決の可能性が高まります。
相談先の選び方（基準と具体例）
- 弁護士：請求額が大きい、交渉や訴訟が必要になりそうなら最初から弁護士を。例：未払いが数十万円以上で会社が支払を拒む場合。
- 労働基準監督署：証拠があり、行政指導を期待するケースに。速やかな調査や是正勧告を求めたいときに向きます。
- 労働組合や無料相談：金銭負担を抑えたい、まずは相談して方針を決めたいときに有効です。
選ぶポイントは「求める結果（支払・交渉・刑事措置）」「証拠の有無」「費用負担」です。
具体的な相談方法（労基・弁護士共通の準備）
- 事前連絡：労基は電話で予約、弁護士は事務所に相談予約を。時間を確保します。
- 持ち物：雇用契約書、退職届、給与明細、振込記録、やり取り（メール・LINE）のコピーなど。写しを用意してください。
- 説明の仕方：時系列で事実だけを簡潔に伝えます（入社日、退職日、未払い額、会社とのやり取り）。感情的な表現は避け、事実を示す証拠を提示します。
- 録音・記録：相談時の指示や対応をメモしておくと後で役立ちます。録音する場合は相手に一言伝えると安心です。
相談後の見通し
- 弁護士：内容証明送付、交渉、訴訟や和解の提案が続きます。費用や手続き期間を確認してください。
- 労基：調査ののち会社への指導や勧告が行われますが、個別の金銭的救済は弁護士に依頼する必要が出る場合があります。
最後に
まずは証拠を整理して一歩踏み出してください。初回相談で方向性が見えることが多いです。必要に応じて、早めに弁護士に切り替える判断も検討してください。
退職金運用に関する相談窓口
窓口の種類と役割
銀行・証券会社：口座開設や投資信託、定期預金などの商品を扱います。窓口で資産配分の基本アドバイスを受けられます。
IFA（独立系ファイナンシャルアドバイザー）：特定の金融機関に所属せず中立的に助言します。手数料型が多く、利益相反が少ない点が特徴です。
ロボアド（自動運用サービス）：簡単な質問に答えるだけでポートフォリオを提案します。手数料が比較的低めです。
どんな人に向いているか（具体例）
- 安全重視で元本保全を望む人：銀行の定期や国債が候補です。
- 運用で増やしたい人：投資信託や株式を扱う証券会社が合います。
- 第三者の中立的意見がほしい人：IFAに相談するとよいです。
相談前に準備すること
目的（生活費補填、遺産対策など）、運用期間、リスク許容度、現在の資産状況をまとめておくと具体的な助言が受けやすいです。
相談で聞くべきこと
目標達成に適した商品、想定リスク、手数料の内訳、税制（NISA・iDeCoの活用例）、途中解約時の条件などを確認してください。
注意点
手数料や販売奨励金の仕組みは窓口で異なります。説明が不明瞭なら遠慮せず再確認しましょう。
まとめと推奨事項
要点の振り返り
- 退職金の問題は性質で相談先を使い分けます。一般的な情報や法令違反の申告は労働基準監督署、支払請求や交渉は弁護士、運用相談は金融機関が適しています。
行動の優先順位（迷ったときの手順）
- 証拠を整理する（雇用契約、退職金規程、給与明細、メールなど）。
- 事実関係が不明確ならまず労働基準監督署に相談してください。違反の有無の確認が得られます。
- 支払いを求める、交渉や訴訟を検討する場合は弁護士に相談すると効果的です。
- 退職金の運用や税金の相談は、金融機関や税理士に相談しましょう。
相談時のチェックリスト
- いつ、どのように退職金が決まったか
- 関連する書類や明細の写し
- 相手とのやり取りの記録
- 自分の希望（早期支払い、分割、交渉など）
最後に一言
早めに行動すると解決がスムーズです。迷うときはまず相談窓口に連絡し、状況に応じて適切な専門家に切り替えてください。
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