退職・無断欠勤がもたらす法的リスクと対処法を詳しく解説

目次

はじめに

目的

本資料は、従業員の無断欠勤に対する企業の対応方法と法的な扱いをわかりやすく整理することを目的としています。人事担当者や管理職、経営者が現場で使える実務的な視点で解説します。

対象と想定事例

対象は中小企業から大企業までの人事・労務担当者です。たとえば、連絡なしに3日以上出社しない従業員が発生した場合の初期対応から、最終的な処分判断までの流れを想定しています。

本書の構成と読み方

無断欠勤の定義、解雇の法的基準、段階的対応、懲戒手続き、減給や損害賠償、退職権など全10章で整理しました。各章は具体的な手順や注意点を中心にまとめています。まず第1章で全体像をつかみ、第2章以降で順に読み進めることをおすすめします。

利用上の注意

本資料は実務の指針であり、個別の事案は事情が異なります。重要な判断の際は、労務の専門家や弁護士にご相談ください。記録と証拠の保存を日常的に行うことが有効です。

無断欠勤の定義と企業への影響

無断欠勤の定義

無断欠勤とは、従業員が事前の連絡や理由の説明なく出勤しない状態を指します。遅刻や早退の事前連絡がない場合も同様に扱われることがあります。労働契約上の義務(出勤義務や事前報告義務)を果たさない行為です。

企業への具体的影響

  • 業務遅延:担当者不在で作業が止まり、納期や顧客対応に支障が出ます。
  • 負担の偏在:他の従業員が欠員分をカバーし、負担と残業が増えます。
  • 職場の士気低下:無断欠勤が続くとルール感が崩れ、規律が緩みます。

具体例で分かる影響

  • 営業が無断欠勤:顧客訪問がキャンセルになり契約機会を逸する。
  • 製造ラインの作業者が欠勤:ライン停止で生産ロスが発生する。

初期対応のポイント

  1. 速やかに連絡を試みる(電話・メール)。理由を確認します。2. 出社がない日数や業務影響を記録する。3. 再発防止のため面談で事情を聴取し、必要なら書面で注意を行う。

上記は企業が早めに対応するための基本です。適切な記録と丁寧な対応が後の処理を容易にします。

解雇可能性の法的基準

概要

法律は日数だけで解雇を決める基準を示していません。過去の裁判例では、14日程度の連続無断欠勤で懲戒解雇を認める傾向が見られます。一方で6日程度の無断欠勤で解雇したケースは不当と判断されることが多いです。

裁判例の傾向と考え方

裁判所は「社会的相当性」を重視します。具体的には企業側の連絡・警告の有無、欠勤理由の有無、就業規則の明確さ、過去の懲戒歴などを総合して判断します。長期間かつ無連絡が続けば解雇が認められやすくなりますが、個別事情が結果に大きく影響します。

具体例

  • 例1: 15日間連絡なし。就業規則で無断欠勤の処分が定められ、企業が文書で警告していた場合、懲戒解雇が認められる可能性があります。
  • 例2: 6日間の無断欠勤。事情説明がないまま即解雇すると、不当解雇と判断されやすいです。
  • 例3: 短日数の繰り返しと事前注意の記録がある場合は、累積で解雇が正当化される場合があります。

実務上の注意点

解雇を検討する際は、連絡記録や警告文、就業規則の整備を必ず行ってください。労務管理の記録が判定の重要な証拠になります。疑問がある場合は専門家に相談することをおすすめします。

解雇の正当性判断における重要要素

法的基準の再確認

労働契約法16条では、解雇は「客観的に合理的であり、社会通念上相当である」ことが求められます。単に欠勤した事実だけでなく、その背後事情と会社の対応全体を総合的に判断します。

連絡と調査の重要性

本人や家族に速やかに連絡を取り、欠勤の理由を確認します。病気や事故、家庭事情、ハラスメントなど正当な理由があるか調べます。連絡記録ややり取りは必ず残します。

欠勤原因の具体例と対応

例:急病で入院した場合は診断書を求め、復帰見込みを確認します。例:上司からのパワハラが原因なら、職場調査を行い加害事実の有無を明らかにします。理由が認められれば解雇は不当になります。

判断の観点

欠勤の頻度・期間、業務への影響、過去の注意・指導の有無、社内規程との整合性を見ます。本人に弁明の機会を与えたかが重要です。場合によっては減給や出勤停止など段階的な処分が望ましいです。

証拠の保存と書面化

調査結果や連絡記録、診断書、内部記録を整理して書面に残します。裁判や労働審判で説明できるよう、経緯を時系列でまとめます。

自然退職扱いとする方法

前提:就業規則の明記

就業規則に「無断欠勤が一定期間続いた場合に退職とみなす」旨を明記します。多くの企業では正当な理由のない無断欠勤が1か月以上続いた場合を基準としています。規定がなければ適用できません。

実務上の手順(例)

  1. 連絡の試行:電話、メール、書面で欠勤理由を確認します。記録を残してください。
  2. 催促・通知:連絡がつかない場合は内容証明郵便などで出勤・連絡を促す最終通知を送ります。
  3. 一定期間経過後の判断:就業規則の期間(例:30日)を経過し説明がない場合、本人の申出があったとみなして退職扱いにします。
  4. 事後処理:退職日を設定し、給与・有給・社会保険手続きを行います。

注意点

  • 記録を必ず残してください(電話日時、送付書類の控えなど)。
  • 労働基準法や就業規則に沿って運用し、恣意的な扱いを避けてください。
  • 重大な事情(病気や災害など)が後で判明した場合は対応を見直します。

運用は懲戒解雇より穏当で紛争を避けやすい方法です。必要なら労務専門家に相談してください。

段階的な対応プロセス

1. 事実確認

無断欠勤の事実と状況を速やかに確認します。出社可能な状態か、連絡手段に問題があったかなどを記録します。例えば「当日午前は電話不通、午後に症状説明あり」など具体的に残します。

2. 口頭注意(初期対応)

まず直属の上司が面談で注意し、欠勤の理由と今後の出勤予定を聞きます。口頭注意は非難よりも改善を促す姿勢で行います。例:翌日の出勤確認と連絡方法の再確認。

3. 書面による警告(改善指導)

改善が見られない場合は書面で警告します。警告書には事実、改善の期限、改善がない場合の措置(減給や懲戒)を明記します。日付と署名を求め、控えを残します。

4. 健康・事情の確認

長期や繰り返しは健康問題や家庭事情の可能性があります。医師の診断書提出や労務担当との面談で配慮の余地を判断します。

5. 最終警告と解雇検討

改善がなく、業務に重大な支障が出る場合は最終警告を行い、それでも改善しなければ解雇を検討します。解雇に踏み切る前に、手続きや証拠を再確認します。

6. 記録と専門家相談

対応の全過程を時系列で記録します。必要に応じて労務担当や弁護士に相談し、法的に問題のない手続きを進めます。

懲戒解雇の手続きと要件

概要

懲戒解雇は最も重い処分です。労働契約法の基準に照らし、解雇が客観的に合理的で社会通念上相当であることが必要です。無断欠勤が長期に及ぶ場合でも、事情を総合的に検討します。

法的要件

  • 解雇の理由が明確であること(勤怠記録や警告の有無など)
  • 労働者に弁明の機会を与えること
  • 社会通念上相当であること(客観的合理性)

解雇予告と予告手当

原則として30日前の解雇予告が必要です。予告をしない場合は平均賃金1ヶ月分を支払う必要があります。即時解雇を行う場合でもこの点を検討します。

手続きの流れ(実務上の例)

  1. 出勤記録と連絡履歴を確認する
  2. 非出勤の理由を確認し、書面や面談で弁明機会を与える
  3. 過去の注意・警告の記録を確認する
  4. 懲戒の相当性を判断し、必要なら労務・法務と相談する
  5. 書面で処分を通知する

即時解雇について

無断欠勤が2週間以上続く場合、即時解雇が認められることがあります。ただし、例えば急病や家庭の事情で連絡が取れなかった場合は不当とされる余地が大きいです。客観的理由と比例性を慎重に判断してください。

証拠と記録

出勤簿、メール・電話の履歴、警告文書、面談記録を保存してください。後の争いを避けるため、手続きは丁寧に行います。

留意点

就業規則や労働組合の規定に従うこと、安易な即時解雇はリスクが高いことを念頭に置き、可能な限り段階的な対応を優先してください。弁護士や社内専門家へ相談することをお勧めします。

減給処分と損害賠償請求

前提 — 就業規則の明記

減給処分を行うには、就業規則に「無断欠勤を減給事由とする」ことを明記している必要があります。具体的な額や算定方法も定めておくと安定します。

減給の要件と注意点

減給は懲戒処分の一つです。処分前に事実確認と本人への弁明機会を与えます。賃金を減らす際は最低賃金を下回らないように注意してください。

損害賠償請求の要件

無断欠勤で会社に損害が生じた場合、民法415条の債務不履行を根拠に請求できます。請求するには(1)債務不履行の事実、(2)会社に発生した損害、(3)因果関係を具体的に示す必要があります。

実務的手続きと証拠

・欠勤記録、業務引継ぎの欠陥、発注や納期遅れの記録を残します。
・外注や臨時雇用にかかった費用、失注による売上減などの証明書類を用意します。
・本人に弁明を求め、応答を記録します。

具体例

例:無断欠勤で工事が止まり、外注費3万円と受注損失5万円が発生した場合、計8万円を請求する根拠を示します。計算根拠と領収書が重要です。

留意点と相談

損害額は実損が原則で、過大請求は避けます。争いになりそうな場合は労働基準監督署や弁護士に相談してください。

労働者の退職権と法的義務

1. 基本ルール

労働者は原則としていつでも退職できます。ただし職場に迷惑をかけないよう、手続きのルールを守る必要があります。

2. 無期雇用(期間の定めがない場合)

無期契約の労働者は、退職の意思を伝えてから2週間で退職できます。例:4月1日に「4月15日付で退職します」と伝えれば法的には認められます。口頭でも可能ですが、証拠を残すために書面やメールで伝えると安心です。

3. 有期雇用(期間の定めがある場合)

契約期間中は原則として途中退職できません。途中で辞めるにはやむを得ない事情(病気、家庭の事情など)や会社側との合意が必要です。合意がないまま辞めると契約違反となり、損害賠償の問題になります。

4. 無断欠勤がある場合の取り扱い

無断欠勤が続けば、会社は懲戒や解雇を検討できます。短期間の無断欠勤でも事情次第で解雇が認められることがあります。まずは事情確認と記録を行うことが重要です。

5. 手続き上の注意と義務

退職の際は引き継ぎや有給消化、健康保険・年金の手続きを行ってください。会社は退職理由や手続きに応じた対応をしますが、労働者も誠実に協力する義務があります。

6. 具体例

例1:無期社員が2週間前に申し出て退職。問題なし。
例2:有期契約を自己都合で途中退職。合意がなければ損害賠償を請求される可能性あり。

必要があれば、具体的な状況に応じた対応方法を一緒に考えます。

企業側の注意点と法的リスク

はじめに

無断欠勤への対応は感情だけで進めず、事実に基づく手続きを重視する必要があります。裁判で主張を裏付ける証拠がなければ、不当解雇と判断されるリスクがあります。

記録と証拠の整備

出勤状況、連絡履歴、注意や警告の書面を時系列で残してください。例えば、欠勤が発生した日からの電話・メールの送受信、面談記録、就業規則の該当条項を準備します。これらが後の説明材料になります。

従業員とのやり取り

欠勤理由を確認するために文書や面談で説明を求めます。理由を聴いた上で改善の機会を与え、指導記録を残します。説明がない場合でも、連絡試行の記録を残すことが重要です。

段階的な処分と社内手続き

いきなり解雇に踏み切らず、警告→更なる指導→懲戒の順で対応してください。就業規則に基づく手続きを踏むことで、合理性を説明しやすくなります。

法的リスクと外部相談

手続きに不備があると労働審判や訴訟で敗訴する可能性があります。判断に迷う場合は弁護士や社会保険労務士に早めに相談してください。企業の説明責任を果たす準備が最善の防御になります。

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