はじめに
本資料は「就業規則 連勤」に関する調査結果をわかりやすく整理したものです。人事・総務担当者や経営者、また働く方ご自身が、連勤に関する基礎知識と実務上の注意点を短時間で理解できるように構成しています。
- 目的:連勤の定義や法的な基準、就業規則での定め方、違反した場合の影響を明示し、現場での判断を助けます。
- 想定読者:中小企業の人事担当者、労務管理に携わる方、働く人。
本章では全体の目的と章構成を示します。以降の章で、具体例を交えながら労働基準法の考え方、変形労働時間制の例外、就業規則に記載する際の表現や注意点、違反時の対応や罰則、さらに日常の労務管理で配慮すべき点を順に解説します。
読み進めることで、就業規則を作成・見直す際に役立つ実践的な視点が得られます。ご不明な点があれば、各章を参照しながら具体的な事例を考えてみてください。
連勤(連続勤務)とは何か
定義
連勤とは、休日を挟まずに2日以上連続で勤務する状態を指します。労働基準法は「連勤」を直接定義していませんが、実務上はこの意味で使われます。分かりやすく言うと「休みの日が入らないまま続けて働くこと」です。
誰に適用されるか
正社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問いません。雇用形態に関わらず、勤務の組み方によって連勤が生じます。
具体例
- スーパーの店員が土曜と日曜に連続でシフトに入る場合、2連勤になります。
- シフトで夜勤から日勤に続けて勤務し、休日日が入らなければ連勤とみなされます。
注意点
- 連勤は「何日続けて働いたか」が中心の考え方です。1日の労働時間の長短や残業とは別の概念です。例外となる特別な勤務形態(変形労働時間制など)は別章で説明します。
- 夜間にまたがる勤務や早朝勤務がある場合、勤務のつながり方で連勤の扱いが変わります。具体的な判断は就業規則や労務担当者と確認してください。
以上が連勤の基本的な考え方です。分かりやすい例をもとに、自分の勤務が連勤に当たるかどうか確認してみてください。
労働基準法における連勤の法的基準
法的根拠
労働基準法第35条は、使用者は労働者に毎週少なくとも1回の休日を与えることを定めています。これにより長時間の連続勤務を防ぎ、労働者の健康と生活を守ります。専門用語は最小限にとどめ、具体例で説明します。
休日の与え方の選択肢
法律は原則として「1週間に1回以上の休日」を求めますが、運用上は「4週間で4日以上」という扱いも認められます。どちらを採るかで連勤の数え方が変わります。
最大連勤日数の考え方(例付き)
- 1週間1日制を採用した場合、最も長く連続勤務が続くのは12日間となります。具体例:1週目の日曜日を休日、2週目の土曜日を休日にすると、1週目月曜から翌週金曜までの12日間が連続勤務になります。
- 4週間4日制では、休日の配分によって連勤はさらに長くなる恐れがあるため、シフト設計で休日が偏らないよう配慮してください。
実務上のポイント
- 就業規則やシフト表に休日の基準を明示してください。労働者に分かりやすくすることで誤解を防げます。
- 勤怠記録を残し、連続勤務が長くなっていないか定期的に確認してください。医療や介護など交替制の職場では特に重要です。
以上が労働基準法における連勤の基本的な法的基準と実務上の注意点です。
変形労働時間制による例外規定
概要
変形労働時間制を採ると、通常の「毎週少なくとも1回の休日」ルールに代わる休日の付け方が認められます。代表的なのは4週間単位と1年単位の方式です。両者とも法定労働時間(1週間あたり40時間)を守る必要があり、日ごとの労働時間で調整します。
4週間単位の変形休日制
4週間の間に合計で4日以上の休日を与えればよい仕組みです。このため、休日を集中させれば長く連続して勤務するスケジュールをつくれます。理論上は連続勤務が長くなることがあり、実務上「最長48日程度の連勤が可能」と説明されることがあります(例:4週間ごとの休日を連続的に後ろに寄せることで複数期間をつなげる場合)。
ポイントは週合計が40時間以内であることです。例えば繁忙日を長めにして他の日を短くするなどして、週単位の時間を調整します。
1年単位の変形労働時間制
1年単位では繁閑に応じて忙しい時期だけ労働時間を増やせますが、一定期間ごとに1週間に1日の休日を確保する義務があります。その結果、連勤は最長で12日程度に制限される扱いになります。具体例としては、繁忙期に6日勤を続け、その後に調整で休日を入れるといった運用が考えられます。
運用上の注意点
- 労働者の健康や過重労働に配慮し、長期の連勤を常態化させないこと
- 就業規則や労使協定で明確に運用ルールを定めること
- 週の労働時間を超えないよう日ごとの振り分けを記録すること
具体的な運用や疑問点は、就業規則や労使協定の内容により異なりますので、個別に確認してください。
就業規則で定める際の重要なポイント
週の起算日を明確にする
就業規則に「週の起算日」を必ず明記してください。例えば「週の起算日を月曜日とする」と定めれば、毎週月〜日で休日の有無を確認できます。起算日を曖昧にすると、休日の計算でトラブルになります。
7日ごとに1日の休日を保証する
7日間ごとに少なくとも1日の休日を設ける義務を明示してください。運用例として、シフト表では各7日区間に必ず1日以上休みを入れるルールを表記します。連続勤務が続く場合は、どの週に振替休日を入れるかを具体的に示すと分かりやすくなります。
法定休日と代替休日の区別を明示する
法定休日(週1日の休日)と会社が指定する代替休日は扱いが異なります。就業規則で双方を区別し、代休の付与手続きや賃金計算方法を明文化してください。例:法定休日に勤務した場合の割増率や代替休日の取得時期を定めます。
パート・アルバイトへの適用
パート・アルバイトにも連勤ルールを適用してください。勤務時間が短くても7日ごとの休日確保は必要です。労働時間に応じた扱い(短時間労働者への配慮)を就業規則に盛り込むと公平です。
運用上の留意点
・休日の決定方法や申請手順を明記する。
・シフト作成担当者の責務を明示する。
・記録保存(シフト表・出勤簿)の保管期間と方法を定める。
・例外がある場合はその範囲と労使協定の有無を具体的に書く。
これらを明文化すると、労使間の誤解を防ぎ、実務で運用しやすくなります。
連勤の上限を超えた場合の違反と罰則
刑事罰
法定の上限を超えて労働させた場合、企業や責任者は刑事罰の対象となることがあります。具体的には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。例:明らかに労働時間を超えて長時間勤務を常態化させた場合、是正されなければ処罰に至ることがあります。
行政的措置
労働基準監督署は監査や立ち入り検査、是正勧告や改善命令を出します。改善命令に従わないと公表や追加の行政処分につながることがあります。企業はまず監督署の指導に従い、速やかに労働時間管理を見直す必要があります。
民事責任(損害賠償)
長時間労働が原因で健康被害・過労自殺などが発生すると、使用者は損害賠償を請求されるリスクがあります。裁判で慰謝料や逸失利益の支払いを命じられる例もあります。具体例:過労で休職した従業員から治療費や休業補償を求められる場合です。
企業リスクと労働紛争
違反は企業イメージの悪化、採用・定着率の低下、ストライキや労働組合との対立などにつながります。内部通報や未払い残業の請求が増えると、長期的な信用損失と費用負担が生じます。
早めの対応が重要
違反が疑われるときは労務担当者や弁護士に相談し、就業規則や勤怠管理の改善、従業員への説明を速やかに行ってください。改善の記録を残すことで、後の行政対応や訴訟での説明に役立ちます。
労務管理上の配慮事項
健康と安全を最優先に
理論上は連勤が長くなれますが、過度な連勤は疲労やメンタル不調、作業ミスを招きます。企業は法の最低基準にとどまらず、現場の実情に合わせて配慮を設けるべきです。
実務的な配慮例
- 連続勤務の日数上限を設定する(例:原則7日連続まで、8日目は休暇)。
- 代替要員や交代制を整備して負担を分散する。実例:夜勤の2人体制で定期的に休みを入れる。
- 定期的な健康診断とストレスチェックを実施し、結果に応じて勤務調整する。
就業規則と運用
具体的な数値(上限日数、連勤後の最低休息日数)を就業規則に明記してください。運用ルールと責任者を決め、例外対応の手順も書きます。
日常の管理とコミュニケーション
勤務実績を記録して分析し、長期傾向を早期に把握します。労働者との面談や相談窓口を設け、現場の声を反映してください。企業の社会的責任として、人道的で実行可能な管理を心がけましょう。


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